カテゴリ:びまん性肺疾患( 388 )

慢性夏型過敏性肺炎の診断基準提唱

e0156318_1543237.jpg 姫路医療センターからの報告です。
 「Aを診断するためにはAに合致する所見を満たす必要がある」のように、CHPは極めてトートロジーの部分があります。また、「このUIPパターンは特発性ではない」という判断にはやはり医師の裁量がかかわってきます。
 まだまだ難しい分野だと思います。

Onishi Y, et al.
Clinical features of chronic summer-type hypersensitivity pneumonitis and proposition of diagnostic criteria.
Respir Investig. 2019 Oct 12. pii: S2212-5345(19)30150-9. doi: 10.1016/j.resinv.2019.09.003.


背景:
 Trichosporon asahii (T. asahii) は、慢性夏型過敏性肺炎(C-SHP)を起こすが、臨床的特徴についてはほとんどわかっていない。われわれは、C-SHPの臨床的特徴を解明し、血清T. asahii抗体(TaAb)の存在によってC-SHPの臨床診断基準を提唱することをこころみた。

方法:
 2010年1月から2017年5月までに、C-SHPおよび特発性肺線維症(IPF)と診断された患者を後ろ向きにレビューした。2群において臨床所見が比較された。有意な特徴にもとづいてC-SHPの基準を提唱し、developmentおよびvalidation cohortに適用した。
 2018ATS/ERS/JRS/ALAT基準にもとづいて、UIPパターンがあると診断された患者のうち特発性ではないと考えられた症例にVasakovaらの基準を用いてC-SHPと診断し、非UIPパターンと診断された患者のうちTaAb陽性例にVasakovaらの基準を用いてC-SHPと診断した。前者1例、後者30例の合計31例が登録された。
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(Vasakovaらの基準[Am J Respir Crit Care Med. 2017 Sep 15;196(6):680-689.])

結果:
 31人のC-SHP患者および26人のTaAb陰性IPF患者が同定された。C-SHP患者は、木造建築の住宅に住んでいる頻度が高かった(94% vs 69%)。IPF患者のほうが男性が多かった。C-SHP患者では、KL-6とSP-DがIPF患者より有意に高かった(平均KL-6:1506 vs 914 U/mL、平均SP-D:235 vs 156 ng/mL)。C-SHP患者は、胸部HRCTにおいて、胸膜直下のコンソリデーション(39% vs 15%)、微細粒状影(77% vs 31%)、広範囲のすりガラス陰影(32% vs 0%)、モザイク灌流(48% vs 0%)がよくみられた。
 以下の3項目が高い診断能を有すると考えられた。

I)TaAb陽性
II)モザイク灌流、微細粒状影を含む、CHPに合致したHRCTパターン
III)血清バイオマーカー上昇(KL-6>1500 U/mL、SP-D>250 ng/mL)

 我々は、I)とII)を満たす症例を「probable C-SHP」と定義し、3項目を満たす症例を「confident clinical diagnosis of C-SHP」と定義した。development cohortおよびvalidation cohortでは、AUCがそれぞれ0.965、0.993だった。

結論:
 C-SHPを、IPFやその他ILDから鑑別する有用な臨床的特徴を示した。


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by otowelt | 2019-11-10 00:10 | びまん性肺疾患

COLDICE試験:クライオバイオプシーと外科的肺生検の診断一致率は良好

e0156318_1543237.jpg 今年春にブルージャーナルをにぎわせた論文はκ=0.22でしたが、まったく逆の結果が報告されました。本文中にくだんの論文について批判コメントを寄せています。

(参考記事)
クライオバイオプシーと外科的肺生検の病理医による一致率は不良
AJRCCMでのやりとり:外科的肺生検とクライオバイオプシー

 人の手と目が介在している上、MDDによって主観(権威者の意見)も入ってしまうため、プロセスを統一しないと真実は分からないのかもしれません。

Myer JL, et al.
Diagnostic accuracy of transbronchial lung cryobiopsy for interstitial lung disease diagnosis (COLDICE): a prospective, comparative study
Lancet Respiratory Medicine, https://doi.org/10.1016/S2213-2600(19)30342-X

