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血液培養各論

以前の記事の補追。

血液培養の意義・目的
・菌血症の確定診断
・感染症の重症度の指標
・感染部位からの検体採取が困難な疾患において起因菌の検出に有効.
 (IE、化膿性骨髄炎など)
・原因不明の感染症における、病巣予測

血液培養採取の適応とタイミング
・菌血症を疑う症状がみられる(発熱・悪寒/戦慄・頻脈・頻呼吸など)
・原因不明の低体温や低血圧
・突然変調を来した高齢者もしくは小児
・免疫抑制患者での原因不明の呼吸不全・腎不全・肝障害
・昏迷などの意識の変調(特に高齢者)
・説明のつかない白血球増多や減少、代謝性アシドーシス
・抗菌薬の変更時
治療開始後では菌の検出の可能性が相当に低くなるため、
抗菌薬投与中であれば、血中濃度が最も低いトラフ時に採取すべきと思われる。
また、IEの持続的菌血症の証明目的であれば、
24時間以内に間隔を空けて、最低3セット採取するのが望ましい。


●血液培養採取準備
・使用前に、ボトルに破損や変質がないか確認する。培地の濁りや過剰なガス圧
 はコンタミネーションを惹起するためそのような培地の入ったボトルは使わない。
・各ボトルに印字されている有効期限を確認した上、期限切れボトルは処分する。
・血液培養ボトルには、わかりやすく正確にラベルを付ける。
・各セット(1セット2ボトル)を別々の部位から採取する。
・培養用の血液は、動脈ではなく静脈から採取する。
                 Clin Infect Dis. 1996;23:40-46
・血管カテーテルからの採取はコンタミ率が高くなるので、避けるのが望ましい。
                 J. Clin Microbiol. 2001;39:3393-3394
・検体採取前に必ず皮膚を消毒。
・ボトルと、記入済みの血液培養依頼書を、できるだけ早く
 微生物検査室へ搬送する。遅くなる場合はボトルを室温で一時保存する。
                 J Med Microbiol. 2004;53:869-874

●血液培養ボトル
・採取した血液は好気/嫌気ボトルに同量ずつ分ける。
・成人用でルーチン血液培養セットは、好気/嫌気ボトルをペアとすること。
                  J Clin Microbiol.2003;41:213-217
注射針と注射器を使用する場合は、最初に嫌気ボトルに接種して空気混入を防ぐ。
 採血量が推奨される量に満たない場合は、まず好気ボトルに接種する。
 これは菌血症の多くが好気性/通性細菌に起因し、病原性酵母および
 偏性好気性菌(Pseudomonas spp.など)はほぼ例外なく好気ボトルから
 検出されるからである。そして残りの血液を嫌気ボトルに接種する。

・成人の血液からの微生物の回収率は、30mLまで培養血液量を1mL増加させる
 ごとに正比例して増加する。この相関関係は、成人の血液1mL中CFU数が
 少ないことに関係している。
       Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI); 2007
・ボトル注入時に針を付け替えても、コンタミ率は変わらない。
 むしろ針刺しの危険もあるので、針は付け替えないこと
・成人の場合、推奨されている培養セット毎の採血量は20~30mLである。
・各培養セットは好気ボトルと嫌気ボトルのペアであるため、各ボトルへの
 接種量は10mL以内とする。3番目のボトルを追加する場合は好気ボトルがよい。
・血液培養連続モニタリングシステムを用いて、24時間中順次採取した
 血液培養の累積感度の調査では、1セット20mL(各ボトル10mL)の
 血液培養3セットから採取した病原菌の検出感度は、最初の1セットでは
 73.2%、次の1セットを合わせると93.9%、3セット累積すると96.9%。
 99%以上の血流感染症検出率を確保するには、4セットが必要。
                 J Clin Microbiol. 2007; 45:3546-3548
・ルーチン血液培養に、現在望ましいとされている標準的な培養期間は、5日間。
                 Diagn Microbiol Infect Dis. 1993;16:31-34 

