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沈降線数によるアスペルギルス沈降抗体の有用性の検討

基本的に英文雑誌しか要約しないようにしているが、
呼吸器学会雑誌から面白い論文が出ていたので紹介させていただく。
Web上に公開されているAbstractに相当する要旨を掲載する。
試験期間が短かったため、やや症例が少ないものの
個人的に非常に勉強になった。

安藤陽一郎ら.
血清アスペルギルス沈降抗体検査症例の臨床的検討
日呼吸誌 1(1); 3-8, 2012.


要旨:2009年2~12月に国立病院機構福岡東医療センターでAspergillus immunodiffusion system(Microgen Bioproducts Ltd., UK)のキットを用いて血清アスペルギルス沈降抗体検査を施行した症例について,沈降線を認めた症例(「あり」例)における沈降線数や診断名,また偽陽性や偽陰性の頻度などについて検討した.「あり」例24 例中,沈降線数が2 本以上を示した21 例のうち16 例は慢性肺アスペルギルス症(chronicpulmonary aspergillosis:CPA)であったが,偽陽性が疑われる症例を4 例認めた.沈降線を認めなかった症例99 例中85 例が非アスペルギルス症症例であったが,初回検査時に偽陰性を示したCPA 症例も4 例みられた.非アスペルギルス症を対照としたCPA における本検査について,陽性判定基準を沈降線数2 本以上とすれば感度78.9%,特異度95.6%など最良の結果を示した.

by otowelt | 2012-02-03 23:40 | 感染症全般

オセルタミビルの効果についてのCochraneレビュー

Tom Jefferson, et al.
Neuraminidase inhibitors for preventing and treating influenza in healthy adults and children


概要:
 過去に行われたレビューは、未発表論文を含んでおらず、
 その結果は出版バイアスのリスクが高いのではないかと考えられる。
 そこで論文ではなく、治験総括報告書(Clinical Study Report;CSR)
 から主要情報を抽出することにした。1000ページを超過することも
 みられるCSRには、未発表臨床試験情報も含まれている。
 全年齢のインフルエンザ確定例 or 疑い例、インフルエンザウイルスに
 曝露した人々を対象とし、ノイラミニダーゼ阻害薬(オセルタミビル or ザナミビル)
 またはプラセボに割り付けて、臨床アウトカムを調べたランダム化試験に
 関する情報をCSRから抽出した。
 25研究(15:オセルタミビル、10:ザナミビル)は、主として成人を対象に、
 行われた。ランダム化、盲検化は適切に行われていた。全研究が
 ノイラミニダーゼ阻害薬を開発した会社から資金提供を受けていた。
 オセルタミビルについてのレビューでは、プラセボに比べ
 症状軽減を約21時間早める効果があった。プラセボ群の患者が
 インフルエンザ症状軽減を初めて感じたのは、初回服用から
 160時間後(range 125~192hrs)。
 オセルタミビル群はそれよりおよそ21時間早かった。
 平均差は-21.3時間(95%CI:-29.5hrs to -12.9hrs, P<0.001)。
 オセルタミビルが入院リスクや合併症リスクを軽減することはなかった。
 オセルタミビルとプラセボにおける入院率の中央値にも差みられず。
 ザナミビルについては、有効性に関する個別患者データがはっきり
 しなかったため、今回はシステマティックな分析を施行できなかった。

by otowelt | 2012-02-03 05:07 | 感染症全般

明治乳業 ヨーグルト R-1 (1073R-1) についての勉強

明治乳業のヨーグルトである「R-1」がインフルエンザウイルス感染に対して
予防効果があると大人気になっている。市販された大人気食品なので、
できるだけエビデンスに関する批判も推奨もせずに
今朝個人的な勉強したことをメモとして記載しておきたい。

・マウスでの研究
多糖体産生のブルガリア菌(OLL1073R-1株)ヨーグルト
(0.4 ml or 0.3 ml)を24日間マウスに投与した試験がある。
エンドポイントである21日目に、マウス馴化インフルエンザウイルス
A/PR/8/34 (H1N1)(2×LD50, 20μl)を鼻から接種し。
ヨーグルトを摂取していたマウスは、ヨーグルトを摂取しなかったマウスと
比較してインフルエンザウイルス感染後の生存日数が有意に延長。
1073R-1乳酸菌使用ヨーグルト(0.4ml/body/day):p=0.0018 (n=9)
1073R-1乳酸菌EPS(20μg/body/day):p=0.0648 (n=9)
マウスの研究である上にn=9と少ない状況でのsurvivalをKaplan-Meier法で
Web上に表示しているが、このデータが信頼性があるかと問われれば、
ややハテナマークがつくかもしれない。またヨーグルト使用の
場合だけ有意差が出ており(それでもマウスの半数以上は死亡)、
1073R-1乳酸菌EPSでは有意差が出ておらずマウスはほぼ全滅だった。
(該当ジャーナルは見つけられなかった)

・ヒトでの研究
Seiya Makino, et al.
Reducing the risk of infection in the elderly by dietary intake of yoghurt
fermented with Lactobacillus delbrueckii ssp. bulgaricus OLL1073R-1
British Journal of Nutrition 2010, 104, 998-1006

明治乳業が提示している論文は上記のもの。
山形県舟形町70~80歳高齢者57名、
佐賀県有田町60歳以上高齢者85名を対象に研究を実施している。
1073R-1乳酸菌ヨーグルト群(90g/day)
牛乳群(100ml/day)のいずれかにランダムに割り付けし、
8、12週間継続して経口摂取をおこなった。
エンドポイントとして提示されているのは、NK活性と風邪症状アンケート等。
1073R-1乳酸菌ヨーグルト群は牛乳群に比べて、佐賀OR0.44、
山形OR0.29。Mantel-Haenszel法の統合でOR0.39であった(p=0.019)。
風邪症状等のアンケートによる臨床的アウトカムの改善は
OR 0.29(P=0.103)と論文中に記載されている。

→このBritish Journal of Nutritionは栄養学では
 IF/EFともにある程度上位に入るジャーナルなのだが(IF3、EF0.03)、
 NK活性と風邪症状アンケートという介入試験アウトカムは妥当だろうか?
 もう少し調べてみたい。

小児において
山形県舟形町:町内の全保育園児、小中学生544名(6校)
佐賀県有田町:町内の全保育園・幼稚園児、小中学生2468名(16校)
で上記ヨーグルトを摂取するよう奨励し、
園児・児童・生徒の欠席率変動・ウイルス感染など健康状態に対する
調査(聞き取り調査)を実施(1年間)。
主なアウトカムとして提示されているのは、
舟形町における6ヶ月後(2010年12月)のインフルエンザ発症がゼロであること、
有田町における学級閉鎖がゼロであること。
ただ、一番大事な流行期における2011年12月~2月のデータが
どうなっているのか会社のプレリリースからは不明である。
(該当ジャーナルは見つけられなかった)


薬剤に関しては、
「xxが●●の予防に効果がありますよ」ということを薬効として
表示するためには、少なくとも疫学的な質の高い研究が必要になる。
エンドポイントに到達しなくても中間解析やエンドポイントパラメータを
模索して有効性が確認されるものをどうにか探す手法も散見されるので、
臨床医は注意が必要である。また、薬剤と異なり健康食品・サプリメントの
類はどうしてもバイアスが多くなるのは言わずもがなである。

by otowelt | 2012-02-02 07:45 | 内科一般