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外科医の15.4%がアルコール乱用・依存であり、医療ミスのリスク

あくまでアメリカの報告だが。

Michael R. Oreskovich, et al.
Prevalence of Alcohol Use Disorders Among American Surgeons
Arch Surg. 2012;147(2):168-174.


目的:
 現役の外科医におけるアルコール乱用と依存の
 ある時点での頻度を調査する。

デザイン:cross-sectional study

セッティング:アメリカ合衆国

参加者:アメリカ外科学会会員

アウトカム:アルコール濫用と依存

結果:
 2010年10月、アメリカ外科学会が使用可能e-mailアドレスを
 持っている現役外科医25073人に対してアンケートを送り、
 7197人(28.7%)が回答。質問は70の項目から構成され、
 参加者は盲検化された。AUDIT-C分析では、アルコール乱用および依存
 を示したのは1112人(15.4%)で、男性13.9%、女性25.6%。
 若年外科医、パートナーに不満があり子どもがいない、といった場合に
 その割合が高く、経験年数が長い外科医、週労働時間が長い外科医、
 夜間コールが多い場合では逆に割合が低かった。アルコール乱用および依存者
 は、過去3ヶ月での医療ミスの報告者の77.7%を占めた。
 アルコール乱用および依存者の医療ミスのOR1.45(P<0.001)。

結論:
 アルコール濫用と依存はアメリカ外科医におけるゆゆしき問題である。
 組織によるアルコール消費問題の早期同定と介入が望まれる。

by otowelt | 2012-02-23 05:43 | その他

妊婦へのSSRIと新生児肺高血圧症の関連性

肺高血圧がらみで読んでみた。この論文の書き方だと、
フルボキサミンが妊婦に安心なのかとついつい思ってしまう。
オッズ比はそれなりの数字に見えるが、新生児肺高血圧自体が
極めて稀な事象であるため、何とも言えない。

Helle Kieler, et al.
Selective serotonin reuptake inhibitors during pregnancy and risk of persistent pulmonary hypertension in the newborn: population based cohort study from the five Nordic countries
BMJ 2012; 344 doi: 10.1136/bmj.d8012


目的:
 妊娠後期のSSRIの使用と新生児肺高血圧症(PPHN)の
 リスクを評価する。

方法:
・Population based cohort study(国民健康登録による)
・デンマーク、フィンランド、アイスランド、ノルウェー、スウェーデンの
 国民健康登録から、1996~2007年において妊娠33週以降の
 単生児出産の母/小児1618255組の情報を収集した。
・プライマリ評価指標は、妊娠後期SSRI曝露と生後7日以内の
 新生児のPPHN診断の関係。
・交絡因子の補正候補として、母の喫煙、年齢、BMI、NSAIDs、
 糖尿病治療薬の使用、妊娠中の病歴、出産病院/国/年/順位。
 SSRIを曝露していない小児に対する曝露小児のORを算出した。

結果:
 およそ30000人が妊娠中にSSRIを使用しており、そのうち
 妊娠20週以降にSSRIを使用していた妊婦は11014人、
 妊娠初期にだけSSRIを使用していた妊婦は17053人であった。
 妊娠後期曝露群の11014人の新生児のうち、33人がPPHN。
 そのうち3人には胎便吸引が確認されている。ゆえに、
 SSRI曝露群のPPHNの絶対リスクは、新生児1000人あたり3人。
 またSSRI曝露がなかった妊婦は1588140人で、
 同様に曝露小児のPPHNの絶対リスクは1000人あたり1.2人。
 以上より、SSRIに曝露していない小児と比較した曝露小児の
 調整ORは2.1(95%CI 1.5-3.0)となった。
 それぞれのSSRIのPPHNリスクは同等であった。
 妊娠後期にフルオキセチン(プロザック)を使用した場合、小児の
 PPHNの調整ORは2.0(1.0-3.8)、シタロプラム(セレクサ)は
 2.3(1.2-4.1)、パロキセチン(パキシル)は2.8(1.2-6.7)、
 セルトラリン(ジェイゾロフト)は2.3(1.3-4.4)であった。
 エスシタロプラム(レクサプロ)は有意なリスク上昇はなかった
 (1.3、0.2-9.5)。フルボキサミン(デプロメール、ルボックス)では
 曝露後にPPHNと診断された小児はいなかった。

