2020年 02月 24日 ( 6 )

COVID-19:重慶における退院例51人の検討

COVID-19:重慶における退院例51人の検討_e0156318_822360.png 退院例ということですが、基本的には既知の知見で、目新しい情報はなさそうです。

liu lei, et al.
Clinical characteristics of 51 patients discharged from hospital with COVID-19 in Chongqing, China.
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.20.20025536


背景:
 2019年12月からSARS-CoV-2感染症(COVID-19)が中国武漢で発生しており、中国全土だけでなく世界中に拡大している。われわれは、武漢地域におけるCOVID-19の疫学的・臨床的特徴を記述し効果的な治療を探索した。

方法:
 後ろ向き単施設研究において重慶大学三峡病院から2020年1月29日~2月11日に退院した症例51例の患者を解析した。疫学、患者背景、人口動態、臨床所見、検査所見、画像所見、治療についてデータを抽出した。さらに、重症例と非重症例を比較した。

結果:
 COVID-19で入院した51例の年齢中央値は45歳(IQR 34-51、範囲16-68)で、32人(62.7%)が男性だった。43人(84.3%)が武漢あるいはその他湖北省地域への渡航歴があり、4人(7.7%)がCOVID-19患者との濃厚接触歴があった。
 臨床症状は発熱43人(84.3%)、咳嗽38人(74.5%)、倦怠感22人(43.1%)が多かった。リンパ球減少症が26人(51.0%)に観察され、CRP上昇は32人(62.7%)にみられた。
 GGOが胸部CTでよくみられた所見(41人[80.4%])で、局所的浸潤影は17人(33.3%)にみられた。
 28人(54.9%)の患者が漢方薬で治療を受けており、その全員がインターフェロンα1b注射、ロピナビル/リトナビルによる経口抗ウイルス薬を投与されていた。44人(86.3%)の患者がBacillus licheniformisカプセル治療を受けていた。10人(19.6%)が短期的(3-5日)全身性ステロイド治療を受けた。
 非重症例44人と比較すると、重症例7人は高齢(年齢中央値52歳 vs 44歳)で、糖尿病合併率が高く(57.1% vs 0%)、抗菌薬治療を受けやすく(100% vs 9.1%)、呼吸困難を訴えやすかった(85.7% vs 11.4%)。重症例の6人(85.7%)がネーザルハイフローを受け、その後非侵襲性換気へスイッチした。1人は挿管されたが、死亡した。残りの50人は全員軽快退院した。リンパ球、CRPは正常化へ向かった。入院期間中央値は12日(IQR 9-13)だった。

結論:
 COVID-19に罹患し退院した51例のうち、13.7%が重症だった。発熱、咳嗽、倦怠感が主症状だった。一部の患者は呼吸困難を訴えていた。疾患特異的な有効治療はなかった。





by otowelt | 2020-02-24 15:16 | 感染症全般

COVID-19:PCR検査は喀痰検体と咽頭検体のどちらがよいか?

COVID-19:PCR検査は喀痰検体と咽頭検体のどちらがよいか?_e0156318_822360.png これは以前から指摘されていることですね。ただ、母集団54例が本当にCOVID-19かどうかというlimitationもあり、この研究立案にはちょっと疑問です。
 24日付けで、先日にNEJMの報告に照らし合わせ、国立感染症研究所の検体採取指針は「鼻咽頭ぬぐい液」に変更されています。

・参考記事:COVID-19:鼻腔・咽頭のウイルス量の推移

Chenyao Lin, et al.
Comparison of throat swabs and sputum specimens for viral nucleic acid detection in 52 cases of novel coronavirus (SARS-Cov-2) infected pneumonia (COVID-19)
medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.21.20026187


背景:
 2019年12月に、SARS-CoV-2の感染によるCOVID-19の肺炎が中国武漢で発生した。主にRT-PCRに基づいて診断され、検体はもっぱら咽頭スワブにより採取されるが、診断見逃しが容易に起こる。さらに高い同定と精度が求められている。

方法:
 武漢市金銀潭医院において、WHOガイダンスによりCOVID-19が疑われた54例では、咽頭スワブと喀痰からペア検体が採取されていた。

結果:
 54例の平均年齢は57.3±12.5歳だった。51.9%が男性だった。喀痰検体の陽性率は76.9%、咽頭検体の陽性率は44.2%だった(P=0.001)。36.5%の患者はRT-PCRが両検体で陽性となり、15.4%は両検体で陰性となった。40.4%の患者が喀痰陽性、咽頭スワブ陰性、7.7%が喀痰陰性、咽頭スワブ陽性だった。
COVID-19:PCR検査は喀痰検体と咽頭検体のどちらがよいか?_e0156318_1025659.png
(両スワブの検体結果:文献より引用)

結論:
 喀痰検体によるSARS-CoV-2陽性率は咽頭スワブよりも高かった。われわれは、喀痰検体により診断すべきと考える。





by otowelt | 2020-02-24 12:58 | 感染症全般

COVID-19:9研究50404人の解析

COVID-19:9研究50404人の解析_e0156318_822360.png プレプリントのメタアナリシス。さすがにプレプリントの研究は含まれていませんでした。china CDCの症例がほとんどです。

