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クオンティフェロンTBについて


※クオンティフェロンTBはここでは、QFT-2Gのことを指すものとする。

・クオンティフェロンの原理
 人が結核菌に感染すると、体内のTリンパ球がその情報を記憶して
 再び結核菌あるいは結核菌と同様な抗原が体内に侵入した時に、
 インターフェロンγを産生する。QFTでは結核菌に特異的な
 ESAT-6(1995年に発見)、CFP-10(1998年に発見)という蛋白を抗原とし、
 これらを全血に添加して血液中のエフェクターTリンパ球(感作白血球)を刺激し
 その結果放出されるインターフェロンγ(以下IFN-γ)を定量する。
 実際のQFT検査においては,刺激抗原はこれらの蛋白そのものでなく
 各々の蛋白を構成する重複合成ポリペプチドの抗原性の強い部分をいくつか
 確認し(ESAT-6では7個,CFP-10では6個)、それを混合して用いている。
 IFN-γの定量は、サンドイッチ免疫酵素法(ELISA)で行う。
 特異蛋白は結核菌群に含まれるすべてのMycobacterium tuberculosis株、
 病原性M. bovis株およびM. africanumから分泌される。
 一般的に遭遇する非結核性抗酸菌のうちM. kansasii,M. marinum,M. szulgai,
 M. flavescens,M. gastriおよびハンセン病の原因菌であるM. lepraeからも
 分泌される。
一方,全てのM. bovis BCGワクチン亜株をはじめ、日本における
 非結核性抗酸菌症中もっとも多い原因菌種であるM. avium,M. intracellulare
 には存在しない。
                 J Immunol 1995; 154: 3359-3372.
                 Microbiology 1998; 144(Pt 11): 3195-3023.


・感度・特異度
 QFTの感度は89.0%、特異度は98.1%(Moriらによる看護学生のstudy)
               Am J Respir Crit Care Med. 2004; 170: 59-64.
 M.kansasiiなどいくつかの非結核性抗酸菌もESAT-6, CFP-10を分泌する。
 kansasii症患者においてもQFT陽性となる。
 検査上の問題で、5%以上の溶血がみられる検体を用いた場合
 偽陽性となる可能性が高い。

・ESAT-6、CFP-10の判定
 陽性コントロールとしてmitogen (PHA) を添付している。
 ESAT-6またはCFP-10の値 (判定にはESAT-6, CFP-10のうち, 高値を採択)
 が0.35 IU/mL未満であってもmitogenの値が0.5 IU/mL未満であった検体は
 免疫不全などが考えられる。そのため、判定不可となる。
 陽性規準とは別に0.10 IU/mLを「判定保留(疑陽性)」基準がある。
 あらかじめ状況証拠などから感染を受けている確率が大きい被験者において
 測定値が0.35 IU/mLには達しないがこの値あるいはそれを超える場合には
 「既感染」として対応することが望ましいことに即して設定されている。

・QFT-GとQFT-2G
 クオンティフェロンゴールド(QFT-G)はQFT-2Gの弱点を解決し
 感度も向上していることから今後急速に広まることが予想される。
 QFT-GとQFT-2Gの異なる点は大きく2点有り、一つはQFT-2Gに用いられて
 いるESAT-6とCFP-10に加え、さらに結核菌特異抗原TB7.7 (Rv2654)
 の合成ペプチドが新たに添加されていることである。もう一点は
 QFT-2Gでは血液検体を培養プレートに1mlずつ4ウエルに分注し抗原を加える
 必要があるが、QFT-Gでは採血に3本1組の専用1ml採血管を用い
 1本の採血管には上記の結核菌特異抗原が一緒に入れられている。
 他の2本の採血管はそれぞれ陰性および陽性コントロールである。
                J. Infect. Dis 2004; 189: 812-819.

 QFT-2Gの感度81.4%に比較しQFT-Gの感度は92.6%と有意に高く
 さらに特異度は共に98.8%であった。
                  J. Infection 2008; 56: 348-353.

by otowelt | 2009-11-05 16:48 | レクチャー

Complex sleep apnea syndrome


Comp SASはまだ確立した概念ではないが、
呼吸器内科医としては知っておくべきと思ったので。

・Complex sleep apnea syndromeとは
 閉塞型睡眠時無呼吸症候群(Obstructive sleep apnea syndrome;OSAS)
 に対する持続的陽圧呼吸療法(CPAP)の有用性は確立しているが、
 中枢型睡眠時無呼吸症候群(Central sleep apnea syndrome;CSAS)に対する
 治療法はまだ確立していない。OSAS に対するCPAP導入で、閉塞型無呼吸は
 改善しても中枢型無呼吸が顕著になる報告が相次いでおり、
 Complex sleep apnea syndrome(Comp SAS)と呼ばれている。
 「Comp SAS is defined by the emergence of problematic CSA and
 Cheyne-Stokes respiration with CPAP application sufficient to
 eliminate obstructive apneas and hypopneas」
                  Sleep 2006 ; 29 : 1203―1209.

