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救命救急センターにおける医原性気胸の約半数は中心静脈カテーテル挿入後に起こっている

e0156318_23212340.jpg 報告するにはなかなか勇気の必要な論文です。呼吸器科的には気管支鏡後やCTガイド下生検後の気胸の方がコモンですが、救命救急センターでの気胸については中心静脈カテーテル挿入後の気胸が多いようです。

El Hammoumi MM, et al.
Iatrogenic pneumothorax: experience of a Moroccan Emergency Center.
Rev Port Pneumol. 2013;19(2):65-9.


背景および方法:
 教育病院の救命救急センターでの医原性気胸(IPx)の頻度は、侵襲的な処置が多くなるにつれて増加している。そのため我々はレトロスペクティブ試験において、本センターにおけるIPx症例を同定した。

結果:
 2011年1月から2011年12月までの間、36人の患者が侵襲性処置後のIPxと診断された。平均年齢は38歳(19~69歳)であり、患者のうち21人(58%)が男性、15人(42%)が女性だった。6例が診断的処置後のIPxであり、30例が治療的処置後のIPxであった。8人(22%)が基礎の肺疾患に対する処置であり、28人(78%)が肺以外の疾患に対する処置後のIPxであった。
 IPxを起こした処置として最も多かったものは、中心静脈カテーテル挿入(20人:55%)であり、人工呼吸器装着が8例(22%)であった(そのうち3例は両側気胸)。また胸腔穿刺後のIPxが6例(16%)、救命目的の緊急気管切開後のIPxが2例みられた。
 ほとんどの患者は細径の胸腔ドレーンを留置された。平均ドレナージ期間は3日(1~15日)だった。残念ながら、気管切開後の患者は脳の虚血によって15日後に死亡した。

結論:
 教育病院におけるIPxの頻度は侵襲的な処置が多くなるにつれて増加しているため、十分な監督下でおこなわれるべきである。


by otowelt | 2013-07-29 00:03 | 救急

飛行機内での急変の原因の大半は失神、呼吸器症状、消化器症状

 残念ながら、日本ではアメリカのような「善きサマリア人の法」は適応されません。飛行機内で「お医者様はいらっしゃいますか」という場面で手を挙げて、たとえ機内のあらゆる医療器具を用いても救命できなかった場合、患者家族から訴えられるリスクがある国が日本です。訴訟をおそれて、手を挙げる医師は日本では多くないと言われています(刑法37条第1項、民法698条で責任は免除されるはずだという意見もあります)。

 ―――皆さんは日本国内の飛行機内で急変があった場合、手を挙げますか?

 最近のNEJMはアニメやら動画やら、かなり力を入れているようですね。しかしながら、この動画化の流れが顕著になっていくと、いつの日か、引用が難しくなってくる時代がくるんじゃないかと危惧しています。
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D.C. Peterson, et al.
Outcomes of Medical Emergencies on Commercial Airline Flights
N Engl J Med 2013;368:2075-83.


背景:
 全世界で、毎年27億5000万人が民間航空機を利用するとされており、その飛行中に医学的な緊急事態が生じた場合、医療アクセスは限定されてしまう。われわれは飛行中の医学的緊急事態およびそのアウトカムを報告した。

方法:
 2008年1月1日~2010年10月31日のあいだ、5つのアメリカ国内ないし国際航空会社から、医師が指揮する医療通信センターに通報があった医学的緊急事態の記録をサーベイした。その中で、頻度の高い疾患、機内で提供された医学的支援の種別を同定した。予定外の着陸空港変更、病院搬送、入院発生率、およびこれらに関連する因子を調べ、死亡率を算出。

