カテゴリ:内科一般( 83 )

Dr. Houseのドラマによって診断できたコバルト中毒の一例

 Dr. Houseは私も好んでよく見ていました。極めてレベルの高い医療ドラマですね。日本でもああいったドラマを放送できるようになって欲しいものです。

Kirsten Dahms, et al.
Cobalt intoxication diagnosed with the help of Dr House
The Lancet, Volume 383, Issue 9916, Page 574, 8 February 2014
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 2012年5月のことだった、55歳の男性がわれわれのクリニックに重症心不全のために紹介されてきた(NYHA IV度)。彼のBNPは1053 ng/Lにまで上昇しており(正常値<55 ng/L)、心エコー検査でEFは25%にまで低下していた。彼は人工股関節手術以外に大きな既往歴はないが、付け加えるとするならば、彼は聴覚障害と視力障害があること、甲状腺機能低下症、逆流性食道炎を有していた。心臓カテーテル検査では、冠動脈疾患は否定的であり、心筋症が心不全の原因ではないかと考えた。彼の縦隔および鼠径リンパ節は腫大していた。
 彼は2010年11月に、傷ついたceramic-on-ceramicの人工関節からmetal-on-polyethyleneの人工関節に再置換されていた。われわれが医学生の講義で用いているDr. Houseシリーズの中に、これらの症状に合致する例を検索したところ、シーズン7第11話に合致するものがあった(Season 7 #11 FAMILY PRACTICE)。それがコバルト中毒である。われわれは股関節の放射線学的検査とコバルトとクロムの測定を行った。その結果、血液検査においてコバルトとクロムが極度に上昇していた(それぞれ正常値の1000倍、100倍)。われわれは、2,3-ジメルカプトプロパン-1-スルホン酸ナトリウムによる治療を導入した。そして新しいセラミック製の人工股関節に再々置換をおこない、植込み型除細動器を挿入した。置換術時、残存セラミック片によって人工関節頭はひどく傷ついていた。
 置換術ののち患者のコバルトおよびクロム濃度は低下し、患者は回復した。しかしながら、彼の聴覚障害・視力障害はほとんど回復しなかった。


by otowelt | 2014-02-13 00:42 | 内科一般

オンラインの身長・体重の自己申告は理想的な数値を入力しがち

e0156318_9461664.jpg 少しでも理想的な数値を入力したくなる気持ちはありますよね。

Kirrilly Pursey, et al.
How Accurate is Web-Based Self-Reported Height, Weight, and Body Mass Index in Young Adults?
J Med Internet Res 2014;16(1):e4


背景:
 ウェブによるアプローチは健康的介入に効果的である。しかしながら、オンラインでの自己申告の体重の精度について評価された研究はほとんどなく、BMIについて報告したものが1つあるのみである。

目的:
 若年オーストラリア人である被験者にオンラインで身長と体重を申告してもらい、BMIを計算する。

方法:
 ソーシャルメディアサイトで18歳~35歳の被験者を募集し、身長と体重をオンラインで入力してもらった。引き続いて、客観的に研究者によってこれらの測定が行われた。

結果:
 被験者は79.5%が女性、平均年齢は23.74歳だった。平均BMIは24.18だった。
 自己申告の身長は1.36cm高めに申告されていた(SD 1.93; P<.001)。また、自己申告の体重は0.55 kg少なめに申告されていた(SD 2.03; P<.001)(理想的な方向に入力する傾向にあった)。結果的にBMIは–0.56 kg/m2低めに算出される結果となった(SD 0.08; P<.001)。
 実測のデータと自己申告のデータには強い相関性がみられた(身長: r=.98, 体重: r=.99, BMI: r=.99; P<.001)。BMIカテゴリーや性別ごとに精度を評価した場合、女性や肥満の被験者において体重は低く自己申告されていることがわかった(女性:P=.002、肥満:P=.02)。

結論:
 自己申告と実測の体重・身長のデータにはある程度の一致性・相関性はあった。オンラインでの入力も有用なツールとして用いることができるかもしれない。


by otowelt | 2014-01-09 00:26 | 内科一般

ナッツ類の摂取と死亡リスクの低下

e0156318_17255138.jpg ナッツと死亡リスクの関連についての論文です。

Ying Bao, et al.
Association of Nut Consumption with Total and Cause-Specific Mortality
N Engl J Med 2013; 369:2001-2011