●血液培養コンタミネーション
・30ヵ月間連続採取した血液培養から分離した有意な微生物数
 (1日あたりの分離株数)が明らかにされた。それによれば、全採取検体
 35500件中2609株が臨床的に有意な分離株で、1097株が汚染菌だった。
                 J Clin Microbiol. 2005;43:2506-2509
・Corynebacterium、Propionibacterium spp.、CNS、
 Streptococcus viridians 、Bacillus spp.などが、重度の細菌感染や
 BSIを引き起こすことはほとんどない。これらは一般的な皮膚汚染菌で、
 条件が揃った環境下では重篤な感染症を引き起こし得るが、血液培養1セットのみ
 の陽性は、臨床上コンタミネーションと判断し処理してよい。
 ただしCNSは、CRBSIと偽陽性血液培養の主因であり、
 臨床的に有意となり得るのは症例の20%程度である点に注意しなければならない。
                  J Clin Microbiol. 2002;40:2437-2444  
・血培のコンタミは、不要な抗菌化学療法、入院期間の延長、費用増大を
 招く可能性がある。偽陽性判定1件につき、入院期間の延長、
 静脈内投与抗菌薬コストなどのリスクがある。
                  JAMA. 1991; Vol. 265 No. 3:365-369

●血液培養を採取する場合の消毒方法
・皮膚から採血する場合の皮膚消毒は注意深く行うべきで、
 アルコールまたはヨードチンキ、アルコール性クロルヘキシジン
 (0.5%以上)を使って(ポピドンヨードはあまりよくない)消毒して、
 血液培養のコンタミネーションを防ぐため、十分な皮膚への接触時間
 および乾燥時間をとるべきである。
・A randomized trial of povidone-iodine compared with iodine tincture for venipuncture site disinfection: effects on rates of blood culture contamination.
Am J Med 1999; 107:119–25.
(ヨードチンキをすすめる論文)
・Chlorhexidine compared with povidone-iodine as skin preparation before blood culture: a randomized, controlled trial.
Ann Intern Med 1999; 131:834–7.
(クロルヘキシジンをすすめる論文)
上記2つの論文では、イソジン(ポピドンヨード)の乾燥時間が十分に
とれていなかったため、いずれもイソジンが必ずしも劣るわけではないかも
しれないと考察されている。

Calfee医師が、以下の論文を2002年に出した。
・Comparison of Four Antiseptic Preparations for Skin in the Prevention of Contamination of Percutaneously Drawn Blood Cultures: a Randomized Trial
Clin. Microbiol. 2002;40:1660-1665.

これは、イソジン、アルコール、ヨードチンキ、イソジンアルコールの4種類とも
同等の効果であることを示す論文である。
IDSA2009年ガイドラインでこれが採択されなかった理由がわからないが、
こちらはイソジンの乾燥時間をしっかりと保ったクロスオーバーRCTである。

IDSAガイドラインでは採択されなかった論文は、
Cumitechガイドラインには採用されており、同血液培養ガイドラインでは
イソジンの使用はクロルヘキシジンとともにファーストチョイスになっている。
Principles and Procedures for Blood Cultures: Approved Guideline.
CLSI 2007 Cumitech Blood Cultures IV.


やや、IDSAとCumitechで差がある。

現在の血液培養時の消毒のエビデンスとしては、
アルコールでも構わないし、イソジンでも構わないと考えていいのではないか。
「絶対にこちらを使うべきだ」という積極的なデータはないと思われる。