背景:
 経気管支肺クライオバイオプシー(TBLC)は、間質性肺疾患(ILD)診断において肺組織検体を採取する新しい技術である。この研究の目的は、外科的肺生検(SLB)と比較したTBLCの診断精度を確立することである。

方法:
 COLDICE試験は、前向きに多施設でおこなわれたTBLCとSLBの診断精度を比較する臨床研究で、オーストラリアの複数施設で実施された。ベースラインの評価ののち、診断のために組織病理学的評価を要する18~80歳のILD患者が登録された。MDDによるスクリーニングのあと、ILD患者はTBLCおよびSLBを受けた。検体には1から130の番号がふられ、病理医には情報がマスクされた。その後のMDDでは、匿名化された症例がTBLCまたはSLBのいずれかで2回、臨床的および放射線学的データとともにランダムに非連続的に議論された。複合プライマリエンドポイントは、definite UIPあるいはprobable UIPパターン、indeterminate for UIP、alternative diagnosisに対するTBLCとSLBの組織病理学的特徴の一致(κ値)とした。

結果:
 2016年3月15日~2019年4月15日までに、65人(31人が男性、34人が女性、平均年齢66.1±9.3歳)が登録された。平均%努力性肺活量は83.7±14.2%、平均%DLcoは63.4±12.8%だった。TBLC(平均7.1±1.9mm)、SLB(平均46.5±14.9mm)は、同側の肺葉から2つ採取された(65人→130検体)。
 TBLCとSLBの組織病理学区的一致は70.8%だった(重みつきκ値:0.70, 95%信頼区間0.55–0.86)。MDDにおける診断一致は76.9%だった(κ 0.62, 95%信頼区間0.47–0.78)。
 TBLCで高い・確実な診断信頼性があるとMDDで判断されたのは65人中39人(60%)で、37人(95%)はSLB診断と一致していた。65人中26人(40%)では低い信頼性あるいは分類不能型であるとTBLCで診断され、SLBで6人(23%)が高い信頼性・確実なMDD診断へ移行できた。
 TBLCの14人(22%)で軽度~中等度の気道出血がみられた。90日死亡率は、2%だった(65人中1人)。

結論:
 病理組織学的な解釈とMDD診断の両方について、TBLCとSLBの間で高いレベルの一致が示された。TBLC MDD診断は特に信頼性が高く、SLB MDD診断との優れた一致を示した。これらのデータは、間質性肺疾患診断アルゴリズムにおけるTBLCの臨床的有用性を支持するものである。

ディスカッション:Romagnoli らの研究に対する批判
 Our findings contradict the results of Romagnoli and colleagues,which showed poor agreement betweenTBLC and SLB in a smaller cohort of 21 patients. In their study, both TBLC and SLB were presented together at MDD to inform the discussion and final diagnosis. Due to their study design, the final MDD diagnosis was affected by the SLB data, introducing substantial bias into the process. The subsequent masked assessment of TBLC specimens by a single pathologist had limited agreement with MDD diagnosis. It is unlikely however, that this aspect of the study design would have affected the masked biopsy interpretation, with poor histopathological agreement potentially relating to additional factors.Given the smaller sample size and the limitations discussed, no firm conclusions regarding the diagnostic utility of TBLC could be made from the study by Romagnoli and colleagues.



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by otowelt | 2019-10-31 00:57 | びまん性肺疾患

PRAISE試験:IPFに対するパムレブルマブ

e0156318_10574046.jpg IPFに対して、現在最も期待されている薬剤です。

Richeldi L, et al.
Pamrevlumab, an anti-connective tissue growth factor therapy, for idiopathic pulmonary fibrosis (PRAISE): a phase 2, randomised, double-blind, placebo-controlled trial.
Lancet Respir Med. 2019 Sep 27. pii: S2213-2600(19)30262-0. doi: 10.1016/S2213-2600(19)30262-0.


