カテゴリ:抗酸菌感染症( 210 )

肺MAC症におけるクラリスロマイシン単独治療の頻度:9.2%

肺MAC症におけるクラリスロマイシン単独治療の頻度:9.2%_e0156318_17465259.png 確か1年ほどまえに似たデータを見たことがあるのですが(EBが入っていないCAMに関する類似の論文でした)、これだけ有名になっても、まだ10人に1人の医師がCAM単独治療を適用していることに驚きました

Iwao T, et al.
A survey of clarithromycin monotherapy and long-term administration of ethambutol for patients with MAC lung disease in Japan: A retrospective cohort study using the database of health insurance claims.
Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2019 Dec 25. doi: 10.1002/pds.4951.


背景:
 近年、非結核性抗酸菌症(NTM)の患者数は指数関数的に増加している。日本では、NTM患者の約88.8%が肺MAC症に罹患している。肺MAC症の発生は、特に中高年の女性の間で増加している。肺MAC症の標準治療は化学療法である。薬剤耐性菌の発生を防ぐために専門家が推奨する化学療法の種類は、クラリスロマイシン(CAM)、リファンピシン、エタンブトール(EB)の組み合わせである。
 CAM単独療法は、肺MAC症患者に薬剤耐性菌を誘発する可能性が高いため、専門家からは禁忌であると警告されている。さらに、薬物の有害事象を避けるため、1000 mg/日以上の用量でEBを投与することも推奨されていない。
 しかし、実際の臨床現場でそのような治療症例がどれだけ存在するかは不明である。これは、長期的な調査が実施されていないことが原因である。

方法:
 この研究では、健康保険請求データベースに基づいて肺MAC症患者1135人を調査することによって、2005年から2017年までこれらの薬剤による治療について調査した。

結果:
 約9.2%(101人)が3ヶ月以上の長期CAM単独治療を受けていた。最低用量は200mg/日、最高用量は1200mg/日だった。
 また、約3.6%(18人)が高用量EBを処方されていた。

結論:
 長期にわたるCAM単独療法は、一部の患者にとって潜在的に有害である。治療の種類とその潜在的な悪影響について知ることが、臨床医にとって有益である。





by otowelt | 2020-03-28 00:31 | 抗酸菌感染症

LTBIにおける4Rは9Hより重症肝障害が少なく治療完遂率が高い

LTBIにおける4Rは9Hより重症肝障害が少なく治療完遂率が高い_e0156318_9552565.jpg リファンピシン耐性の影響を懸念し、学会は4Rを第一には据えていません。
 以下、引用です。「RFP単剤 4 カ月療法の効果はINH 6 カ月と違いがなく,肝機能障害の出現が少ない点では有利である。また,これまでの報告からRFP単剤治療後のRFP耐性化の危険は高くないと想定されるが,日本においては,INH内服例での耐性化はまれならず見られており,外国におけるRFP耐性化例では不規則内服が疑われており,服薬遵守の確保の必要がある。RFP内服例での耐性化はINH耐性化より治療が困難である。RFP耐性化例がINH耐性化例と同じようにまれならず起こるかどうかはまだわかっていないが,起こりうる耐性化を予防する方法として,LTBI治療前の発病除外のためにCT検査を行うことに意味があるかもしれない。しかし,CT検査に伴う被曝によって悪性腫瘍発生のリスクが増加する懸念があることを考慮すると,CT検査をLTBI治療にあたって一律に行うことは妥当ではないと考える。以上より,RFP単剤使用後のRFP耐性化結核の発病の危険がきわめて低いという証拠が得られるまでは,薬剤耐性およびINHに伴う副作用の危険が高くINHが使えないまたは使いにくい場合に限って,活動性結核の除外と服薬遵守の確保を前提に適用を認めることを提案する。」(潜在性結核感染症治療レジメンの見直し[Kekkaku Vol. 94, No. 10 : 515-518, 2019]より)

Lisa A. Ronald, et al.
Treatment with Isoniazid or Rifampin for Latent Tuberculosis Infection: Population-Based Study of Hepatotoxicity, Completion, and Costs.
European Respiratory Journal 2020; DOI: 10.1183/13993003.02048-2019


