カテゴリ:内科一般( 82 )

DPP-4阻害薬の効果と安全性に関するシステマティックレビュー・メタアナリシス

BMJからDPP-4阻害薬のシステマティックレビュー・メタアナリシスが
出ていた。GLP-1の分解を抑制し自分のGLP-1を働かせて
血糖値を下げる薬剤がDPP-4阻害剤であり、ジャヌビア、グラクティブ、
エクアなどがこれに該当する。
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Thomas Karagiannis, et al.
Dipeptidyl peptidase-4 inhibitors for treatment of type 2 diabetes mellitus in the clinical setting: systematic review and meta-analysis
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.e1369


目的:
 メトホルミン単剤あるいはメトホルミンとよく使用される経口血糖降下薬
 の併用と、DPP-4阻害薬の使用における効果と安全性を
 成人2型糖尿病患者において評価する。

デザイン:
 ランダム化比較試験におけるシステマティックレビューとメタアナリシス

データ:
 Medline, Embase, the Cochrane Library, conference proceedings,
 trial registers, and drug manufacturers’ websites

適格基準:
 成人2型糖尿病におけるランダム化比較試験において
 DPP-4阻害薬と、メトホルミン単剤ないし
 メトホルミンとSU剤・ピオグリタゾン・GLP-1アゴニスト・インスリンとの併用を
 ベースラインHbA1cの変化において比較したものを登録。

アウトカム:
 プライマリアウトカムはHbA1cの変化とした。
 セカンダリアウトカムはHbA1c7%未満の達成率、
 体重変化、副反応による治療中断率、その他の重篤な有害事象、
 全死因死亡率、低血糖頻度、鼻咽頭炎、尿路感染症、上気道感染症、
 嘔気、嘔吐、下痢。

結果:
 27の報告、19の試験が登録され、7136人がランダム化され
 DPP-4阻害薬へ、6745人がランダム化され他の血糖降下薬へ割り
 付けられたシステマティックレビューとメタアナリシスの対象となった。
 DPP-4阻害剤はHbA1cの軽度の減少と関連しており
 (weighted mean difference[荷重平均差]0.20, 95%CI0.08-0.32) 、
 体重への減少も軽度だった(同1.5,95%CI 0.9 -2.11)。
 セカンドライン治療としては、HbA1cの低下を比較したところ、
 DPP-4阻害剤はGLP-1よりは劣り (同0.49, 95%CI0.31 -0.67)、
 ピオグリタゾンと同様であった(同0.09,95%CI−0.07-0.24)。
 しかしながら、HbA1cの低下を目標とする場合、SU剤を上回ることは
 なかった (RR in favour of sulfonylureas 1.06,95%CI0.98 ~ 1.14)。
 DPP-4阻害剤は体重プロファイル関して良好であった。SU剤と
 比較すると、weighted mean difference −1.92, −2.34 to −1.49、
 ピオグリタゾンで−2.96, −4.13 to −1.78。しかしながらGLP-1
 と比較しても良好な結果とはならなかった(1.56, 0.94 to 2.18)。
 どの治療群においても、DPP-4阻害剤は、単剤比較としてのメトホルミン、
 あるいは、セカンドラインとしてのピオグリタゾン、GLP-1アゴニストとの
 比較においても、低血糖は最小限であった。
 ピオグリタゾンよりDPP-4阻害剤は重篤な有害事象頻度は少なかった。
 嘔気・嘔吐・下痢の頻度はメトホルミン併用やGLP-1アゴニスト併用で
 多くみられた。鼻咽頭炎、上気道感染、尿路感染リスクは、
 DPP-4 阻害剤と他の比較について差はなかった。

結論:
 2型糖尿病のある患者で、メトホルミン単独で血糖目標値を達成
 できない場合、DPP-4阻害剤はSU剤やピオグリタゾンと同様
 HBA1cを低下させることができる。しかしながら、
 費用や長期安全性は考慮されるべきであろう。

by otowelt | 2012-03-18 05:28 | 内科一般

Alzheimer病におけるドネペジルの継続は有用

Robert Howard, et al.
Donepezil and Memantine for Moderate-to-Severe Alzheimer's Disease
N Engl J Med 2012;366:893-903.


