カテゴリ:呼吸器その他( 353 )

閉塞性睡眠時無呼吸の重症度と大動脈石灰化の関連

e0156318_117241.png 心血管系死亡のリスク因子であることはすでに知られていますが、動脈硬化と関連を示した本研究は貴重です。

Kim S, et al.
Relationship of obstructive sleep apnoea severity and subclinical systemic atherosclerosis.
Eur Respir J. 2019 Oct 31. pii: 1900959. doi: 10.1183/13993003.00959-2019.


背景:
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、よくみられる睡眠呼吸障害である。無治療OSAは、アテローム性動脈硬化を進行させ、心血管系による不利益を潜在的に増加させる。

目的:
 この研究は、客観的に評価されたOSA重症度と、CTでカルシム沈着を定量化するなどの方法で非侵襲的に評価されたサブクリニカルな全身性アテローム性動脈硬化との関連を評価することである。

方法:
 韓国ゲノムおよび疫学研究において、2157人の器質的心疾患がない被験者が登録された(平均年齢59.96 ± 6.67歳、48.73%が男性)。自宅でポリソムノグラフィ、病院で胸部CT検査を受けた。被験者はOSAの重症度によって層別化された:非OSA群(AHI<5、1096人)、軽症OSA群(5≦AHI<15、700人)、中等症~重症OSA群(AHI≧15、361人)。胸部大動脈および冠動脈のカルシウム沈着は、Agatstonスコア(J Am Coll Cardiol 1990;15:827-832)によって評価された。

結果:
 心血管系リスク因子で補正すると、中等症~重症OSAの被験者は、非OSA群と比較して、胸部大動脈の石灰化リスクが1.6倍高かった(95%信頼区間1.18-2.15、p=0.002)。一般集団におけるOSA重症度は、サブクリニカルな全身性アテローム性動脈硬化と独立して関連していた。
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(文献より引用)

結論:
 本研究は重症OSAが全身性アテローム性動脈硬化に与える潜在的な重要性を示すものである。





by otowelt | 2019-11-25 00:30 | 呼吸器その他

メタアナリシス:胸膜クライオバイオプイシーの診断精度

e0156318_16292292.jpg 肺野のTBLBと違って、胸腔鏡でごっそり取れやすいので、敢えてクライオにしなくても・・・という結論です。びまん性肺疾患の分野では1検体あたりの大きさが問われますが、胸膜疾患ではそこまで配慮しなくてもよさそうです。

Shafiq M, et al.
Pleural Cryobiopsy - A Systematic Review and Meta-Analysis.
CHEST, DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2019.09.023


背景:
 外科的あるいは内科的胸腔鏡下胸膜生検は、現在の胸膜生検のゴールドスタンダードであり、高い診断率を誇るが完璧とは言えない。クライオバイオプシーは、組織検体量が多く、深達度が深く観察でき、組織の挫滅アーティファクトが減少できる。しかしながら、その診断能は不透明であり、安全面についても懸念が残る。われわれは、システマティックレビューとメタアナリシスをおこなった。

方法:
 われわれは、胸膜生検のパフォーマンスを評価した研究をMEDLINE, EMBASE, Google Scholarから抽出し、QUADAS-2を用いて質を評価した。逆分散重み付けにより、診断能のメタアナリアシスをおこなった。検体の特徴や処置に関連した合併症についてもレビューした。

結果:
 7つの観察研究から586の胸膜生検が登録された(クライオバイオプシー311検体、胸腔鏡下鉗子生検275検体)。1つ以外のすべての研究が、semi-rigid胸腔鏡を用いていた。メタナアナリシスでは、クライオバイオプシーの診断能は96.5%、胸腔鏡下鉗子生検では93.1%だった(オッズ比1.61 、95%信頼区間0.71–3.66、I2=16%)。中等症から重症の出血例はクライオバイオプシ―群で観察されなかった。funnel plotでは出版バイアスは有意でなかった。
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(診断精度:文献より引用)

結論:
 均一な観察研究データに基づいた解析では、胸膜クライオバイオプシーは安全だが、胸腔鏡下鉗子生検と比較して診断能を上昇させるものではない。適切な検出力による多施設共同ランダム化比較試験が望まれる。