背景:
 臨床試験では、潜在性結核感染症(LTBI)に対する4ヶ月のリファンピシン(4R)は、9ヶ月のイソニアジド(9H)と比較して肝障害が少なくやアドヒアランスが良好であることが示されている。われわれの目的は、カナダのケベック州の一般集団におけるLTBI治療において、4Rレジメンと9Hレジメンの重症肝障害イベント・治療完遂・医療費を比較することである。

方法:
 2003年~2007年にリファンピシンあるいはイソニアジドでLTBI治療を行われた後ろ向きコホートである。入院診療録から肝障害について、地域薬剤記録から治療完遂について、請求記録などから費用を調べた。年齢、併存症、その他交絡因子で補正して、リファンピシンとイソニアジドを比較した。

結果:
 LTBI治療を受けた10559人が登録された(イソニアジド9684人、リファンピシン875人)。リファンピシンで治療を受けた患者は、ベースラインに併存症がある高齢者が多かった。重症肝障害(入院と治療中断を要する肝障害と定義)のリスクは、リファンピシンよりもイソニアジドのほうが多かった(補正オッズ比2.3、95%信頼区間0.3-16.1)。そのうち2人が肝移植を受け、1人が死亡した。これらは、いずれもイソニアジド群だった。併存症がない患者では、肝障害リスクは低かった(0.1% vs 1.0%)。4R完遂(53.5%)は9H完遂(36.9%)より多かった(補正リスク比1.5、95%信頼区間1.3-1.7)。平均医療費はリファンピシンのほうがイソニアジドより安かった(補正コスト比0.7、95%信頼区間0.5-0.9)。

結論:
 年齢と併存症で補正すると、9Hと比較して4Rのほうが、重症肝障害のリスクと医療費が低く、治療完遂率が高かった。9Hによって重症肝障害の3人は死亡や肝移植の転帰をたどったが、4Rにはそういった症例はなかった。


by otowelt | 2020-03-20 00:53 | 抗酸菌感染症

肺MAC症におけるフルオロキノロン含有レジメンの有効性と安全性

肺MAC症におけるフルオロキノロン含有レジメンの有効性と安全性_e0156318_1611888.png 当院では、フルオロキノロンを肺MAC症に用いる場合、シタフロキサシン(グレースビット®)を用いることが多いです。今回の検討では入っていませんね。
 過去の報告でも、フルオロキノロンは肺MAC症の代替レジメンとして有望であることが示唆されています(J Infect Chemother. 2012 Apr;18(2):146-51.)。シタフロキサシンについては慶應義塾大学のグループから有効性が報告されています(Open Forum Infect Dis. 2019 Mar 7;6(4):ofz108)。

Khadawardi H, et al.
Clinical efficacy and safety of fluoroquinolone containing regimens in patients with Mycobacterium avium complex (MAC) pulmonary disease
European Respiratory Journal 2020; DOI: 10.1183/13993003.01240-2019


方法:
 カナダのトロントにおけるクリニックで2003年7月~2016年12月までの18歳以上の肺MAC症の患者が登録された(ATS/IDSA基準を満たしたもの)。最低でも2ヶ月以上の処方を受けた場合に、投与されたものと定義した。
 後ろ向きに、標準3剤治療(マクロライド-リファマイシン-エタンブトール)またはフルオロキノロン(シプロフロキサシン、モキシフロキサシン、レボフロキサシン)を含有3剤併用レジメンを受けた場合の2群に分けて解析した。

結果:
 300人の肺MAC症の患者がスクリーニングされ、103人が解析基準を満たした。61人が標準治療群、42人がフルオロキノロン含有治療群に該当した。
 フルオロキノロン群になった患者は、リファマイシンの副作用(21%)、リファマイシンの肝障害や薬物相互作用の回避(33%)、エタンブトールの副作用(12%)などが原因であった。
 喀痰培養陰性化率は、標準治療群で64%、フルオロキノロン群で60%であった。それぞれ治療期間中央値は、8ヶ月、10ヶ月だった。
 治療中断に陥った副作用の頻度はフルオロキノロン含有治療群のほうが多かった(19% vs 3%、p=0.008)。
肺MAC症におけるフルオロキノロン含有レジメンの有効性と安全性_e0156318_17195596.png
(文献より改変引用)