背景:
 臨床試験では、軽度-中等度のAlzheimer病に対する
 コリンエステラーゼ阻害薬による治療による利益が示された。
 中等度-重度のAlzheimer病へ進行した後も
 同治療を続けることに利益があるかどうかはわかっていない。

方法:
 われわれは295人の地域在住の少なくとも3ヶ月ドネペジル治療を
 うけていた中等度-重度のAlzheimer病患者(SMMSEで5-13点)を登録。
 ドネペジルを続けた場合、ドネペジルをやめた場合、
 ドネペジルをやめてメナンチンを開始した場合、
 ドネペジルを続けメナンチンを開始した場合を比較した。
 なお、薬剤に関してinactiveである場合はプラセボを使用した。
 試験期間は52週。
 コプライマリアウトカムはSMMSEおよびBADLSのスコアリングとした。 
 最小のclinically important differencesはSMMSEで1.4ポイント、
 BADLSで3.5ポイントとした。

結果:
 ドネペジルを継続した患者は、ドネペジルをやめた患者に比べて
 SMMSEは平均より1.9ポイント高く(95%CI 1.3 to 2.5)、
 BADLSは3.0ポイント低かった(95% CI, 1.8 to 4.3)
 (P<0.001 for both comparisons)。
 メマンチンを投与された患者はメマンチンプラセボを投与された患者より
 SMMSEは平均1.2ポイント高かった(95% CI, 0.6 to 1.8; P<0.001)。
 同様にBADLSは1.5ポイント低かった(95% CI, 0.3 to 2.8; P=0.02)。
 ドネペジルとメマンチンの効果に有意差は観察されなかった。
 ドネペジル単独に比べて、ドネペジルとメマンチンの併用に有意な利益は
 認められなかった。

結論:
 中等度-重度のAlzheimer病においてドネペジルによる継続的治療は
 12ヵ月間にわたる臨床的に意味のある最小の差を上回る認知機能への
 利益、有意な機能への利益に関連していた。

by otowelt | 2012-03-08 23:02 | 内科一般

睡眠薬使用による死亡リスクと癌発現リスクの上昇

発癌リスクの増加については、病院受診頻度が
睡眠薬使用者で多いため、あたかも増えたようにみえている可能性も
Discussionで述べられている。

Kripke DF, et al.
Hypnotics' association with mortality or cancer: A matched cohort study
BMJ Open 2012;2:e000850 doi:10.1136/bmjopen-2012-000850


背景および方法:
 2010年において、成人の6~10%が不眠により睡眠薬を使用している。
 この試験では、同使用による死亡リスクへの影響を調査したものである。
 the Geisinger Health System (GHS)診療録より抽出したデータを用いた。
 患者は平均年齢54歳で睡眠薬を処方された10529人の患者で、
 23676人の非処方コントロール群を設定し、平均2.5年の追跡をおこなった
 (2002年1月~2007年1月)
 データは年齢、性別、喫煙、BMI、人種、アルコール使用、癌既往歴などで
 調整をおこない、死亡ハザード比はCox比例ハザードモデルを用い解析。
 マッチ化コホートデザイン研究。

結果:
 睡眠薬使用者の63.9%は女性であった。
 最も多かった睡眠薬はzolpidem、次に多かったのは temazepam。
 合併疾患については睡眠薬使用者の方が多かった。
 フォローアップ期間において、死亡者は睡眠薬使用者6.1%、非使用者1.2%。
 使用量別のハザード比(HR)では、0.4~18doses/年でHR 3.60、
 18~132doses/年でHR 4.43、132doses/年でHR 5.32であった。
 上記の如く、用量リスクの関連がみられた。
 また、発癌のリスクは、18~132doses/年でHR1.35(P <0.001)、
 それ以上ではHR1.20(P = 0.022)であった。