ただ、イソジンは即効性は(―)です(30秒以上乾かすあるいはふき取る)が、
持続性があるのが利点。逆にアルコールは即効性はあるが、全く持続性はない。

「臨床に直結する感染症のエビデンス」では、
以下のようなまとめがなされている。

1.イソジン:
  利点:持続性+、穿刺に手間取っても雑菌混入のリスク上昇しない
  欠点:即効性―、穿刺までの時間を十分取らなければならない
  推奨される臨床場面:穿刺まで十分時間をとれる
               術者の習熟度問わない
2.アルコール:
  利点:即効性+、すぐ穿刺可能、コスト安い
  欠点:持続性―、穿刺に手間取ると雑菌混入のリスク上昇
  推奨される臨床場面:穿刺に時間がかけられない緊迫した状況
               術者がベテラン
3.クロルヘキシジン:
  利点:即効性と持続性をあわせもつ、すぐ穿刺可能
      穿刺に手間取っても雑菌混入のリスク上昇しない
  欠点:コストが高い
  推奨される臨床場面:コストが許せばさまざまな場面で使用可能


そのため、自信があればアルコールでも構わないと考えられる。
文責 "倉原優"

by otowelt | 2010-06-14 14:35 | 感染症全般

スペインにおけるリネゾリド耐性黄色ブドウ球菌(LRSA)のアウトブレイク

LRSAについてはCIDからも報告されている。以前取り上げた。
リネゾリド耐性ブドウ球菌のアウトブレイク

今回はJAMAからの報告。
スペインの1000床規模の教育病院のICUにおけるアウトブレイク例。

Clinical Outbreak of Linezolid-Resistant Staphylococcus aureus in an Intensive Care Unit
JAMA. 2010;303(22):2260-2264.


2008年の4月13日から6月26日までの間で、12のLRSA患者が同定された。
6人がVAP、3人が菌血症を起こした。分離したLRSAは、
ST合剤、グリコペプチド、チゲサイクリン、ダプトマイシンに感受性を有していた。

linezolid は標的である細菌の23S rRNA の変異により耐性を獲得するが、
最近、プラスミド媒介性のcfr 遺伝子保有株も報告されており、
その遺伝子産物Cfr は、細菌の23S rRNA をメチル化することで、
linezolid に対する耐性を付与するとされている。

by otowelt | 2010-06-14 08:24 | 感染症全般

原発不明癌診療ガイドライン2010年版

原発不明癌診療ガイドライン2010年版_e0156318_817047.jpg
原発不明癌のガイドラインが最近出た。
JSMOに”Clinical Questionと推奨文一覧”がPDFで
掲載されているので、時間のない医師は
こちら(http://jsmo.umin.jp/oshirase/20100326-2.html
を参照にするとよい。

by otowelt | 2010-06-14 08:19 | 肺癌・その他腫瘍

COPD患者へのβブロッカーは、COPD急性増悪リスクが減り、生命予後も改善する

COPD患者へのβブロッカーは、COPD急性増悪リスクが減り、生命予後も改善する_e0156318_125953.jpgきれいな大学病院だなぁ。
さすがオランダ。

β-blockers may reduce mortality and risk of exacerbations in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Arch Intern Med. 2010;170:880-7
背景:
 COPDは動脈硬化を促進し、心血管疾患が合併することが多い。心血管疾患の
 診断もしっかり行われていない症例が多いが、心血管疾患を明らかに
 合併しないCOPD症例に対して、βブロッカーの使用が予後を改善するかは不明。

方法:
 Utrecht General Practitioners(GPs)Networkデータベースを使用。
 診断および処方はすべてコード化されている。
 2005年12月の時点で、データベース症例約60000例で、
 そのうち20362例が45歳以上であった。これを対象として、
 1995年1月1日から2005年12月31日までの間にCOPDと診断された症例を解析。
 プライマリエンドポイントは総死亡、観察期間中初回のCOPD急性増悪とした。
 COPD急性増悪の定義は、ステロイドパルスおよび7~10日間のステロイド使用、
 または同増悪条件下による入院と定義した。

