カテゴリ:集中治療( 194 )

BMI増加はARDS発症を増加させるが死亡率は増加させない

つまり、肥満が関連するARDSは予後がいいということの裏返しになるわけか。
当院に肥満のARDSがかなり続いた時期があったが、予後は何ともいえなかった。
そもそも肥満のARDSは、本来のDADとは異なるのではないだろうか。
気温が少し上がるだけで、Fが増えてP/F ratioもなんか低くなるし…。

Body mass index is associated with the development of acute respiratory distress syndrome
Thorax 2010;65:44-50


背景:
 body mass index (BMI)とARDSの関係は知られていない。

方法:
 コホートスタディにおいて、ARDSのリスクを抽出。
 BMIは入室時に身長と体重から計算。
 患者はAECCの定義したARDSによって日々スクリーニングされ、
 60日死亡率を計算した。

結果:
 1795の患者のうち83人(5%)はBMI <18.5 kg/m2であり、627人(35%)
 はBMI 18.5–24.9、605人 (34%)はoverweight (BMI 25–29.9)
 364人 (20%) はobese (BMI 30–39.9) 116人(6%) は
 severely obese(BMI ≥40)であった。
 体重増加は若年(p<0.001)、糖尿病(p<0.0001)、高血糖 (p<0.0001)
 lower prevalence of direct pulmonary injury (p<0.0001)
 later development of ARDS (p = 0.01)と関連していた。
 パラメータとしてのBMIはARDS発症と有意に相関していた。
 (OR 1.24 per SD increase; 95% CI 1.11 to 1.39)
 同様に肥満(obesity)は正常体重に比べてこれも有意にARDSに相関
 (OR 1.66; 95% CI 1.21 to 2.28 for obese;
  OR 1.78; 95% CI 1.12 to 2.92 for severely obese)。
  ARDS患者において、BMI増加は入室日数の増加と関連していたが(p = 0.007)、
 死亡率とは関連性がなかった(OR 0.89 per SD increase; 95% CI 0.71 to 1.12)。
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結論:
 BMIはARDS発症のリスクであり、入室日数を増加させる危険性があるが
 死亡率は上昇させない。

by otowelt | 2010-01-30 07:30 | 集中治療

ハロペリドールが必要なせん妄患者へクエチアピンを使用することの有益性

Efficacy and safety of quetiapine in critically ill patients with
delirium: A prospective, multicenter, randomized, double-blind,
placebo-controlled pilot study
Crit Care Med 2010; 38:419–427


目的:
 クエチアピン(セロクエル)とプラセボを比較することによって
 集中治療の現場でハロペリドール(セレネース)が必要な患者への
 せん妄の効果を検証する。

デザイン:
 Prospective, randomized, double-blind, placebo-controlled study

患者: 
 36のICU入室成人患者で検証。
 Intensive Care Delirium Screening Checklist score >4 の
 せん妄患者を対象としている。ただし、経腸栄養が可能で
 神経学的に合併症のない患者を対象とする。

介入:
 クエチアピン50mg12時間ごとあるいはプラセボに割り付け。
 クエチアピンはハロペリドールが前の24時間で1回以上投与された場合に
 24時間ごとに増量していく。
 せん妄が解消したと判断した場合、10日以上の治療、ICU退院
 を満たしたとき介入中止とする。

結果:
 クエチアピンはせん妄初回解消までの期間と有意に相関。
 [1.0day IQR, 0.5–3.0) vs.4.5 days (IQR, 2.0 –7.0; p =.001)]
 また、せん妄期間そのものも短縮した。
 [36hours (IQR, 12–87) vs. 120 hrs (IQR, 60–195; p =.006)]
 Sedation-Agitation Scale score ≧5 を満たす時間も少なかった。
 [6 hours (IQR, 0–38) vs.36 hrs (IQR, 11–66; p =.02)]
 死亡率に関してはクエチアピン11%、プラセボ17%。
 ICU在室日数は16日と同等。
 QTc延長や錐体外路症状は両群とも同等。
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結論:
 ハロペリドールを用いたせん妄管理にクエチアピンを使用することは
 せん妄短縮、退院・リハビリにとって有益である。

by otowelt | 2010-01-28 16:28 | 集中治療

抜管時の喉頭浮腫予防目的のためのステロイド使用

喉頭癌の既往があったり、アナフィラキシーで挿管されたり、、、
といったときに抜管時にステロイドを使うべきかどうかという問題がある。
当院では、全例には行なっていない。