結果:
 医療通信センターへの通報のあった飛行中の医学的緊急事態は合計11920件あった(飛行604回あたり 1件)。
 このうち、頻度の高かった疾患は、失神または失神前状態(37.4%)、呼吸器症状(12.1%)、悪心または嘔吐(9.5%)だった。心肺停止が最も死亡数が多く、それ以外では失神または失神前状態の死亡が4人と多かった。その他の飛行中の医学的緊急事態の48.1%で、乗り合わせた医師が医療支援を行い、そのうち7.3%では着陸空港が変更された。緊急着陸をおこなう確率は、医師が救援した場合は9.4%(95%信頼区間 8.7〜10.2)、救急医療サービス(EMS)提供者による救援で9.3%(95%信頼区間6.8〜11.7)と高かったものの、乗務員のみで対処した場合は3.8%(95%信頼区間3.1〜4.5)と低い結果であった。多変量解析では、緊急着陸との強い相関があったファクターは自動体外式除細動器(AED)の使用であった(オッズ比3.02、95%信頼区間1.89〜4.83)であった。
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 救援した患者のうち、処方頻度が最も高かったのは酸素で49.9%だった。次いで0.9%生食水の点滴が5.2%、アスピリンが5.0%だった。
 飛行後のフォローアップデータを入手することができた10914人のうち、25.8%が病院に搬送され、8.6%が入院、0.3%が死亡した。入院の原因として、脳卒中の可能性(オッズ比3.36、95%信頼区間1.88~6.03)、呼吸器症状(オッズ比 2.13、95%信頼区間1.48~3.06)、心臓症状(オッズ比 1.95、95%信頼区間1.37~2.77)の頻度が高かった。

結論:
 飛行機内での医学的緊急事態の大半は失神、呼吸器症状、消化管症状によるものであり、医師が任意で医療を提供する頻度が高かった。着陸空港の変更または死亡を起こした医学的緊急事態は少数例であり、飛行中に医学的緊急事態が発生した乗客の4分の1は病院で追加の医学的評価を受けた。



by otowelt | 2013-06-01 00:07 | 救急

東日本大震災における呼吸器疾患の実態

 このブログでも、過去にいくつか東日本大震災関連の論文を紹介しました。

東日本大震災における胸部外傷
東日本大震災における市中肺炎の発生

 Respiratori Investigationからの論文です。とても重要な報告です。

Shinya Ohkouchi, et al.
Deterioration in regional health status after the acute phase of a great disaster: Respiratory physicians' experiences of the Great East Japan Earthquake
Respiratory Investigation, in press. 15 March 2013


背景:
 2011年3月11日に東日本大震災が起こった。引き続いて起こった荒廃は余震によるものではなく、津波によるものであった。
 2012年2月29日現在、15852人が死亡し、いまだ3279人が行方不明の状態である。死亡者のうち、90.6%が溺水、4.2%が破片などの外傷、0.9%が火災による死亡であった。そして、全体の55.7%が65歳以上の高齢者死亡だった。救急医療チームの尽力にもかかわらず十分な援助がいきわたらず、多くの人が彼らの到着前に死亡した。生存したものの避難が必要となった人は宮城県の報告では32万人にのぼったといわれている。
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 そのため、医療従事者の主たる目的は被災地の人の健康状態の悪化を防ぐことにあった。この論文を通して、自然災害の急性期に何が重要であるかを考察したい。

方法:
 地震後の急性期に正確な入院情報を得ることはできなかったため、宮城県内の14の病院からアンケートをに基づいて入院患者の調査をおこなった。これらの病院は宮城県内のベッド数の30%を有していた。呼吸器科に入院した患者に対する調査をおこない、疾患の頻度の変化を調べた。

結果:
 2011年3月11日から4月10日までの患者数は、2010年の同時期と比較して2.7倍に増えていた(1223人 vs 443人)。気管支喘息、COPD急性増悪、市中肺炎は全ての年齢層において2011年のほうが2010年よりも2~3倍増えた(それぞれ98人 vs 32人、117人 vs 46人、443人 vs 202人)。市中肺炎の半数は緊急避難場所から発生したものであった。溺水などの他の呼吸器疾患での入院は少なかった。
 疾患の年齢分布には2010年と2011年で差はみられず、呼吸器疾患での死亡率がこの震災によって有意に増えたわけではなかった。
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結論:
 これらの結果は、避難場所・居住地の劣悪な環境、または避難者過多、基礎資源不足に由来するものである。自然災害の後の急性期の健康被害を予防するために、適切な避難場所、供給システム、ワクチンを含む感染予防策が必要であろう。


by otowelt | 2013-03-25 00:19 | 救急

心肺蘇生に家族が立ち会うことの意義

e0156318_17111674.jpg 愛する家族への心肺蘇生に立ち会った家族のほうが、立ち会わなかった家族よりも心的外傷後ストレス障害症状が少なかったというNEJMからの報告です。
 皆さんは立ち会いたいですか、それとも立ち会いたくないですか。