結果:
 2230例のうち、当初より診断されていたCOPDが560例(25%)、
 観察期間中に診断されたCOPDは1670例(75%)。平均年齢64.8歳(SD:11.2)。
 53%が男性であった。平均観察期間7.2年の期間において、全体で686例(30.8%)
 が死亡。βブロッカー使用群の27.2%が、非使用群の30.8%が死亡(P=0.02)。
COPD患者へのβブロッカーは、COPD急性増悪リスクが減り、生命予後も改善する_e0156318_1250475.jpg
 最低1度のCOPD急性増悪を経験したのは1055例(47.3%)。
 βブロッカー使用群の42.7%が、非使用群では49.3%がCOPD急性増悪を
 経験していた(P=0.005)。
 心血管系の合併症を有する症例は、ほかのグループより有意に死亡率が高かった。
 (35.5% VS 21.4%、P<0.001)。
 βブロッカー投与を受けた症例は665例(29.8%)で、多くが心選択性。
 βブロッカー使用群の、非使用群に対する総死亡の非調整HRは0.70
 (95%CI:0.59-0.84)、調整HRはCP modelで算出した場合0.68
 (95%CI:0.56-0.83)。傾向スコアで調整した場合のHRは0.64
 (95%CI:0.52-0.77)。心選択性βブロッカーでは調整した場合のHRは
 0.67(95%CI:0.55-0.83)、0.63(95%CI:0.51-0.77)。非選択性
 βブロッカーで0.82(95%CI:0.61-1.10)、0.80(95%CI:0.60-1.05)。
 1670例の観察期間中新規診断COPDのうち530例がβブロッカーを使用。
 191例は診断前後もβブロッカーを使用し、84例は中止。
 255例がCOPDの新規診断後に使用を開始。
 サブグループ解析では、βブロッカー中止群において死亡HRが最も高かった
 非調整HR0.71(95%CI:0.46-1.11)、調整HR(CP、PS)は、
 それぞれ0.89(95%CI:0.56-1.42)と0.75(95%CI:0.47-1.19)。

結論:
 COPD患者にβ遮断薬を投与すると、COPD増悪のリスクが減り、
 生命予後が改善する可能性がある。

当然ながら、RCTではないので課題が残る。これはこういったスタディの
宿命でもある。ただ、心血管疾患合併の有無にかかわらずこういった結果が
出ているのは非常に大きいし、呼吸器内科医としては大規模RCT並に
話題性のある臨床試験だと考えなければならない報告である。

by otowelt | 2010-06-10 12:50 | 気管支喘息・COPD

敗血症による院内死亡率は、結婚していない患者では高い

コミュニティサーベイランスを用いているので、
敗血症37000人という途方もない人数のスタディである。
結婚事情が全く違うので、日本にこのスタディは適応されないとは思うのだが…。

Marital Status and the Epidemiology and Outcomes of Sepsis
CHEST 2010; 137(6):1289–1296


背景:
 敗血症はよくみられる重要なプロブレムである。社会的な因子が、医療受給、
 経済的財源、免疫応答、感染症での入院に影響しているかもしれないと考えた。
 このスタディは婚姻ステータスが敗血症の発症とアウトカムに影響するか
 コホートで検証したものである。

方法:
 2006年にニュージャージーに1113581人が入院した。われわれは、
 リスク調整罹患率比(IRR)を敗血症患者において、離婚、死別、法的別居、
 独身、結婚している、といった状況をAmerican Community Surveyのデータ
 を用いて算出した。婚姻ステータスが入院死亡率にどう影響するか
 多変量ロジスティック回帰分析を用いた。

結果:
 37524人の敗血症入院患者のうち、40%が結婚しており(14924人)、
 7%が離婚(2548人)、26%が死別(9934人)、2%が法的別居(763人)、
 26%(9355人)が独身であった。敗血症で入院した患者のうち、年齢、性別、
 人種別の調節IRRは、結婚している人に比べると独身がもっとも高く
 (IRR=3.47;95%CI 3.1-3.9)、続いて死別(IRR=1.38;95%CI 1.2-1.6)、
 法的別居,(IRR 5 1.46; 95% CI, 1.2, 1.8) と高いIRRがみられた。
 結婚している男性に比べると、独身の男女および離婚した男性において、
 院内死亡率の高いオッズ比がみられた。

