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実臨床におけるネーザルハイフローの使用

e0156318_21563989.jpg まだコンセンサスがなさそうなので、用語はネーザルハイフローにしています。実臨床でどういう風に使われているのか、私の持っているイメージと同じでした。

Jiro Ito, et al.
The clinical practice of high-flow nasal cannula oxygen therapy in adults: A Japanese cross-sectional multicenter survey
Respiratory Investigation, DOI: https://doi.org/10.1016/j.resinv.2018.02.002


背景:
 ネーザルハイフローは急性期ケアでよく用いられている酸素療法だが、実臨床ではデータが限られている。この研究の目的は、日本人の成人患者における同酸素療法について記述することである。

目的:
 日本の33施設における後ろ向きの横断的研究を2015年3月まで実施した。

結果:
 321人の患者が22病院から登録された(年齢中央値76歳、218人が男性、103人が女性、PF比中央値178mmHg)。挿管拒否(Do-not-intubate)ステータスは患者の37.4%にみられた。ネーザルハイフロー導入前、57.9%の患者が通常酸素療法を適用され、25.9%がNPPVを適用され、15.0%が挿管人工呼吸管理を適用されていた。もっともよくみられた適応疾患は、急性低酸素性呼吸不全(65.4%)で、術後呼吸補助(15.9%)、抜管後呼吸補助(11.2%)と続いた。急性低酸素性呼吸不全の原因は、間質性肺疾患、肺炎、心原性肺水腫が主だった。ネーザルハイフロー導入はICUやそれに準ずる場所でおこなわれており(60.7%)、一般病床で行われたのは36.1%だった。装着期間中央値は4日で、流量中央値は40L/分、FiO2中央値は50%だった。ネーザルハイフローは動脈血酸素分圧、動脈血二酸化炭素分圧、SpO2、呼吸数を改善させた。3分の2の患者が生存し、退院もしくは転院した。

結論:
 実臨床におけるネーザルハイフローの使用について記述した。


by otowelt | 2018-04-27 00:04 | 集中治療

ARDSに開胸肺生検を行うことでステロイド感受性病理像の同定が可能

e0156318_21563989.jpg しかし踏み切るには勇気が要りますよね。

Gerard L, et al.
Open Lung Biopsy in Nonresolving Acute Respiratory Distress Syndrome Commonly Identifies Corticosteroid-Sensitive Pathologies, Associated With Better Outcome.
Crit Care Med. 2018 Mar 7. doi: 10.1097/CCM.0000000000003081. [Epub ahead of print]


目的:
 軽快しないARDSに対して開胸肺生検をおこなわれた患者の約半数が、DADではなく他の病理組織パターンであることが示されている。そのなかには、ステロイド投与が効果を発揮する疾患も含まれている。この研究の目的は、ARDSでICUに入室した患者の開胸肺生検がステロイド感受性疾患の同定に役立つかどうかを検討し、臨床経過とアウトカムの差を調べることである。

方法:
 後ろ向き研究。三次医療センターで22の混合型ICU病床を持つ病院でおこなわれた。適格症例は16歳以上でベルリン基準を満たしたARDS患者のうち、2007年1月~2017年1月まで開胸肺生検をおこなわれた患者とした。

結果:
 試験期間中、695人の患者がARDSと診断された。51人(7%)が開胸肺生検を適用された。DAD診断は29人(57%)であり、ステロイド感受性の病理像があると診断されたのは19人(37%)だった。入院死亡率は55%で、180日死亡率は61%だった。ステロイド感受性病理像とステロイド抵抗性病理像の間の入院死亡率はそれぞれ37%・65%(p<0.045)、180日死亡率はそれぞれ37%・75%(p<0.007)だった。開胸肺生検前にステロイド感受性病理像を予測する信頼性のある因子は同定されなかった。

結論:
 ARDSの患者でステロイド感受性病理像を同定するために開胸肺生検は有用である。これらの患者アウトカムは良好であり、180日死亡率も低かった。


by otowelt | 2018-04-03 00:49 | 集中治療

エコーガイド下中心静脈カテーテル挿入後のレントゲン写真撮影は必要か?

e0156318_21563989.jpg さりとて、なくならないと思います。

Jason Chui, et al.
Is Routine Chest X-ray After Ultrasound-Guided Central Venous Catheter Insertion Choosing Wisely? A population-based retrospective study of 6875 patients
CHEST DOI https://doi.org/10.1016/j.chest.2018.02.017


背景:
 中心静脈カテーテル(CVC)をエコーガイド下で挿入した後、ルーチンのレントゲン撮影が推奨されている。われわれは、エコーガイド下CVC挿入後にレントゲン写真を撮影する意義を調べた。