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by otowelt | 2019-11-19 00:16 | 呼吸器その他

EVALI:電子たばこ関連肺傷害のほとんどはTHC含有製品が原因

e0156318_1329388.png これは嗜好品としての電子たばこの報告です。禁煙治療の電子たばこと混在しながらトップジャーナルに論文が掲載されていくので、曇りなき眼で読んでいく必要があります。
 EVALIがTHCと強く関連していることは既知の通りです。
 ちなみに、加熱式たばことは関係ありません。医師ですら混同してバッシングしているのを見かけますが、分けて考えるべきです。もちろん、呼吸器内科医としてはどちらも容認しがたいですが。

・参考記事:呼吸器内科医として知っておきたい加熱式たばこラインナップ(2019.10)

Kalininskiy A, et al.
E-cigarette, or vaping, product use associated lung injury (EVALI): case series and diagnostic approach.
Lancet Respir Med. 2019 Nov 8. pii: S2213-2600(19)30415-1. doi: 10.1016/S2213-2600(19)30415-1.


背景:
 2019年6月から、1000例以上の電子たばこあるいはvapingによる製品使用関連肺傷害(EVALI)がアメリカで報告されている。患者は呼吸困難、咳嗽を呈し、胸部画像検査で両側の肺胞性陰影を伴う低酸素血症を有することが分かった。ほとんどの患者はICUでステロイド治療を要した。全患者はvapingの禁煙、支持ケア、ステロイド治療によって回復し、追跡時には呼吸器症状は消失したままであった。アメリカでは特に若年者の間で電子たばこの使用が急速に増えている。

方法:
 ロチェスター大学医療センター(アメリカ・ニューヨーク州)において、受診30日以内に電子たばこあるいはその他vapingデバイスの使用がある、胸部画像上(CTあるいはX線写真)両側肺胞性陰影がある入院患者を同定した。診療録と患者インタビューから症例の詳細を取得し、症状経緯、身体所見データ、画像所見、検査データ、vapingの喫煙歴、その後の外来追跡時データを含め、過去3ヶ月にわたって調べた。ニューヨーク州保健局と協力して、当院は環境衛生、医学毒物学、感染症、疫学、および慢性疾患予防の専門家からの入力に加えて、州全体の医師のフィードバックに基づく新しい臨床診療アルゴリズムを開発した。

結果:
 2019年6月6日から2019年9月15日までに、当医療センターにおいてEVALI疑いで治療された12症例を報告する。10人(83%)が呼吸困難、発熱、嘔吐を有し、9人(75%)が咳嗽を有していた。11人(92%)がテトラヒドロカンナビノール(THC)含有電子たばこを使用していた。8人(67%)の患者が低酸素性呼吸不全のためICU入室を必要としたが、死者はいなかった。入院期間中央値は7日(IQR7-8日)だった。追跡可能だった6人(50%)は過去のCT所見と肺機能検査に復していた。臨床アルゴリズムは、EVALIの主要徴候と症状があることに加えて、推定診断前に感染症やその他の心肺疾患を除外することが重要としている。
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(胸部CT:胸膜直下がスペアされた全肺野のすりガラス陰影[文献より引用])

結論:
 われわれのコホートではEVALI疑い患者は、致死的な低酸素血症を有しており、67%がICUマネジメントを要した。重篤な症状であるにもかかわらず、過去のEVALIの報告と同様に、ほとんどの患者はvapingの禁煙と必要時全身性ステロイド治療をおこなうことで症状発現後1~2週間以内に病態が改善した。EVALIを疑われた患者のほとんど(92%)はTHC含有製品を使用しており、THCを含んだe-リキッドまたはオイルがEVALIの病因に関する全国的調査の焦点となっている。潜在的な毒性、基礎となる病態生理学的メカニズム、およびEVALIによる入院リスクが高い感受性のある個人を特定するために、さらなる研究が必要である。今回EVALIの評価と管理のための世界初の臨床診療アルゴリズムを提示した。
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(EVALIの臨床診療アルゴリズム[文献より引用])


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by otowelt | 2019-11-16 12:33 | 呼吸器その他

GRAVITAS試験:胸水を排液するとき、陰圧をかけるか・かけないか

e0156318_10322082.jpg 胸水穿刺(ドレナージ)するときに、ポタポタと重力にまかせて胸水を落としきるか、手動で陰圧をかけながら引っ張るかを比較した貴重な研究です。
 これを立案した人、マジパネェです。これですよ、これ!こういうのが“実臨床的”ってもんです!
 