背景:
 結合組織増殖因子(CTGF)は、線維化にかかわる血管内皮細胞から分泌されるタンパクである。この研究は、CTGFに対する遺伝子組み換えヒト化モノクローナル抗体であるパムレブルマブ(FG-3019)のIPFに対する安全性、忍容性、効果を調べたものである。目的は、パムレブルマブIPFの進行を遅らせる・止める・逆行させることができるかどうかを調べることである。

方法:
 この第2相ランダム化二重盲検プラセボ対照比較試験(PRAISE試験)は、7ヶ国(オーストラリア、ブルガリア、カナダ、インド、ニュージーランド、南アフリカ、アメリカ)の39施設で実施された。予測努力性肺活量(FVC)が55%以上のIPF患者を、ランダムに1:1の割合で、パムレブルマブ30mg/kgあるいはプラセボを3週間ごと48週間(合計16回注射)のいずれかの群に割り付けた。プライマリ効果アウトカムは、48週時点での予測FVCの変化(%)とした。48週時点での病勢進行(予測FVCがベースラインから10%以上減少あるいは死亡)がセカンダリ効果アウトカムに設定された。少なくとも1回の注射を受けたパムレブルマブ群の全患者が安全性解析に組み込まれた。プラセボ群の2人の患者は、登録エラーのため効果解析のITT集団から除外された。

結果:
 2013年8月17日~2017年7月21日に、103人の患者がランダム化された(50人:パムレブルマブ群、53人:プラセボ群)。パムレブルマブは、48週時点で予測FVC減少をプラセボより60.3%減らした(ベースラインからの平均変化率:パムレブルマブ群-2.9%、プラセボ群-7.2%、差4.3%[95%信頼区間0.4-8.3%]、p=0.033)。
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(文献より引用)

 48週時点で病勢進行がみられた患者の比率は、パムレブルマブ群の方が低かった(10.0% vs 31.4%、p=0.013)。パムレブルマブは十分な忍容性があり、プラセボと同等の安全性だった。治療による重篤な有害事象は、パムレブルマブ群12人(24%)、プラセボ群8人(15%)だった。前者3人、後者7人が治療中断となった。パムレブルマブ群で3人(6%)、プラセボ群で6人(11%)が死亡したが、治療に関連したと思われる患者はいなかった。

結論:
 パムレブルマブはIPFの進行を遅らせ、十分な忍容性がある。現在第3相試験がおこなわれており、パムレブルマブはIPFの治療において安全性の高い効果的な新薬となるだろう。


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by otowelt | 2019-10-21 00:43 | びまん性肺疾患

分類不能型ILDに対するピルフェニドン

e0156318_1543237.jpg INBUILD試験でオフェブ一色ですが、ピレスパも負けていられない。
 おそらく将来的に、進行線維化を起こすILD全てに抗線維化薬が用いられる時代が来るでしょう。MDDしなくても・・・とかいう極論も出てきそうですが。

(参考記事)
INBUILD試験:進行線維化を伴う間質性肺疾患に対するニンテダニブ

※個人的には、PD-L1陽性肺癌に対する同阻害剤や、喘息に対するICSのような、ドラスティックな効果が出る印象は持っていません。

Maher TM, et al.
Pirfenidone in patients with unclassifiable progressive fibrosing interstitial lung disease: a double-blind, randomised, placebo-controlled, phase 2 trial
Lancet Respiratory Medicine, https://doi.org/10.1016/S2213-2600(19)30341-8


背景:
 現在まで、肺の進行線維化をきたす分類不能型間質性肺疾患(ILD)に有効な薬物治療は適応となっていない。われわれは、進行線維化をきたす分類不能型ILDに対するピルフェニドンの効果と安全性を検証した。

方法:
 われわれは、オーストラリア、ベルギー、カナダ、チェコ共和国、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イスラエル、イタリア、ポーランド、ポルトガル、スペイン、イギリスの70施設において多施設共同二重盲検試験を実施した。適格患者は、18~85歳の進行線維化をきたす分類不能型ILDで、%努力性肺活量(FVC)が45%以上、%DLcoが30%以上、胸部HRCTで線維化が10%を超えるものとした。患者はランダムに1:1の割合で、ピルフェニドン2403mg/日あるいはプラセボを内服する群に割り付けられ、併用ミコフェノール酸モフェチルやIPAFの有無によって層別化された。研究者は治療割り付けに関して盲検化された。プライマリエンドポイントは、24週時点でのベースラインからの平均FVC変化量とした(自宅でスパイロメトリー測定)。セカンダリエンドポイントは、施設でのFVC変化、%FVCがベースラインから5%あるいは10%を超えて減少した患者割合、施設におけるスパイロメトリーでの%FVCの相対的減少率、DLco変化(%)、6分間歩行距離、UCSD-SOBQスコア変化、LSQスコア変化、咳嗽VAS変化、SGRQスコア変化とした。さらに、追加的セカンダリエンドポイントとして、理由を問わず入院した患者の割合、急性増悪、無増悪生存期間を設定した。効果アウトカムはITT集団で解析され、安全性解析は試験薬を1回でも投与されたものを対象におこなわれた。

