カテゴリ:抗酸菌感染症( 159 )

国際的に結核治療の知識は不足

日本でもたまに不適切なレジメンでスタートして
紹介してこられる先生もおられるが、
海外に至っては保健所指導などの介入も乏しいため
不適切治療は氾濫していることだろう。

Marieke J. van der Werf, et al.
Knowledge of tuberculosis-treatment prescription of health workers: a systematic review
Eur Respir J 2012; 39: 1248–1255


背景:
 不適切な治療レジメンによる結核治療は、治療失敗、ひいては多剤耐性を生む。
 システマティックレビューにより、適切な結核治療レジメンの知識がすべての
 ヘルスケアワーカーたちに浸透しているかどうか評価した。

方法:
 2011年1月に、MEDLINE, EMBASE、その他のデータベースにおいて
 信頼性のある論文記事を選択した。結核治療の知識について
 ヘルスケアワーカーを評価した観察研究が選ばれた。
 もしWHOの推奨と異なる場合は、治療レジメン、薬物用量、治療期間について
 不適切であると判断した。

結果:
 1896の試験のうち、31の試験が登録された(14カ国)。
 ヨーロッパでおこなわれた試験はなかった。
 すべての試験において、ヘルスケアワーカーは治療レジメンについて
 不適切な知識のものがおり(8–100%)、あるいは治療期間についても
 不適切なものがいた(5–99%)。細かいデータを記載したスタディでは
 ヘルスケアワーカーは、多すぎる薬剤、長すぎる治療によるレジメンが
 主に報告されていた。ほとんどのスタディにおいて、適切な用量についての
 知識は不十分であった。

結論:
 国際的な結核治療レジメンの知識浸透は不十分である。
 これに携わる国々は、この点につき厳重に注意すべきである。

by otowelt | 2012-05-01 07:10 | 抗酸菌感染症

HIV感染症における肺結核の画像所見

・HIV感染者の肺結核の画像所見
 肺結核を発症した患者、特に粟粒結核を発症して入院した患者さんの
 中には、時にHIV感染症を有する患者がおられる。
 いわゆる”いきなりAIDS”と呼ばれる病態である。
 HIV感染者の肺結核の画像所見は、免疫機能の強さによってまちまち
 であるが、CD4陽性リンパ球が200/μLをカットオフ値として
 画像所見も変化すると考えられており、それが低い場合は
 非典型的な肺結核画像所見をとることが多いとされている。
 具体的には、リンパ節主体の病変や多発性浸潤影などであり、
 前述のように粟粒結核の頻度も高くなる。
Leung AN, et al. Pulmonary tuberculosis: comparison of CT findings in HIV-seropositive and HIV-seronegative patients. Radiology 198: 687-691, 1996.

・リンパ節
 リンパ節は中心に壊死や活動性病変を示唆する低吸収域が観察
 されるが、特異度は高くない。
Hartman TE, et al. Diagnosis of thoracic complications in AIDS: accuracy of CT. AJR 162; 547-553, 1994.
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 しかしながら、肺内に陰影がみられずリンパ節のみの病変を呈する
 ことがあるため、AIDS患者における発熱においては
 結核の精査のために縦隔リンパ節の確認を行うべきであろう。
 CD4陽性リンパ球が200/μL未満の場合、21%の症例において
 レントゲンで異常所見が指摘できないとされている。
Greenberg SD, et al. Active pulmonary tuberculosis in patient with AIDS: spectrum of radiographic findings. Radiology 193; 115-119. 194.

・肺内
 気道周囲の散布影が特徴的といわれている肺結核だが、
 AIDSにおいては気道周囲の陰影はむしろ少ない。
 空洞病変については多いという報告もあれば少ないという報告も
 あるため、現時点では結論はでていない。
David C. Perlman, et al.Variation of Chest Radiographic Patterns in Pulmonary Tuberculosis by Degree of Human Immunodeficiency Virus–Related Immunosuppression. Clinical Infectious Diseases 1997;25:242–6
 免疫正常者と異なる点はそれ以外にも、肺の中下葉に比較的多いこと、
 胸水貯留をみられることが多いこと、粟粒結核所見がみられやすいこと、
 両肺にみられることが多いこと、などが挙げられる。
Burman WJ, et al. Clinical and radiographic features of HIV-related tuberculosis. Semin Respir Infect 18; 263-271, 2003.
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 粟粒結核のみに絞ると、HIV感染者における所見は
 陰性者と比べると、小葉間隔壁肥厚(p = 0.017),
 壊死性リンパ節病変(p = 0.005)、胸郭外病変(p = 0.040)が
 有意に多く、結節は小さいものが多かった(p = 0.031)。
Kim JY, et al. Miliary tuberculosis: a comparison of CT findings in HIV-seropositive and HIV-seronegative patients. Br J Radiol. 2010 Mar;83(987):206-11.
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文責"倉原優"