結論:
 妊婦へのSSRIが新生児肺高血圧症をもたらすリスクは低いが、
 妊娠後期の使用ではリスクが2倍を超える。
 リスク上昇はクラスエフェクトと考えられる。

by otowelt | 2012-01-31 16:17 | その他

インパクトファクター、5年インパクトファクター、アイゲンファクター

あまり臨床現場でアイゲンファクターがどーのこーのという議論はされて
いないように思う。

●インパクトファクター;IF
インパクトファクター(IF)は、医学をはじめ、自然科学・社会科学分野の学術雑誌を
対象として、その雑誌の影響度を測る指標のことである。1955年に
Eugene Garfieldが考案し、現在Thomson Reuterの引用文献databaseの
Web of Scienceに収録されるデータを元に算出されている。
計算方法は、wikipediaにも掲載されているように
Web of Science の収録雑誌の3年分のデータを用いて計算される。

(wikipediaから)
たとえばある雑誌の2004年のインパクトファクターは2002年と2003年の論文数、2004年のその雑誌の被引用回数から次のように求める。
A = 対象の雑誌が2002年に掲載した論文数
B = 対象の雑誌が2003年に掲載した論文数
C = 対象の雑誌が2002年・2003年に掲載した論文が、2004年に引用された延べ回数
C÷(A+B) = 2004年のインパクトファクター
例えば、この2年間合計で1,000報記事を掲載した雑誌があったとして、それら1,000報の記事が2004年に延べ500回引用されたとしたら、この雑誌の2004年版のインパクトファクターは0.5になる。
インパクトファクターは「学術雑誌」の評価指標であって、学術雑誌論文はもとより研究者の評価に用いるものではない。しかし、実際には多くの研究者がインパクトファクターに対する誤解を持っている。「この〔論文〕のインパクトファクターを知りたい」「〔私の〕インパクトファクターはいくつか」といった問いは典型的なインパクトファクターへの無理解を示している。自分の投稿した雑誌のインパクトファクターが、あたかも株価のように上昇することを期待するのもインパクトファクターへの無理解から来るものである。
計算対象についても、直近2年の論文データしか用いないのは短すぎるとの批判がある。インパクトファクターの計算に直近2年の論文データを用いるのは、どの分野においても平均的な論文は出版後2年目3年目に最も多く引用され、徐々に引用されなくなっていく傾向があるためである。しかし実際には分野によってはなだらかな山を描きながら息長く引用され続けるものもあり、この場合には直近2年のデータを用いたインパクトファクターでその論文の掲載誌の影響度をはかることは難しい。これに対する回答として、トムソン・ロイター社は 2009年、JCRに5年インパクトファクターを新たな指標として追加した。



●5年インパクトファクター;5yIF
上記のように5yIFは定義されるが、Journal Citation Reports(JCR)で、
IFと5yrIFで数値に差が出ているものが結構ある。実はこれ、本当に上記の
ような短期的評価によるデメリットを反映しているだけではないこともあると
されている。すなわち、自誌引用をするとIFを意図的に上昇させることができる
ためである。IFの究極の問題がココにある。また、論文数の少ない雑誌が
有利なのも言わずもがなである。そこでJCRが導入したのが
アイゲンファクター(Eigenfactor)である。


●アイゲンファクター;EF
計算方法が非常にややこしいので、読んですらいない。ただ、おおまかには
Googleの検索上位ランクのようなアルゴリズムらしく、引用元の雑誌に
”重み”をつけることで、よく引用される雑誌からの引用は大きな価値を与える
というものらしい。大規模な図書館を利用する医師が、その雑誌に
費やす時間の割合を推定したものがEFと考えてもらえればいい。
Natureから引用されようが、Honya-rara-journalから引用されようが、
カウントとしては1回は1回であったものが、雑誌間の引用に”重み”が
ついている点がIFとの大きな違いである。そのため、IFの欠点であった
以下の点がほぼ解消された。
1.論文数の少ない小規模の雑誌が高い数値になる
2.Reviewが多い雑誌が高い数値になる
3.分野によって偏りが出てしまう
ゆえにEFの上位にNATUREやSCIENCEが入るのは当然の結果であろう。
ちなみに、EFの総和は100になるように設定されている。


●Article influence score
Article Influence Scoreは、”重み付け引用”によるEFをそれぞれの
雑誌の掲載論文数の比、すなわち「全対象雑誌掲載論文に占める当該雑誌の
掲載論文数」で割ったもの。1を超えた場合、平均よりも影響力が強いということ。
論文数の比が分母にくるため、掲載数の少ない雑誌が高く出やすいという
IFと同じ欠点をもつ。ゆえに、IFとの相関が指摘されている。