Lentz RJ, et al.
The Impact of Gravity versus Suction-driven Therapeutic Thoracentesis on Pressure-related Complications: the GRAVITAS Multicenter Randomized Controlled Trial.
Chest. 2019 Nov 8. pii: S0012-3692(19)34190-X. doi: 10.1016/j.chest.2019.10.025.


背景:
 胸腔穿刺は、積極的な吸引あるいは自然な重力によるドレナージによっておこなわれる。われわれは、重力による自然なドレナージが、積極的な陰圧吸引と比べて胸部不快感、再膨張性肺水腫、気胸などの陰圧関連合併症を予防できるかどうかを検証した。

方法:
 これは、500mL以上の胸水貯留が想定される18歳以上の患者を、1:1の割合で、積極的吸引と自然なドレナージのいずれかに割り付けた前向き多施設共同単盲検ランダム化比較試験である。処置前後、処置中、100mmのVASにより胸部不快感を評価した(0mm:大丈夫、100mm:不快)。胸腔穿刺は、完全に排液された場合、または持続的に胸部不快感を訴える場合、難治性の咳嗽があった場合、その他の合併症があった場合には中止された。プライマリアウトカムは、処置後5分の胸部不快感とした。セカンダリアウトカムは、処置後48時間の不快感と呼吸困難とした。
 使用カテーテル: 8F over-needle-style catheter (Safe-T-Centesis, BD, Franklin Lakes, NJ, USA or Arrow-Clarke Pleura-Seal, Teleflex, Morrisville, NC, USA)

結果:
 142人の患者がランダム化され、140人が最終解析に組み込まれた。積極的吸引群の15人 (24%)、自然ドレナージ群の 11人(14%)が悪性胸水だった。全体の約半数が外来ベースで処置がおこなわれた。
 プライマリアウトカムには有意差はなかった(平均VASスコア差5.3mm、95%信頼区間-2.4 ~ 13.0, p=0.17)。セカンダリアウトカムである不快感と呼吸困難にも差はなかった。両群のドレナージ量に差はなかった(積極的吸引群1264 ± 724 mL vs 自然ドレナージ群1165 ± 543 mL, 平均差99 mL, 95%信頼区間-113 to 310, p=0.89)。処置にかかった時間は、自然流出群のほうが長かった(平均差7.4分、95%信頼区間10.2~4.6分、p<0.001)。再膨張性肺水腫などの重篤な合併症は報告されなかったが、積極的吸引群の1人に気胸が起こった(吸引圧とは無縁と思われる)。
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(VAS:文献より引用)

結論:
 胸水を抜く場合、積極的吸引と重力による自然ドレナージのいずれも安全に実施でき、胸部不快感や呼吸困難も同水準だった。ただ、積極的に陰圧をかけて吸引したほうが処置時間は短い。



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by otowelt | 2019-11-14 16:54 | 呼吸器その他

喀血に対するトラネキサム酸は院内死亡率を低下させる

e0156318_17163723.png DPCデータを用いた解析。エビデンス未開拓の領域でもありました。

Kinoshita T, et al.
Effect of tranexamic acid on mortality in patients with haemoptysis: a nationwide study
Critical Care 23, Article number: 347 (2019)


背景:
 トラネキサム酸は喀血患者に広く使われているが、死亡率を改善させるのかどうかは検証されていない。この研究の目的は、喀血患者の院内死亡率にトラネキサム酸が与える影響を調べることである。

方法:
 日本DPC入院患者データベースを用いた後ろ向き研究である。2010年7月から2017年3月の間に喀血で緊急入院した全症例を同定した。患者は、コントロール群、トラネキサム酸群(入院日に投与された症例)の2群に分けられた。プライマリアウトカムは院内死亡率で、セカンダリアウトカムは入院期間と総医療費とした。データは傾向スコアマッチを用いて評価された。
 18歳未満の患者や、入院日に死亡した症例は除外された。