 KuzniarらはComp SAS 患者の中で、BMI が高値(平均34.2kg/m2)で
 自覚症状が軽度な患者群がCPAP 療法に良好な効果が期待できるresponderとした。
                   Sleep Breath 2008 ; 12 : 135―139.

・診断
 CPAP 療法の導入により閉塞性の無呼吸と低呼吸を十分に解消した状態で
 問題となるCA が毎時5 回以上残存する、またはチェーン・ストークス呼吸が
 問題となる場合にCompSAS を考える。

・治療
 CPAP+O2、NPPV、BiPAP-S/T、ASVなどが有効とされる。
 特にASV による治療が最も効果的である。
              Sleep 2007 ; 30 : 468―475.

・ASV
 ASV は従来のBiPAP と同様にIPAPとEPAPを設定でき、更にバックアップ
 換気の回数を設定することができる。その際にIPAP の最大と最小を設定し
 直前の呼吸フローから計算し供給圧を自動的に変動させる人工呼吸器である。

by otowelt | 2009-11-04 13:39 | レクチャー

pulmonary veno-occlusive disease(PVOD)


・pulmonary veno-occlusive diseaseとは
PVOD は1966 年Heathらによって命名された、肺高血圧を来たす疾患である。
正確な頻度は不明であるが、臨床的に原発性肺高血圧症の約10%を占める。
ベニスシンポジウムではPVOD や肺毛細血管腫症もそれのみでは
動脈病変を説明しきれないとの意見のため、肺動脈性高血圧の範疇に含められた。

・原因
本症の病因は不明。
HIVウイルス、EBウイルス、骨髄移植、放射線治療、ブレオマイシン、
フルオロウラシル、SLE などの自己免疫疾患との関連が報告されている。

・画像
胸部CT において小葉間隔壁の肥厚、粒状斑状の多発性すりガラス陰影、
胸水、肺動脈の拡張が特徴的。
小葉中心性の分布を示す粒状斑状のすりガラス陰影、小葉間隔壁の肥厚、
リンパ節腫大はIPAHに比べ有意に頻度が高い。
pulmonary veno-occlusive disease(PVOD)_e0156318_13255717.jpg


・診断
PVOD の古典的な診断の三徴候として
①肺動脈高血圧
②胸部画像上肺水腫
③正常肺動脈楔入圧
が挙げられてきたが、実際には三徴候全てが揃わず、早期確定診断が困難である。
厳密な診断にはVATSによる病理組織が必要だが、実際には剖検によって
明らかになるケースが多い。

・治療
本症に対する治療として血管拡張剤の効果は定まっていない。
肺静脈性肺高血圧に対しては肺動脈が拡張する一方で
肺静脈が拡張せず毛細血管静脈圧が上昇し急激な肺水腫を来たす可能性が
報告されている。ゆえに血管拡張剤の投与を禁忌とする意見もある。
肺移植以外に決定的な治療がないため、
厳密な観察下で使用されているのが現状である。

・予後
PVOD の予後は診断後2 年以内に死亡することが多い。

by otowelt | 2009-11-04 13:25 | レクチャー

ばち指の定義

●ばち指
 慢性に経過する呼吸器疾患でよくみられるが、消化器疾患・循環器疾患でも
 みられることがしばしばある。1938年にLoviboundにより診断基準が
 提唱され、それが今でも使われている。
 他にもphalangeal depth ratio、Schamroth signなどがある。

 
ばち指の定義_e0156318_1039048.jpg

by otowelt | 2009-11-01 10:40 | レクチャー

びまん性嚥下性細気管支炎Diffuse aspiration bronchiolitis (DAB)

・DABの歴史
 1978年、山中らがびまん性汎細気管支炎(DPB)に似た肉眼・組織所見を呈するものを
 誤嚥性DPBと記述。福地らがDPBとは異なる疾患としてDABの名称を提唱した。
                    日胸疾会誌 1989; 27: 571-577