Patricia Jabre, et al.
Family Presence during Cardiopulmonary Resuscitation
N Engl J Med 2013; 368:1008-1018, March 14, 2013


背景:
 心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation:CPR)への家族の立ち会いが家族や医療チームに与える影響について、意見が分かれている。

方法:
 フランスの15の病院で2009年11月から2011年10月までおこなわれたクラスターランダム化試験である。在宅で心停止を起こし、病院到着前CPRを受けた患者家族570人を本試験に登録した。家族にCPRに立ち会う機会を組織的に提供する群と、家族の立ち会いに関して標準的な方法に従うコントロール群のいずれかにランダムに割り付けた。
 CPR後90日目にImpact of Event Scale (IES)およびHospital Anxiety and Depression Scale (HADS)を用いてアンケート・電話で家族のスコアリングをおこなった。
 プライマリエンドポイントは、90日目に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の関連症状(IES 30点以上)を有する家族の割合とし、セカンダリエンドポイントは、不安・抑うつ症状(HADS 10点以上)、家族の立ち会いそのものが現場のCPR努力に与える影響、医療チームの満足度、法医学的な損害賠償請求の発生など。
 なお、ここで定義する家族とは第一親等の人間のみとした。

結果:
 立ち会い介入群では家族266人中211人(79%)がCPRに立ち会ったのに対して、コントロール群では304人中 131人(43%)がCPRに立ち会った。
 95人の家族(17%)がIES解析に同意しなかったため、残りの475人が感度解析に組み込まれた。
 ITT解析では、PTSD関連症状はコントロール群のほうが立ち会い介入群よりも有意に高く(補正オッズ比1.7、95%信頼区間1.2~2.5、P=0.004)、CPRに立ち会わなかった家族のほうが立ち会った家族よりも有意に高かった(補正オッズ比1.6、95%信頼区間1.1~2.5、P=0.02)。
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 CPRに立ち会わなかった家族で不安と抑うつの症状が高頻度にみられた。家族の立ち会いのもとでのCPRは、蘇生内容、患者生存、医療チームの心理的ストレスレベルに影響せず、法医学的な損害賠償請求は発生しなかった。
 なお、これら両群における患者アウトカム(自発循環の再開、生存した状態での入院、28日生存率)に差はみられなかった(それぞれp=0.59, 0.42, 0.64)。

結論:
 患者のCPRへ家族を立ち会わせることは、心理学的パラメータにおける良好なアウトカムに関連し、蘇生内容の障害や医療チームのストレスが増大することもなかった。


by otowelt | 2013-03-15 00:46 | 救急

東日本大震災における市中肺炎の発生

e0156318_16201243.jpg東日本大震災についてはRespiratory Investigationにも報告があり、以前ご紹介しました。

東日本大震災における胸部外傷

今回、Thoraxから肺炎に関する報告がありました。

Hisayoshi Daito, et al.
Impact of the Tohoku earthquake and tsunami on pneumonia hospitalisations and mortality among adults in northern Miyagi, Japan: a multicentre observational study
Thorax Online First, published on February 19, 2013


背景:
 2011年3月11日に東北地方の大地震と津波が東日本海岸一帯を襲った。3週間以内に肺炎の入院や死亡が地方病院で相次いだ。

方法:
 多施設共同サーベイが宮城県北部の気仙沼市(人口7万4000人)の3病院で行われた。18歳以上の成人患者で2010年3月から2011年7月に市中肺炎で入院した患者をデータベースおよび診療録から同定した。
 分割回帰分析(Segmented regression analyses)がおこなわれ、肺炎の頻度がどのように変化したかを検証した。
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 気仙沼市は、65歳以上の高齢者が30.2% (n=22421)を占め、80歳以上の高齢者は8.9% (n=6618)にのぼる。これは全国平均の数値(23%、6.4%)よりも高いものである。