2009年の論文では、以下のものが有名。

Corticosteroids to prevent extubation failure: a systematic review and meta-analysis
Int Care Med 2009


方法:
 Medline、EMBASE、the Cochrane Central Register of Controlled Trials、
 文献、学会の抄録、未発表データベース、これらから検索を実施。
 2人の著者らがそれぞれ別々に、研究の有効性、研究の特徴に関して抽出した
 データの有効性、再挿管率と喉頭浮腫の特徴について評価。

結果:
 14のRCTで2600人の患者が対象となった。
 抜管前の人工呼吸管理期間は平均で3~21日であった。Corticosteroids投与
 により再挿管を減らすことが示された(OR; 0.56, 95%CI; 0.41-0.77, p<0.0005)。  
 Corticosteroidsの効果は、抜管の少なくとも12時間前に投与することで
 顕著になる傾向にあった(OR; 0.41, 95%CI; 0.26-0.64)。またCorticosteroidsを
 投与された場合、喉頭浮腫率も低下(OR; 0.36, 95%CI; 0.27-0.49, p<0.0005)。

結論:
 Corticosteroidsは喉頭浮腫発生を減らし、全年齢層の重症患者での
 extubation failure発生率をも減らす。


ここで問題になるのが、どのくらいのステロイドを使用するか、である。
もっともよく引用されているのがLancetの論文で、
メチルプレドニゾロンを12時間前から4時間ごとに20mgずつ投与するものである。

12-h pretreatment with methylprednisolone versus placebo for prevention of postextubation laryngeal oedema: a randomised double-blind trial
The Lancet 2007; 369:1083-1089


これは698名(プラセボ343名、methylprednisolone群 355名)を検討し、
有意に抜管後喉頭浮腫発生減少(11/355 3% vs 76/343 22% p<0.0001)
させることを示した論文である。

by otowelt | 2010-01-03 01:34 | 集中治療

重症患者への抗菌薬の相互作用

●抗MRSA薬とその他の薬の相互作用
●バンコマイシン
・チオペンタール
 同時に投与すると、紅斑、ヒスタミン様潮紅、アナフィラキシー反応等の
 副作用が発現することがある。
 全身麻酔の開始1時間前には本剤の点滴静注を終了する。
・アミノグリコシド系抗生物質(アルベカシン、トブラマイシン等)
・白金含有抗悪性腫瘍剤(シスプラチン、ネダプラチン等)
 腎障害、聴覚障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けること。
 やむを得ず併用する場合は、慎重に投与する。
・アムホテリシンB、シクロスポリン等
 腎障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けること。
 やむを得ず併用する場合は、慎重に投与する。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・アミノグリコシドやファンギゾン、アムビゾームとの併用時には、
 腎傷害や耳毒性を説明する。



●リネゾリド(ザイボックス)
・モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤、塩酸セレギリン
 両薬剤が相加的に作用し血圧上昇等があらわれるおそれがある。
 リネゾリドは非選択的、可逆的MAO阻害作用を有する。
・アドレナリン作動薬、ドパミン塩酸塩、アドレナリン、フェニルプロパノールアミン
 血圧上昇、動悸があらわれることがあるので、患者の状態を観察しながら
 これらの薬剤の初回量を減量するなど用量に注意。
・セロトニン作動薬
 セロトニン症候群の徴候及び症状があらわれるおそれがある。
・リファンピシン
 リファンピシンとの併用により本剤のCmax及びAUCがそれぞれ
 21%及び32%低下した。
・チラミンを多く含有する飲食物(チーズ、ビール、赤ワイン等)
 血圧上昇や動悸があらわれることがあるので、本剤投与中には
 チラミン含有量の高い飲食物の過量摂取(1食あたりチラミン100mg以上)
 を避けさせること。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・結核治療中のMRSA肺炎でRFPを使用している場合、
 リネゾリドの効果は減少するものと考える。
・リネゾリド使用中の昇圧剤使用に関しては、ナーバスになるべき。



●テイコプラニン(タゴシッド)
・ループ利尿剤、エタクリン酸フロセミド
 腎障害、聴覚障害を増強するおそれがあるので併用は避けることが望ましい。
 やむを得ず併用する場合は、慎重に投与すること。
 腎障害、聴覚毒性が増強される。
・アミノグリコシド系抗生物質(アルベカシン、トブラマイシン等)
・白金含有抗悪性腫瘍剤(シスプラチン、ネダプラチン等)
 腎障害、聴覚障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けること。
 やむを得ず併用する場合は、慎重に投与する。
・アムホテリシンB、シクロスポリン等
 腎障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けること。
 やむを得ず併用する場合は、慎重に投与する。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・ラシックスやアミノグリコシドやファンギゾン、アムビゾームとの併用時には、
 腎傷害や耳毒性を説明する。