・臨床像
 基本的に嚥下性肺炎と同様である。
 急性ではなく慢性の経過であることが異なる。
 異物を繰り返し誤嚥することにより引き起こされた細気管支の慢性炎症性反応。
                       Chest 1996; 110: 1289-1293
 嚥下性肺炎は高齢者に多い。DABは、通常の嚥下性肺炎と比べ突然の発症は少なく
 比較的潜行性と表現され、喀痰・咳は比較的軽度、発熱を伴わない例もみられる。
 炎症反応の上昇も比較的軽度にとどまることが多いとされている。
 多くは多量の誤嚥や嘔吐のエピソードがなく、微量の口腔内の誤嚥の反復が原因と
 考えられており、当然ながら高齢者や寝たきりの患者に多い。
 
・画像
 以下の3点が重要

 小葉中心性結節影(with tree in bud)
 びまん性の分布 (必ずしも下肺野優位ではない)
 末梢肺の過膨脹がない (DPBとの鑑別)


 画像ではDPBと同じく小葉中心性粒状影が主要な所見であるため、DPBらしい陰影を
 みたときにはDABも必ず考慮すべきである。小葉中心性陰影を呈した553例のHRCT
 所見を検討すると、DABは13例みられた。そのうちの12例は
 centrilobular nodules with tree-in-bud appearanceを呈した。
                Chest 2007; 132: 1939-1948
びまん性嚥下性細気管支炎Diffuse aspiration bronchiolitis (DAB)_e0156318_23435431.gif

・DPBとDABの違い
 DABの小葉中心性粒状影の分布は、下肺野で比較的限局する傾向がある。
 組織学的には細気管支壁へのリンパ組織球の浸潤を主体とし一部泡沫マクロファージ
 を混在する慢性炎症が特徴で、細気管支内異物やそれに関連した巨細胞がみられる。 
 
・嚥下性肺炎とDABの細菌学的な差
 喀痰細菌学的検討で、嚥下性肺炎ではS. pneumoniae、Enterococcusが多い。
 DABではK. pneumoniae、P. aeruginosaが50%にみられた。
 急性と慢性の差なので、あまり重要視しなくてよさそうだが・・・
                      日胸疾会誌 1989; 27: 571-577

・DABの治療
 誤嚥の防止と気道感染のコントロール
 嚥下性肺炎に準じた抗菌薬投与

by otowelt | 2009-10-27 23:40 | レクチャー

酸素投与で二酸化炭素が蓄積する理由


CO2ナルコーシスの患者に大量の酸素投与を行うと
さらなる高二酸化炭素血症を引き起こすことは知られているが、
私たち呼吸器内科の一般診療でもCOPD急性増悪患者では
酸素投与をなるだけ控えるようにしている。

あまり知られていないのが、
なぜ酸素投与で二酸化炭素が蓄積するかという医学的根拠である。
酸素吸入によるPaCO2の増加に関しては、その成因をめぐっては議論がある。
これはさまざまな原因が考えられている。
Malhotra A, Schwartz DR, et al: Treatment of oxygen-induced hypercapnia. Lancet 2001; 357:884-5

①二酸化炭素感受性の低下
 中枢神経系の二酸化炭素感受性が低下している場合、
 低酸素の刺激により呼吸が維持されているため、酸素吸入により
 低酸素の刺激が消失すると、二酸化炭素感受性が低下している
 状態であるため、PaCO2が上昇する。

②睡眠
 増悪時の低酸素血症による不眠が酸素吸入による改善に伴って改善し、
 入眠による低換気のためにさらに二酸化炭素血症が悪化する。

③二酸化炭素排出の減少
 低VA/Qユニットで、酸素吸入による肺胞O2の増加により
 低酸素性肺血管攣縮(hypooxic vasoconstriction)が解除され、
 血流が増加し、高い低VA/Qユニットの血流は低下し、二酸化炭素の排出が減少。

④Haldane効果
 PaO2の増加によるHbCO2よりのCO2排出によるPaCO2が増加。
 肺胞毛細血管膜をはさんでCO2の拡散はO2の拡散と比べて遥かに速い。
 溶解下CO2はO2の20倍程の速さで肺胞に排出される。
 CO2のa-v間差の60%を占めるHCO3は、炭酸脱水酵素の働きによって
 CO2となり拡散される。カルバミノ結合によりHbに結合されているCO2は
 Hbが酸化されることによってHbから離れ肺に拡散される。
 これをHaldane効果という。発音は、ホールデン効果。