結論:
 睡眠薬を使用することで、年18錠未満であっても
 死亡のハザード比が3倍上昇する。
 睡眠薬の使用により、発癌リスクも上昇すると考えられる。

by otowelt | 2012-03-01 06:51 | 内科一般

血圧の左右差は循環器疾患と死亡リスクを上昇させる

Christopher E Clark , et al.
Association of a difference in systolic blood pressure between arms with vascular disease and mortality: a systematic review and meta-analysis
The Lancet, Early Online Publication, 30 January 2012


背景:
 収縮期血圧(SBP)の左右差による末梢血管疾患ハイリスク患者を
 明らかにするため、血圧左右差と末梢血管疾患、心血管疾患、脳血管疾患、
 死亡の関連性についてシステマティックレビューとメタアナリシスを実施。

方法:
 Medline、Embase、CINAHL、Cochrane、Medline In Process
 データベースに2011年7月までに登録された研究において、
 血圧左右差、鎖骨下動脈狭窄、末梢血管疾患、脳血管疾患、心血管疾患、
 死亡に関する臨床的データを掲載していたものを選択し、
 ランダム効果を用いてメタアナリシスをおこなった。

結果:
 28の研究がこのレビューに組み込まれた。
 定量的なデータを報告していた20の研究をメタアナリシスの対象とした。
 血管造影を用いた研究5つにおいて、鎖骨下動脈の狭窄がある患者で
 狭窄腕の収縮期血圧は、対側腕に比べ平均で
 36.9mmHg(95%CI35.4-38.4mmHg)低かった。
 血圧左右差10mmHg以上と鎖骨下動脈狭窄の関係は強くみられた。
 2つの研究データをプール解析すると、10mmHg以上差がみられた場合
 50%を上回る鎖骨下動脈狭窄がある可能性は、左右差10mmHg未満群の
 8.8倍であった(RR8.8、3.6-21.2)。血圧左右差10mmHg以上で
 鎖骨下動脈狭窄同定の感度65%(35-86%)、特異度85%(82-88%)。
 非侵襲的データのプール解析では、血圧左右差10mmHg以上では
 末梢血管疾患と有意に関連していた(RR2.44[1.53-3.87]、
 感度32%[23-41%]、特異度は91%[86-94%])。
 脳血管疾患の既往と血圧左右差の関係も統計学的に有意にみられた。
 左右で15mmHg以上の差がある場合、脳血管疾患歴の
 RR1.63(1.10-2.41)、感度8%(2-26%)、特異度93%(86-97%)。
 プロスペクティブ研究においては、左右差15mmHg以上で全死亡の
 RR1.55(1.07-2.25)であった(10mmHgでは有意差みられず)。

結論:
 末梢血管疾患の存在診断において、収縮期血圧左右差10mmHg以上
 または15mmHg以上は、特異度が高い。この差は
 脳血管疾患の存在、心血管死亡リスク、全死亡リスクに関連。

by otowelt | 2012-02-15 05:20 | 内科一般

Parkinson病の平衡障害に対して太極拳は有効

NEJMから、太極拳のスタディ。これはびっくりした。
Wikipediaによれば、太極拳とは
「東洋哲学の重要概念である太極思想を取り入れた拳法で、
 形意拳、八卦掌と並んで内家拳の代表的な武術として知られる」
とのことである。

Fuzhong Li, et al.
Tai Chi and Postural Stability in Patients with Parkinson's Disease
N Engl J Med 2012; 366:511-519


背景:
 Parkinson病の患者は、強い平衡障害がみられるため
 機能的能力の低下、ひいては転倒リスクの増加がみられる。
 われわれ医療従事者は、通常では運動療法を推奨するが
 これについて効果が実証されたプログラムはほとんどない。

方法:
 ランダム化試験で、個別化された太極拳プログラムにより
 特発性Parkinson病患者の姿勢制御が改善するか検討。
 Yahrの重症度分類1~4 のParkinson病195人を次の3群の
 いずれかにランダムに割り付けた。
 ・太極拳群
 ・抵抗トレーニング群
 ・ストレッチ群
 患者は、60分運動セッションに週2回合計24週間参加。
 プライマリアウトカムは、ベースラインからの変化量
 (maximum excursion and directional control; range, 0 to 100%)
 セカンダリアウトカムは、歩行と筋力測定値、
 機能的リーチテストと timed up-and-go tests、
 Unified Parkinson's Disease Rating Scaleの運動スコア、
 転倒回数など。