●キヌプリスチン・ダルホプリスチン(シナシッド)
・ピモジド(オーラップ)、キニジン(硫酸キニジン)、シサプリド(国内承認整理済)
 これらの薬剤の血中濃度を上昇させ、QT延長、心室性不整脈、血液障害、
 痙攣等の副作用を起こすことがある。 本剤はこれらの薬剤の主たる代謝酵素
 (CYP3A4)を阻害する。
・スパルフロキサシン(スパラ)
 QT延長、心室性不整脈を起こすことがある。
 併用によりQT延長作用が相加的に増強する。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・不整脈を有する患者や不整脈薬を服用している場合のシナシッドの使用時には
 細心の注意を払うべき。



●広域抗菌薬とその他の薬の相互作用
●カルバペネム系
・バルプロ酸ナトリウム(デパケン)
 本剤との併用により,バルプロ酸の血中濃度が低下し
 てんかんの発作が再発することがある。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・基本的に痙攣とカルバペネム系抗菌薬は避けること。
・チエナムとガンシクロビルも痙攣リスクあるため、避けたい。


●リンコマイシンとその他の薬の相互作用
●クリンダマイシン
・エリスロマイシン(エリスロシン等)
 併用してもクリンダマイシンの効果があらわれないと考えられる。
 細菌のリボゾーム50Sサブユニットへの親和性が本剤より高いため。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・エリスロシン投与中にクリンダマイシンは無意味。



●ニューキノロンとその他の薬の相互作用
●シプロフロキサシン
・テオフィリン、アミノフィリン
 テオフィリンのCmaxが17%,AUCが22%それぞれ上昇したとの
 報告がある。テオフィリンの作用を増強させる可能性があるので
 併用する場合にはテオフィリンを減量するなど適切な処置を行う。
・フェニル酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤、ジクロフェナク,アンフェナク等
 プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤(ただし,ケトプロフェンとは併用禁忌)
 ロキソプロフェン、プラノプロフェン、ザルトプロフェン等
 痙攣を起こすおそれがある。症状が認められた場合,両剤の投与を中止するなど
 適切な処置を行う。 併用により、ニューキノロン系抗菌剤のGABAA受容体への
 阻害作用が増強され、痙攣が誘発されると考えられている。
・シクロスポリン
 相互に副作用(腎障害等)が増強されるおそれがあるので,頻回に腎機能検査
 (クレアチニン,BUN等)を行うなど患者の状態を十分に観察する。
・ワルファリン
 ワルファリンの作用を増強し、出血、PT延長等があらわれることがある。
・グリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール)
 グリベンクラミドの作用を増強し、低血糖があらわれることがある。
・メトトレキサート
 メトトレキサートの血中濃度が上昇し、作用が増強されるおそれがある。
 併用する場合には患者の状態を十分に観察する。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・閉塞性肺疾患でテオフィリン内服中で異型肺炎を疑ったとき、
 シプロが必要なら少しテオフィリンを減量したほうがいいかもしれない。
・ワーファリン内服中のシプロは、少し凝固系に注意を払う。
・リウマチと異型肺炎合併例でMTX投与中のときは、シプロ以外でせめたい。


●抗真菌薬とその他の薬の相互作用
●アムホテリシンB(ファンギゾン)/liposomalアムホテリシンB(アムビゾーム)
・副腎皮質ホルモン剤、ヒドロコルチゾン等
 ACTH 低カリウム血症を増悪させるおそれがあるので
 血清中の電解質及び心機能を観察すること。
・ジギトキシン、ジゴキシン等
 ジギタリスの毒性(不整脈等)を増強するおそれがあるので、
 血清電解質及び心機能を観察すること。
・頭部放射線療法
 併用により白質脳症があらわれるおそれがある。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・アムホテリシン製剤使用時には、ジギタリスとステロイドに注意。
・LCでガンマナイフあるいはWBRT中にはアムホテリシン製剤は使うべきではない。