結果:
 2017年5月15日~2018年6月5日までの間、253人がランダムにピルフェニドン2430mg群(127人)、プラセボ群(126人)に割り付けられ、ITT解析に組み込まれた。それぞれ平均年齢70.0歳、69.0歳だった。
 プライマリエンドポイント解析は、家庭でおこなわれたスパイロメトリーの個人差によって影響を受け、事前に想定していた統計モデルの適用が妨げられた。
 24週を通して、自宅で測定された予測FVCの平均変化はピルフェニドン群-87.7mL(Q1–Q3 −338.1 to 148.6)で、プラセボ群-157.1mL(同−370.9 to 70.1)だった。施設で測定された場合も、ピルフェニドン群のほうが小さかった(治療差95.3 mL [95%信頼区間35.9 to 154.6], p=0.002)。プラセボ群と比較すると、ピルフェニドン群の患者は5%を超えるFVC減少を起こしにくかった(オッズ比0.42、95%信頼区間0.25-0.69、p=0.001)。10%を超えるFVC減少についても同様の結果だった(オッズ比0.44、95%信頼区間0.23-0.84、p=0.011)。24週時点で、ベース来からのDLco変化はピルフェニドン群-0.7±7.1%、プラセボ群-2.5±8.8%だった。
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(文献より引用)

 6分間歩行距離変化は、ピルフェニドン群-2.0±68.1m、プラセボ群-26.7±79.3mだった。UCSD-SOBQスコア、LCQスコア、咳嗽VAS変化、SGRQスコアは両群同等だった。急性増悪、入院、死亡までの期間はイベント発生数が少ないため解析不適とされた。無増悪生存期間に有意差はなかった。
 治療による有害事象は、ピルフェニドン群127人のうち120人(94%)、プラセボ群124人のうち101人(81%)にみられた。重篤な有害事象は、それぞれ18人(14%)、20人(16%)だった。もっともよくみられた有害事象イベントは、胃腸障害(ピルフェニドン群47% vs プラセボ群26%)、疲労感(同16% vs 10%)、皮疹(10% vs 7%)だった。

結論:
 プライマリエンドポイントに想定していた統計手法が適用できなかったが、進行線維化をきたす分類不能型ILDはおそらくピルフェニドン治療の恩恵を受けると考えられ、安全性・忍容性には問題ない。


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by otowelt | 2019-10-12 00:15 | びまん性肺疾患

全ての間質性肺疾患は急性増悪を起こし、予後を悪化させる

e0156318_93123.png 公立陶生病院からの報告です。

Suzuki A, et al.
Acute exacerbations of fibrotic interstitial lung diseases.
Respirology. 2019 Aug 19. doi: 10.1111/resp.13682.


背景および目的:
 IPFにおいて急性増悪は重篤な合併症である。2016年に、国際ワーキンググループは、診断定義と基準を改訂した。しかしながら、その他の線維性ILD(FILD)患者におけるAEの頻度と予後について検討した研究はほとんどない。

方法:
 われわれは、2008年1月から2015年7月までの間にILDと診断された1019人の連続患者データを用いた。診断は2018年12月にMDDによって検討された。ILDの内訳は、IPF(462人)、その他のFILDとしてNSIP22人、CHP29人、膠原病関連ILD205人、分類不能ILD209人だった。2016年のIPF急性増悪の定義を用いて、急性増悪を起こした全患者を同定した。

結果:
 中央期間3.4年の観察期間中、193人が急性増悪を経験した(FILD69人、IPF124人)。発症は100人年あたり、FILD3.21、IPF8.38だった。初回の急性増悪までの期間は、FILD群の方がIPF群よりも有意に長かった(p<0.001)。潜在的に影響する交絡因子で補正すると、FILDは初回急性増悪までの期間の有意な予測因子だった(ハザード比0.453、95%信頼区間0.317-0.647、p=0.006)。
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(Kaplan-Meier曲線:文献より引用)