文責"倉原優"

by otowelt | 2009-09-01 15:39 | レクチャー

MDR-TB(多剤耐性結核)


結核の標準治療は
・2HREZ+4HR
・6HRE+3HR (2HRE+7HR)
であるし、私もこのように行っている。

しかしながらWHOの結核治療は、初回治療か否かで分類している。
すなわち、以下の通りである。
・初回治療:2HREZ+4HRあるいは6HE
・治療歴あり:2HRESZ+1HREZ+5HRE

多剤耐性結核(MDR-TB)は、INHとRFP両方が耐性の結核のことを指す。
MDR-TBの治療は、感受性の薬剤を3剤以上含むことが重要になる。
(感受性薬2剤以下では治療失敗の可能性が高いため(結核2001;76:723-8))
そのため、いかに感受性3剤を含めるかがキーポイントとなる。

抗結核薬は、INH、リファマイシン(RFP/RFB)以外に7種類ある。
すなわち、PZA、EB、注射薬(SM,KM,EVM)、
フルオロキノロン(SPFX、LVFX、OFLX、CPFX)、TH、CS、PASである。
RFPとRFBの使い分けはあまり私は知らない。
RFP耐性RFB感受性の結核にRFBを使用しても意味がないとの意見もある。
注射薬は、SM→KM→EVMの順番で使用することに異論はないだろう。


●E耐性あるいはS耐性TB
 標準治療通りでOK



●INH耐性RFP感受性TB(結核病学会)
・PZA使用可能例
 RPF・PZA・SM(またはKM,EVM)・EB or LVFX、または感受性のある
 セカンドラインの1剤を加えた4~5剤で菌陰性後6か月まで継続し、
 その後REの2剤。
 治療期間は9か月あるいは菌陰性後6ヶ月間の長い方を選択する。
 ただしSMは最大6か月
・PZA使用不可能例
 RPF・SM(またはKM,EVM)・EB・LVFXまたは感受性のある
 セカンドラインの1剤を加えた4剤で菌陰性後6か月まで継続し、
 その後REの2剤。
 治療期間は12か月あるいは菌陰性後6ヶ月間の長い方を選択する。
 
●INH耐性RFP感受性TB(アメリカCDCガイドライン)
 6REZ±フルオロキノロン
 PZAは2か月でも治療成功率95%
 
●INH耐性RFP感受性TB(WHOガイドライン)
 2~3REZSM+6RE

●INH耐性RFP感受性TB(当院)
 2REZ+10RE あるいは 6REZ+3RE



●INH感受性RFP耐性TB(結核病学会)
1.PZA投与可能例
 INH・PZA・SM(またはKM、EVM)・EB・
 (±LVFXまたは感受性のあるセカンドライン1剤)の4~5剤で菌陰性後6か月。
 その後INH・EB・(LVFXまたは感受性のあるセカンドライン1剤)の2~3剤。
 治療期間は菌陰性後18ヶ月間。
 ただし、SM投与は最大6か月
2.PZA投与不可能例
 INH・SM(またはKM、EVM)・EB・
 LVFXまたは感受性のあるセカンドライン1剤 の4剤で菌陰性後6か月。
 その後INH・EB・LVFXまたは感受性のあるセカンドライン1剤 の3剤。
 治療期間は菌陰性後18~24ヶ月間。
 ただし、SM投与は最大6か月
 
●INH感受性RFP耐性TB(アメリカCDCガイドライン)
 2HELZ+10~16HEL 
 広範囲病変なら注射薬を2~3剤加える

●INH感受性RFP耐性TB(当院)
 9HSZ あるいは 12HEZ あるいは 6HEZ+12HE



●INH・RFP耐性TB(結核病学会)
 感受性のある抗結核薬を4剤以上
 治療薬の一部が投与できない場合には、
 優先順位 (PZA-SM-EB-フルオロキノロン-KM-TH-EVM-PAS-CS)に従って
 感受性のある薬剤を順次選択する。ただし、注射薬は複数併用できない。
 耐性薬剤は使用しない。INH低濃度耐性高濃度感受性の場合は使用してもいいが
 4剤以上の数には含めない。治療期間は菌陰性後24ヶ月とする。

●INH・RFP耐性TB(アメリカCDCガイドライン)
 フルオロキノロン、PZA、EB、注射薬に加えてその他のセカンドラインを
 18~24か月使用する。
 EBまたはPZA耐性なら、耐性薬をのぞき他のセカンドラインを2剤追加する。
 1剤追加はしない。
 治療変更時は少なくとも3剤の未使用感受性薬剤を用いる。1剤は注射薬。
 その他でも未使用で有効と思われる薬剤があったら追加する。
 