背景:
 ナッツの摂取が多ければ、心血管疾患や2型糖尿病といった主要な慢性疾患のリスクが低くなるとされている。しかしながら、ナッツの摂取と死亡との関連ははっきりしていない。

方法:
 看護師の健康調査(1980~2010年):女性76464人および医療従事者の追跡調査(1986~2010 年):男性42498人を対象に、ナッツの摂取とその後の全死亡・各死因別死亡との関連を調査した。
 癌、心疾患、脳卒中の既往がある人は除外された。ナッツの摂取はベースラインの時点で評価して、2~4年ごとに更新した。

結果:
 合計3038853人年の追跡において、女性16200人、男性11229人が死亡した。既知のリスク因子、または疑われるリスク因子について補正後、男女両方でナッツの摂取と全死亡とのあいだに負の相関関係があった。ナッツを摂取した参加者における摂取しなかった参加者と比較した場合、死亡の多変量ハザード比は摂取が週1回未満で0.93(95%信頼区間0.90~0.96)、週1回で0.89(95%信頼区間0.86~0.93)、週2~4回で0.87(95% 森羅区間0.83~0.90)、週5~6回で0.85(95%信頼区間0.79~0.91)、週7回以上で0.80(95%信頼区間0.73~0.86)であった(P<0.001)。ナッツの摂取と、癌、心疾患、呼吸器疾患による死亡とのあいだにも、有意な負の相関関係があった。

結論:
 看護師やその他の医療従事者から構成される独立した2コホートにおいて、ナッツ摂取の頻度に死亡やその他の予測因子とは独立して、全死亡・各死因別死亡との負の相関関係があった。


by otowelt | 2013-11-27 00:11 | 内科一般

5月31日:世界禁煙デー

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5月31日は世界禁煙デーです。

Wikipediaより引用
「毎年5月31日が世界禁煙デーとなっており、国際デーの1つである。(中略)1995年時点で世界の喫煙者は10億1000万人であり、約5人に1人の割合となっている。毎年世界で300万人が喫煙が原因とみられるがんや心臓病で亡くなっており、このままでは2030年代初頭には喫煙による死亡者が年間1000万人に達するとWHOは警告している。」

 医療従事者の喫煙率もまだまだ低いとは言えません。

医師と看護師の喫煙率


by otowelt | 2013-05-31 06:57 | 内科一般

ステロイド内服開始1ヶ月以内は肺塞栓のリスクが高い

e0156318_23212863.jpg ステロイド使用と肺塞栓の症例対照研究です。リスクが高いといっても、実臨床では内服初期から全例塞栓の予防をおこなうのは現実的ではありません。

Danka J. F. Stuijver, et al.
Use of Oral Glucocorticoids and the Risk of Pulmonary Embolism
A Population-Based Case-Control Study
CHEST 2013; 143(5):1337–1342


背景:
 内因性のステロイド過剰は静脈血栓塞栓症(VTE)のリスク因子と考えられる。外因性のステロイド使用がVTEのリスクかどうかはまだわかっていない。われわれはステロイドを使用している患者の症候性の肺塞栓症(PE)のリスクを定量化した。

方法:
 オランダの集団ベース薬局登録システム:PHARMO Record Linkage Systemによる症例対照研究を実施した。症例は4495人のPEで初回入院した1998年から2008年までの患者で、年齢・性別マッチした16802人のPEの既往のないコントロールを登録した。
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A:ステロイド開始のタイミング、B:ステロイド内服期間

結果:
 平均年齢はいずれも60歳で、57%が女性だった。
 PEのリスクは、ステロイド薬曝露から最初の30日に最も高かった(補正オッズ比5.9, 95%信頼区間 2.3-3.9)。また、1年超の長期使用者については、使用中はゆるやかにそのリスクは低下していった(オッズ比1.9、95%信頼区間1.3-2.9)。低用量ステロイド使用(プレドニゾン換算で1日用量5mg未満)は2倍のPEのリスク増加をもたらした(オッズ比1.8、95%信頼区間 1.3-2.4)。また、高用量(プレドニゾン換算で1日用量30mg超)は10倍のリスク増加をもたらした(オッズ比9.6、95%信頼区間 4.3-20.5)。
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 使用期間と使用量の層別化では、用量に関係なく直近でステロイド内服をはじめた患者でPEリスクは高かった。
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結論:
 経口ステロイド治療は、特にステロイド投与後初期1ヶ月の間でのPEのリスクを増加させるかもしれない。


by otowelt | 2013-05-12 00:02 | 内科一般

慢性特発性蕁麻疹に対してオマリズマブ(ゾレア®)は有効

e0156318_14312949.jpg 当院にはステップ3以降の気管支喘息の患者さんも数多くいますので、ゾレア®を時々使用しています。アレルギーを有する気管支喘息患者さんでは何となく皮膚症状や掻痒感もやや軽減するような印象を持っていたので、個人的に合点がいきました。