方法:
 集団ベース後ろ向きコホート研究において、2008年7月1日~2015年12月31日までに手術室でCVCを挿入された成人患者の記録を抽出した。気胸とカテーテル位置不良の頻度を調べた。ロジスティック回帰分析によって、これらの合併症の潜在的リスク因子を調べた。また経済的な影響についても調べた。

結果:
 18274人のCVC挿入患者のうち、6875人が登録された。気胸およびカテーテル位置不良の頻度はそれぞれ0.33%(95%信頼区間0.22-0.5)(23人)、1.91%(95%信頼区間1.61-2.26)(131人)。カテーテル挿入部位は、気胸およびカテーテル位置不良の主要な規定因子だった。特に左鎖骨下静脈からの挿入が気胸リスクが高く(オッズ比6.69、95%信頼区間2.45-18.28、p<0.001)、右内頚静脈以外の部位はカテーテル位置不良が多かった。胸部レントゲン写真による当施設のコストは年間10万5000ドル~18万3000ドルと推定された。

結論:
 エコーガイド下CVC挿入後の気胸およびカテーテル位置不良はまれな合併症であり、コストも高い。そのため、ルーチンの撮影は不要と考えられる。


by otowelt | 2018-03-19 00:55 | 集中治療

アルコール消費はARDSリスク上昇と関連

e0156318_21563989.jpg ARDSには色々なリスク因子が同定されていますが、アルコールもその1つです。
 
Evangelia Simou, et al.
The effect of alcohol consumption on the risk of ARDS. A systematic review and meta-analysis
CHEST DOI: http://dx.doi.org/10.1016/j.chest.2017.11.041


背景:
 成人におけるアルコール消費量とARDSリスクの関連性についてシステマティックレビューおよびメタアナリシスを行うこと。

方法:
 Medline、EMBASE、Web of Scienceからアルコール摂取量とARDS発症の関連を評価した観察研究(1985~2015年)を同定した。言語は問わなかった。メタアナリシスだけでなく、サブグループ解析をおこなった。

結果:
 17の観察研究(17万7674人)が登録された。13試験のメタアナリシスによれば、アルコール消費はARDSのリスク上昇に関連していた(オッズ比1.89、95%信頼区間1.45-2.48、I2=48%)。出版バイアスは観察されなかった(P= 0.150)。感度解析によれば、この関連性は主にアルコール乱用の影響に起因することがわかった(オッズ比1.90, 95%信頼区間1.40-2.60, 10試験)。サブグループ解析では、異質性は、患者の素因(外傷、敗血症/敗血症性ショック、肺炎)によって説明されることが分かった(P=0.003)。

結論:
 慢性アルコール摂取はARDSのリスクを上昇させる。入院患者では慢性アルコール消費のスクリーニングが必要である。


by otowelt | 2018-01-29 00:52 | 集中治療

気管チューブカフインフレータは人工呼吸器関連肺炎予防に有用

e0156318_21563989.jpg 私が研修医をしていた時代には、到底考えられないデバイスです。

大城 智哉ら.
人工呼吸器関連肺炎予防における気管チューブカフインフレータによる有用性の検討
日本集中治療医学会雑誌. 25 巻 (2018) 1 号 p. 45-46


方法:
 対象は人工呼吸器管理中の20歳以上の患者で,観察期間はETTc インフレータの院内導入開始と研究終了時期を考慮し,ETTcインフレータ群(以下,自動群)を2015年1月から10月とし,用手的カフ圧調整群(以下:手動群)を2014年1月から10月と設定し各々VAP発生率,VAP発生因子および背景疾患を前向きに観察した。手動群は10 cmH2Oごとのメモリ表示であるVBMカフプレッシャーゲージ®(スミスメディカル・ジャパン)を用いて,20~30 cmH2Oの範囲に調整(口腔ケア前後と,各勤務帯開始時の0時,8時,16時)し,平均気道内圧>20 cmH2Oの場合は実測値を上回るように調整した。一方,自動群は自動カフ圧コントローラ®(コヴィディエン ジャパン)を,気管挿管直後あるいはICU外で緊急気管挿管された場合はICU 入室時に装着した。カフ圧は手動群を考慮し25 cmH2Oに設定し,平均気道内圧>25 cmH2O の場合は+2 cmH2O の値を設定圧とした。なお両群ともにテーパーガードエバック™気管チューブ®(コヴィディエン ジャパン)を使用した。

