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劇症1型糖尿病

先日の救急のバイトで、劇症1型糖尿病かと思われる症例を
みかけたので、個人的にまとめてみる。
HbA1cが5.7なのに、血糖値1380という数字に度肝を抜いた。

●劇症1 型糖尿病とは
 非常に急速に進行し、インスリン分泌が短期間で枯渇する1型糖尿病。
 2000年に日本から発表された。
 急性発症1 型糖尿病の約20%にのぼり、臨床的特徴として
 ①高血糖に比しHbA1c が低値であること
 ②糖尿病関連自己抗体が陰性であること
 ③発症時に膵外分泌酵素が上昇しており、尿中Cペプチドが発症時にすでに低値
  でインスリン分泌が枯渇している
 という点である。
           Nat Clin Pract Endocrinol Metab. 2007; 3: 36-45.
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●診断基準:2004 年に糖尿病学会
 ①発症一週間以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る
  (初診時の尿中あるいは血中ケトン体陽性)
 ②初診時の血糖値が288mg/dl 以上でありHbA1c 値<8.5%
 ③発症時の尿中Cペプチド<10μg/ 日、または空腹時血清Cペプチド<0.3ng/ml
  かつグルカゴン負荷後(または食後2 時間)血清Cペプチド<0.5ng/ml
                糖尿病. 2005; 48 (Supple): A1-A13.

●病因
 劇症1型糖尿病患者では、約70 %の症例に発熱,上気道炎など風邪症状を伴う
 ことから、ウイルス感染は単なる随伴病ではなく糖尿病発症の原因であることが
 疑われている。
 ヒトの1 型糖尿病に関連するウイルスとしては、コクサッキーB群ウイルス、
 風疹ウイルス、ムンプスウイルス、サイトメガロウイルス、EBウイルス、
 水痘帯状ウイルス、ヒトヘルペスウイルス6(HHV6)、レトロウイルス、
 ロタウイルスなどが挙げられる。

●初診時症状
 口渇が90%にみられる。
 特徴的なのは、上気道炎症状(71.7%)や嘔吐・腹痛などの
 消化器症状(72.5%)がみられることである。
                 Diabetes Care. 2003;26: 2345-52.
 意識障害も45.2%の症例で認められるが、基本的に1型糖尿病では
 劇症型でないものに関しては5.3%にしかみられない。
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●治療
 早期に診断され、大量輸液インスリンの補充が行われれば予後良好である。
 発見されたときに重篤な糖尿病性ケトアシドーシスを起こしている場合が
 あるので、発症して1両日以内の対応が重要である。

by otowelt | 2010-05-11 10:56 | 内科一般

救急におけるGlide Scopeを用いた挿管

日本ではAirway scopeがよく用いられているが、
Glide ScopeはAirway scopeほど太くない。
当院の集中治療室ではAirway scopeをしばしば使うことがある。
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Endotracheal intubation using a GlideScope video laryngoscope by emergency physicians: a multicentre analysis of 345 attempts in adult patients
Emerg Med J 2010;27:380-382


目的:
 Glide Scope(GVL)が救急医により発売後2年の間どのように用いられたか調査。

方法:
 5つの救急部において調査をおこなった。
 GVLによる挿管成功率を通常の喉頭鏡と比べた。

結果:
 GVLは3223の挿管のうち10.7%の345症例に用いられた。
 GVLにおけるoverall success rateは、喉頭鏡より有意に高いわけではなかった。
 (79.1% vs 77.6%, p=0.538)
 挿管困難例においては、有意にsuccess rateがGVLで高かった。
 (80.0% vs 50.4%, p<0.001).