Marcus Maurer, et al.
Omalizumab for the Treatment of Chronic Idiopathic or Spontaneous Urticaria
N Engl J Med 2013. DOI: 10.1056/NEJMoa1215372


背景:
 慢性特発性蕁麻疹(chronic idiopathic urticaria / chronic spontaneous urticaria)の多くの患者は、高用量のH1受容体拮抗薬であっても治療反応性がない。H1受容体拮抗薬が無効である患者は、H2受容体拮抗薬、ロイコトリエン拮抗薬、ステロイドなどの薬剤が治療オプションとして含まれるが、慢性特発性蕁麻疹に対する長期使用の効果は不明である。第2相試験では、抗IgEモノクローナル抗体であるオマリズマブによる当該患者への効果が示された(J Allergy Clin Immunol 2011;128:567-73.)。

方法
 この第3相多施設共同ランダム化二重盲検試験は、中等度から重症の慢性特発性蕁麻疹の患者でH1受容体拮抗薬治療によっても症状が持続する者を対象にオマリズマブの安全性と効果を検証したものである。
 われわれは12~75歳までの慢性特発性蕁麻疹患者323人を4週間あけて3回の皮下注射を受ける治療に登録した。患者はランダム化され、オマリズマブの量は、75 mg, 150 mg, 300 mgとし、プラセボを別途準備した。患者はH1受容体拮抗薬を持続的に使用してもよいものとした。観察期間は16週間とした。
 プライマリ効果アウトカムは、ベースラインからの掻痒感重症度スコア(0点から21点で高いほど重症)とした。セカンダリアウトカムは、ベースラインからのUAS7変化、週ごとの蕁麻疹の数、UAS7が6点以下の患者比率などとした。

結果:
 平均年齢は42.5±13.7歳で、76%が女性、85%が白人、平均体重は82.4±21.9 kg、平均BMIは29.8±7.3であった。ベースラインの平均IgEは168.2±231.9 IU/mLと上昇していた。
 4群すべてにおいてベースラインの重症度スコアはおよそ14点であった。12週目での平均(±標準偏差)の掻痒感重症度スコアの変化はプラセボ群で−5.1±5.6点、オマリズマブ75mg群で−5.9±6.5点(P = 0.46)、150mg群で−8.1±6.4点(P = 0.001)、300mg群で−9.8±6.0であった(P<0.001)。
 事前に規定したほとんどのセカンダリアウトカムについて、12週時点で同様の用量依存性の効果がみられた。有害事象の頻度は全群同等であった。重篤な有害事象はまれであったが、300mg群(6%)ではプラセボ群(3%)、75mg(1%)、150mg(1%)よりも多かった。

結論:
 オマリズマブはH1受容体拮抗薬の使用によっても持続する慢性特発性蕁麻疹の臨床症状や徴候を減弱させることができる。


by otowelt | 2013-03-05 12:09 | 内科一般

ダビガトランは静脈血栓塞栓症の再発抑制効果が高く出血イベントの頻度が低い

 腎障害患者や高齢者でなければ、ダビガトラン(プラザキサ)を使用するケースが増えてきたと思います。余談ですが、110mgに減量する症例は「BRA-P(ブラP)」と覚える方法があります(日経メディカルオンライン プライマリケア医のための心房細動入門(小田倉弘典先生)参照)。
Bleeding history:消化管出血の既往
Renal dysfunction:中等度腎機能障害(CCr30~50mL/分)
Age≧70:70歳以上
P-糖タンパク阻害薬併用:アミオダロン、ベラパミルなど

 NEJMから、静脈血栓塞栓症に対するダビガトランとワーファリンの比較試験、およびダビガトランとプラセボの比較試験の2試験の報告です。2011年の国際血栓止血学会で発表された内容を論文化したものです。

Sam Schulman, et al.
Extended Use of Dabigatran, Warfarin, or Placebo in Venous Thromboembolism
N Engl J Med 2013;368:709-18.