上記をふまえて、個人的に興味のある分野の数値をみてみたい。

1.Oncology
1位は永らく不動であろうが、JCOのEFが思ったより高い。これには納得。
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2.Respiratory system
AJRCCMに匹敵するくらいCHESTのEFが高い。これも納得である。
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3.Infectious disease
Lancet infectious diseaseよりもCIDの方がEFが高い。
というよりも、思ったよりLancetが低い。
読む頻度としては個人的には両雑誌とも同等くらいだが…。
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4.Critical care medicine
これは、予想通り。
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by otowelt | 2011-03-31 05:54 | その他

医学部・大学院において、民族別に差がある

Cohen’s dがいまだによくわからず、アレルギーになっている。
というわけでHazard ratioも実はよくわかっていなかったりする。
forest plotにされると視覚的に「ああそうなんだ」と思うが、
いざ各論を問われると”説明”できない。
ちょっと統計をかじっただけの医者は、そんなもんでいいのだろうか。

Ethnicity and academic performance in UK trained doctors and medical students: systematic review and meta-analysis.
BMJ. 2011 Mar 8;342:d901. doi: 10.1136/bmj.d901


概要:
 イギリスで研修を受けた医師・医学生の学業成績と民族の関連について調べた。

デザイン:
 システマティックレビュー/メタアナリシス

方法:
 PubMed, Scopus, ERIC, Google/Google Scholarなどの
 オンラインデータベース/検索エンジン、医学教育関連の専門誌
 学会抄録を調査してデータを抽出。
 医学生およびイギリスで研修を受けた医師において
 医学部や大学院における学業成績を民族別に定量的に評価した報告を
 対象とした。イギリスをのぞく国における評価、またそういった国でのみ
 研修を受けた場合、自己申告のみによる評価、サンプリングバイアスが
 明らかな場合、民族やアウトカムの記述が不十分な場合、除外となった。

結果:
 22の報告(23742人)のメタアナリシスでは、非白人は
 白人に比べ学業成績が劣ることがわかった
 (Cohen’s d=-0.42、95%CI-0.50~-0.34、p<0.001)。
 医学生、大学院生、臨床能力、合格ないしは不合格のアウトカムなどの
 個々の評価や、白人とアジア人を比べたメタアナリシスにおいても、
 同様の傾向が同程度にみられた。全メタアナリシスに不均一性があった。
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結論:
 おのおのの医学部や試験のタイプ、また学部内や大学院において
 学業成績の民族間差が相当みられるものと考えられる。

by otowelt | 2011-03-29 05:38 | その他

研修医の労働時間を短縮することが、医療・教育の質を改善させるものではない

アメリカとイギリスで1週間あたりの労働時間上限に
かなり差があるのが気になるが・・・。
”研修医の労働時間←→質”というテーマがスタディになるなんて
昔のドクターは思いもしなかっただろうなぁ・・・。

Impact of reduction in working hours for doctors in training on postgraduate medical education and patients’ outcomes: systematic review
BMJ 2011;342:d1580 doi:10.1136/bmj.d1580


目的:
 医学部の卒後研修を受ける医師の労働時間を短縮することによって
 医学教育・臨床的アウトカムの客観的指標に影響を与えるかどうかを検証する。
 システマティックレビュー。

方法:
 Medline、Embase、ISI Web of Science、Google Scholar、
 ERIC、SIGLEから検索。言語に制限を設けずに
 1990年から2010年12月まで出版された文献で調査をおこなった。
 医学部卒後研修アウトカム、患者の安全性、臨床的なアウトカム
 などの客観的数値が使われ、duty hoursの変化へのインパクトを評価。

結果:
 72研究を検討対象とした。
  38:reporting training outcomes
  31:reporting outcomes in patients
  3:reporting both
 80時間/週を超える労働時間(アメリカ推奨時間)から短縮することよって
 患者安全性へ逆的影響はみられず、卒後訓練への影響は限定的であった。
 ヨーロッパでの56・48時間未満という労働時間制限に関する報告は、
 スタディクオリティが低く、上記と相反する結果がみられているため
 はっきりとした結論を出せなかった。

結論:
 アメリカにおいて、 80時間からの労働時間短縮は、
 患者や卒後訓練へ逆的影響がみられなかった。
 56・48時間制限というイギリスのスタディはスタディクオリティが
 低く、評価できなかった。さらなる研究が必要である。

by otowelt | 2011-03-28 22:28 | その他

東日本大震災による緊急的措置:主要医学雑誌、UpToDateなど全無料開放

東日本大震災を受けて、4月8日までの間、
The Emergency Access Initiativeが
医学雑誌233誌、本75冊、Cochrane database、
DynaMed、Essential Evidence Plus、UpToDateを
全部無料開放しています。