結論:
 GVLはそれほど頻繁に用いられておらず、喉頭鏡に比べて成功率を上昇させる
 わけではない。しかしながら、挿管困難例においては有用であると考えられる。

by otowelt | 2010-05-11 03:14 | 救急

急性の腰・頚部のコリには、温パック・冷パックに有意差なし

救急にやってきた”こり”に対して、冷パックがいいのか、温パックがいいのかという
ランダム化比較試験。非常に面白い。
イブプロフェンが邪魔だが、こればかりは救急患者を相手にしているので
仕方ないところか。。。。
結論としては、どちらでもかまわないということになった。

Heat or Cold Packs for Neck and Back Strain: A Randomized Controlled Trial of Efficacy
ACADEMIC EMERGENCY MEDICINE 2010; 17:484–489


目的:
 急性の腰部あるいは頚部のこわばりはよくみられる主訴である。
 これに対しては温湿布や冷湿布が使用される。
 この試験の目的は、鎮痛のために温湿布か冷湿布のどちらがよいのかを
 調べるものである。

方法:
 ランダム化比較試験は大学病院の救急部でおこなわれた。(年間9万人ER来院)
 18歳をこえる救急受診患者のうち、急性の腰あるいは頚部のこわばりを主訴に
 来院した患者で検証。
 すべての患者は400mgイブプロフェンを経口投与され、30分間
 ホットパックあるいはコールドパックに割りつけられた。
 アウトカムは、疼痛重症度をVASで計測したもの、レスキュー鎮痛薬を使用した
 割合、VASによる疼痛軽減度、同じようなパックを将来的に行いたいかどうかという点
 とした。

結果:
 60人の患者のうち、31人が温パック、29人が冷パックにあてられた。
 平均年齢は37.8歳、51.6%が女性、66.7%が白人だった。
 両群ともに、疼痛重症度に前後で差がみられなかった
 前:75 mm [95% CI = 66 to 83] vs. 72 mm [95% CI = 65 to 78]; p = 0.56
 後:66 mm [95% CI = 57 to 75] vs. 64 mm [95% CI = 56 to 73]; p = 0.75
 疼痛が改善したと申告した人は、温パックで16/31 (51.6%)、冷パックで
 18/29 (62.1%)であった(p = 0.27)。これも有意差なし。
 将来同じような場合にパック治療をおこないたいかという問いに関しては
 いずれも同程度の回答であった(p = 0.65)。

結論:
 急性の腰部あるいは頚部のこわばりに対してイブプロフェン内服後に30分の
 温あるいは冷パックをおこなっても、いずれも疼痛改善に関しては差がない。
 そのため、いずれを選択しても構わない。

by otowelt | 2010-05-11 02:41 | 救急

ゾメタが骨転移のある肺癌患者で生存期間を延長(第2回ヨーロッパ肺癌会議)

ゾメタのエビデンスは一体どこにあるのか、まず復習したい。

・悪性腫瘍による高カルシウム血症患者におけるカルシウム降下作用
・固形癌骨転移による骨関連事象(病的骨折、骨病変に対する放射線治療、
 骨病変に対する外科的手術、脊髄圧迫)の軽減

               J.Clin.Oncl. 23(15),3314,2005 
               J.Clin.Oncl. 21(16),3150,2003 
               J.Natl.Cancer Inst. 94(19),1458,2002
 

第2回ヨーロッパ肺癌会議で注目を浴びたのは、
Rossella Calderoneらによる、ゾレドロン酸がOSを改善したという報告である。
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方法:
 骨転移のある肺癌患者のなかから、ゾレドロン酸の投与を受けていた49人と
 受けていなかった75人を選び、全生存期間を調べた。
 
結果:
 全員が標準的なプラチナ製剤ベースの化学療法を受けていた。
 OSの中央値は、ゾレドロン酸投与群が34週、非投与群が19週(p=0.01)。
 予後予測因子で調整後もそれぞれ34週と21週で、ゾレドロン酸投与群で
 生存期間が長い傾向が見られた(p=0.06)。