背景:
 ダビガトランは直接的にトロンビンを阻害する抗凝固薬であり、固定用量で投与することができ、また検査によるモニタリングが不要であることから、静脈血栓塞栓症の延長治療(the extended treatment)に適しているかもしれない。

方法:
 2つのランダム化二重盲検試験において、3ヶ月以上の初期治療が終了した静脈血栓塞栓症患者を対象に、ダビガトラン150mg1日2回とワーファリンを比較した対照試験(33ヶ国、265施設)と、ダビガトラン150mg1日2回とプラセボを比較した対照試験(21ヶ国、147施設)をおこなった。
 評価は治療開始後15日目、30日目と1ヶ月ごとに合計180日目まで続けた。両試験とも、プライマリ効果アウトカムは、症状および客観的静脈血栓塞栓症の再発、あるいは静脈血栓塞栓症による死亡(プラセボ群の説明できない死亡を含む)とした。

結果:
 2006年7月から2010年7月までの間、2866人の患者がRE-MEDYに登録され、2007年11月から2010年9月までの間、1353人の患者がRE-SONATEに登録された。

●ワーファリン対照試験(RE-MEDY):
 静脈血栓塞栓症の再発は、ダビガトラン群1430人中26人(1.8%)、ワーファリン群1426人中18人(1.3%)にみられた(ダビガトランのハザード比 1.44、95%信頼区間0.78~2.64、P=0.01)。
 重大な出血事象は、ダビガトラン群13人(0.9%)、ワーファリン群25人(1.8%)に発生した(ハザード比 0.52、95%信頼区間 0.27~1.02)。重大な出血あるいは臨床的に重要な出血は、ダビガトラン群のほうが少なかった(ハザード比 0.54、95%信頼区間 0.41~0.71)。急性冠症候群は、ダビガトラン群13人(0.9%),ワーファリン群3人(0.2%)に発生した(P=0.02)。
●プラセボ対照試験(RE-SONATE):
 静脈血栓塞栓症の再発は、ダビガトラン群681人中3人(0.4%)、プラセボ群662人中37人(5.6%)にみられた(ハザード比 0.08、95%信頼区間0.02~0.25、P<0.001)。 重大な出血は、ダビガトラン群で2人(0.3%)に発生し、プラセボ群では発生しなかった。重大な出血あるいは臨床的に重要な出血は、ダビガトラン群36人(5.3%)、プラセボ群12人(1.8%)に発生した(ハザード比 2.92、95%信頼区間 1.52~5.60)。急性冠症候群は、ダビガトラン群とプラセボ群でそれぞれ1人に発生した。
結論:
 ダビガトランは、静脈血栓塞栓症の延長治療(the extended treatment)に有効であり、重大な出血あるいは臨床的に重要な出血のリスクは、ワーファリンより低かったがプラセボより高かった。


by otowelt | 2013-02-22 17:12 | 内科一般

死亡確認の方法について

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・はじめに
 多くの医師は、患者さんの死と向き合わなければなりません。特に癌を診療している医師は、患者さんの生と死と長期間にわたって向き合う必要があります。肺癌や間質性肺炎の診療している呼吸器内科医は、平均的に1ヶ月に1~2人の患者さんの死亡確認をしていると思います。
 はたして、医師はどのようにして死亡確認をおこなっているのでしょうか。これについて教科書にもウェブサイト上にもあまり記載がなく、個人的に書いてみようと思いました。


・医師が死亡確認について教わるとき
 死亡確認をどのようにして行うのか、医師が最初に教わるのは初期研修医の頃です。多くは、指導医の医師から教わるでしょう。そのため、閉鎖的な文化で受け継がれていく傾向があります。医師はお互いに死亡確認をしている現場を目にすることはまずありませんので、互いの方法について情報交換をすることもあまりありません。