結果:
 太極拳群では、抵抗トレーニング群、ストレッチ群と比べて
 maximum excursion:最大変位(ベースラインからの変化量の
 群間差はそれぞれ5.55%ポイント、95%CI 1.12~9.97;
 11.98%ポイント、95% CI 7.21~16.74)、および方向制御
 (それぞれ10.45%ポイント、95%CI 3.89~17.00;
 11.38%ポイント,95% CI 5.50~17.27)の効果が優れていた。
 太極拳群では、すべてのセカンダリアウトカムが
 ストレッチ群よりも優れており、ストライド長と
 機能的リーチの成績は抵抗トレーニング群よりも優れていた。
 太極拳群の転倒発生率は、ストレッチ群と比較すると低かったが、
 抵抗トレーニング群との間では有意に低くはなかった。

結論:
 太極拳により、軽度~中等度のParkinson病患者の
 平衡障害が軽減し、また運動耐容能の改善と転倒の減少が
 観察された。

by otowelt | 2012-02-12 20:13 | 内科一般

アメリカにおける肥満の頻度は男女ともに35%

社会問題になるのも頷ける数字である。

Katherine M. Flegal、et al
Prevalence of Obesity and Trends in the Distribution of Body Mass Index Among US Adults, 1999-2010
JAMA. 2012;307(5):491-497.


背景:
 1980年から1999年の間、成人の肥満(BMI30以上)は
 アメリカにおいて増えた。近年この傾向は緩やかあるいは
 頭打ちになっていると思われる。

目的:
 成人の2009年から2010年のNational Health and Nutrition
 Examination Survey (NHANES)により肥満の頻度を調べ、
 1999年から2008年のデータからBMIの分布を調べる。
 主要アウトカムは肥満の頻度と平均BMIとした。

結果:
 2009年から2010年の年齢調整による平均BMIは男性で28.7
 (95% CI, 28.3-29.1) 、女性で28.7 (95% CI, 28.4-29.0)。
 BMI中央値は男性で27.8 (IQR, 24.7-31.7)、女性で27.3
 (IQR, 23.3-32.7)であった。年齢調整による肥満の頻度は
 男性で35.5% (95% CI, 31.9%-39.2%)、女性で35.8%
 (95% CI, 34.0%-37.7%)であった。1999年から2010年の12年で
 女性における肥満に有意な増加はみられなかった(age- and
 race-adjusted annual change in odds ratio [AOR], 1.01;
 95% CI, 1.00-1.03; P = .07)ものの、非ヒスパニック黒人女性
 (P = .04)、メキシカンアメリカ人女性(P = .046)においては有意な
 増加がみれれた。男性においては、有意に線形増加傾向がみられた
 (AOR, 1.04; 95% CI, 1.02-1.06; P < .001)。
 男女ともに直近の2年(2009-2010)においては2003年から2008年の
 6年間と比較して有意な差はみられなかった(男性P=.08、女性P=.24)。
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結論:
 2009年から2010年において、肥満頻度は成人男性で35.5%、
 成人女性で35.8%であった。2003年から2008年の6年と比較して
 有意な変化はみられなかった。

by otowelt | 2012-02-05 18:53 | 内科一般

明治乳業 ヨーグルト R-1 (1073R-1) についての勉強

明治乳業のヨーグルトである「R-1」がインフルエンザウイルス感染に対して
予防効果があると大人気になっている。市販された大人気食品なので、
できるだけエビデンスに関する批判も推奨もせずに
今朝個人的な勉強したことをメモとして記載しておきたい。