結論:
 症状のある骨転移患者には生存率の観点からもゾレドロン酸を投与すべき。

ディスカッション:
 OS延長が、ゾレドロン酸による化学療法の効果増強によるのか、それとも
 ゾレドロン酸が骨転移に作用した結果なのかは定かではない。
 骨転移のない肺癌患者にも生存利益があるかどうかは不明である。

by otowelt | 2010-05-10 13:14 | 肺癌・その他腫瘍

培養陰性HCAPは、培養陽性HCAPより予後が良い

やや重箱の隅をつつくような臨床試験ではあるが。

A Comparison of Culture-Positive and Culture-Negative Health-Care-Associated Pneumonia
Chest 2010;137;1130-1137


背景:
 この試験の目的は、 培養陰性HCAPおよび培養陽性HCAPにおける
 抗菌薬レジメン、疾患重症度、院内死亡率を調べることである。
 HCAP:health-care-associated pneumonia 介護・医療施設関連肺炎

方法:
 レトロスペクティブコホートスタディ。
 Barnes-Jewish病院において、HCAP症例を調査。

結果:
 870のHCAP患者を用いて、3年間観察。
 431人が培養陽性であった。
 培養陰性患者のうち、66.1%が喀痰などが採取できておらず、
 33.9%が菌の発育がなかったかあるいは口腔内常在菌が増殖した。
 培養陰性患者の方が、CAPの菌をターゲットにした抗菌薬使用ができていた。
 (71.8% vs 25.5%, P <.001)
 培養陽性患者の方が、陰性患者よりもより重症度が大きかった。
 (ICU入室 12.1% vs 48.7%, P< .001; 人工呼吸器: 6.7% vs 44.5%,P<.001)
 院内死亡率および在院日数は培養陰性群の方が少なかった。
 (死亡率: 7.4% vs 24.6%, P< .001;
  在院日数: 6.7 ± 7.4 days vs 12.1 ± 11.7days, P< .001).
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結論:
 培養陰性HCAPの方が培養陽性HCAPよりも重症度や在院日数が少なかった。
 これは培養陽性HCAPと培養陰性HCAPが根本的に異なるものであると考えられる。 

by otowelt | 2010-05-10 12:26 | 感染症全般

IgG4関連疾患

現在日本が確実にリードしている分野であり、海外の文献が少ないのが現状である。
最近IgG関連疾患の本が出版されており、読んでおきたいところである。
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●概念
 近年、IgG4関連疾患と呼ばれる疾患概念が提唱されている。
 涙腺・唾液腺、膵、腎など多臓器に病変を認め、血中IgG4高値と組織の
 IgG4陽性形質細胞の浸潤を特徴とする。組織学的にIgG4陽性形質細胞や
 リンパ球浸潤が涙腺、唾液腺、後腹膜、膵臓、胆管などで起こり、臨床的には
 Mikulicz病、後腹膜線維症、自己免疫膵炎、糖尿病、原発性硬化性胆管炎
 類似の胆管病変などを呈する全身性疾患である。
 以下を満たすものをIgG関連疾患とする、という提唱がなされているが
 現時点では確実な診断基準はまだない。
 ・血清IgG4の高値(135㎎/dl以上)
 ・IgG4関連疾患で特異性の高い臓器(涙腺、唾液腺、膵臓、後腹膜) の異常
 ・組織学的にIgG4陽性形質細胞とリンパ球浸潤の確認
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●歴史
 1978年に両側上眼瞼と顎下腺の腫脹を初発症状とし、ステロイドが著効
 した膵炎を報告している。IgG4関連疾患の膵病変の初報告と考えられる。
             Am J Dig Dis 23(Supple):75S79S, 1978.
 その後の様々な検討により、自己免疫膵炎に高頻度に血清IgG4が高値を示す
 ことが明らかになった。膵以外にも胆道、涙腺、唾液腺、後腹膜などにも病変を認め、
 膵を含むそれらの臓器の免疫組織染色でIgG4陽性形質細胞および
 CD4ないしCD8陽性Tリンパ球がびまん性に浸潤していることが明らかになった。
               N Engl J Med 344:732738, 2001.
               J Gastroenterol 38:982984,2003.