●その他
●ベナンバックスとアミオダロン(注射剤)(アンカロン注)
 併用によりTdPリスクが増加する。
 併用によりQT延長作用が相加的に増強すると考えられる。

by otowelt | 2009-12-15 15:50 | 集中治療

ARDSにおけるリクルートメント手技は循環動態を変動させる

人工呼吸器でリクルートメント手技というテクニックがあり、
当院でも頻用している。

参照:ARDS/ALIにおけるリクルートメント手技

Journal of Intensive Care Medicine最新号で
リクルートメント手技と循環動態の関連について論文が出ていた。

Acute Hemodynamic Effects of Recruitment Maneuvers in Patients With Acute Respiratory Distress Syndrome
Journal of Intensive Care Medicine, Vol. 24, No. 6, 376-382 (2009)


背景:
 リクルートメント手技は、ARDSにおいて循環動態を変動させうる。
 私たちは、このリクルートメント手技の間の循環動態の変化を評価した。

方法:
 リクルートメント手技として、40cmH2O・30秒のsustained inflation
 を22人のARDS患者におこなった。血圧と心拍数は手技後30秒間の間
 10秒ごとに記録され、また左室径はMモードエコーで計測され、また
 ドプラ心エコーで機能評価した。

結果:
 平均の収縮期および拡張期血圧は20~30秒間減少した。(mean BP: 92 ± 12
 at baseline to 83 ± 18 mm Hg at the end of the RM, P < .05)
 その後、それぞれのパラメータは改善した。心拍数は手技中10~20秒間減少、
 その後改善傾向にあった。左室径は手技中明らかに減少した。
 left ventricular ejection fraction およびpeak velocityは大きな変化なかった。
 静肺コンプライアンスは、平均血圧変動が15%以上の患者の方が、15%未満の患者
 よりも低い傾向にあった(P < .05)。
 
結論:
 リクルートメント手技により平均血圧が減少するが、その程度は
 心機能が保たれていても前負荷の状態に相関する。

by otowelt | 2009-12-08 22:53 | 集中治療

敗血症治療の根拠

・ステロイド
 適切な抗菌薬、十分な輸液を投与しても、血管作動薬の減量ができない
 早期のseptic shockであれば、300mg/日未満のヒドロコルチゾン静脈内投与
 を考慮してもよく、この場合rapid ACTH試験は不要である(CORTICUS試験より)。
 投与期間に関するエビデンスはない。
 
 根拠:・重症疾患やストレス下では、視床下部~下垂体~副腎皮質系が低下する。
     そのためフリーコルチゾルの増加が乏しいため。
    ・重症患者では、コルチゾル組織抵抗性が存在する。
 
・ガンマグロブリン
 エビデンスは乏しいが、抗菌薬治療開始3日で効果がみられない場合
 ガンマグロブリン5g×3日間の治療を検討してもよい。
 
 根拠:・食細胞の貪食作用を促進するオプソニン化
    ・補体を介した溶菌作用促進  
    ・毒素・ウイルスの中和作用
    ・Fc受容体を介した、抗体依存性細胞障害活性促進作用
    ・樹状細胞、T細胞、B細胞の活性化
    ・IL-1α/β、IL-6、TNF-αなどのサイトカインの抑制作用
    
・輸血
 ・septic shockの蘇生の最初の6時間でSv(-)O2/SvO2が低値を示す患者では
  目標Ht値を30%以上にする(SSCG2008)。
 ・明らかな心筋虚血がなければ、輸血開始Hbレベル7.0~8.0g/dl、
  目標Hbレベル7.0~9.0g/dlを推奨する(Br J Anaesth2006; 97:278-91.)。
 ・sepsis治療にアンチトロンビン製剤を用いるべきではない。
 
・輸液
 ・細胞外液補充液(晶質液:crystalloid)を用いる。

 根拠:ICU患者で輸液蘇生が必要な場合、アルブミン投与でも生理食塩水でも
    臨床的治療効果は同等である(SAFE試験より)。

・昇圧剤
 ・循環管理の指標としては、平均動脈圧、CVP、Sv(-)O2、PAOP(PCWP)など
  があるが、指標と確実に言えるものは存在しない(Crit Care 2007; 11: R67.
 ・心エコー上は左室一回仕事係数(left ventricular stroke work index)が最も
  精度の高い指標である(Chest 2006; 129: 1349-66.)。
  左室駆出率(LVEF)はこれより劣るが臨床上有用である。
 ・SSCG2008ではScvO2≧70%で組織灌流を評価してよいとしている。
  (肺動脈カテーテル使用で死亡率に差はないので、肺動脈カテーテルは不要
   (JAMA2005; 294: 1664-70.))