結果:
 28539人の患者のうち、17049人がトラネキサム酸を投与され、11490人が投与されなかった。トラネキサム酸群では、95.8%の患者で2g以下の用量が用いられていた。コントロール群のうち、2997人(26.1%)は入院2日目以降にトラネキサム酸の投与を受けていた。
 傾向スコア解析で、9933人ずつのマッチペアが作成された。平均年齢はトラネキサム酸群72±14歳、コントロール群72±13歳だった。約63%が男性で、約47%が非喫煙者だった。喀血の原因疾患を調べると、3人に1人は特発性で、特定できたものは、呼吸器感染症、悪性腫瘍が多かった。気管支拡張症は約15%だった。
 マッチ前の粗死亡率は、トラネキサム酸群1379人(12.0%)、コントロール群1290人(7.6%) だった。マッチペアにおいて、トラネキサム酸群はコントロール群より有意に院内死亡率が低く(11.5% vs 9.0%; リスク差− 2.5%; 95%信頼区間− 3.5 to − 1.6%)、入院期間が短く(18 ± 24 日 vs 16 ± 18 日; リスク差− 2.4 日; 95%信頼区間− 3.1 to − 1.8 日)、総医療費が安かった(7573 ± 10,085ドル vs 6757 ± 9127ドル; リスク差− 816ドル; 95%信頼区間− 1109 to − 523ドル)。
 
※1ドル=110円で計算。

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(文献より引用:マッチ患者のアウトカム)

結論:
 緊急入院を要する喀血患者に対するトラネキサム酸は、院内死亡率を減らすかもしれない。



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by otowelt | 2019-11-09 13:37 | 呼吸器その他

呼吸器内科医として知っておきたい加熱式たばこラインナップ(2019.10)

e0156318_1329388.png ※2019年10月27日改訂

前回から、iQOS3 DUO、glo pro、glo nano、glo sensが増えたので、改訂しました。見にくい場合は画像をクリックして拡大お願いします。なお、呼吸器専門医はいかなる理由があっても喫煙してはいけませんのでご注意を。

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表:iQOS(アイコス)
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表:Ploom(プルーム)
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表:glo(グロー)





by otowelt | 2019-10-28 00:22 | 呼吸器その他

月経随伴性気胸患者における血中循環子宮内膜細胞の同定

e0156318_9192466.png 横隔膜還流が時計回り(患者さんからみた場合は反時計回り)で、右横隔膜下に・・という理論を見たことがありますが、循環子宮内膜細胞の説についても検証されています。

Kiss I, et al.
Circulating Endometrial Cells in Women with Spontaneous Pneumothorax
CHEST, DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2019.09.008


背景
 月経随伴性気胸の発症はまれであり、臨床医がこの診断に気づくことも困難である。月経随伴性気胸は、骨盤内子宮内膜症と強く相関しており、胸腔内子宮内膜症症候群のもっともよくみられる型でもある。循環子宮内膜細胞(CEC)は、骨盤内子宮内膜症患者で過去に同定されたことがある。CECは、気胸マネジメントに新たな知見をもたらすだろうか?

方法:
 この研究は、月経と関連していることが強く疑われる自然気胸の女性患者20人において、CEC検出の頻度とその特徴を調べることである。CECは細胞の大きさから分離濃縮された(MetaCell®)。細胞形態に加えて、採取細胞において24の子宮内膜症関連遺伝子発現プロファイリングをおこなった。
 コントロール群として、気胸のない子宮内膜症患者を18人設定した。

結果:
 CECは20人全員にみられた。濃縮CECは、上皮性、幹細胞様、間質細胞様、腺細胞様の4つの特徴を有していた。しかしながら、全サンプルにおいてこのすべての特徴があるわけではなかった。遺伝子発現プロファイルでは、月経随伴性気胸患者のCECに2つのフェノタイプが同定された。そのうちの1つは横隔膜開口症候群、2つ目は子宮内膜胸膜移植である。
 気胸のある患者のCECを、骨盤内子宮内膜症で気胸のない患者のCECと比較したところ、気胸例でHER2発現が高かった。