 のちにIgG4関連疾患という疾患概念が提唱され、
 自己免疫膵炎はIgG4関連疾患という全身性疾患の膵病変であると推定された。

●IgG4関連疾患・胆道~膵臓
 膵病変の特徴は膵管の狭細像と膵のソーセージ状の腫大である。
 自己免疫膵炎に合併する胆管狭窄はPSCの合併ではないとされている。
 IgG4関連疾患のPSC様胆管病変とするのが妥当である。
 PSCは閉塞性黄疸で発症するが、IgG関連PSC様胆管病変は軽度の肝障害が
 診断のきっかけとなることが多い。PSCとIgG4関連硬化性胆管炎は異なる組織像
 を示し、病理学的にも鑑別可能である。IgG4関連疾患の胆管病変の合併頻度は
 40%程度である。胆嚢ではIgG4関連疾患では胆嚢壁の肥厚が25%程度認められる。
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●IgG4関連疾患・後腹膜
 IgG4関連疾患では膵に対する画像診断で偶然発見されることが多いため、
 後腹膜線維症が発見されるケースは少ない。大動脈や上腸間膜動脈周囲の
 線維化にとどまっていることが多く、軽症例が多いとされている。
 尿路閉塞による水腎症を呈することがある。
 間質性腎炎を呈することがあり、造影CTが診断に有用である。
               Clin Nephrol. 2007 Nov;68(5):308-14.
 間質性腎炎と腎門部IgG4関連硬化性腫瘤の合併は本症に多く、
 浸潤形質細胞数が少ない場合、間質腎炎合併は重要なIgG4関連疾患の根拠となる。
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●IgG4関連疾患・唾液腺
 両側唾液腺、涙腺の腫脹を来たす症例をMikulicz病という。
 Mikulicz病はIgG4関連自己免疫疾患であるとの報告が多い。
 血清IgG4が高値であり、SS-AおよびSS-B抗体が陰性であるという点、
 またステロイド治療に対して良好な反応性を示すためである。
 顎下腺に後発し、硬く触れる腫瘤を形成する炎症性病変で
 硬化性唾液腺炎という病名を用いることが一般的である。
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●IgG4関連疾患・肺
 IgG関連肺疾患として認知されているのは、炎症性偽腫瘍と間質性肺炎である。
 炎症性偽腫瘍では特発性間質性肺炎に比べ優位にIgG、IgG4 陽性形質細胞が
 多く認められる。
               Human Pathology 2005 ; 36 : 710―717.
 BALでは全例でリンパ球分画の増加を認め、CD4/8ではCD4優位であったと
 いう報告が多い。
 また、肺門部リンパ節腫大を伴うことがあるため、
 サルコイドーシスと間違えられることもある。
 67%の自己免疫性膵炎で肺門部リンパ節腫大を伴うとされている。
               Pancreas 2003;27:20–25.
 アメリカの自己免疫性膵炎36症例の検討で、2例に肺病変が認められた。
               Am J Surg Pathol. 2006 Dec; 30 (12): 1537-45
 一方日本では自己免疫性膵炎30症例の経過中4例に肺病変が認められた。
               Intern Med J. 2006 Jan; 36 ( 1): 58-61
 IgG関連肺疾患の画像上の特徴として、
 (a) solid nodular
 (b) round-shaped GGO
 (c) alveolar interstitial
 (d) bronchovascular

 の4タイプが報告されている。
               Radiology: Volume 251: Number 1—April 2009
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 bronchovascular typeは、multicentric Castleman diseaseに類似する。
                Radiology 1998;209:477–481.
 病理学的に、炎症で閉塞した動脈周囲にIgG陽性形質細胞がみられることが多い。
                 Hum Pathol 2008;39:975–980.
 肺化膿症やWegener肉芽腫でもIgG陽性細胞が浸潤することがあるので
 鑑別に注意が必要であるとも考えられている。
 治療については、IgG関連疾患全般に共通しているが、
 肺病変もステロイドに反応しやすいとされている。
                    Gut 2004;53:770
                    Intern Med J 2006;36:58–61.