 根拠:・sepsisでは末梢組織の酸素需要増加や発症時に産生されるNOの血管拡張
     作用も加わって、末梢血管拡張から血圧低下を招くためモニタリング必要。

 ・十分な輸液でも昇圧できない場合、平均動脈圧が65mmHg以上を保てない
  ようであれば、使用する。ノルアドレナリンあるいはドパミンを最初用いる。
 ・ノルアドレナリンとパソプレッシン(低容量)に死亡率の差はない
 (NEJM 2008; 358: 877-87.)。

by otowelt | 2009-12-07 09:41 | 集中治療

ICUの胸部レントゲンは毎日ルーチンで撮影する必要はない

2号前のLancetに
「ICUの胸部レントゲンは毎日ルーチンで撮影する必要はない」
という論文が掲載されていました。当院は焦げついた患者様ばかり
なので、必然的に毎日撮影しなければならないですが…

Comparison of routine and on-demand prescription of chest radiographs in mechanically ventilated adults: a multicentre, cluster-randomised, two-period crossover study
The Lancet, Volume 374, Issue 9702, Pages 1687 - 1693, 14 November 2009


概要:
 ICU収容の人工呼吸器装着患者に対してルーチンの
 胸部レントゲンを毎日行う群(ルーチン群)あるいは
 患者の病態により必要に応じて胸部X線検査を施行する群
 (オンデマンド検査群)の有効性および安全性を評価する
 クラスター無作為化クロスオーバー試験を実施。

方法:
 フランスの18病院に付設された21ICUをルーチン群または
 オンデマンド検査群に無作為に割り付けて治療を行い(第1期)、
 その後2つの検査法を入れ替えて治療を実施(第2期)。
 各治療期間は個々のICUに20例の患者が登録されるまでとし、
 患者のモニタリングは退院あるいは人工呼吸器装着期間が
 30日に達するまで実施。

結果:
 ICUには967例が登録され、そのうち人工呼吸器装着期間が
 2日に満たない118例は除外。プライマリエンドポイントは、人工呼吸器
 装着例数×装着日数(人・日)当たりの胸部レントゲン平均施行数。

 第1期には、11のICUがルーチン検査群(222例)に、
 10のICUがオンデマンド検査群(201例)に無作為に割り付け。
 第2期には、第1期のルーチン検査群でオンデマンド検査
 (224例)が、オンデマンド検査群でルーチン検査(202例)が実施。

 全体で424例に4,607件のルーチンの胸部レントゲンが施行、
 平均検査施行数は1.09件/人・日であったのに対し、
 オンデマンドの胸部X線検査は425例に対して3,148件が施行され、
 平均検査施行数は0.75件/人・日であった(p<0.0001)。
 オンデマンド検査では、ルーチン検査に比べ胸部レントゲン数が
 32%低減した。装着日数、入院期間、死亡率は両検査で同等。

ディスカッション:
 これらの結果は、ICU収容の人工呼吸器装着患者に対する
 胸部レントゲンは毎日ルーチンに行うのではなく、
 病態により必要に応じて施行する戦略を強く支持する。
 膨大な人工呼吸器装着患者の総数からみて、オンデマンド検査は
 日常診療に実質的なベネフィットをもたらす。

by otowelt | 2009-11-30 13:56 | 集中治療

オキシーパをARDS・敗血症で使う理由

・アルギニンが入っていない(NOをおさえるため)
アルギニンは、病態時においては条件付き必須脂肪酸となることもある。
アルギニンは、成長ホルモンやインスリン、プロラクチンなど様々な
ホルモン分泌を促進し、代謝を改善したり、たんぱく質の合成を促進すること
により、創傷治癒の促進や、免疫細胞の活性化により感染を予防する機能が期待できる。
さらに、アルギニンは、核酸の前駆物質として、リンパ球の機能の
正常化・活性化に有用であることが報告されている。また、血管拡張作用や、
殺菌作用を有する一酸化窒素の基質となるため、循環の維持や感染防御能の
増強に有用である。しかし、過剰な一酸化窒素の産生は血管拡張作用に伴う
ショックの誘発や、活性酸素と一酸化窒素との反応によって産生される
過酸化硝酸塩が原因となり、組織障害の原因となりうるため、敗血症時における負荷は
むしろ有害となりうる。 よって、このような患者にはアルギニンを添加した
濃厚流動食の投与は望ましくないとされている。