 IPF患者のうち53%で抗線維化薬が用いられていた。ほとんどの急性増悪患者がステロイドパルス療法(90%)、抗菌薬(96%)、免疫抑制剤(82%)が併用された。
 短期アウトカムについては、90日死亡率がFILDとIPFの急性増悪でそれぞれ38%、47%だった(p=0.345)。多変量Cox比例解析では、ベースラインの重症度はILD急性増悪と密に関連していた(ハザード比0.814、95%信頼区間0.483–1.371、p=0.439)。その他の臨床的因子で補正しても、急性増悪は全生存に悪影響を与えていた。FILDとIPFの急性増悪は短期アウトカムを同等に悪化させた。すべてのグループにおいて、診断時の血清D-ダイマー、P/F比は90日死亡の独立予測因子であった。
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(死亡予測因子:Cox比例ハザードモデル)

結論:
 すべてのILD型は急性増悪のリスクがあり、IPF急性増悪と同等のアウトカムである。



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by otowelt | 2019-10-10 00:29 | びまん性肺疾患

INBUILD試験:進行線維化を伴う間質性肺疾患に対するニンテダニブ

e0156318_1543237.jpg 線維化を阻害するのだから、IPF以外にも効くのでは?とブログで10年近く前にコラムを書きましたが、鼻で笑われていました。
 暴論ですが、CHPであろうと分類不能型であろうと、進行線維化があれば、使ったらいいと思っています(もちろん臨床試験を経て)。現状、これ以外に線維化を抑制する薬剤が出回っていないですし。
 INPULSIS試験では、52週間でベースラインからのFVC変化量は109.9mLの群間差があるので、本研究の全集団107.0mL、UIP様線維化パターン128.2mLというのは納得のいく数値です。

Flaherty KR, et al.
Nintedanib in Progressive Fibrosing Interstitial Lung Diseases
N Engl J Med. 2019 Sep 29. doi: 10.1056/NEJMoa1908681.


背景:
 臨床前データによれば、細胞内チロシンキナーゼ阻害剤であるニンテダニブは、進行性の肺線維症のプロセスを阻害する側面を有する。IPFに対するニンテダニブの有効性は示されてきたが、広い範囲の進行線維化を伴う肺疾患に対する有効性はよくわかっていない。

方法:
 この二重盲検プラセボ対照第3相試験は、15ヶ国で実施され、ランダムに胸部HRCTで肺容量の10%を超える領域に線維化がみられる患者を、ランダムに1:1の割合でニンテダニブ150mg1日2回あるいはプラセボに割り付けた。既存の治療によっても過去24ヶ月の間質性肺疾患(ILD)の進行がみられた患者のうち、予測努力性肺活量(FVC)が最低45%残されており、予測DLco30~80%のものを対象とした。アザチオプリン、シクロスポリン、ミコフェノール酸モフェチル、タクロリムス、リツキシマブ、シクロホスファミド、ステロイド(プレドニゾロン換算で20mg/日以上)を用いている患者は除外された。
 プライマリエンドポイントは、52週にわたって解析したFVC年間減少率である。その他、ILD患者の健康関連QOL指標として、King's Brief Interstitial Lung Disease Questionnaire (K-BILD)のベースラインからの変化を確認した。初回ILD急性増悪または死亡までの期間もみた。

※ fibrosing lung disease(進行線維化):牽引性気管支拡張症があり、蜂巣肺の有無を問わない、全体の10%を超える病変を有する網状影

方法:
 ランダム化は胸部HRCTにおける線維化パターンで層別化した(UIP様線維化パターンあるいはその他の線維化パターン)。プライマリエンドポイントは、52週にわたって解析したFVC年間減少率である。

※UIP様線維化パターン:以下のうち、A+B+CまたはA+CまたはB+Cのいずれかを満たすもの。
A 肺底部や末梢優位の蜂巣肺による構造破壊。
B 肺底部や末梢優位の線維化に合致する網状影と牽引性気管支拡張症。
C 結節や浸潤影といった非典型的所見がない。すりガラス陰影がもしあっても、網状影パターンを超えない。