 死別あるいは法的別居の男性およびすべての既婚女性は、敗血症において
 有意に高い死亡率ではなかった。
敗血症による院内死亡率は、結婚していない患者では高い_e0156318_1103981.jpg
結論:
 敗血症での入院は、独身、死別、法的別居の患者ではよくみられる。
 そのうち、独身男性、離婚した男性、独身女性は院内死亡率が高い。


理由として挙げられるのが、こういったsingleの患者における
社会生活の変容である。喫煙や飲酒、生活リズム不摂生など、
singleであることに健康面でいいことは全くないという論文が多い。
・Effects of marital transitions on changes in dietary and other health behaviours in US women . Int J Epidemiol . 2005 ; 34 ( 1 ):69 - 78 .
・Effects of marital transitions on changes in dietary and other health behaviours in US male health professionals . J Epidemiol Community Health . 2005 ; 59 ( 1 ): 56 - 62 .

by otowelt | 2010-06-10 12:24 | 感染症全般

XDRTBには、新しい世代のフルオロキノロンを使う方がアウトカムがよい

CIDからの論文。去年からアナウンスされていたことである。
著者のKaren R. Jacobsonは、やさしい感じの女医さんだったと記憶している。

XDRTBの定義は、
「INHとRFPに耐性を示し、フルオロキノロン系いずれかと、
注射二次薬(カナマイシン、アミカシン、カプレオマイシン)
の少なくともひとつに耐性をもつ結核菌」である。

Treatment Outcomes among Patients with Extensively Drug‐Resistant Tuberculosis: Systematic Review and Meta‐Analysis
Clinical Infectious Diseases 2010;51:6–14


背景:
 XDRTB治療は大きく変化してきている。セカンドラインの抗結核薬は
 あまり効果が見られないうえに毒性が強く、ファーストラインよりもコストが
 かかってしまう。XDRTBとは、定義上は、キノロンを含めた
 セカンドラインのオプションに耐性を示すものである。
 われわれは、XDRTB治療において良好な効果を示す文献から
 メタアナリシスをおこなった。

方法:
 PubMed、EMBASEのデータベースを使用してXDRTB治療アウトカムを検証。

結果:
 560人の患者を含む13の観察研究がヒットした。
 43.7% (95%CI, 32.8%–54.5%)がよいアウトカムを呈していた。
 20.8% (95%CI, 14.2%–27.3%)が死亡。
 後世代のフルオロキノロン(レボフロキサシン、モキシフロキサシン、
 スパルフロキサシン)で治療された患者は良好なアウトカムであった。
 (P = .001) 良好なアウトカムを呈していた患者は、
 近年の新しい世代のフルオロキノロンを使用している傾向があった。

結論: 
 このメタアナリシスによると、XDRTBに対して初期治療で
 新しい世代のフルオロキノロンを加えることによって臨床アウトカムが
 改善することがわかった(たとえ、フルオロキノロン耐性であったとしても)。
 この結果は、新世代フルオロキノロンをXDRTB治療レジメンに加えてもよいと
 考えられ、今後臨床試験によって評価すべきと考える。


オールドキノロンとニューキノロンの交差耐性は明らかであるが、
XDRTBには関係ないのか??
検査室で耐性と出ても、キノロンを使うとアウトカムがよくなると
いう結論なので、それを信用するしかないわけだが…

by otowelt | 2010-06-10 12:21 | 抗酸菌感染症

ASCO 2010速報:進行NSCLC患者への早期緩和ケアチームの介入の有用性

ASCO 2010速報:進行NSCLC患者への早期緩和ケアチームの介入の有用性_e0156318_12371076.jpg


今回の報告者は過去に、進行期NSCLC患者の治療早期において
外来緩和ケアチームが関わる有用性を50例のphase II試験で報告済である。
                        J Clin Oncol 2007; 25: 2377-2382
ASCO 2010速報:進行NSCLC患者への早期緩和ケアチームの介入の有用性_e0156318_2250159.jpg
緩和ケアモデルとして、やはり急激なギアチェンジではなく
なだらかな緩和ケアの介入を発表者は強調していた。

Effect of early palliative care (PC) on quality of life (QOL), aggressive care at the end-of-life (EOL),and survival in stage IV NSCLC patients: Results of a phase III randomized trial.