文責"倉原優"

by otowelt | 2010-05-09 05:17 | びまん性肺疾患

臍帯血移植におけるサイトメガロウイルス感染は移植成績を引き下げるリスク

臍帯血移植後のサイトメガロウイルス再活性化についての論文。

Impact of cytomegalovirus reactivation after umbilical cord blood transplantation.
Biol Bone Marrow Transplant 16:215-222, 2010


背景:
 UCBは造血幹細胞移植の代替ドナーソースとしてその利用が増加しており、
 BMに比べて、比較的勘弁で安全な採取が可能である。
 移植血液媒介ウイルス感染症の可能性も低いことなどのメリットもある。
 CMVは幹細胞移植後の合併症と死亡率に大きく影響すると考えられる。
 これまでUCB移植後のCMV再活性の頻度およびリスクについての報告はなく、
 本研究にてその頻度と移植成績への影響について検討する。

方法:
 1994年~2007年の間に血液悪性疾患にてUCB移植を施行した332例。
 54%がCMV抗体陽性であった。移植前のレシピエントCMV未・既感染状態は
 急性および慢性GVHD、再燃、DFS、OSには影響しない。
 CMV抗体陽性者はday100のTRMが高い傾向にあった(P=0.07)。
 CMV再活性は51%(92/180)に認めたが、骨髄破壊的造血幹細胞移植、
 骨髄非破壊的造血幹細胞移植間に差は認めなかった(P=0.33)。
 UCBユニット数、HLA一致度、CD34およびCD3陽性細胞数、
 KIR遺伝子ハプロタイプも再活性に影響しなかったが、リンパ球回復が
 早いことは再活性に関連していた(P=0.02)。
 CMV再活性は急性GVHD(P=0.97)、慢性GVHD(P=0.65)、
 TRM(P=0.88)、再燃(P=0.62)、生存(P=0.78)とは相関しなかった。
 CMV感染症は移植前CMV抗体陽性患者の13.8%に発症したが、
 これは高いTRM(P=0.01)、低いOS(P=0.02)と関連。

結論:
 レシピエントの移植前のCMV未・既感染状態および再活性はCBT結果に
 影響を与えないものの、CMV感染症への進展は移植成績を引き下げるリスクである。

by otowelt | 2010-05-08 09:14 | 感染症全般

肺癌とエストロゲン

最近のHealth Dayニュースから。

Lung Cancer Increase in Women Tied to Genes, Estrogen
Findings could explain rise in non-smokers as well, researchers say
Fox Chase Cancer Center, news release, April 19, 2010


 喫煙者を含めて女性の肺癌(がん)の比率が増加している理由について、マウスを用いた研究により新たな洞察が得られたことが報告された。
 新しい研究で、雌のマウスでは喫煙への曝露により遺伝子の作用に変化が生じることが判明した。これが身体のエストロゲン処理に影響を及ぼし、女性の喫煙者だけでなく非喫煙者における肺癌にも影響すると考えられるという。
 「これまでの研究からエストロゲンが肺癌に関与することが示されていたが、実際に喫煙が肺でのエストロゲン代謝を加速することを示した研究はなかった」と、米フォックス・チェイスFox Chase癌センター(フィラデルフィア)のMargie Clapper氏は述べている。今回の研究は、ホルモン補充療法(HRT)を受けている肺癌女性は、喫煙の有無にかかわらず、同治療を受けていない女性よりも経過がよくないことを示すという知見にも一致している。
 将来的には、「喫煙を始めたときに肺で発生するごく早期の事象(イベント)を明らかにすることができれば、肺癌とともにその事象を阻害する治療法を用いることができる」と、Clapper氏は述べている。この知見は、米ワシントンD.C.で開催された米国癌学会(AACR)年次集会で報告された。