結論:
 フルオロキノロンを含む3剤治療レジメンは、おおむねリファマイシンのかわりとして用いられることが多く、副作用は多いものの治療効果は標準治療群と同等である。



by otowelt | 2020-02-18 00:43 | 抗酸菌感染症

メタアナリシス:超多剤耐性結核に対するリネゾリド

メタアナリシス:超多剤耐性結核に対するリネゾリド_e0156318_13423546.png 用量を減らしても効果に問題がないのなら、600mg/日も使いたくないです。

Lifan Z, et al.
Linezolid for the treatment of extensively drug-resistant tuberculosis: a systematic review and meta-analysis
INT J TUBERC LUNG DIS 23(12):1293–1307


セッティング:
 リネゾリドは超多剤耐性結核(XDR-TB)の治療に使用することができる。

目的:
 XDR-TBに対するリネゾリドの効果と安全性に関するエビデンスをアセスメントするため、システマティックレビューおよびメタアナリシスを実施すること。

デザイン:
 MEDLINE@OVID, PubMed, EMBASE, Cochrane Library, Clinical Trials, Sinomed, CMCI, CNKI, VIP, Wanfangのデータベースから、2000年1月から2016年12月まで、XDR-TBに対してリネゾリドを用いたランダム化比較試験、コホート研究、ケースシリーズあるいは症例報告を抽出した。喀痰培養陰性化、治療成功率、副作用の要約推定値が調べられた。結合できなかったデータは、定性的に要約した。結果を統合し、異質性、感度、出版バイアスについて調べた。

結果:
 22研究(302人のXDR-TB患者)が適格基準を満たした。リネゾリドで治療を受けたXDR-TB患者の喀痰培養陰性化は93.2%、治療成功率は67.4%だった。骨髄抑制、末梢神経障害、視神経炎、消化器系副作用はそれぞれ42.5%、26.0%、19.0%、35.0%だった。異質性は、おもにリネゾリドの初期用量(600mg/日以下あるいは600mg/日超)に由来し、高用量の場合骨髄抑制(48.4% vs. 24.8%, P = 0.010)や消化器系副作用(41.3% vs.15.4%, P = 0.100)を起こしやすかった。

結論:
 XDR-TBに対するリネゾリドは有効だが、副作用がよくみられる。初期用量を600mg/日以下にするほうが望ましいだろう。


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by otowelt | 2020-01-28 00:23 | 抗酸菌感染症

結核関連喀血に対するBAEの予後予測因子

結核関連喀血に対するBAEの予後予測因子_e0156318_12475788.png 胸膜肥厚は、非気管支動脈系の血管を巻き込んでいることが多いと考察されています。

Peng Y, et al.
Effect of bronchial artery embolisation on the management of tuberculosis-related haemoptysis
INT J TUBERC LUNG DIS 23(12):1269–1276


目的:
 結核に関連した喀血への気管支動脈塞栓術(BAE)のアウトカムに影響するリスク因子を同定すること。
 
方法:
 2014年3月から2018年8月までに、結核関連喀血の患者207人へBAEがおこなわれた。臨床データがレビューされた。追跡期間は24~1749日の範囲だった。

結果:
 すみやかに止血が得られたのは94.2%だった。顕著な胸膜肥厚(2肋間を超えて3mm以上の肥厚がみられるものと定義)は喀血のリスク因子だった(P = 0.000, オッズ比22.52)。累積無再発率は、1ヶ月後98.5%、3ヶ月後94.8%、6ヶ月後88.7%、12ヶ月後79.9%、24ヶ月後68.5%、36ヶ月後65.7%、48ヶ月後62.7%だった。8人の患者が肺全摘、15人の患者が再BAEを受けた。しかしながら、5人は3度目のBAEまで受けることとなった。Cox回帰分析では、顕著な胸膜肥厚(P = 0.000), 糖尿病(P = 0.018)、肺真菌感染症合併(P = 0.001)は独立した再発のリスク因子だった。BAE後の死亡率は9.2%で、顕著な胸膜肥厚がやはりリスク因子だった(P = 0.000, オッズ比8.14)。
結核関連喀血に対するBAEの予後予測因子_e0156318_12414217.png
(胸膜肥厚ステータス別のKaplan-Meier曲線:文献より引用)

結論:
 結核関連喀血のほんどの例でBAEは有効である。顕著な胸膜肥厚、糖尿病、肺真菌感染症合併はBAEの予後に影響する独立リスク因子だった。肺真菌感染症と糖尿病が良好にマネジメントされれば、顕著な胸膜肥厚に対して適切な外科手術を考慮すべきかもしれない。


by otowelt | 2020-01-27 00:25 | 抗酸菌感染症

メタアナリシス:世界の結核治療成功率

メタアナリシス:世界の結核治療成功率_e0156318_231239.png 研究デザインがごちゃまぜの解析ですが、アメリカの治療成功率がかなり低いですね。

Chaves Torres NM, et al.
Factors predictive of the success of tuberculosis treatment: A systematic review with meta-analysis.
PLoS One. 2019 Dec 27;14(12):e0226507.