方法:
 stage IVと診断されたPS0~2のNSCLC患者が、腫瘍内科医による
 積極的治療とともに早期から緩和ケアチームとも関わるPalliative Care(PC)群
 および通常どおり腫瘍内科医のみに治療をうける標準治療(SC)群にランダム化
 割り付けされた。PC群では割付けから3週以内に緩和ケアチームと面会し、
 最低月1回の頻度で緩和ケアが継続され、一方、SC群では患者本人や家族、
 腫瘍内科医の要望があったときのみ緩和ケアチームが関わった。
 ランダム化前にQOLに関する調査(FACT-Lung)と精神状態に関する調査
 (HADSおよびPHQ-9)が行われ、割り付けから12週後に再調査された。
 プライマリエンドポイントは12週時点におけるQOL、セカンダリエンドポイントは
 12週時点での精神状態、EOLの質、EOLに用いられた医療資源、蘇生の記録。

結果:
 2006年6月~2009年7月に283例の適格例のうち151例が登録。
 12週時点で27例(PC群17例、SC群10例)の患者が死亡、
 PC群の60例(78%)、SC群の47例(64%)でQOL調査がおこなわれた。
 結果、PC群はSC群と比べ有意にQOLが優れていた
 (FACT-Lungスコアで98.0 VS 91.5、p=0.03)。
 12週時点における精神状態も、PC群では有意に抑うつ症状が少なかった。
 PC群ではSC群に比べて積極的治療(ホスピスに入所しない、ホスピスへの
 入所期間が3日以内、死亡の14日以内にも化学療法を受けている)を
 受けた頻度が有意に少なく、蘇生術を回避する率も高かった。
 OSはPC群がSC群より有意に長かった(11.6ヵ月VS8.9ヵ月、p=0.02)

結論:
 進行期NSCLC患者が診断早期から緩和ケアチームが関わることは、
 患者の精神状態とQOLを有意に改善させる。

by otowelt | 2010-06-09 22:46 | 肺癌・その他腫瘍

ASCO 2010速報:JCOG0204追試

ASCO 2010速報:JCOG0204追試_e0156318_12371076.jpg


ASCO2010での、日本からの報告。個人的に興味のあるところだったので。

Five-year follow-up of pre-operative chemotherapy (Cx) of docetaxel with or without cisplatin for clinical (c-) stage IB/II non-small cell lung cancer (NSCLC): Report of a Japan Clinical Oncology Group Study (JCOG0204)

stage IB/IIのNSCLC患者に対する術前化学療法として、
シスプラチン+ドセタキセル(DC)療法とD療法を比較するランダム化
phase II相試験(JCOG 0204)の結果、プライマリエンドポイントである
1年無病生存期間(DFS)はDP療法群が78%と、D療法群の62%より優れていた。
このことは、過去にBJCで報告されている。
                        BJC2008;99:852-857

S9900試験(術前CBDCA+PTX療法群と手術単独群との比較試験)や
ChEST試験(術前CDDP+GEM療法群と手術単独群との比較試験)では
3~5年追跡後のPFSやOSが報告されているが、JCOG 0204において
短期で得られたDFSの差が、長期OSの結果を代替しているものか否かは不明
であったため、5年間の追跡結果がASCO2010で報告された。

結果、DFS曲線、OS曲線ともに、DP群は長期にわたってD群を上回っており、
短期で認められた差が維持されていることが示された。

ただ、いまの注目は術後補助化学療法なので
こういった術前化学療法に関してのスタディは今後難しくなるかもしれない。

by otowelt | 2010-06-09 22:35 | 肺癌・その他腫瘍

ASCO 2010速報:DOC+TS-1は既治療NSCLC患者に有効(NJLCG 0701)

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せっかくなので、日本のNJLCG 0701のASCO2010での報告。

Final results of a phase II trial of S-1 with biweekly docetaxel for non-small cell lung cancer previously treated with platinum-based chemotherapy (NJLCG0701).