by otowelt | 2010-05-07 15:43 | 肺癌・その他腫瘍

NASCENT試験:シルバーコーティング気管チューブはVAP死亡率を減らす

NASCENT試験の補追。

NASCENT試験の概要をまず説明する。
JAMA. 2008;300(7):805-813 (doi:10.1001/jama.300.7.805)
・Primary outcome
 24時間以上挿管した患者のBAL検体から
 104/ml以上の細菌数を認めるVAPの発症率
・Secondaryoutcome
 全挿管患者でのVAP発症までの時間・挿管期間・ICU入院期間・致死率・副作用との関係
上記の設定で、プライマリアウトカムの絶対リスク減少率
(absolute risk reduction) は、2.7%であった。
外傷患者で特に有用性がアピールされている。
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今回のCHESTでの補足だが、そもそも総死亡率が同じであるため、
シルバーコーティングの方がVAP死亡率が低いのだから
当然VAP以外の死亡率が有意に高いという、なんとも不可思議な結果になっている。

Association Between a Silver-Coated Endotracheal Tube and Reduced Mortality in Patients With Ventilator-Associated Pneumonia
CHEST May 2010 vol. 137 no. 5 1015-1021


背景:
 シルバーコーティングされた気管チューブ(s-ETT)はVAPを減らすことが
 NASCENT試験によりわかっている。

方法:
 この試験におけるリスクファクターを考察すべく、私たちはNASCENT試験において
 レトロスペクティブコホート分析をおこなった。
 
結果:
 総じて死亡率に差はでなかったものの、s-ETTはVAPの死亡率を減少させた。
(silver vs control, 5/37 [14%] vs 20/56 [36%], P=.03)
 しかし、VAP以外の死亡率は減少させなかった。
 (228/729 [31%] vs 178/687[26%], P=.03)
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結論:
 NASCENT試験によれば、シルバーコーティングされた気管チューブは
 VAPによる死亡率を減少させる。

by otowelt | 2010-05-06 23:43 | 集中治療

敗血症臨床試験においても長期予後はエンドポイントになりうる

敗血症の臨床試験のプライマリエンドポイントは院内28日死亡率であることが
多いのは言わずもがなである。
ALIなんかでは長期予後も大事なエンドポイントになりつつあるが、
敗血症でこれが妥当かどうかを検証した論文がCritical Care Medicineに
掲載されていた。
筆頭著者のDr. Bradford Wintersは神経集中治療分野のエキスパートで有名である。

Long-term mortality and quality of life in sepsis: A systematic review
Crit Care Med 2010 Vol. 38, No. 5


背景:
 敗血症の長期予後についてはよくわかっていない。
 そして、敗血症患者は死亡率およびQOLにそれぞれの臨床試験で
 異なる長期予後を有しているかもしれない。
 ALIのような集中治療疾患の長期予後は退院後も健康障害を及ぼす。
 これが敗血症で同じように長期死亡率およびQOLに関与するかどうかは
 まだわかっていないのが現状である。

目的:
 3か月以上の長期死亡率およびQOLを報告した論文をもとに
 システマティックレビューを作成。
 疾患は、sepsis, severe sepsis, septic shockとした。

結果:
 まず、よく使われている院内28日死亡率をはるかに超越した
 2年までの死亡率をエンドポイントに設定した。
 総じて、敗血症を有する患者は退院後もQOLを障害されていた。
 また、エンドポイントは臨床試験がなされた国や疾患によって大きく異なっていた。
 全体としては退院後も死亡率上昇リスクがありうるかもしれない。
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結論:
 現在使用されている院内28日死亡率は、プライマリエンドポイントとしては
 敗血症分野では妥当ではない可能性がある。
 退院後もQOLの障害は続いており、これが死亡率に影響を与える可能性がある。

by otowelt | 2010-05-06 19:39 | 集中治療