・マウスでの研究
多糖体産生のブルガリア菌(OLL1073R-1株)ヨーグルト
(0.4 ml or 0.3 ml)を24日間マウスに投与した試験がある。
エンドポイントである21日目に、マウス馴化インフルエンザウイルス
A/PR/8/34 (H1N1)(2×LD50, 20μl)を鼻から接種し。
ヨーグルトを摂取していたマウスは、ヨーグルトを摂取しなかったマウスと
比較してインフルエンザウイルス感染後の生存日数が有意に延長。
1073R-1乳酸菌使用ヨーグルト(0.4ml/body/day):p=0.0018 (n=9)
1073R-1乳酸菌EPS(20μg/body/day):p=0.0648 (n=9)
マウスの研究である上にn=9と少ない状況でのsurvivalをKaplan-Meier法で
Web上に表示しているが、このデータが信頼性があるかと問われれば、
ややハテナマークがつくかもしれない。またヨーグルト使用の
場合だけ有意差が出ており(それでもマウスの半数以上は死亡)、
1073R-1乳酸菌EPSでは有意差が出ておらずマウスはほぼ全滅だった。
(該当ジャーナルは見つけられなかった)

・ヒトでの研究
Seiya Makino, et al.
Reducing the risk of infection in the elderly by dietary intake of yoghurt
fermented with Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1
British Journal of Nutrition 2010, 104, 998-1006

明治乳業が提示している論文は上記のもの。
山形県舟形町70~80歳高齢者57名、
佐賀県有田町60歳以上高齢者85名を対象に研究を実施している。
1073R-1乳酸菌ヨーグルト群(90g/day)
牛乳群(100ml/day)のいずれかにランダムに割り付けし、
8、12週間継続して経口摂取をおこなった。
エンドポイントとして提示されているのは、NK活性と風邪症状アンケート等。
1073R-1乳酸菌ヨーグルト群は牛乳群に比べて、佐賀OR0.44、
山形OR0.29。Mantel-Haenszel法の統合でOR0.39であった(p=0.019)。
風邪症状等のアンケートによる臨床的アウトカムの改善は
OR 0.29(P=0.103)と論文中に記載されている。

→このBritish Journal of Nutritionは栄養学では
 IF/EFともにある程度上位に入るジャーナルなのだが(IF3、EF0.03)、
 NK活性と風邪症状アンケートという介入試験アウトカムは妥当だろうか?
 もう少し調べてみたい。

小児において
山形県舟形町:町内の全保育園児、小中学生544名(6校)
佐賀県有田町:町内の全保育園・幼稚園児、小中学生2468名(16校)
で上記ヨーグルトを摂取するよう奨励し、
園児・児童・生徒の欠席率変動・ウイルス感染など健康状態に対する
調査(聞き取り調査)を実施(1年間)。
主なアウトカムとして提示されているのは、
舟形町における6ヶ月後(2010年12月)のインフルエンザ発症がゼロであること、
有田町における学級閉鎖がゼロであること。
ただ、一番大事な流行期における2011年12月~2月のデータが
どうなっているのか会社のプレリリースからは不明である。
(該当ジャーナルは見つけられなかった)


薬剤に関しては、
「xxが●●の予防に効果がありますよ」ということを薬効として
表示するためには、少なくとも疫学的な質の高い研究が必要になる。
エンドポイントに到達しなくても中間解析やエンドポイントパラメータを
模索して有効性が確認されるものをどうにか探す手法も散見されるので、
臨床医は注意が必要である。また、薬剤と異なり健康食品・サプリメントの
類はどうしてもバイアスが多くなるのは言わずもがなである。

by otowelt | 2012-02-02 07:45 | 内科一般

メタアナリシスにおけるバイアスの軽視

『結果がイマイチの臨床試験は出版されにくい』
簡単に言うと、こういう類のバイアスを出版バイアスという。
臨床試験屋が「negative study」と言及するのがこれだ。
negative studyは採択されにくい現状もあり、
これも重大な医学論文のバイアスの1つである。

出版バイアスを評価するとき、論文中ではfunnel plotを
用いることが多く、これは読者にも視覚的にもわかりやすい。
X軸にエフェクトサイズ、Y軸に標本の大きさ(分散の逆数)を
とることで、対称性であれば出版バイアスが少なく
非対称性であれば出版バイアスが大きいということを意味する。
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上が対称性、下が非対称性。
臨床試験をやっている先生に聞いてみると、
回避できない出版バイアスがあると
「出版バイアスがあるメタテーマを選んだあなたが悪い」と
言われている気がするらしい。。。