●INH・RFP耐性TB(WHOガイドライン)
 ロシアでの経験から
 6ヶ月間のCPM、EB、PZA、フルオロキノロン、HT、PASまたはCS
 12ヶ月間のEB、フルオロキノロン、TH、PASまたはCS

文責"倉原優"

by otowelt | 2009-08-24 17:17 | レクチャー

脾臓摘出後重症感染症(OPSI)


●OPSIとは
 脾臓摘出者は経過中にS.pneumoniae などによる感染症にかかり
 数時間から数日で死に至る場合がある。
 その死亡率は50~75%と報告されており、
 脾臓摘出後重症感染症overwhelming postsplenectomy infection(OPSI)
 と呼ばれている。
    Perdiatr Dev Pathol 2001;4:105―21

●機序
 脾臓は食菌・浄化、特異的免疫応答、オプソニン産生を行う臓器であり
 脾摘者ではこれらの機能が失われるため、
 重篤な感染症を引き起こすといわれている。
    Infect Dis Clin North Am1996;10:693―707.

●起因菌
 S. pneumoniaeが最も多く、50~90%と報告。

●発症
 OPSI の合併頻度は脾臓摘出者の約5%であり、発症までの期間は
 5日~35年と幅広く分布。

●予防
 OPSI の発症予防として肺炎球菌ワクチンの接種が推奨。
    JAMA 1993;270:1826―31.

by otowelt | 2009-08-20 10:32 | レクチャー

慢性好酸球性肺炎

4月からCEPの患者が続けて4例いたので、まとめてみた。


●慢性好酸球性肺炎の分類
 特発性好酸球性肺炎(IEP)は歴史的にはLöffler によりLöffler症候群と記載され、
 Croftonにより単純性好酸球性肺炎と遷延性好酸球性肺炎と、
 そしてReederとGoodrichによりPIE 症候群と称されてきた。
 1969 年にLiebow とCarrington は、好酸球性肺炎を肺への好酸球の浸潤
 であり、末梢血の好酸球増多を伴う場合も伴わない場合もあると定義した。
 近年IEP は慢性好酸球性肺炎(CEP)、急性好酸球性肺炎(AEP)、
 単純性好酸球性肺炎と分類されている。
Eosinophilic lung diseases. Am J Respr Crit Care Med 1994 ; 150 : 1423―1438.

●AEPとCEPの違い
慢性好酸球性肺炎_e0156318_11522316.jpg


●CEPとは
 慢性好酸球性肺炎(CEP)は、1969年にCarringtonらが提唱した疾患概念。
 1952年にReederらの提唱したPIE症候群からわけて考えるようになった。
                    NEJM, 280: 787-798, 1969.

●CEPの疫学
 中年女性に多い傾向にあるが、報告例はさまざま。平均年齢は40~50代が多い。
 アレルギー疾患の既往を持っていることが多い。
 季節との関連性はないが、喘息合併の影響もあるためか4~5月に多い。

●CEPの症状
 咳嗽、発熱、喀痰、呼吸困難、喘鳴、胸痛、盗汗、体重減少などが出現する。
 Chronic eosinophilic pneumonia. A report of 19 cases and a review of the literature. Medicine 1988; 67:154.
 過去の喘息、引き続き喘息症状が出るなど、喘息と関連することが50%で認められる。
Idiopathic chronic eosinophilic pneumonia and asthma: how do they influence each other?  Eur Respir J 2003; 22:8.

●CEPの診断
1.外科的生検でCEPと診断
2.BALFあるいは末梢血好酸球が30%以上
3.a) TBLBで好酸球が多い
  b) BALF好酸球が10%以上
  c) 末梢血好酸球が6%以上
  a)、b)、c)のうち2つ以上を満たす

●CEPの検査所見
・血液検査
 末梢血好酸球増加、白血球増加、CRP上昇、IgE高値
 (5~10%に好酸球増加のないものもある)
 赤沈亢進、鉄欠乏性貧血、血小板増加
Diagnostic problems in chronic eosinophilic pneumonia. J Int Med Res 1997; 25:196.