・参考記事:COVID-19:China CDCによる72314人の解析結果

Pengfei Sun, et al.
Clinical characteristics of 50404 patients with 2019-nCoV infection
medRxiv preprint; doi:https://doi.org/10.1101/2020.02.18.20024539%20doi:


目的:
 SARS-CoV-2感染患者の臨床的特徴について刊行された研究の信頼性のあるエビデンスと治療についてのEBMを提供すること。
 
方法:
 2020年2月まで、PubMed、Cochrane Library、Embaseなどの電子データベースを検索した。SARS-CoV-2感染者の臨床的特徴について、メタアナリシスのため複数の研究を収集した。言語の規定は設けなかったが、刊行されている研究を登録した。

結果:
 9研究、50404人のSARS-CoV-2感染患者がメタアナリシスに組み込まれた。メタアナリシスによると、発熱90.9%、咳嗽70.8%、筋肉痛・倦怠感41%だった。ARDSに陥ったのは14.8%だった。胸部CT写真で異常がみられたのは95.6%だった。全例のうち重症例は21.3%で、死亡率は4.8%だった。
 ARDSの集団で出版バイアスが認められた。

結論:
 発熱と咳嗽がもっともよくみられた症状で、ほとんどが胸部CT写真に異常がみられた。筋肉痛や倦怠感、ARDSは一部にみられた。下痢、血痰、頭痛、咽頭痛、ショック、その他の症状は少数の患者にみられた。死亡率は、SARSやMERSよりも低かった。




by otowelt | 2020-02-24 11:32 | 感染症全般

COVID-19:親子3人の家族内クラスター

COVID-19:親子3人の家族内クラスター_e0156318_822360.png 先日JAMAにも家族内クラスターの考察がありましたね。今回、Lancet Infectious Diseasesから親子3人の報告です。

・参考記事:COVID-19:家族内クラスターから考察した無症候性キャリアからのSARS-CoV-2伝播

Pan X, et al.
Asymptomatic cases in a family cluster with SARS-CoV-2 infection.
Lancet Infect Dis. 2020 Feb 19. pii: S1473-3099(20)30114-6. doi: 10.1016/S1473-3099(20)30114-6.


概要:
 過去に報告された家族内クラスターの報告では、ほとんどの人に臨床症状があり、リンパ球減少がみられ、胸部CT所見に異常が観察された。しかしながら、臨床症状がなくとも胸部CTで肺炎像がみられたRT-PCR陽性例も存在した。
 今回、われわれはSARS-CoV-2感染の家族内クラスターを報告する。3人の家族の報告であるが、臨床症状を有する1人は35歳男性(患者1)で、リンパ球数減少、胸部CT写真の異常、RT-PCR陽性がみられた。反面、2人の家族である33歳女性(患者2)、3歳男児(患者3)は、両方とも無症状でリンパ球数や胸部CT写真は正常だったが、RT-PCR陽性だった。
 2020年1月22日、患者1は武漢に妻(患者2)・息子(患者3)と高速鉄道で旅行した。1月26日、患者1に37.5℃の発熱がみられ、1日続いた。翌日、広州医科大学第3付属病院を受診した。その時の体温は37.4℃だった。同日、咽頭痛、関節痛、筋肉痛を訴えたが、悪寒や頭痛はなかった。患者1は1月27日から1月29日まで観察され、その間に体温は正常化した。1月27日、血液検査で白血球・リンパ球数も正常化したが、リンパ球比率は減少したままだった。胸部CT写真が症状発症から2日目に撮影され、両側多発性の葉性~亜区域性のGGO・浸潤影がみられた。2回の鼻咽頭スワブ検体が患者1におこなわれたが、いずれも陽性だった。
 患者2と3には、同じ観察期間(1月27〜29日)に徴候や臨床症状はなく、白血球数またはリンパ球数の減少もなかった。 1月28日にこれら2人の患者で撮影した胸部CT画像にも、特段の異常はなかった。ただし、患者1から採取した2回の鼻咽頭スワブ検体は、RT-PCR陽性だった。3人の家族全員がSARS-CoV-2感染と診断されたため、隔離と治療のために広州市第八人民医院の感染症部門に移送された。
COVID-19:親子3人の家族内クラスター_e0156318_819479.png
(文献より引用)

 この家族内クラスターの報告では、3人全員がSARS-CoV-2陽性となったが、臨床症状を訴えたのは1人のみだった。しかし、3人のうちのいずれかが最初に感染し、他の2人の家族にウイルスを感染させた可能性がある。ここで重要なのは、無症候性の患者(患者2および3)が疾患を認識していないため、自身を隔離したり、治療を求めたり、医療専門家によって見過ごされたりして、知らずにウイルスを他の人に感染させてしまうことである。この感染性の高い疾患をできるだけ早期に予防・制御するために、SARS-CoV-2感染症の家族を持つ人は、たとえ症状がなくても、感染を除外するために綿密な監視と検査をおこなう必要がある。




by otowelt | 2020-02-24 10:53 | 感染症全般

COVID-19:ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビルに症状軽減・ウイルス陰性化の効果みられず

COVID-19:ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビルに症状軽減・ウイルス陰性化の効果みられず_e0156318_822360.png カレトラはかなり期待されている薬剤の1つですが、本研究では有意差がついていません。

Chen Jun, et al.
Efficacies of lopinavir/ritonavir and abidol in the treatment of novel coronavirus pneumonia
Chin J Infect Dis, 2020,38(00): E008-E008.