結果:
 合計663人が治療された(ニンテダニブ群332人、プラセボ群331人)。それぞれ53.9%、53.5%が男性だった。平均年齢はそれぞれ65.2±9.7歳、66.3±9.8歳だった。UIP様線維化パターンを呈していたのは、それぞれ206人(62.0%)、206人(62.2%)だった。平均%FVCはそれぞれ68.7±16.0%、69.3±15.2%だった。平均%DLcoは44.4±11.9%、47.9±15.0%だった。52週間にわたって経過を観察できたのはニンテダニブ群314人、プラセボ群311人だった。両群の患者背景やベースライン時の呼吸機能(上述)、K-BILDに差はなかった。臨床診断名は、過敏性肺炎、自己免疫性ILD、NSIPなどだったが、これらの分布も群間差はなかった。
 52週時点における全体のFVCの年間減少率は、プラセボ群187.8mL/年、ニンテダニブ群80.8mL/年と、その差は107.0mLだった(95%信頼区間65.4-148.5mL, p<0.001)。UIP様パターンを示した患者(両群とも206人)でみると、FVC年間減少率は両群とも良好だったが、プラセボ群に比べてニンテダニブ群で有意に抑制されていた(82.9mL vs 211.1mL, 差:128.2mL[95%信頼区間70.8-185.6],p<0.001)。
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(文献より引用:FVC変化)

 52週時点におけるK-BILDスコアの変化量については、群間差はなく、UIP様線維化パターンを示した患者にしぼっても同様だった。
 初回のILD急性増悪(12.3% vs 17.8%)または死亡の発生(8.1% vs 11.5%)にも有意差はなかった。本研究で長期の観察データを用いて解析したところ、初回ILD急性増悪または死亡は、ニンテダニブ群で低かった(ハザード比0.68、P=0.06)。UIP様パターンの患者では、これら治療群間の乖離がさらに著明だった(ハザード比0.61、P=0.04)。
 下痢がもっともよくみられた副作用で、ニンテダニブ群の66.9%、プラセボ群の23.9%に観察された。肝機能障害はニンテダニブ群で多かった。

結論:
 進行線維化を伴うILD患者において、FVCの年間減少率はプラセボ群よりもニンテダニブ群の患者で有意に低かった。下痢がもっともよくみられた副作用だった。


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by otowelt | 2019-10-09 00:29 | びまん性肺疾患

IPAFの長期臨床経過と転帰

e0156318_16214955.jpg Kim先生の報告です。

Kim HC, et al.
Long-term clinical course and outcome of interstitial pneumonia with autoimmune features.
Respirology. 2019 Aug 6. doi: 10.1111/resp.13665.


背景および目的:
 膠原病の基準を満たさない自己免疫的特徴を有する特発性間質性肺炎(IIP)は、IPAFとして近年定義されている。しかしながら、その長期臨床経過とアウトカムについてはよくわかっていない。

方法:
 われわれは、IIP患者で膠原病と診断された患者586人(63.7%がIPF)、膠原病関連間質性肺疾患患者149人を登録した。近年のガイドラインに準じて、IIPの患者の一部はIPAFと定義された。

結果:
 追跡期間中央値は45ヶ月だった。IIP患者のうち、109人(18.6%)はIPAFに再分類された。非IPAF IIP群と比較して、IPAF群ではDLco(-1.21% vs -4.58%、P-0.001)、全肺気量の減少がゆるやかで(-0.75% vs -2.32%、p=0.019)、追跡期間中の膠原病発症が多かった。IPAFの予後は、非IPAF IIP群よりも良好で、膠原病関連間質性肺疾患群と同等だった。
e0156318_1231727.png
(文献より引用:生存曲線)

 IPAFはIIPコホートにおいて予後良好と関連していたが、これは単変量解析のみの結果で、多変量では有意とは言えなかった。UIPパターン、高齢、低DLcoは、IPAF群における死亡の独立予測因子だった。
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(文献より引用:予後予測因子)