結果:
 合計550人の肺炎の入院があり、325人は被災前、225人は被災後であった。被災後の市中肺炎の90%が65歳以上であり、8例(3.6%)のみが津波による溺水(near-drowning)と関連していた。臨床的パターンと病原菌は被災前後を問わず同定できた。Streptococcus pneumoniae, Haemophilus influenzae、Klebsiella pneumoniaeが最も多くみられた病原菌であり、被災後はHaemophilus influenzaeによる肺炎が有意に多くみられた。
 被災後3ヶ月の間は肺炎の頻度が右肩上がりであり、週ごとの肺炎による入院および肺炎関連死亡の発生率はそれぞれ5.7倍(95% CI 3.9 to 8.4)、8.9倍(95% CI 4.4 to 17.8)であった。この増加は介護施設の入居者に最も多く、避難場所の患者がそれに次いだ。
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結論:
 東北地方の大地震と津波後の成人に肺炎の発症が多くみられた。この確たる原因は同定できなかったものの、年齢やストレスなどの複数の因子が絡み合い、肺炎のアウトブレイクにつながったのではないだろうか。


by otowelt | 2013-02-20 11:11 | 救急

東日本大震災における胸部外傷

e0156318_16201243.jpg 東日本大震災から2年近く経とうとしているのですね。
 ディスカッションで述べられているように、生存できなかった犠牲者の多さが胸部外傷受診の低さにつながったのではないかと思います。

Kimiaki Sato, et al.
Chest injuries and the 2011 Great East Japan Earthquake
Respiratory Investigation(2013), doi:10.1016/j.resinv.2012.11.002


背景:
 大地震における胸部外傷についてはまだよくわかっていない。われわれは、2011年3月11日の東日本大震災によって診断ないし治療された胸部外傷について患者プロファイルを記載することとした。

方法:
 大震災から最初の1週間の間に石巻赤十字病院を受診した3938人の診療録をレトロスペクティブにレビューした。
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 合計77人の患者が病院到着時死亡していた。残りの3861人のうち42人(1.1%)が胸部外傷を有していた。胸部外傷は身体所見や胸部レントゲン、胸部CTに基づいて診断された。

結果:
 胸部外傷は42人の患者にみられ、22人が男性、20人が女性であった(年齢範囲21-99歳)。胸部外傷の最もよくみられた原因は津波であった(21人)。その次に転落(9人)、交通事故(1人)であった。しかし、11人については情報が喪失していた。
 最もよくみられた胸部外傷の病因は裂傷や挫傷といった表層外傷であった(37人)。5人のみが肋骨骨折をきたしており、胸腔内異常は気胸(3人)、血胸(1人)、誤嚥(1人)といった内訳であった。

ディスカッション:
 Wenchuanにおける地震や、阪神淡路大震災では10%以上の患者に胸部外傷がみられたとされている(World J. Surg. 2010;34:728–32.、Chest 1996;110:759–61.)。今回の東日本大震災における胸部外傷は少なかったが、これは全体の重症度が低かったり地震の規模が小さかったわけではなく、規模の大きさや津波の影響、低体温の影響などによって致死的に陥った犠牲者が多数存在したためではないかと考えられる。

結論:
 胸部外傷の患者数は驚くべきことに少数であった。ほとんどの患者が入院を要さなかった。重篤な胸部外傷による少数生存者は、大地震による津波によって説明される外傷であった。
 

by otowelt | 2013-01-05 10:57 | 救急

院外心肺停止におけるエピネフリン投与は本当に妥当か

Editorialで絶賛されているスタディ。

Akihito Hagihara, et al.
Prehospital Epinephrine Use and Survival Among Patients With Out-of-Hospital Cardiac Arrest
JAMA. 2012;307(11):1161-1168