結論:
 女性の気胸患者でCECを同定することができた。気胸患者でCECがあれば、子宮内膜症の進展が示唆されるため、早期に産婦人科コンサルトをおこない治療すべきである。


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by otowelt | 2019-10-18 00:34 | 呼吸器その他

徐放性モルヒネは慢性の息切れに無効

e0156318_1110586.jpg なかなかインパクトの大きな臨床試験です。
 呼吸不全を合併して酸素療法が導入されている安定期COPDという集団を想定したとき、モルヒネの定期使用は医学的意義がないという結果になりました。

David Currow, et al.
Regular, sustained-release morphine for chronic breathlessness: a multicentre, double-blind, randomised, placebo-controlled trial
Thorax, http://dx.doi.org/10.1136/thoraxjnl-2019-213681


背景:
 モルヒネが慢性の息切れを軽減するかどうか、大規模なランダム化比較試験では示されてない。これは、定期的な低用量徐放性モルヒネ製剤の効果と安全性をみた、初めての大規模並行群間試験である。

方法:
 多施設(オーストラリアにおける14の外来・入院・緩和ケアサービス)において、並行群間二重盲検ランダム化比較試験を実施した。慢性の息切れ(mMRC≧2以上)を有する成人を、徐放性モルヒネ製剤20mg/日+緩下剤(介入群)あるいはプラセボ+プラセボ緩下剤(コントロール群)のいずれかに7日間割り付けた。両群ともに、必要時2.5mg6回まで短時間作用性モルヒネ(24時間で15mgまで)を許可した。
 慢性の息切れについては、少なくとも2回適切な基礎疾患マネジメントをおこなったことを条件とした。
 プライマリエンドポイントは、ベースラインからの息切れの変化(VAS 0-100mm、日誌により1日2回記録)とした。セカンダリエンドポイントは、息切れの最悪時・最良時・平均、現在の息切れの不快感、疲労、QOLなどとした。

結果:
 ITT解析に組み込まれたのは、284人で、モルヒネ介入群145人、プラセボ群139人だった。平均年齢はモルヒネ介入群74.0±9.6歳、プラセボ群74.5±9.1歳だった。ベースラインのmMRCは1がそれぞれ18人(14.1%)、12人(10.3%)、2が22人(17.2%)、25人(21.6%)、3が33人(25.8%) 、33人(28.4%) 、4が55人(43.0%)、46人(39.7%)だった。平均SpO2は、それぞれ92.60±4.17%、92.96±4.46%だった。基礎疾患は、それぞれCOPDが82人(56.6%)、82人 (59.0%)と半数以上を占めた。次点は、悪性腫瘍である。登録時に在宅酸素療法を使っている患者は、それぞれ87人(60.0%)、75人(54.0%)だった。
 プライマリエンドポイントの息切れについて、両群で有意差はみられなかった(平均差−0.15 mm、95%信頼区間−4.59 to 4.29; p=0.95)。セカンダリエンドポイントにも差は観察されなかった。
 プラセボ群は、治療期間、経口モルヒネのレスキューをより多く使用していた(1日平均8.7回 vs 5.8回; p=0.001)。モルヒネ介入群は、プラセボ群より便秘、悪心・嘔吐が多かった。呼吸抑制や意識障害は1例もなかった。

結論:
 慢性の息切れに対する徐放性モルヒネ製剤の定期的内服は、プラセボと比較して息切れを軽減させない。プラセボ群のほうが、レスキューモルヒネの使用が多かった。






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by otowelt | 2019-10-17 00:41 | 呼吸器その他

ERS慢性咳嗽の診断と治療ガイドライン

e0156318_8413789.png 筆頭著者はもちろんMorice先生です。サマリークエスチョンだけ翻訳しました。強く推奨されているのは低用量モルヒネだけで、これもMorice先生のランダム化比較試験に基づくものです。

Morice AH, et al.
ERS guidelines on the diagnosis and treatment of chronic cough in adults and children.
Eur Respir J. 2019 Sep 12. pii: 1901136. doi: 10.1183/13993003.01136-2019.