結論:
 非IPAF IIP群と比較すると、IPAF群は追跡期間中の肺機能減少がゆるやかで膠原病発症が多かった。IPAF群の予後は非IPAF IIP群よりも良好だったが、膠原病関連間質性肺疾患群と同等だった。高齢者、UIPパターン、低DLcoはIPAF群の予後不良因子だった。




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by otowelt | 2019-09-18 00:34 | びまん性肺疾患

AJRCCMでのやりとり:外科的肺生検とクライオバイオプシー

e0156318_1543237.jpg AJRCCMで「IPF診断における外科的肺生検とクライオバイオプシー」について議論が交わされています。

参考記事:クライオバイオプシーと外科的肺生検の病理医による一致率は不良

クライオバイオプシーがダメという論調ではなくて、サンプリングエラーをどこまで考えるかという話です。

Romagnoliらの文章を引用します。

「In conclusion, if one considers TBLC as “the baby”, we suggest that the bathwater is dirty and requires a paradigm change. (中略) If we can “clean-up” the bathwater via robust pathological markers that render the probability of diagnosis independent of biopsy size, the baby will be much more comfortable.」

(Romagnoli, et al. Cryobiopsy Compared with Surgical Lung Biopsy in ILD: Reply to Maldonado et al., Froidure et al., Bendstrup et al., Agarwal et al., Richeldi et al., Rajchgot et al., and Quadrelli et al. AJRCCM, August 23, 2019 as DOI: https://doi.org/10.1164/rccm.201906-1252LE)



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by otowelt | 2019-09-11 09:05 | びまん性肺疾患

PAGE試験:軽症~中等症肺胞蛋白症に対するGM-CSF吸入療法

e0156318_9102518.png 肺胞蛋白症に対するGM-CSF治療は自然寛解例が20%存在するため評価が難しいとされていますが、軽症~中等症例におけるPAGE試験の結果がNEJMに掲載されました。

Tazawa R, et al.
Inhaled GM-CSF for Pulmonary Alveolar Proteinosis
N Engl J Med 2019; 381:923-932


背景:
 肺胞蛋白症とは、肺胞内にサーファクタントが異常に蓄積する特徴を有す疾患である。その多くは自己免疫性であり、肺胞マクロファージによる肺サーファクタントの除去を阻害する顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に対する自己抗体が原因とされている。非ランダム化第2相試験において、重症肺胞蛋白症患者に対する組換えヒトGM-CSF吸入に軽度の治療効果が示されたものの、軽症~中等症の患者に対する有効性はまだ明らかとなっていない。

方法:
 二重盲検プラセボ対照試験(PAGE試験)において、室内気のPaO2が70mmHg 未満(有症状の場合は75mmHg未満)の自己免疫性肺胞蛋白症患者64人を対象に、組換えヒト GM-CSF(サルグラモスチム)125μgあるいはプラセボ1日2回7日間の吸入を隔週で24週間投与した(プラセボ群の1人は脱落)。プラセボ群に割り付けられた肺胞蛋白症患者が増悪する可能性を除外するため、重症肺胞蛋白症患者(PaO2<50 mmHg)は本研究から除外となった。プライマリエンドポイントは、A-aDO2のベースラインから治療25週目までの変化量に設定。セカンダリエンドポイントとして、症状(咳嗽、喀痰産生、労作時呼吸困難)、mMRCスケール(0-4点)、肺活量、DLco、PaO2、6分間歩行距離、胸部HRCT所見、血清KL-6、血清CEA、血清SP-D、血清SP-A、血清高感度CRP、血清MCP-1、抗GM-CSF抗体、CATスコアが設定された。また胸部CTで各患者ごとに平均肺濃度をHUで算出し、濃度上昇を評価した。

結果:
 2016年9月から2016年12月までに78人の肺胞蛋白症患者がスクリーニングされた。解析対象となったのはプラセボ群1人脱落を計算すると、63人(GM-CSF群33人、プラセボ群30人)だった。脱落前の特性データでは、GM-CSF群の平均年齢は56.5±12.4歳、プラセボ群の平均年齢は57.2±12.9歳だった。いずれの群も女性が42%だった。mMRCはそれぞれ1.55±0.94点、1.42±0.96点だった。平均PaO2は、それぞれ66.4±8.66mmHg, 68.8±8.96mmHgで、平均A-aDO2は、37.5±9.99mmHg、35.2±11.4mmHgだった。血清KL-6は両群とも極めて高値であり、平均値でそれぞれ5264±3102U/mL, 8104±10345U/mLだった。
 A-aDO2の平均(±標準偏差)変化量は、GM-CSF群(33人)のほうがプラセボ群(30人)より有意に改善した(ベースラインからの変化量平均-4.50±9.03 mmHg vs 0.17±10.50 mmHg,P=0.02)。
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(文献より引用)