by otowelt | 2012-04-29 23:51 | 抗酸菌感染症

ピラジナミド耐性結核は全剤感受性結核よりも予後不良

12.6%でアウトカム情報が得られなかったのはなぜだろう…。

Yee, D. P, et al.
Clinical outcomes of pyrazinamide-monoresistant Mycobacterium tuberculosis in Quebec
The International Journal of Tuberculosis and Lung Disease, Volume 16, Number 5, 1 May 2012 , pp. 604-609(6)


背景:
 ケベックにおいて全結核のうち6.2%がピラジナミド単独耐性(PZAMR)
 である。PZAMRの臨床的重要性についてはよくわかっていない。
 
方法:
 カナダ生まれの患者で、1990年1月から2000年12月の間に
 PZAMR結核と診断された患者を、過去の報告におけるカナダ生まれの
 同時期の全剤感受性結核患者と比較する。
 
結果:
 318人の患者が登録され、40人(12.6%)でアウトカム情報が
 得られなかった。平均治療期間はPZAMRおよび全剤感受性結核において
 それぞれ9.0ヶ月、8.9ヶ月であった。91%のPZAMR結核、89%の
 全剤感受性結核においてリファンピシンを含めた治療を最低6ヶ月受けた。
 PZAMR患者67人のうち、51人(76%)が治癒し、3 人(4%) が再発、
 治療失敗はおらず、16人(24%)が診断6ヶ月以内に死亡した。
 全剤感受性結核211人のうち、181人(86%)が治癒し、2人(1%)が再発、
 2人(1%)が治療失敗、30人(14%)が診断6ヶ月以内に死亡した。
 PZAMR結核は全剤感受性結核と比較して、臨床アウトカムの成功に対する
 オッズ比を低下させた(OR 0.4, 95%CI 0.2-0.8)。

結論:
 PZAMR結核は、全剤感受性結核株よりも有意に予後不良である。

by otowelt | 2012-04-26 13:22 | 抗酸菌感染症

MDR-TBにおける肝機能障害と予後との関連

Keshavjee, S, et al.
Hepatotoxicity during treatment for multidrug-resistant tuberculosis: occurrence, management and outcome
The International Journal of Tuberculosis and Lung Disease, Volume 16, Number 5, 1 May 2012 , pp. 596-603(8)


セッティング:
 ロシアのTomskにおける多剤耐性結核(MDR-TB)治療プログラム

目的:
 MDR-TB治療における肝機能障害のマネジメントを記載し、
 これによる治療アウトカムへの影響を考察する。

デザイン:
 608人の患者におけるレトロスペクティブの症例シリーズ

結果:
 アメリカ胸部学会2006年の定義による肝機能障害が
 568人のうち91人(16.5%)にみられた。最初の肝機能障害イベントが
 みられた中央時間は196日目であった。ベースラインの因子が
 肝機能障害と相関しており、ALT/AST/ビリルビン上昇
 (OR 53.9, 95%CI 6.30-438.7),
 腎機能障害(OR 19.6, 95%CI 2.71-141.6)がそれに寄与した。
 治療アドヒアランスの高さ(OR 3.25, 95%CI 2.07-5.09)および
 刑務所内での治療開始(OR 1.77, 95%CI 1.04-3.01)は
 治療成功と関連していた。喫煙(OR 0.44, 95%CI 0.21-0.92)、
 両肺空洞陰影(OR 0.51, 95%CI 0.34-0.77) は転帰不良と
 関連していた。アルコール常用者において、肝機能障害は
 健常者よりも良好なアウトカムと関連していた(OR 4.40, 95%CI 1.79-10.81 vs
 OR 0.42, 95%CI 0.25-0.68)。91人中10人において
 1つ以上の薬剤が永続的に中止されたが、治療中断例はなかった。

結論:
 肝機能障害のみられたMDR-TB治療は、統計学的に有意な
 転帰不良とは関連しないと考えられる。

by otowelt | 2012-04-26 13:04 | 抗酸菌感染症

結核治療における不適切処方は多い

これはAbstractしか読んでないので、
スタディの抽出の流れが妥当なのかよくわかりません。

M.W. Langendam, et al.
Prevalence of inappropriate tuberculosis treatment regimens: a systematic review
Eur Respir J 2012; 39: 1012–1020