背景:
 エピネフリンは、院外心肺停止:out-of-hospital cardiac arrest
 (OHCA)における心配蘇生において広く使用されている。しかしながら
 病院到着前におけるエピネフリンの効果の効果については
 まだよくわかっていない。

目的:
 非ランダム化デザインのプロスペクティブ観察研究および
 propensity scoreマッチングを用い、
 院外心停止のCPRにおける有効性を検討。

方法:
 ウツタイン様式による全国の院外心停止例登録システムを利用。
 2005~2008年の院外心停止例417188例が解析された。

アウトカム:
 病院到着前の自己心拍再開、心肺停止後1ヶ月生存率、
 神経学的予後良好(Cerebral Performance Category 1または2)
 での生存率、全身予後良好(Overall Performance Category 1または2)
 での生存率とした。

結果:
 病院到着前の自発心拍再開率は、エピネフリン投与群において
 15030例中2786例(18.5%)で、非投与群であった
 402158例中23042例(5.7%)に比べ有意に高いものであった
 (P<0.001)。propensity scoreでは、エピネフリン群、
 非投与群のそれぞれ13041例をマッチングによる解析においても
 エピネフリンの自発心拍再開率は有意に高いことがわかった
 (18.3%vs.10.5%、P<0.001)。心肺蘇生から1ヶ月目における、
 生存率、神経学的予後良好な生存率、全身予後良好な生存率が
 得られた患者の割合は、
 生存率:
   エピネフリン群805例(5.4%)、非投与群18906例(4.7%)
 神経学的予後良好な生存率:
   エピネフリン群205例(1.4%)、非投与群8903例(2.2%)
 全身予後良好な生存率:
   エピネフリン群211例(1.4%)、非投与群8831例(2.2%)
 すなわち、生存率はエピネフリン群で有意に高かったが、
 神経学的予後ないしは全身機能の予後良好による生存率では
 エピネフリン群が非投与群を有意に下回る結果となった(P<0.001)。
 propensity scoreの解析でも同様であった。また、

結論:
 日本における院外心肺停止患者において
 末梢エピネフリン投与は有意に病院到着前の
 自己心拍再開と関連していたが、
 心肺停止後1ヶ月の機能アウトカムには負の相関がみられた。
 

by otowelt | 2012-03-29 12:01 | 救急

救急における緊急挿管で片肺挿管の判断に肺エコーは有用

肺エコーで知っておくべきものは、言わずもがな
lung slidingである。sea shore signとも呼ばれるが、
これは呼吸運動に伴う胸膜の動きを観察したもので、
正常であれば、横にスライドしている像が確認できる。
見えない場合気胸が示唆されるが、これ自体は感度はあまり高くない。

B-line、commet tail artifactなどと呼ばれる胸膜から伸びる
縦長のアーチファクトは、肺水腫などでみられる所見であるが
これも有名であると思う。(B line同士の幅が7mm以内が
一定のコンセンサスである。)

斬新なスタディだなぁと思った論文が出ていた。
片側挿管をエコーで判断するというものである。
緊急時にポータブルレントゲンほどウザッたらしいものはない。

Shyh-Shyong Sim, et al.
Ultrasonographic lung sliding sign in confirming proper endotracheal intubation during emergency Intubation
Resuscitation 2012; 83;307-312


目的:
 予期せぬ片肺挿管は、低換気、無気肺、バロトラウマ、
 ひいては患者の死につながる。いくつものスタディによって片肺挿管
 を同定する方法が考案されたものの、救急現場において
 信頼できる手技は限られている。このスタディは、
 エコーによる適切な気管挿管の精度と時間性を評価したものである。

 
方法:
 これは国立大学教育病院の救急部においておこなわれた
 プロスペクティブ単一施設観察研究である。
 緊急挿管を呼吸不全あるいは心肺停止において
 おこなわれた患者を登録した。挿管後、ベッドサイドエコーにおいて
 換気中における両肺のスライディングを同定(鎖骨中線上)する方法をとった。
 胸部レントゲンを確実に気管挿管がおこなわれているかの確認として
 撮影した。