↓主要論文についてはこのサイト参照
http://eai.nlm.nih.gov/

医中誌Webも震災を受けて無料にしていますが、
メールによる無料登録申請が必要のようです。

by otowelt | 2011-03-17 15:46 | その他

来年もよろしくお願いします。

研修医時代、「1日1論文」ということを義務づけていた後輩がいたので
私はそれに触発されて、朝に早起きしてできる限り1日1論文という
日課を続けています。それでも2010年は300程度の論文しか読めませんでした。
ただ、私は記憶力が極めて乏しく、メモしないと覚えられません。
勉強したことをメモすることで、いつでも引き出せるのが
ブログという媒体のよいところでした。
ただ、全ての論文を記載してアップロードするにはやはり労を要しますので、
アップロードできたのは部分的なものだけでした。
その勉強した内容を積み重ねて、自分の患者さんに還元したいと
いう初志で始めたメモであり、その気持ちは今も変わっていません。

勉強メモのつもりだったのが、いつの間にか1日のアクセス数が
途方もない数字になってきました。
呼吸器内科医だけでなく、誰に見られても恥じないような
勉強・論文メモのブログであり続けたいと思います。

来年もよろしくお願いします。

by otowelt | 2010-12-30 11:05 | その他

自転車が軽くても、通勤時間を短縮できるわけではない

毎年恒例のChristmas BMJ。
自転車が趣味の麻酔科医の、心のこもった論文である。
考察にも書かれているが、自転車が4kgばかり軽くなったところで
自分の体重が重力の作用のほとんどを占めているので差が出なかった。
じゃあなぜカーボン製の自転車を買ったのか、というところが
問題になるわけだが、”新しいものを出すから買うんだ!”と筆者は言う。

Bicycle weight and commuting time: randomised trial
BMJ 2010; 341:c6801 doi: 10.1136/bmj.c6801


目的:
 筆者の9.5kgのカーボンフレーム自転車と、
 13.5kgのスチールフレーム自転車の通勤時間を比較する
 ランダム化試験である。

セッティング:
 イギリスSheffieldからChesterfieldまで、2010年1月中旬頃から7月中旬頃まで。
 往復27マイル(43.5km)を小旅行した。
 カーボンフレーム自転車の車輪:
   36 spoke 700C wheel of standard alloy rim construction
 スチールフレーム自転車の車輪:
   20 spoke 700C wheel with alloy rim

参加者:
 1人の麻酔科・集中治療部コンサルタント(筆者)

結果:
 スチールフレーム自転車の移動総距離は809マイル(1302km)、
 カーボンフレームは711マイル(1144km)であった。
 両群の平均の移動時間差は、00:00:32
 (hr:min:sec; 95% CI –00:03:34 to 00:02:30; P=0.72)であった。
 また冬の間(20 January to 19 April 2010)と
 夏の間(21 April to 22 July 2010)の移動時間差は
 00:06:50 (95% CI 00:04:39 to 00:08:59; P<0.01)であり、有意だった。
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結論:
 自転車が軽くても、通勤時間を短縮できるわけではない。
 軽い自転車を購入するよりも、自分の体重を減らすべきである。

by otowelt | 2010-12-13 12:42 | その他

間質性肺疾患診療マニュアル



まさに呼吸器内科医のための本です。
病理写真が多く、かゆいところに手が届く部分も多いため
買って損はありません。

by otowelt | 2010-11-19 09:06 | その他

Rett症候群の肺HRCT所見

Rett症候群は小児の病気であるが、
10年以上の生存が見込める場合、中年まで存命されるケースもある。
Longevity in Rett Syndrome: Analysis of the North American Database.
J Pediatr. 2009 Sep 19.

(古典的Rett症候群とわけて、非典型的Rett症候群という)
脊柱変形が進むと呼吸器合併症も強くなる先天性疾患であることは、
呼吸器内科医として知っておいた方がよい。

Unrecognized Lung Disease in Classic Rett Syndrome.A Physiologic and High-Resolution CT Imaging Study
CHEST 2010; 138(2):386–392


27人のRett症候群の女児で検証された、肺HRCTの所見。
いままでこういったスタディがなかったため、
Rett症候群にこういった肺病変があることは知られていなかった。

15人(55.5%)にHRCTの異常がみられた。
centrilobular nodules (10/15, 66.7%)
thickening of the bronchial walls (8/15, 53.33%)
patchy ground-glass opacities (4/15, 26.7%)
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by otowelt | 2010-08-05 00:23 | その他