背景:
 新規抗結核薬の成功の裏では、その耐性獲得が懸念されるところである。
 WHO治療ガイドラインで推奨されているような適切なレジメンを使用を
 使用することで、耐性は予防できる。
 われわれは、不適切な抗結核薬処方の頻度を調べるため
 システマティックレビューをおこなった。

方法:
 MEDLINE, EMBASE、他のデータベースから2011年1月時点で信頼性のある
 記事を抽出した。2000年から出版されたTB治療を受けた患者を含む観察研究が
 選ばれた。治療レジメンのうちWHOが推奨しているレジメンではないものを
 不適切なものとした。

結果:
 不適切なレジメンを受けた患者の割合は、
 0.4%から100%と非常にバラつきがあった。
 19の試験において、治療レジメン報告のクオリティは低かった。
 不適切治療のアセスメントは報告クオリティの低さに阻まれたものの
 われわれのデータでは、結核治療レジメンにおける不適切処方の数は
 相当数にのぼることが示唆された。そのため、新規薬剤が不適切に
 使用される可能性が示唆され、いくらWHO治療ガイドラインがあろうとも
 耐性化リスクは高いと考えられる。

結論:
 この論文はWHOの結核治療ガイドラインの遂行の改善必要性を
 うったえかけるものである。

by otowelt | 2012-04-03 04:26 | 抗酸菌感染症

結核診断における気管支鏡後の喀痰の有用性

夏に発表されて議論を呼んだ論文。
11月に掲載されていたようだ。
「気管支鏡によって気管支をこじあけたから」という
まことしやかなウワサが呼吸器内科医の間にはあるが
実際のところはどうなのか…。

George PM, et al.
Post-bronchoscopy sputum: improving the diagnostic yield in smear negative pulmonary TB.
Respir Med. 2011 Nov;105(11):1726-31.


背景:
 抗酸菌塗抹が陰性あるいは喀痰が出ない患者で
 活動性肺結核を疑われる場合は気管支鏡を施行する。
 しかしながら、気管支鏡後の喀痰採取はルーチンには施行していない。
 このスタディは、気管支鏡後喀痰の潜在的診断能について
 評価したものである。

方法:
 ロンドン大学病院で2004年1月から2010年12月までに
 微生物学的に活動性肺結核と診断された患者を
 レトロスペクティブに調査。塗抹陰性あるいは喀痰が出ない患者で
 気管支鏡後7日以内に採取できた喀痰を登録した。
 
結果:
 236人が塗抹陰性の活動性結核と微生物学的に診断され、57人が
 スタディに組み込まれている。15人(26.3%)はHIVに感染しており、
 19人(33.3%)が気管支鏡後に塗抹陽性化がみられ、5人(8.8%) は
 気管支鏡後喀痰においてのみ排他的に塗抹陽性であった。
 気管支鏡後喀痰の43人(75.4%)で培養陽性であり、4人(7.0%) は
 気管支鏡後喀痰においてのみ排他的に培養陽性であった。

結論:
 気管支鏡後喀痰は結核診断における迅速な手法となりうる。
 このコホートでは、結核菌培養陽性は気管支鏡後喀痰検査を通して
 7%の上昇がみられた。このスタディによれば、検査後に3分の1以上の
 患者が感染性を有するため感染制御上も重要なものである。

by otowelt | 2011-12-15 14:01 | 抗酸菌感染症

LTBIに対する3ヵ月のリファペンチン+イソニアジドは9ヶ月イソニアジドに非劣性

T.R. Sterling, et al.
Three Months of Rifapentine and Isoniazid for Latent Tuberculosis Infection
N Engl J Med 2011; 365:2155-2166


背景:
 潜在性結核菌感染(LTBI)に対する治療は
 結核のコントロールと撲滅に必要不可欠である。
 現時点での標準レジメンである9ヵ月のイソニアジド投与は有効だが
 毒性と低い治療完遂率によってその効果は制限されている。

方法:
 結核リスクの高いヒトを対象に、直接的監視による3ヵ月の
 リファペンチン(900 mg)+イソニアジド(900 mg)の
 週1回投与(併用群)あるいは自己管理による9ヵ月の
 イソニアジド(300 mg)の1日1回投与(イソニアジド単独群)を比較。
 プライマリエンドポイントは結核の確定とした。