目的:
 新型コロナウイルス肺炎(NCP)に対するロピナビル/リトナビルおよびウミフェノビル(arbidol・abidol)の効果を評価すること。

方法:
 2020年1月20日~2020年2月6日までに、上海公共衛生臨床中心においてNCPに対して治療を受けた134人を後ろ向きに登録した。全例インターフェロンα2b吸入治療と対症療法を受けた。52人がロピナビル/リトナビル5日間、34人がウミフェノビル5日間、残り48人は抗ウイルス治療を受けなかった(コントロール群)。3群の7日目における効果を比較した。2日連続で治療を受けなかった患者は、治療を受けていないものとみなされ、解析上はコントロール群に入れた。

結果:
 134人のうち69人(51.5%)が男性だった。年齢範囲は35-62歳で、平均年齢は48歳だった。抗ウイルス薬を使用していないコントロール群に重篤例が1人、ウミフェノビル群に重篤例が2人いた。基礎疾患を有していたのは、ロピナビル/リトナビル群15人(28.8%)、7人(20.6%)、 8人(16.7%)だった(p=0.33)。
 体温正常化までの期間中央値は、ウミフェノビルあるいはロピナビル/リトナビルが入院後6日、コントロール群は入院後4日だった(有意差なし、p=0.31)。呼吸器検体のPCR陰性化までの期間中央値は、3群ともに入院後7日だった。7日目のPCR陰性化率は、ロピナビル/リトナビル71.8%(39人中28人)、ウミフェノビル82.6%(23人中19人)、コントロール群77.1%(35人中27人)だった(p=0.79)。
COVID-19:ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビルに症状軽減・ウイルス陰性化の効果みられず_e0156318_023312.png
※上から、ロピナビル/リトナビル、ウミフェノビル、抗ウイルス薬併用なし(コントロール)
(呼吸器検体の陽性率:文献より引用)

 両肺に陰影がみられていたのはそれぞれ、42人(80.7%)、 28人(82.4%)、 42人(87.5%)だった。7日目の放射線学的所見の悪化は、3群同等だった(42.3% vs 35.3% vs 52.1%, p=0.30)。
 副作用はそれぞれ17.3%、8.8%、8.3%にみられた(p=0.33)。下痢などの消化器症状が主だった。

結論:
 この研究では、症状軽減、ウイルス陰性化をロピナビル/リトナビルおよびウミフェノビルが促進させる結果は得られなかった。





by otowelt | 2020-02-24 06:43 | 感染症全般

COVID-19:患者の半数で便中SARS-CoV-2が陽性

COVID-19:患者の半数で便中SARS-CoV-2が陽性_e0156318_822360.png 中山大学第5付属病院からの報告です。半数とはちょっと驚きですね。
  Lancet Gastroenterology & Hepatologyでも指摘されているように、衛生状態が悪い地域では注意が必要かもしれません(Lancet Gastroenterol Hepatol. 2020 Feb 19. pii: S2468-1253(20)30048-0.)。

Fei Xiao, et al.
Evidence for gastrointestinal infection of SARS-CoV-2.medRxiv preprint doi: https://doi.org/10.1101/2020.02.17.20023721.


背景:
 直近の症例報告によると、糞便中にSARS-CoV-2が排泄されている。すなわち、感染ルートは呼吸器系だけでない可能性がある。SARS-CoV-2は、侵入時にウイルス受容体としてACE2を使用することが証明されている。ACE2 mRNAは消化器系に高発現している。

方法:
 2020年2月1日~14日のあいだ、73人のSARS-CoV-2感染COVID-19患者から、血清、鼻咽頭、口腔咽頭、尿、便の検体を得た。また、内視鏡をおこなった1人の患者からは、食道、胃、十二指腸、直腸の生検組織も得た。

結果:
 73人の患者のうち、39人(53.42%)(男性25人、女性14人)が便検体のSARS-CoV-2 RNAが陽性だった。便検体が陽性になった期間は、1~12日間と幅広かった。さらに、17人(23.29%)が呼吸器検体のSARS-CoV-2が陰性になったにも関わらず、便検体で陽性が持続した。上部・下部消化管内視鏡検査を受けた1人の患者は、食道、胃、十二指腸、直腸のすべての生検検体においてSARS-CoV-2が陽性だった。ACE2は上皮に発現していたが、食道ではほとんど発現がみられなかった。
COVID-19:患者の半数で便中SARS-CoV-2が陽性_e0156318_21173243.png
(内視鏡検体:文献より引用)

結論:
 われわれの研究結果は、SARS-CoV-2の糞口感染が起こりうることを示唆するものである。




by otowelt | 2020-02-24 01:58 | 感染症全般