・死亡確認の手順
 果たして死亡確認はどのような方法で行うのが正しいのでしょうか。多くの場合、睫毛反射・対光反射(直接反射、間接反射)の消失、胸部聴診(心音・呼吸音の確認)、橈骨動脈・頸動脈の触診をおこない、心電図モニターで脈拍がゼロで平坦であるのを確認し、家族に向かって死亡宣告をおこなう、といった方法がとられていると思います。これらの確認は救急救命士にも必要な作業ですが、死亡かどうかをめぐってトラブルになることが昨今ニュースに取り沙汰されていますので、明らかな社会死状態でなければ、救急搬送をおこなうことが通例です。特に、施設入所中の高齢者では死亡の判断自体が困難なこともあります。
Bern-Klug M. Calling the question of "possible dying" among nursing home residents: triggers, barriers, and facilitators. J Soc Work End Life Palliat Care. 2006;2(3):61-85.
 確認作業をもう少し簡略化して、対光反射の消失、胸部聴診、心電図モニターの確認の3点のみで死亡宣告を行う医師もいると思います。この理由は、「死」が医学的に心臓・肺・脳の全ての不可逆的な機能停止と定義されており、それらをすべて満たす他覚的所見が上記の手法であるためです。脳死のように、死亡確認に厳密な基準や指針が策定されているわけではありません。
 ただ死亡の徴候を全てを満たしたとしても、死亡確認を早急におこなうと、心電図波形が微弱に復古することもあるため、ある程度の時間を待ってから死亡確認を行うことが重要です。ほぼ完全に死の徴候を満たした状態であっても、心拍数だけが心電図モニター上弱く脈打っていることがあります。極端な場合、QRS幅の広い脈拍数20/分くらいの微弱な脈が30分くらい続くこともあります。個人的には心電図波形が平坦になるのを待って死亡確認していますが、無脈性電気活動(PEA)と判断して死亡確認をする医師も目にしたことがあります。


・死亡宣告
 死亡確認をおこなった主治医は、家族の前で死亡宣告することが多いです。その際、色々な言い方があると思いますが、医師の方々はどのような言葉を使用しているでしょうか。

「○月×日△時□分、死亡を確認しました」
「○月×日△時□分、御臨終です」
「○月×日△時□分、お亡くなりになりました」

 私個人としては「死亡を確認しました」という言葉を使っています。本来「御臨終」は「終わりに臨んでいる」と言う意味で、死亡した直後に用いる言葉としては本来不適切なものです。しかし、日本人は「死」と言う言葉を忌み嫌う傾向があるため、臨終という言葉を便宜的によく使用するようです。
 ケースバイケースですが、そういった言葉の後に、「よく頑張られましたね」「生前家族様にこんなことをおっしゃっていましたよ」といった家族の皆さんが死を受容しやすくするよう声掛けをおこなうことが多いと思います。
 アメリカの場合、"His/Her heart stopped." "He/She passed away."などと言うのが一般的で、その後に"I am sorry ~."とお悔やみの言葉を述べることが多いです。日本と同じ理由で、died, deathという直接的な言葉はあまり使用しません。


・死亡時刻の確認
 死亡時刻は死亡診断書に記載する必要がありますので、病院での自然病死だと分単位まで記録することが多いです。しかし、そもそも死亡時刻を正確に死亡確認の場で家族に告げる必要があるかどうか、という議論もあります。この死亡時刻を宣告する行為は儀式的なもので、特にマスメディア(特にテレビドラマ)の影響が大きいように思われます。必ずしも家族に告げる必要はありません。
 院内感染対策の観点から腕時計をしていない医師も多く、だからといってPHSや携帯電話で時刻を確認することは、遺族の方々に失礼にあたる可能性が高いです。現代では携帯電話の液晶画面の時計の方が、針時計よりも正確かもしれませんが、死亡確認の際に携帯電話を取り出されるとやはり違和感を感じてしまいます。病室に時計があればよいと思いますが、そうでなければ腕時計をその時だけ持参するか、看護師さんに借りるといった工夫が必要になります。あるいは死亡確認の作業に入る前に、部屋の隅で現在の時刻を確認しておくという方法もあるでしょう。


・さいごに
 どのような死亡確認の方法であったとしても、それが臨床的に妥当性のあるものであれば問題ありません。しかし、死にゆく人に一人の人間として畏敬の念をもって接することが最も大事だろうと思います。


by otowelt | 2013-02-11 16:45 | 内科一般

メトホルミンは癌死亡リスクを減少

 メトホルミンは、肺癌の分野でも少し注目されていますね。ちなみにメトホルミンと癌のリスク減少については過去にいくつか報告されています(Cancer Prev Res (Phila) 3: 1451–1461, 2010.,Diabetes Care 34: 2323–2328,2011.)。

Hiroshi Noto, et al.
Cancer Risk in Diabetic Patients Treated with Metformin: A Systematic Review and Meta-analysis
PLoS One. 2012;7(3):e33411