結果:
 ITT解析において結核を発症したのは併用群3986例中7例
 (累積発症0.19%)、イソニアジド単独群3745例中15例
 (累積発症0.43%)で、差は0.24%ポイントであった。
 治療完遂率は併用群82.1%、イソニアジド単独群69.0%
 であった(P<0.001)。有害事象により投与中止となった比率は
 併用群4.9%、イソニアジド単独群3.7%(P=0.009)。
 薬剤性肝障害発生率は、それぞれ0.4%、2.7%(P<0.001)。

結論:
 3ヵ月リファペンチン+イソニアジド投与は
 LTBIにおいて9ヵ月イソニアジド単独投与と同程度に有効で
 なおかつ治療完遂率は高い。

by otowelt | 2011-12-11 16:20 | 抗酸菌感染症

LTBIに対する12-dose regimenのCDCからの推奨

木曜日、LTBIに対する治療でCDCから
12-dose regimen:週1回3ヵ月HRを推奨するとに正式に発表された。
NEJMからの報告を受けての決定である。
現状のLTBIは、血液検査などチェックしながらの外来通院であるため
臨床医にとっては、短い方が助かるといえば助かる。

The Centers for Disease Control and Prevention (CDC) unveiled new guidelines Thursday for the treatment of latent tuberculosis infection (LTBI) in the U.S. with a 12-dose regimen, administered once-weekly under directly observed therapy (DOT). The current regimen requires daily drug administration over nine months, making the new treatment simpler and easier for patients.

by otowelt | 2011-12-09 07:35 | 抗酸菌感染症

結核患者におけるアベロックス長期投与データ

モキシフロキサシンは、抗結核薬のキノロンとしては
かなり強力なのは言わずもがなである。
現状として、当院ではファーストチョイスのキノロンとしては
レボフロキサシンを使用している。

A.D. Pranger, et al. Evaluation of moxifloxacin for the treatment of tuberculosis: 3 years of experience
Eur Respir J 2011; 38: 888–894


 レトロスペクティブスタディ。
 結核治療においてMFX400mg/dayを内服した
 Tuberculosis Centre Beatrixoord, University Medical
 Centre Groningen (Haren, the Netherlands)の患者
 (2006年1月1日から2009年1月1日まで)

 安全性については、血中24 時間AUC( AUC0―24h)と
 最小発育阻止濃度(MIC)の比(AUC/MIC)とした。

 89人の患者が中央値で6.9mg/kgのMFX1日1回で74日間治療。
 薬物動態的解析でAUC0-24/MICが100未満であったものは
 解析可能であった16人中8人。
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by otowelt | 2011-10-03 17:44 | 抗酸菌感染症

縦隔内リンパ節腫大に対する結核診断にEBUS-TBNAは有用

Neal Navani, et al. Utility of endobronchial ultrasound-guided transbronchial needle aspiration in patients with tuberculous intrathoracic lymphadenopathy: a multicentre study
Thorax 2011;66:889-893


背景:
 EBUS-TBNA:Endobronchial ultrasound-guided
 transbronchial needle aspirationは、肺癌診断において重要な
 ツールになったが、結核の縦隔内リンパ節診断の役割は
 確立されていない。このスタディの目的は、EBUS-TBNAを結核による
 縦隔リンパ節腫大の診断に有用かどうかを調べたものである。

方法:
 156人の連続した患者で結核による縦隔内リンパ節腫脹がみられる
 ものをスタディに登録し、4施設で2年以上にわたり調査した。
 最低でも6ヵ月の抗結核治療後フォローアップがあり、診断が確定されており
 臨床的・放射線学的反応がみられたものをスタディに登録している。
 全患者は、CTをEBUS-TBNA前に施行している。

結果:
 EBUS-TBNAは、146人の患者においてTB診断ができた
 (94%; 95% CI 88% to 97%)。病理学的所見は 
 134人(86%)で結核に合致していた。微生物学的な所見としては
 74人(47%)の患者で結核培養陽性であり、陽性までの中央日数は
 16日であった(range 3-84)。8人が薬剤耐性であった(5%)。
 10人(6%)は、EBUSにおいて特異的な診断所見が得られず
 4人は縦隔鏡を施行し、結核と診断された。6人は、経験的に
 結核治療に踏み切って、反応がみられた。入院を要する合併症は
 1人にみられた。

結論:
 EBUS-TBNAは、縦隔リンパ節腫大のある結核の診断において
 安全かつ効果的な方法である。

by otowelt | 2011-09-26 09:42 | 抗酸菌感染症