結果:
 手動群65例,自動群25例に対して,VAP発生数は手動群6例〔心肺停止蘇生後2例,肺炎に伴うARDSによる死亡例,急性膵炎管理中に併発した気胸,痙攣重責,気管支拡張症による喀血に伴う呼吸不全〕,自動群2例(肺炎に伴うARDS)で,VAP発生率は自動群で有意に低かった(手動群vs.自動群[ 平均±標準偏差]:21.30±21.56 vs. 3.40±10.75,P= 0.015)。また全例晩期VAPであり,気管挿管期間(days)は有意に延長していた(VAP 群 vs. 非VAP 群:10±4.21 vs.7.26±8.42,P<0.05)。

結論:
 本邦においてもETTcインフレータはVAP発生予防に有用である。


by otowelt | 2018-01-17 00:06 | 集中治療

血液ガス分析検査値はNPPVの失敗を予測できない

e0156318_21563989.jpg 血液ガス分析の推移で失敗を予測できるわけではなさそうです。

岩井 健一ら
血液ガス分析検査値は非侵襲的陽圧換気療法の失敗を予測できない
日集中医誌 2017;24:625-7.


概要:
 2010 年8 月から2012 年7 月の間に,当院ICUにて,NPPVを用いた呼吸管理を施行された患者を対象に,患者背景と治療予後を後方視的に調査した。NPPVを離脱した患者を「成功群」,NPPV装着後に気管挿管を伴う人工呼吸器管理を必要とした患者を「失敗群」と定義し,両群間で比較した。
 成功群96人と失敗群40人の患者背景には,診療科,NPPV装着の原因病態,APACHEIIスコア以外は差を認めなかった。失敗群でNPPV開始後の血清乳酸値が有意に高く,ICU滞在期間が有意に長く,ICU死亡率が有意に高かったが,NPPV開始後のpH,PaCO2,P/F 比に差を認めなかった
 低いpH,低いP/F比,高いPaCO2などのNPPV開始後の血液ガス分析検査上の特徴は,必ずしもNPPV失敗予測因子にならない可能性が示唆された。


by otowelt | 2017-12-27 00:11 | 集中治療

ICUにおける体重測定は正確か?

e0156318_21563989.jpg 実看護的で興味深く読ませていただきました。

村田洋章ら
ICUにおける体重測定は正確か?
日集中医誌 2017;24:639-40.


概要:
 2013年7月から2014年2月に,スケールベッドで体重測定を行う施設Aと懸架で体重測定を行う施設Bの2施設のICU医師や看護師59名を対象として研究をおこなった。
 調査に同意が得られた対象者は,59名(施設A 29名,施設B 30名)で,男性25名,女性34名であった。スケールベッド・懸架ともに立位に対し相関係数0.99以上の高い相関を示した。スケールベッド・懸架ともに,ライン類装着により測定誤差が平均値で1.0~1.2 kgほど上昇したが,ライン類保持により,ライン類を装着せずに測定したレベルまで低下した。スケールベッドの測定誤差(−0.18±0.23~1.00±0.30)は,すべての測定状況において懸架の測定誤差(0.45±0.45~1.23±0.56)より小さい傾向にあった。
 スケールベッド・懸架による体重測定時に,ライン類を保持しなければ,立位による測定を対照とした体重測定誤差の平均値が1.0 kgを超えたが,ライン類を保持すると測定誤差が減少した。ICUにおける体重測定時に統一された方法でライン類を保持すれば,より正確度の高い体重測定を実施できることが示された。


by otowelt | 2017-12-19 00:57 | 集中治療

定量式フィットテストによるN95マスク選択

e0156318_2374935.jpg かなり興味深い論文です。こういった実臨床にマッチした報告は好きです。

鍋谷大二郎ら
定量式フィットテストによるN95マスク選択:当院の結果とプロトコール項目別解析
日呼吸誌, 6(6): 410-416, 2017


方法:
 2013年9月から4年間に当院で行われたN95マスク(4種)の定量式フィットテストの結果を後ろ向きに解析した.
 定量式フィットテストにはPorta-Count Pro+(TSI)が用いられ,3M1860 S/R(3M):金属ノーズクリップ付きカップ型,3M1870(3M):三面折り畳み構造,興研350(興研):接顔クッション付き・ゴム紐調節可カップ型,Moldex®1500 XS/S(Moldex-Metric):成形型ノーズブリッジ加工・保護シェル付きカップ型,の4種類のN95マスクでテストが行われた.
 フィットテストはPortaCount Pro+ に内蔵されているプログラムに従って行われた.具体的には,テスターに接続されたマスクを着けながら,OSHAプロトコール[①通常呼吸60秒,②深呼吸60 秒,③頭をゆっくり左右に振る60秒,④頭をゆっくり上下に振る60 秒,⑤声を出して指定された文章を読む60秒,※顔をしかめる15秒,⑥前傾姿勢(お辞儀)を繰り返す60 秒,⑦通常呼吸60 秒]に沿ってfit factor(マスク外気の粉塵数をマスク内気の粉塵数で除した数値:FF)の測定を行い,※を除いた各項目のFFから算出される総合FFが100 以上であれば合格,100未満の場合は不合格として判定されるものである.