背景:
 メトホルミンは潜在的ではあるが癌のリスクを下げると示唆されている。われわれの目的は、糖尿病患者においてメトホルミンが、部位を問わない癌あるいは臓器特異的な癌のリスクに対する効果検証するものである。

方法:
 MEDLINE, EMBASE, ISI Web of Science, Cochrane Library, ClinicalTrials.govにおいて、2011年10月12日の時点で出版されている論文を調査し、システマティックレビューおよびメタアナリシスを施行した。検索ワード:‘diabetes’, ‘metformin’, ‘cancer’ or ‘neoplasms’, and ‘risk’ or ‘risk factors’。総癌死亡率と癌の頻度を計算した(リスク比)。

結果:
 6試験(4:コホート試験、2:ランダム化比較試験)で21195人の糖尿病患者が登録され、991人(4.5%)が癌によって死亡した。10試験(2:ランダム化比較試験、6:コホート試験、2:症例対照研究)210892人のうち、11117人(5.3%)に癌の発生がみられた。
 メトホルミン使用者における癌のリスクは有意に非メトホルミン使用者より低かった(癌死亡RR 0.66, 95%CI 0.49–0.88、全ての癌発症RR0.67, 0.53–0.85、大腸癌RR0.68, 0.53–0.88、肝細胞癌RR0.20, 0.07–0.59、肺癌RR0.67 , 0.45–0.99)。
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 ほかの癌種については統計学的有意差はみられなかった(前立腺癌、乳癌、膵臓癌、胃癌、膀胱癌)。
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Discussion:
 メトホルミンが癌の発生・死亡リスクを抑制する理由として、体重増加の抑制や高インスリン血症の改善などが考えられる。また、メトホルミンとAMPK経路の関連が示唆される。LKB1はAMPK経路の上流にあり、メトホルミンがLKB1依存性の腫瘍形成を阻害している可能性がある。

結論:
 糖尿病患者におけるメトホルミン使用は有意に癌死亡と癌発症を減少させる。しかしながら、この解析はおもに観察研究に基づいており、長期のランダム化比較試験が必要であると考えられる。

by otowelt | 2012-10-30 00:01 | 内科一般

チョコレート摂取量が多いほどノーベル賞受賞者が増える

クリスマスBMJを彷彿させる、突っ込みどころ満載の論文です。ランダム化試験って。

Franz H. Messerli.
Chocolate Consumption, Cognitive Function, and Nobel Laureates
N Engl J Med 2012; 367:1562-1564


背景:
 チョコレートの摂取は認知機能の改善をもたらすとされているが、この摂取がノーベル賞受賞とどう関連しているのか、私は疑問に思った。

方法:
 合計22ヶ国の1000万人当たりのノーベル賞受賞者の数をWikipedia(http://en.wikipedia.org/wiki/List_of_countries_by_Nobel_laureates_per_capita)で調べた(List of countries by Nobel laureates per capita)。
 国別の1人当たりのチョコレート摂取量は、スイスChocosuisse、ドイツTheobroma-cacao、ヨーロッパチョコレート・ビスケット・菓子工業協会Caobiscoをインターネットで調べて、一番新しいデータを採用した。

結果:
 1人当たりのチョコレートの摂取量と、1000万人当たりのノーベル賞受賞者の数の間には、有意な線形相関がみられた(r = 0.791, P<0.0001)。外れ値のスウェーデン以外では、r=0.862であった(スウェーデンは、チョコレート摂取量から予測されるノーベル賞受賞者数の2倍程度の受賞者がいるため)。スイスにおいて、1人当たりのチョコレート摂取量および1000万人当たりのノーベル賞受賞者の数が双方とも最も高いものとなった。
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 1人当たり年間0.4kgのチョコレートを余分に摂取することで、国別ノーベル賞受賞者が1人増えると推測される。アメリカの場合、全米チョコレート総摂取量が年間1億2500万kg増加することで、ノーベル賞受賞者が1人増える。

考察:
 スウェーデンが外れ値となった理由として、ノーベル賞委員会が選考の際にスウェーデンを選ぶバイアスがかかっている理由が考えられる。また、スウェーデン国民のチョコレート感受性が高いこと(sensitive to chocolate)などが考えられる。

結論:
 チョコレートの摂取がノーベル賞受賞に必要なベースとなっている可能性がある。プロスペクティブランダム化試験が望まれる。

 

by otowelt | 2012-10-24 13:19 | 内科一般