■クエスチョン1:胸部レントゲンや身体所見が正常な慢性咳嗽患者に胸部CTをおこなうべきか?
胸部レントゲンや身体所見が正常な慢性咳嗽患者に、ルーチンに胸部CTを行うことは支持しない(条件付き推奨、きわめて低い質のエビデンス)。

■クエスチョン2:慢性咳嗽に対してステロイド/ロイコトリエン受容体拮抗薬の反応性を予測する上でFeNO/血中好酸球は測定すべきか?
慢性咳嗽患者の抗炎症治療の反応性を予測するために有用かつ実用的な検査が必要である。しかし、それについての質の高いエビデンスは不足している。

■クエスチョン3:喘息治療薬(抗炎症あるいは気管支拡張治療)は慢性咳嗽患者に用いられるべきか?
成人の慢性咳嗽患者における短期吸入ステロイド(2~4週間)をためすことは支持される(条件付き推奨、低い質のエビデンス)。

■クエスチョン4:慢性咳嗽患者に対して制酸剤治療(PPIおよびH2ブロッカー)はおこなうべきか?
成人の慢性咳嗽患者に対する制酸剤治療をルーチンにおこなわないことを支持する(条件付き推奨、低い質のエビデンス)。

■クエスチョン5:慢性咳嗽患者に線毛運動改善薬は用いられるべきか?
慢性咳嗽においてマクロライドのルーチン使用を推奨するエビデンスは不足している。ほかの治療に抵抗性の慢性気管支炎による咳嗽に対して1ヶ月のマクロライド使用は考慮してもよいが、地域の抗菌薬適正使用ガイドラインなどに基づくべきである(条件付き推奨、低い質のエビデンス)。

■クエスチョン6:慢性咳嗽の患者に対して咳嗽神経調節性治療薬(プレガバリン、ガバペンチン、三環系抗うつ薬、オピオイド)は用いられるべきか?
成人の慢性難治性咳嗽に対する低用量徐放性モルヒネ(5~10mg1日2回)の試行を推奨する(対用推奨、中程度の質のエビデンス)。

■クエスチョン7:慢性咳嗽患者に対して非薬物治療(咳嗽コントロール療法)は用いられるべきか?
成人の慢性咳嗽患者に対する咳嗽コントロール療法を支持する(条件付き推奨、中等度の質のエビデンス)。
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by otowelt | 2019-10-08 00:39 | 呼吸器その他

胸腔内感染に対するウロキナーゼとt-PA/DNAseの比較

e0156318_1142077.png 日本ではウロキナーゼしか使えませんので、この報告は安心しますね。

Benoît Bédat, et al.
Comparison of intrapleural use of urokinase and tissue plasminogen activator/DNAse in pleural infection.
ERJ Open Research 2019 5: 00084-2019; DOI: 10.1183/23120541.00084-2019


背景:
 線維素溶解療法は、胸腔感染症における膿ドレナージを改善させうる。胸腔ドレーンを介したウロキナーゼあるいはDNAse併用t-PAによる治療は、外科手術の必要性を低下させる。この研究は、この2治療を比較した初めての臨床試験である。

方法:
 われわれは単施設(Geneva大学病院)において前向きコホート研究を実施した。胸腔感染症の患者は2014年1月から2017年12月までに入院し、抗菌薬治療と胸腔ドレナージ治療を要したものとした。初回の線維素溶解療法から行われた追加処置(追加胸腔ドレナージあるいは外科手術)、合併症、コスト、放射線学的および生理学的アウトカムが解析された。

結果:
 93人が試験に登録され、初回の線維素溶解療法以降、34%が追加的処置を要した(21%:追加胸腔ドレーン、13%:胸腔鏡手術)。追加的処置は、多胞化したケースに多く(p=0.01)、太径ドレーンの使用と関連していた(p=0.01)。ウロキナーゼとt-PA/DNAseの治療成功率に差はなかった(p=0.35)。また、胸腔ドレナージ期間、入院期間にも差はなかった(ぞれぞれ、p=0.05、p=0.12)。t-PA/DNAseは安価(p=0.04)だったが、血胸が多かった(p=0.002)。

結論:
 ウロキナーゼは、t-PA/DNAseによる線維素溶解療法と同様に安全かつ効果的であった。






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by otowelt | 2019-10-03 00:22 | 呼吸器その他