結果:
 88人で延べ165回行われ,81人がいずれかのマスクで合格した.各マスクの合格率は46〜82%で男女差も認めた.不合格判定されたテストの64%で開始時から漏れを認め,テスト直前に行われていたシールチェックの限界が示唆された.合格判定されたテストの28%でテスト中の漏れを認めたが(特に前屈姿勢),ほとんど漏れを認めないマスクもあった.

結論:
 施設全体の合格率を上げるためには複数種類のマスク導入が望まれる.


by otowelt | 2017-12-01 00:03 | 集中治療

メタアナリシス;急性呼吸不全に対するネーザルハイフローは挿管率・死亡率に影響与えず

e0156318_13512197.jpg ネーザルハイフローに死亡率の改善効果はなく、挿管率にも有意差はないという帰結は、他のメタアナリシスでも同様です(Crit Care Med. 2017 Apr;45(4):e449-e456.)。
 ただ、CEHST誌のメタアナリシスでは挿管率は有意に減少させると報告されています(Chest. 2017 Apr;151(4):764-775. )。
 「どの患者をどこで使用するか」によって変わってくるので、まだ答えは出ていないようにも思います。

Lin SM, et al.
Does high-flow nasal cannula oxygen improve outcome in acute hypoxemic respiratory failure? A systematic review and meta-analysis.
Respir Med. 2017 Oct;131:58-64.


背景:
 急性呼吸不全の患者に対して、ネーザルハイフロー(HFNC)の挿管率や死亡率に対する効果を評価すること。

方法:
 われわれは、PubMedなどの電子データベースを用いて信頼性のある研究を抽出した。通常酸素療法または非侵襲性換気との比較でHFNCを用いた比較試験を2人のレビュアーがデータを抽出し、研究の質を評価した。プライマリアウトカムは挿管率とした。セカンダリアウトカムには院内死亡率が含まれた。

結果:
 8つのランダム化比較試験が登録され、1818人が含まれた。プール解析では、挿管率に有意な差は認められなかった(オッズ比0.79; 95%信頼区間0.60-1.04; P = 0.09; I2 = 36%)。また、院内死亡率にも差はみられなかった(オッズ比0.89; 95%信頼区間0.62-127; P = 0.51; I2 = 47%)。

結論:
 急性呼吸不全に対するHFNCは通常の酸素療法や非侵襲性換気と比較して、挿管率を下げる傾向にはあるが、統計学的には有意とは言えなかった。今後大規模な臨床試験の実施が望まれる。


by otowelt | 2017-10-17 00:10 | 集中治療

ワイヤレスDisposcope®による気管挿管

 Disposcope®は、要はスタイレットのかわりにマイクロカメラを通してリアルタイムに挿管するためのツールです。驚くべきことに、ワイヤレス。時代はここまで来たのですね。

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(YouTube:「DISPOSCOPE ENDOSCOPE INTU SYSTEM 」https://www.youtube.com/watch?v=fotgoFjyAO4より)

Chen PT, et al.
A randomised trial comparing real-time double-lumen endobronchial tube placement with the Disposcope® with conventional blind placement.
Anaesthesia. 2017 Sep;72(9):1097-1106. doi: 10.1111/anae.13984.


背景:
 ダブルルーメン気管内チューブの挿入は時に難しい。この研究は、ワイヤレスDisposcope®を用いて挿管する有用性を調べたものである。

方法:
 正常な気道を有する患者で、胸部外科手術前に挿管を要する人をランダムにワイヤレスDisposcope®群あるいは通常挿管群に割り付けた(各群27人)。挿管できたかどうかは気管支鏡を用いてその後確認した。

結果:
 Disposcope®群は有意に挿入までの時間が短かった(18.6±2.5秒 s vs. 21.4±2.9秒、p < 0.001)、また喉頭鏡使用から処置後聴診までの時間(83.4±3.0秒 vs. 93.9±5.7秒, p < 0.001)およびトータル処置時間(130.7±6.1秒 vs. 154.5±6.3秒, p < 0.001)も有意に短縮できた。Disposcope®群では全例正しい位置にチューブが留置できていたが、通常挿管では挿管位置不良が7.4%にみられた(胸部外科手術患者なので留置位置は通常とは異なる)。

結論:
 ワイヤレスDisposcope®はダブルルーメン挿管チューブを正しい位置に留置することができ、時間も短縮できる。


by otowelt | 2017-09-01 00:47 | 集中治療