背景:
 進行NSCLCに対する標準化学療法として、ファーストラインでは
 ドセタキセルなどの第三世代抗癌剤とプラチナ製剤との2剤併用療法が、
 セカンドラインではドセタキセル単剤療法が、高いエビデンスで認められて
 いる。経口フッ化ピリミジン製剤のS-1は、単剤でNSCLC未治療例に対する
 有効性が確認されており、ドセタキセルとの相乗効果も認められている。

方法:
 対象は、1レジメンのプラチナ併用療法の治療歴のあるPS 0~1の進行
 NSCLC患者で、ドセタキセル(25mg/m2、day 1および15)、S-1
 (80mg/m2、day 1~14)を1サイクルとして4週間ごととした。
 プライマリエンドポントはRRであり、セカンダリエンドポイントは
 PFS、OS、有害事象発現とした。

結果:
 2007年2月~2008年9月に7施設から35例が登録、男性が23例(66%)
 PS 1が18例(51%)、年齢中央値は64歳。効果は、PR9例、SD 14例、
 PD 10例、評価不能 2例。全RR26%(95%CI:11-40%)、DCRは
 66%(95%CI: 50-81%)。PFS中央値は4.1ヵ月、OS中央値は16.2ヵ月、
 1年生存率は61%。多くの有害事象は軽症だった。

結論:
 ドセタキセル+TS-1は、既治療NSCLC患者に有効であり、
 リスク&ベネフィットのバランスにおける優越性を検証するため
 ドセタキセル単剤またはペメトレキセド単剤との比較試験が必要である。

by otowelt | 2010-06-09 08:02 | 肺癌・その他腫瘍

ASCO 2010速報:EML4-ALK融合遺伝子のある肺腺癌患者は、ない患者に比べ生存期間や増悪までの期間が長い

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EML4-ALKはどちらかといえば、阻害薬の方に目がいくが、
survivalという観点での発表がASCO2010でなされた。

EML4-ALK fusion gene in lung adenocarcinoma: A retrospective analysis of the outcome of cisplatin plus pemetrexed treated patients

方法:
 肺腺癌96人(女性:38人)に対して解析がおこなわれた。
 治療はシスプラチン75mg/m2+ペメトレキセド500mg/m2
 もしくはシスプラチン75mg/m2+ゲムシタビン1250mg/m2を
 3週間ごとに投与された。ALKはFISHで同定され、ALK遺伝子座の再構成がある場合
 EGFRおよびK-rasをDNAシーケンスで検出。ALK再構成は免疫組織化学で確認。

結果:
 EML4-ALK融合遺伝子は8人(8.3%)で認められた。男性が6人で、
 全例がnever smokerもしくはlight smokerだった。
 EML4-ALK融合遺伝子が認められなかった88人では、女性がほとんどで
 smokerが67人だった。
 EML4-ALK融合遺伝子のある患者では、PR2人、SD4人、PD2人であった。
 TTP中央値は9ヵ月、OS中央値は17ヵ月。
 EML4-ALK融合遺伝子のない患者では、PR6人、SD20人、PD6人であった。
 TTP中央値は6.2ヵ月、OS中央値は11ヵ月。
 少数検討だが、明らかにEML4-ALK陰性患者よりも陽性患者の方がsurvival benefit
 がみられた。また、EML4-ALK陽性の患者では全例でEGFRおよびK-ras変異が
 なかった。

by otowelt | 2010-06-08 22:16 | 肺癌・その他腫瘍