結果:
 115人の患者が登録され、9人(7.8%)が片肺挿管であった。
 エコーにおける精度(精確度)は88.7%(95%CI 81.6–93.3%)だった。
 非心肺停止症例においてPPVは94.7%(95% CI: 87.1–97.9%)で、
 心肺停止症例ではPPVは100% (95% CI: 87.1–100.0%)であった。
 エコー所要時間は88秒(IQR: 55.0, 193.0)であり、胸部レントゲンは
 1349秒であった(IQR: 879.0, 2221.0)。

結論:
 このスタディにおいて、両側肺エコーによる肺スライディング所見のPPVは
 高く、特に心肺停止症例においてきわめて高かった。所要時間を考えると、
 胸部レントゲンよりもエコーの方が有益かもしれない。

by otowelt | 2012-03-04 08:15 | 救急

甲状腺クリーゼ

●甲状腺クリーゼ概論
・甲状腺クリーゼとは、少なくとも1つの臓器不全を伴った
 甲状腺による代謝亢進状態である。
S.T. Tietgens and M.C. Leinung, Thyroid storm, Med Clin North Am 79 (1995), pp. 169-184.
・甲状腺機能亢進症患者の1~2%がクリーゼになる 
・治療しなければ致死率は50~90%といわれている
Fisher, J. N. Management of thyrotoxicosis. South Med J, 2002: 95(5); 493.
・早期治療しても致死率は20~30%といわれている
Singhal, A., & Campbell, D. "Thyroid storm." 2003.

●甲状腺クリーゼの症状 (from UpToDate)
 不安いらいら
 脱力 (上肢と大腿)
 手指振戦
 発汗異常、耐暑障害
 頻脈
 倦怠感
 食欲低下がないのに体重減少
 下痢・蠕動運動亢進
※意識障害+高体温+発汗・頻脈・下痢で鑑別に入れる必要がある。
※加えて、女性の中には月経不順・停止が起こりうる。
 これにより不妊になることがある。男性の場合、勃起不全などが起こる。

・高齢者は、高熱、多動などの典型的クリーゼ症状を呈さない場合があり
 (apathetic thyroid storm)、診断の際注意する。
・未治療あるいは治療が不適切な甲状腺機能亢進症が原因となる。
 感染、外傷、甲状腺切除術およびその他の手術的処置、
 塞栓症、糖尿病性アシドーシス、放射線ヨード治療、抗甲状腺剤中止、
 ストレス、脳血管障害、妊娠中毒、または分娩などが誘因となる 。
・約1/3の例では誘因が不明だが、甲状腺クリーゼの誘因として
 感染症の頻度が最も高いと思われる。

●甲状腺クリーゼの診断
1.診断基準 2008年
・必須項目
 甲状腺中毒症の存在(遊離T3 および遊離T4の少なくともいずれか一方が高値)
・症状
1. 中枢神経症状
  不穏、せん妄、精神異常、傾眠、けいれん、昏睡。Japan Coma Scale (JCS)
  1以上またはGlasgow Coma Scale (GCS)14 以下
2. 発熱(38 度以上)
3. 頻脈(130 回/分以上)
4. 心不全症状
  肺水腫、肺野の50%以上の湿性ラ音、心原性ショックなど重度な症状
  NYHA分類4 度またはKillip 分類 III 度以上
5. 消化器症状
  嘔気・嘔吐、下痢、黄疸を伴う肝障害
・確実例
必須項目および以下を満たす
a.中枢神経症状+他の症状項目1つ以上、または、
b.中枢神経症状以外の症状項目3 つ以上
・疑い例
a.必須項目+中枢神経症状以外の症状項目2つ、または
b.必須項目を確認できないが、甲状腺疾患の既往・眼球突出・甲状腺腫の存在
  があって、確実例条件のa またはb を満たす場合


2.
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・甲状腺クリーゼの治療
1.甲状腺ホルモン合成阻害
 メルカゾール(メチルメルカプトイミダゾール)1錠5mg 
 1回10~20mgを6時間ごとに経口摂取もしくは胃管投与 
 ※末梢でのT4からT3への変換抑制作用を期待して、
  プロパジール(プロピルチオウラシル)
  100~400mgを6時間ごとに投与することもある(300-400mg8時間ごととも)