目的:
 結核治療の世界的な結果のプール推定値を算出し、TB治療成功の予測因子を分析すること。

方法:
 肺結核の治療結果および結果に影響する因子について報告した、2014年から2019年までに出版された研究を用いた。ランダム効果モデルを用いて、オッズ比と95%信頼区間を算出した。

結果:
 合計151研究が基準を満たした。95が後ろ向きコホート研究、28が横断研究、25が前向きコホート研究、3が症例対照研究だった。成人の研究が91、小児の研究が7だった。また、HIV共感染患者を扱った研究は15で、多剤耐性結核/超多剤耐性結核の研究は15だった。
 成人における薬剤感受性結核の治療成功率は80.1%(95%信頼区間78.4-81.7%)だった。高い異質性(I2=99.8%)が観察されたが、出版バイアスはみられなかった。
 アメリカの治療成功率が最も低く、75.9%だった(95%信頼区間73.8-77.9%)。オセアニアが最も高く、83.9%(95%信頼区間75.2-91.0%)だった。
メタアナリシス:世界の結核治療成功率_e0156318_2310221.png
(世界の結核治療成功率:文献より引用)

 小児では、治療成功率は84.8%(95%信頼区間77.7-90.7%)だった。HIV共感染患者の治療成功率は71.0%(95%信頼区間63.7-77.8%)で、多剤耐性結核では58.4%(95%信頼区間51.4-64.6%)、超多剤耐性結核では27.1%(95%信頼区間12.7-44.5%)だった。
 治療開始2ヶ月後の喀痰抗酸菌塗抹検査が陰性の場合、治療成功率は約3倍高かった(オッズ比2.7、95%信頼区間1.5-4.8)。また、65歳未満の若年(オッズ比2.0、95%信頼区間1.7-2.4)、非飲酒者(オッズ比2.0、95%信頼区間1.6-2.4)、HIV陰性患者(オッズ比1.9、95%信頼区間1.6-2.5)も治療成功率が高かった。

結論:
 世界的に結核の治療成功率は良好だったが、それでもなお85%を下回っている。年齢、性別、アルコール消費量、喫煙、治療開始2ヶ月目の喀痰陰性化、HIV感染症は結核の治療成功に影響を与える。
 

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by otowelt | 2020-01-20 00:28 | 抗酸菌感染症

家庭内のMAC曝露源としてシャワーヘッドは盲点!?

家庭内のMAC曝露源としてシャワーヘッドは盲点!?_e0156318_1611888.png ワシントン大学からの報告です。
 この研究、MACと最終確認できなかった菌もカウントしているため、厳密に検出MACのみに限定するとすべて有意差がなくなっています(抗酸菌が陽性とは言えても、厳密に環境MACの陽性数が少なかったため)。要は「シャワーヘッドにNTMが存在すると、肺MAC症になりやすい」ということが示されたわけです。
 自宅内の水、特に風呂場に存在することが近年ピックアップされています。自宅の水回りにMACが存在することは知られており(J Water Health. 2008;6(2):209-13.)、日本では特に風呂がリスクではないかと考えられてきました。実際、日本ではMACは台所の水道水からは分離されず、浴室内から分離されやすく、これがPFGE法やRFLP法で患者の喀痰分離株と相同性があることも示されています(Clin Infect Dis. 2007; 45:347-351.)。
 気管支拡張症がある中高年は、土壌にも浴室にも注意するしかないのかもしれません。日本人は風呂が好きです。シャワーヘッドだけでなく、浴槽にもNTMが定着している可能性が高いでしょう。海外とは違い、入浴時間が長いため湯気への曝露が大きい。それが肺MAC症罹患のリスク因子になっているとするなら、シャワーヘッドや浴槽の掃除は定期的に行う必要があります。

Tzou CL, et al.
Association between Mycobacterium avium Complex Pulmonary Disease and Mycobacteria in Home Water and Soil: A Case-Control Study.
Ann Am Thorac Soc. 2020 Jan;17(1):57-62.