・気管支鏡
 BALF中の好酸球増加は必要所見、40%以上になることが多い
Diagnostic problems in chronic eosinophilic pneumonia. J Int Med Res 1997; 25:196.
 BALF中の好酸球は平均58%
Idiopathic chronic eosinophilic pneumonia. A clinical and follow-up study of 62 cases. Medicine (Baltimore) 1998; 77:299.
 BALF中の好酸球は、過分葉していることが多い
 CD4/8比は2.5前後

・呼吸機能検査  閉塞性換気障害パターンが多い

・画像検査
 胸部レントゲン:photographic negative of pulmonary edema (50%以下)
Peripheral opacities in chronic eosinophilic pneumonia: the photographic negative of pulmonary edema. AJR Am J Roentgenol 1977; 128:1.
 CT:スリガラス影>浸潤影
   中間層気管支に直交する帯状影、curve-linear shadow(25%)
   air bronchogram (半数以上)、胸水貯留(20%)

 CEPのHRCTの特徴(『HRCT of the lung』より)
 1.浸潤影(consolidation)が肺末梢側に斑状にみられる。
 2.肺末梢側あるいは斑状のスリガラス影、時にcrazy paving
 3.線状陰影
 4.上葉優位にみられる陰影
慢性好酸球性肺炎_e0156318_120566.jpg


●CEPの病理
・典型的には好酸球とリンパ球の肺胞隔壁や間質への集簇で
 半数の例で間質の線維化を認めている。
Chronic eosinophilic pneumonia. A report of 19 cases and a review of the literature. Medicine 1988 ; 67 : 154―162.
Eosinophilic pneumonia. In : Hasleton PS, ed. Spencer’s pathology of the lung. 5th ed. New York : McGraw-Hill, 1996 ; 450―453.

・器質化肺炎像や好酸球性膿瘍をときに認め、少数例で非乾酪性肉芽腫を認める。

●CEPの治療
 10%は無治療でも軽快する
 再発が多い
Idiopathic chronic eosinophilic pneumonia. A clinical and follow-up study of 62 cases. Medicine (Baltimore) 1998; 77:299.
 ・ステロイド
  40~60mgのプレドニゾロンで2週間始める。
  その後、半分ずつ減量しさらに8週間続ける
 結局、初期治療は平均19か月続くという報告もある
  Chronic eosinophilic pneumonia. A report of 19 cases and a review of the literature. Medicine 1988; 67:154.
 ・吸入ステロイドが効果があるという報告もある

文責="倉原優"

by otowelt | 2009-06-30 12:00 | レクチャー

エサンブトール視神経症

●エサンブトール視神経症 :ethambutol optic neuropathy

・エサンブトール視神経症とは
 エサンブトールの副作用として起こる両側可逆的視神経障害。1962年Carrらにより報告。

・原因
 エサンブトールは約1~3%に視神経障害を起こす。2か月服用している患者で、35mg/kg/日以上服用している患者の18%。25mg/kg/日服用している患者の5~6%、15mg/kg/日服用している患者の1%以下に 起こるとされている。
The ocular toxicity of ethambutol and its relation to dose. Ann N Y Acad Sci 1966; 135:904.
 投与一日量で25mg/kg以上、総投与量100~400gで発症しやすく、一日量15mg/kg以下では安全とされる。

・リスクファクター
 60歳以上、アルコール中毒、糖尿病、腎障害、貧血で発症リスクが高くなる。また、エサンブトールに対してキレート作用を持つ亜鉛が欠乏することが一つの要因とする説があり、低亜鉛血漿(0.7mg/l以下)もリスクファクター。動物実験では亜鉛分布の希薄な視交叉部に異常が起こりやすいとされている

・症状
 投薬後3ヶ月から起こり得るが、半年~1年以内(平均7ヶ月)が多い。両眼の視力低下、中心暗点、色覚障害(赤・緑)を呈する。従ってエサタンブトール服用患者は、全例1~2ヶ月に1回の定期的に視機能検査を行う必要がある。スクリーニング検査には視力と河本式中心暗点計を使う。中心フリッカー値も感度は高いが、測定ごとのばらつきが大きく、両眼性なので左右差で検討するのが難しい。異常が疑われたらハンフリー視野計などの静的視野検査を行うが、中心暗点だけでなく両耳側半盲のパターンを呈することも少なくない。

・治療
 エサンブトール中止徐々に回復することが多い。ビタミンB群を投与しながら経過観察する。
Ocular toxicity from ethambutol : a review of four cases and recommended precautions. NZ Med J 111 : 428-430, 1998

by otowelt | 2009-05-16 10:42 | レクチャー