2.血中の甲状腺ホルモンを下げる
  ルゴール  1回10滴 6時間ごとに経口 7日間
 (strong iodine solution; iodine 50mg/ml, KI 100mg/ml)
  内服用ルゴール液には1滴あがり6.3mgのヨードが含まれており、
  ルゴール液1滴には4mgのヨードが含まれている。
  甲状腺ホルモン分泌抑制のためには10mg/日の
  ヨードで十分であるが甲状腺クリーゼの場合には、
  下痢による吸収不全のため100mg以上の大量ヨードが必要
  またはヨウ化カリウム(38.2mg)1日1錠
 ※ヨードのかわりに市販の造影剤(100ml/日)を用いることもある
 ※ヨードアレルギーの場合
  リーマス(炭酸リチウム) 1回300mg 1日4回 6時間ごと
  炭酸リチウムは甲状腺ホルモン分泌抑制作用をもつ。血中濃度を1mEq/lに保つ。

3.循環不全にたいして
 インデラル(プロプラノロール) 1A2mg
 1mg/分で10mgまで 10分かけて静注、その後20mgを6時間ごと経口投与
 あるいはヘルベッサー90~180mgを分3で。
 心不全へのジギタリスは2倍量。

4.甲状腺ホルモンのT4からT3への変換を抑制する
 ソルコーテフ(ヒドロコルチゾン)
 1回100mg 6時間ごとに静注

5.発熱にアスピリンは使わない(アセトアミノフェンはOK)
  代謝亢進作用、甲状腺ホルモン結合蛋白から
  甲状腺ホルモンを置換する作用があるため原則として用いない。

6.FT4を3-7日ごとに測定する。正常化すればヨード剤中止可。
  中止後1-2週間は増悪の可能性も考えておく。
  FT4正常化もしくは2-3週間たってから抗甲状腺薬減量を考える。


by otowelt | 2012-03-03 05:51 | 救急

インピーダンス閾値弁装置を標準CPRに加えても、予後改善効果はない

以前LancetにACDの論文があった。
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Standard cardiopulmonary resuscitation versus active compression-decompression cardiopulmonary resuscitation with augmentation of negative intrathoracic pressure for out-of-hospital cardiac arrest: a randomised trial. Lancet. 2011 Jan 22;377(9762):301-11.

今回、NEJMからITDの論文が出た。
ACD-CPRとともに有効とされていたが、
この論文では、改善はみられなかった。

A Trial of an Impedance Threshold Device in Out-of-Hospital Cardiac Arrest
N Engl J Med 2011;365:798-806.


背景:
 インピーダンス閾値弁装置(ITD)は、胸腔内圧の陰圧を増加させ
 CPR時の静脈還流量と心拍出量を増加させることができる。
 以前の研究では、CPR時にITDを使用することで心停止後生存率が
 改善する可能性があるとされた。

方法:
 アメリカとカナダにある10の施設で、院外CPA患者を対象とし
 標準的CPRにおいてITD装置を使用した場合とプラセボITD(sham ITD)を
 使用した場合で比較。プライマリアウトカムは、十分な機能
 (修正Rankin scaleで3以下)での生存退院とした。

結果:
 8718人のうち、4345人がプラセボ群、4373人がITD装置群にランダムに
 割り付け。プライマリアウトカム基準を満たした患者は、ITDのプラセボ群
 では260人(6.0%)、ITD装置群では254人(5.8%)だった
 (補正後リスク差 -0.1 %ポイント、95%CI -1.1~0.8,P=0.71)。
 救急部へ到着した時点での心拍再開率、生存した状態での入院率、
 生存退院率などを含むセカンダリアウトカムにも差はなかった。

結論:
 院外CPA患者に対する標準的CPRにITDを使用しても、
 十分な機能を有した状態での生存率に改善はない。

by otowelt | 2011-09-02 05:01 | 救急