BMJからメタアナリシスにおける出版バイアス、選択バイアスについて
興味深い論文が出ていたが、めんどくさくてずっと読んでいなかった。
読んでみたが、とにかく長い!
……途中ほとんどすっ飛ばしてしまったので、後日また読もうと思う。
メタアナリシスだからといって信頼できるものじゃないという
可能性を私たちは知っておく必要がある。

Ikhlaaq Ahmed, et al.
Assessment of publication bias, selection bias, and unavailable data in meta-analyses using individual participant data: a database survey
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.d7762


目的:
 潜在的な出版バイアス、データ採用バイアス、レビュアー選択バイアス
 が近年出版されたメタアナリシスにおいて調査する。

デザイン:
 1991年から2009年3月までに出版されたメタアナリシス383のうち
 31の最も最近出版されたランダム化試験のメタアナリシスをサーベイした。

結果:
 31のメタアナリシスのうち9つのみが”grey literature(無出版研究)”を
 含んでおり、出版バイアスの可能性が記載・検討されたのは
 たった10(32%)のみであった。
 メタアナリシス16つ(52%)が個別の被験者データを入手できておらず、
 さらにこれらのうち5つ(31%)は、検討のlimitationにも触れてない。
 また、わずか6つ(38%)が個別データがない臨床試験が解析後の結論に
 どれだけ影響を与えるかについて言及しているだけであった。
 メタアナリシスレビュアー選択バイアスの9つ(29%)は問題があり、
 試験同定方法が記載されてない/故意選別的/非システマティックであった。

 以下のごとく、個々のメタアナリシスについてfunnel plotを提示して
 バッサリ切っている。(下図はDe LucaらのSTEMIに対する
 Gp IIb-IIIa阻害薬の早期投与に関するメタアナリシス)
De Luca G, et al.Early glycoprotein IIb-IIIa inhibitors in primary angioplasty (EGYPT) cooperation: an individual patient data meta-analysis. Heart 2008;94:1548-58
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結論:
 メタアナリシスの出版バイアス等の各バイアスについて、
 レビュアーが調査、検討を怠っている。

by otowelt | 2012-01-31 16:19 | 内科一般

ダビガトランは心筋梗塞、急性冠症候群のリスク

Arch Intern Med のダビガトランのメタアナリシスを読んだ。
プラザキサについては、個人的にまだ答えが出ていない。

その前に、医学界新聞で素晴らしいコラムをお書きになっている
植田真一郎先生(琉球大学大学院教授)の文章を紹介させていただく。
http://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA02928_07

 ワルファリンに対するダビガトランの優越性は、一見150mgで証明されているように見えます。しかしRELY試験では、ワルファリンの用量調節が必ずしも成功しているとは言えません。というのは、INRが治療域に達していた期間は64%に過ぎないからです。論文には記載されていませんが、FDAの資料では用量調節が適切なINR患者では、「脳卒中,全身性塞栓症,大出血のいずれのリスクもワルファリン群とダビガトラン150mg群では差がない」とされています。
 確かにITT解析で現実のワルファリン使用患者のアウトカムを評価するという意味ではINRが治療域にない患者は存在するわけですから、集団としてのアウトカムはダビガトラン150mgのほうが優れていると言えます。しかし、個々の患者を診療する立場になると、ワルファリンでうまくコントロールできている患者までダビガトランに変更しなければならないような優越性はなかったと言えるのではないでしょうか。
 INRの定期的なモニタリングと、それに応じた用量調節を必要としないことがダビガトランのメリットであると強調されていますが、それは集団の論理であり、個々の患者における治療ではむしろデメリットになることを、臨床医は忘れるべきではないと思います。















本題は、ダビガトランとMI、ACSとの関連性についてのメタアナリシス。

Uchino K, et al.
Dabigatran Association With Higher Risk of Acute Coronary Events
Meta-analysis of Noninferiority Randomized Controlled Trials
Arch Intern Med January 9, 2012.