 胸部CTにおける肺野濃度変化のベースラインから治療25週目までの変化量についても、GM-CSF群のほうが良好だった(群間差-36.08 HU,95%信頼区間 -61.58~-6.99)。重篤な有害事象は、GM-CSF群6人とプラセボ群3人にみられた。
 平均6分間歩行距離はベースラインでほとんどが360mを超えており、本研究の対象例では有効性を示すにいたらなかった。
 ベースラインから治療25週目までの平均血清KL-6変化は、GM-CSF群で −1199±3098 U/mL、プラセボ群で4.70±9154 U/mLと差がみられ、これは過去の研究でも示されている通りだった。

結論:
 このランダム化比較試験において、組換えヒトGM-CSF吸入は軽症~中等症の肺胞蛋白症患者に対して動脈血酸素分圧を改善させるという点においては有益であるものの、臨床上の利益(QOL質問票スコア改善や6分間歩行距離改善)までは改善させなかった。



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by otowelt | 2019-09-07 08:03 | びまん性肺疾患

SLEにおける間質性肺疾患の臨床的特徴

e0156318_93123.png SLEの間質性肺疾患についての貴重な報告です。

Toyoda Y, et al.
Clinical features of interstitial pneumonia associated with systemic lupus erythematosus
Respir Investig. 2019 Sep;57(5):435-443.


背景:
 全身性エリテマトーデス(SLE)はしばしば肺に影響を与える。しかしながら、間質性肺炎(IP)の頻度は約10%と他の膠原病よりも低いがゆえに、どのIP型がSLEと関連しているかは不明であえる。

方法:
 われわれは、2011年1月から2015年12月までに徳島大学病院に入院したSLE患者69人の診療録および胸部高分解能CT(HRCT)を後ろ向きにレビューした。胸部HRCTが撮影されていない患者は除外された。診断基準(The 1982 revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum 1982;25./ Derivation and validation of the Systemic Lupus International Collaborating Clinics classification criteria for systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum 2012;64:2677e86.)に基づいてSLEは4人の膠原病科医が診断した。

結果:
 外科的肺生検は誰一人として適用されなかった。
 55人(80%)が女性で、SLE発症の平均年齢は42.4歳だった。IPは20人(29%)にみられ、そのうち女性が14人(70%)で、SLE発症の平均年齢は53.4歳だった。有意にIPがなかった集団よりも高齢だった(p=0.003)。有意ではなかったが、IP合併例は男性のほうが多かった。胸膜病変は6人(8.7%)、肺高血圧症は4人(5.8%)、肺胞出血は1人(1.4%)にみられた。
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(患者特性:文献より引用)

 IPが見つかった患者20人のうち、半数はSLE診断時に指摘された。HRCTにおけるIPパターンは、5人(25%)でUIPパターン、11人(55%)でNSIPパターン、OPパターン2人(10%)、分類不能2人(10%)だった。fine cracklesは11人(55%)に観察された。ばち指があった患者は0人だった。平均%努力性肺活量は89.4±16.3%、平均%1秒量は81.0±8.50%、平均%DLcoは66.6±15.1%だった。平均KL-6は785.3±496.5U/mLだった。

 観察期間中、1人にIP急性増悪が起こったが生存した。画像所見では、IP進行はほとんどの症例でゆるやかであり(緩徐進行が12人[60%])、肺機能は保たれていた。IPの有無で生存率に差はなかった。
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(Kaplan-Meier曲線:文献より引用)

結論:
 SLEの症例において、IPは男性や高齢者に多くみられた。NSIPパターンに咥えて、UIPパターンもSLE関連IPとして同定された。SLE患者の生存はIPとは関連していなかった。



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by otowelt | 2019-09-06 00:54 | びまん性肺疾患