背景:
 Mycobacterium avium complex (MAC)を含む非結核性抗酸菌(NTM)は、感受性のあるヒトに肺疾患を起こす病原微生物である。家庭での潜在的な暴露源には、蛇口やシャワーヘッドなどの使用場所の水源、園芸土壌が含まれる。これらの家庭環境におけるNTMのヒト健康への影響は、よく理解されていない。

目的:
 この研究では、肺MAC症と家庭の水使用場所5ヶ所におけるNTM定着の関連性を調べた。

方法:
 肺MAC症と診断されたワシントン州およびオレゴン州の住民、および年齢・性別・居住地でマッチしたコントロール集団(ランダム・デジット・ダイヤリング[Random Digit Dialing]で登録)において実施された症例対照研究である。
 検体サンプルは、肺MAC症患者およびコントロール集団の浴室の蛇口、台所の蛇口、シャワーエアロゾル、屋内土壌、屋外土壌の5か所から採取された。シャワーを使わない場合、普段の入浴条件に近い状況を作り出してもらい、しかるべき場所から抗酸菌検体を採取した(検体採取のフェーズにかなり時間をかけた研究であるが詳しい手順は割愛させていただく)。環境抗酸菌は、PCRを併用した培養を用いて盲検的に調べられた。
 肺MAC症患者の自宅から得られたNTM(N=56)、コントロール集団の自宅から得られたNTM(N=51)について、潜在的な交絡変数で補正した条件付きロジスティック回帰モデルを使用して定量的に比較した。

結果:
 肺MAC症患者の自宅のシャワーエアロゾルからは、コントロール集団の自宅よりもNTMが分離されやすかった。補正条件付きロジスティック回帰分析によれば、シャワーエアロゾルから分離されたNTMは、患者の疾患と関連するオッズ比が高かった(オッズ比4.0、95%信頼区間1.2-13)。その他の自宅環境サンプル(水道水、土壌)ではこの関連性は明らかでなかった。
家庭内のMAC曝露源としてシャワーヘッドは盲点!?_e0156318_1529957.png

結論:
 この研究では、シャワーのエアロゾルが家庭でのNTM暴露の非常に重要な発生源であることを示している。


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by otowelt | 2019-12-29 00:09 | 抗酸菌感染症

Mycobacteroides abscessusに対するチゲサイクリン

Mycobacteroides abscessusに対するチゲサイクリン_e0156318_2257030.png 本当に効いているのだろうか・・・。

Kwon YS, et al.
Efficacy and safety of tigecycline for Mycobacterium abscessus disease.
Respir Med. 2019 Oct 8;158:89-91.


目的:
 Mycobacteroides abscessusは、抗酸菌感染症の中でももっとも治療困難で、通常の抗菌薬に耐性を示すことが知られている。この研究の目的は、同菌に対するチゲサイクリンの効果と安全性を評価することである。

方法:
 National Jewish Healthにおいて2009年1月から2019年12月までにチゲサイクリンの投与を受けたM. abscessus感染症の患者を抽出した。

結果:
 35人が同定され、肺疾患がもっともよくみられた(29人、82.9%)。チゲサイクリンを投与された患者のうち、17.4%で微生物学的な改善(2回連続喀痰培養陰性)がみられ86.2%で症状の改善がみられ、59.3%で放射線学的な改善がみられた。副作用によるチゲサイクリンの減量ないし中止は、57.1%にみられた(中央値56.5日、IQR10.8-122.3日)。もっともよくみられた副作用は、悪心、嘔吐、下痢といった消化器症状であった。

結論:
 M. abscessusに対するチゲサイクリン含有レジメンは、症状や放射線学的を高い頻度で改善させるが、微生物学的な効果は不良であり、副作用が多かった。選択された患者ではこの抗菌薬を注意深く用いてもよいかもしれない。




by otowelt | 2019-12-06 00:06 | 抗酸菌感染症

Mycobacterium triplex感染症の臨床的特徴

Mycobacterium triplex感染症の臨床的特徴_e0156318_1611888.png このコホートでは16年間で53人であり、極めてまれな菌種のようです。私も診たことはありません。

Gibson J, et al.
The clinical significance of Mycobacterium triplex.
Respir Med. 2019 Nov 4;159:105808. doi: 10.1016/j.rmed.2019.105808.