・ω-3 系脂肪酸が入っている
Immunonutritonでもアルギニンを入れず、炎症で大きな問題になっている
酸化ストレスを抑えるω-3 脂肪酸やその他の抗酸化物質を考慮した組成の
ものが開発されるようになった。
ω-3 系脂肪酸は免疫能を上げるよりは調整する働きがあり過剰な炎症を抑制する。
Immune-Enhancing ではなくImmuno-Modulating Diet(IMD)という
新たなカテゴリーの栄養剤とされている。
過剰な炎症が起こっている状態ではω-3 系脂肪酸はそれを抑え、
必要に応じて急性の肺障害や合併症の発症も抑えます。

・グルタミンが入っている
オキシーパ® の主な成分にはグルタミンも入っている。
グルタミンはIED にも使われていたが、
免疫能を上げる一方で細胞保護にはたらくヒートショックプロテインの産生を
上げ、抗酸化作用のあるグルタチオンの材料にもなる。

by otowelt | 2009-11-13 13:34 | 集中治療

ARDSにおいて腹臥位療法は生存率を改善させない

ARDSの腹臥位療法のランダム化試験の結果が
JAMAから出ている。

ALI/ARDS の患者を安静臥床させて呼吸管理すると、
肺の背側に無気肺が生じるため、腹側には過剰な陽圧が
かかって過膨張になることが知られている。
その状態で肺血流は重力の影響で背側に多くなり、
換気と血流の不均衡が生じる。この状態から体位を
腹臥位に変換すると、無気肺のない腹側肺への肺血流が増多し、
換気/血流のマッチングが改善すると考えられている。

――――これが理論である。

今まで、どちらかといえばARDSにおける腹臥位の
メリットの方が多いという趨勢であり、そのような論文も
多かった。
Prone positioning in patients with acute respiratory distress syndrome.
Respr Care Clin N Am 8: 237-245, 2002.
Prone position in acute respiratory distress syndrome.
Eur Respir J 20: 1017-1028, 2002.


Crit Care Medの有名なメタアナリシスでは、
死亡率は有意差はないものの、酸素化の改善を認めている。
Effect of prone positioning in patients with acute respiratory distress syndrome: A meta-analysis. Critical Care Medicine.2008; 36 (2): 603-609


このJAMAの論文は、生存率におけるベネフィットを否定するものである。
傾向としては、やや効果があるかと思うカーブだが
統計学的には残念ながらP valueは有意差ナシ、である。

Prone Positioning in Patients With Moderate and Severe Acute Respiratory Distress Syndrome  A Randomized Controlled Trial
JAMA. 2009;302(18):1977-1984.


背景:
 腹臥位療法は、ARDSにおける重症低酸素血症患者の生存率を
 改善する可能性があると考えられている。

目的・方法:
 多施設トライアルにより、ランダムにARDS 342人、重症低酸素血症を
 対象に、仰臥位と20時間/日の腹臥位療法に割り付けた。
 28日、6ヶ月死亡率をエンドポイントとした。

結果:
 28日死亡率・6か月死亡率はともに統計学的に同等であった
e0156318_14491729.jpg


結論:
 この試験により、ARDSにおける中等症~重症低酸素血症に対して
 腹臥位療法は生存率改善をもたらさないことがわかった。

by otowelt | 2009-11-11 14:51 | 集中治療

ALI死亡率はここ10年で低下

e0156318_2103043.jpgRecent trends in acute lung injury mortality: 1996-2005
Critical Care Medicine. 37(5):1574-1579, May 2009.

目的:
 1つのセンターにおけるALIの死亡率は、
 長期間にわたって低下傾向にある。
 しかしながら、最近のALIの死亡率の傾向が
 アメリカ全体で低下傾向にあるのかよくわかっていない。
 最近の進んだALIの治療が死亡率を下げるのかを検証。

デザイン:
 レトロスペクティブコホート試験(ARDSネットワーク)

対象:
 ARDSネットワークに登録された、成人ICU患者。
 2451人の人工呼吸器患者で、ARDSネットワークに1996年から2005年に
 登録された人を対象とする。

結果:
 1996年~1997年の間で粗死亡率は35%。
 2004年から2005年にかけてはこれが、26%まで低下(p < 0.0005)。
 
結論:
 ARDSネットワークに登録したALI患者で、最近のALI治療により
 粗死亡率は低下した。

by otowelt | 2009-04-19 02:09 | 集中治療