目的:
 ダビガトランの内服と心筋梗塞または急性冠症候群のリスク関連を
 評価する。

方法:
 Pub Med、Scopus、Web of Scienceを用いた。
 プライマリアウトカムは心筋梗塞または急性冠症候群、
 セカンダリアウトカムは全死亡とした。ダビガトラン内服群と
 用いられた薬剤にかかわらず非ダビガトラン群をコントロール群に設定した。
 29RCTのうち、7RCT、30514人を解析対象とした。

結果:
 7RCT中、2つはAf患者の脳卒中予防試験:PETRO試験、RE-LY試験
 コントロール薬はワルファリンであった。
 1つは急性VTEにおけるワルファリンとの比較:RE-COVER試験、
 1つは急性冠症候群でのプラセボ対照試験:RE-DEEM試験、
 3つは整形外科的な関節置換手術後のVTE予防での試験:
 RE-NOVATE試験、RE-MODEL試験、RE-NOVATE II試験、
 コントロール薬はエノキサパリン。
 全てにおいて、ベーリンガーインゲルハイムからの資金提供を受けていた。
 Jadadスケールでは上記のうち6RCTが質の高い研究だった。
 メタアナリシスでは、ダビガトラン群はコントロール群より
 心筋梗塞または急性冠症候群のリスクが高かった
 (ダビガトラン群1.19% v コントロール群0.79%、OR1.33、
 95%CI:1.03-1.71、P=0.03)。出版バイアスはなかった(P=0.60)。
 また、全死亡についてはダビガトラン群はコントロール群よりも死亡率が 
 有意に低かった(ダビガトラン群4.83%v コントロール群5.02%、
 OR0.89、95%CI:0.80-0.99、P=0.04)。
 Jadadスケール2点の1RCTを除外しても、心筋梗塞または急性冠症候群の
 リスクは変わらなかった(OR1.34、95%CI:1.04-1.67、P=0.03)。

結論:
 ダビガトランは心筋梗塞または急性冠症候群のリスクをはらむ。
 内科医はこういった潜在的な有害事象について考慮する必要がある。

by otowelt | 2012-01-26 06:23 | 内科一般

マラソンにおける心肺停止のリスク

マラソンをやっていた身としては、非常に気になる論文。

Jonathan H. Kim, et al.
Cardiac Arrest during Long-Distance Running Races
N Engl J Med 2012;366:130-40.


背景:
 アメリカでは、1年間におよそ200万人の人が長距離走競技に参加すると
 されているが、競技に関連した心停止(CPA)が報告されており
 安全性が危惧される。

方法:
 アメリカ2000年1月1日~2010年5月31日に行われたフルマラソン
 およびハーフマラソン競技に関連するCPAの発生率とアウトカムを評価。
 生存者に面接、非生存者に家族の面接をおこなって、診療録の再調査
 剖検分析等によりCPAの臨床的特徴を検討。

結果:
 ランナー1090万人中、59人(平均 [±SD] 年齢 42±13 歳、男性51人)
 がCPAを発症(発生率は参加者10万人あたり0.54、95%CI0.41~0.70)。
 CPAの大多数は心血管疾患であった。発生率は、フルマラソン
 (1.01、95% CI 0.72~1.38)がハーフマラソン
 (0.27,95% CI 0.17~0.43)よりも有意に高く、
 男性(0.90,95% CI 0.67~1.18)が
 女性(0.16,95% CI 0.07~0.31)よりも有意に高かった。
 男性かつフルマラソンランナーでは、10年の研究期間後半部分において
 CPA発生率が上昇した。CPA59人のうち、42人(71%)は
 致死的であった(10万人あたり 0.39,95% CI 0.28~0.52)。
 診療録等の臨床データが得られた31人では、CPAのバイスタンダーCPR、
 基礎疾患がHCM以外であることが、生存に対する強力な予測因子だった。
結論:
 フルマラソンとハーフマラソンは、CPAと突然死のリスクに関連していた。
 CPA、HCMや冠動脈疾患によることがもっとも多いが、主として
 男性マラソン参加者に発生している。こういった集団において
 CPA発生率は過去10 年間に上昇傾向にある。

by otowelt | 2012-01-13 16:24 | 内科一般