目的:
 Mycobacterium triplexは遅発育非結核性抗酸菌(NTM)であり、ヒトでまれに検出される。その病原性や自然経過については不明である。この研究の目的は、当該感染症の将来的なマネジメントに役立てるため、オーストラリアのクイーンランドにおいて同定されたM. triplexの臨床的特徴、アウトカム、薬剤感受性を調べた。

方法:
 この後ろ向き研究において、2000年1月1日から2016年12月31日までにオーストラリアのクイーンランドで同定されたM. triplexに感染した全患者を登録した。診療録から臨床情報を得て、その臨床的有意性、自然経過、治療アウトカム、薬剤感受性を調べた。

結果:
 53人(男性21人)がM. triplex培養陽性だった。39人の患者が肺検体、17人(43.6%)がATS基準で肺NTM症と診断された。6人の患者が抗菌薬治療を受け、5人で治療成功した。4人の病変は肺外にあり、外科的マネジメントと抗菌薬により治療された。薬剤感受性試験では、93%の培養陽性例でマクロライド感受性だった。

結論:
 これはM. triplexのもっとも大規模なケースシリーズであり、ヒトへの病原性はまれである。肺外病変は外科的マネジメントで良好に治療できた。M. triplexに対する最適治療については不明であるが、薬剤感受性試験ではマクロライド耐性はまれであり、マクロライドを治療レジメンに加えべきと考える。


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by otowelt | 2019-11-28 00:37 | 抗酸菌感染症

IPFにおける肺結核の臨床的特徴

IPFにおける肺結核の臨床的特徴_e0156318_9552565.jpg 当院でも時に経験しますが、なかなか発見が難しいです。個人的には10~20例ほど経験したことがあり、ステロイドが継続的に入っているケースが多かったです。

Lee YH, et al.
Clinical and radiological features of pulmonary tuberculosis in patients with idiopathic pulmonary fibrosis
Respiratory Investigation, https://doi.org/10.1016/j.resinv.2019.08.001


背景:
 特発性肺線維症(IPF)患者における肺結核の放射線学的および臨床的特徴に関するデータは限られている。そのため、この研究ではIPF患者における肺結核の臨床的・放射線学的特徴を調べることを目的とした。

方法:
 韓国の慶北大学校病院において、IPF患者、非IPF患者の両集団で肺結核の臨床的・放射線学的因子を後ろ向きに比較した(2001年1月から2017年9月にIPFと診断された症例)。胸部CT所見について、IPF+結核患者と非IPF+肺非結核性抗酸菌症患者の2群で比較した。

結果:
 609人のIPF患者のうち、28人(4.6%)が肺結核と診断された。IPFの肺結核患者では、偶発的に放射線学的異常を指摘されるという経緯が最も多く、IPF診断時に半数が同定された。そのほかは、IPFの経過中に肺結核を発症することが多かった。IPF診断から肺結核発症までの期間中央値は1.5ヶ月だった。IPF診断後に肺結核と診断された13人のうち、6人(46.1%)がステロイドあるいは免疫抑制剤治療中に肺結核を発症した。
 IPFの肺結核の治療成功率は、非IPFの肺結核より有意に低かった。結核菌の薬剤感受性には、IPF-非IPF間で差はなかった。
 胸部CT写真は、IPFの肺結核患者では、非IPFの肺結核患者よりも、既存の結核病巣の再活性化の頻度が低かった。IPFの肺結核患者では、小葉中心性結節が少なく、コンソリデーション主体の陰影が多かった。IPFの肺結核患者とIPFの肺非結核性抗酸菌症患者では、画像所見は同様だった。コンソリデーションは、蜂巣肺にオーバーラップして存在することが多かった。
IPFにおける肺結核の臨床的特徴_e0156318_1363695.png
(IPFの肺結核患者と非IPFの肺結核患者の画像所見の違い:文献より引用)

結論:
 IPF患者における肺結核は、偶発的に胸部画像異常を指摘されて発見されることが多い。画像所見は通常とは異なり、アウトカムも不良である。





by otowelt | 2019-11-18 00:52 | 抗酸菌感染症