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VAPにおけるGram染色のメタアナリシス

John C. O’Horo, et al.
Is the Gram Stain Useful in the Microbiologic Diagnosis of VAP? A Meta-analysis
Clinical Infectious Diseases 2012;55(4):551–61


背景:
 人工呼吸器関連肺炎(VAP)の診断における呼吸器検体のGram染色のメタアナリシスでは、Gram染色で菌が同定されない場合には高い陰性適中率をほこるが、陽性であったとしても培養結果と一致するような結果が得られない。

方法:
 迅速かつ正確なVAP診断は大きな挑戦であり、VAP診断のゴールドスタンダードはまだ一般的には確率されていない。われわれは、呼吸器検体のGram染色でVAP診断が妥当かどうか、またそのGram染色結果が培養と一致するものかどうか、メタアナリシスを施行して検証した。
 2011年10月から2012年2月までの間、コンピュータにおける検索(PubMed:MEDLINE含)で以下の用語で検索をおこなった:“ventilator associated pneumonia” “VAP,” “Gram stain,” “microscopic examination, “endotracheal aspirate,” “BAL,” “bronchoalveolar lavage."。

結果:
 21試験(13試験がヨーロッパ、8試験が北米で施行:3148検体、2510人のVAP疑いの患者)において、VAP診断におけるGram染色の感度は0.79 (95%CI .77–0.81; P < .0001)で、特異度は0.75 (95% CI, .73–.78; P < .0001)であった。高いheterogeneityがみられ、それぞれ79.4%、83.3%であった。
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 diagnostic odds ratio(DOR)は、16.44 (95% CI, 10.54–25.67;P = .0000)で、これには高いheterogeneity (I2 = 69.9%)がみられた。
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 陽性適中率と陰性適中率は、疾患有病率に応じてグラフが交差しており、すなわちこれは臨床的に信頼性のある場面というのが限られた頻度であることを意味している。Gram染色の陰性適中率は20~30%の有病率の場合91%であり、Gram染色陰性であればVAPは否定的であると考えられる。しかしながら、陽性的中率は40%程度であった。
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 Gram陽性菌におけるカッパ値(Cohen’s Kappa statistic)は0.42、Gram陰性菌におけるカッパ値は0.34であった。

結論:
 結論として、Gram染色が陽性であった場合中等度の特異性しかみられないが、陰性所見であった場合にはVAPは考えにくいと思われる。培養結果が出るまでの間抗菌薬を狭域スペクトラムのものに変更する場合、Gram染色の陽性結果は用いるべきではない。

by otowelt | 2012-07-23 14:04 | 感染症全般

pure GGOの90%は増大しない

pure GGOの90%は増大しない_e0156318_2039101.jpgpure GGOがある患者さんは、高分化型腺癌の可能性があるため、CTをフォローアップしていくことが多い。しかしながら、全体のどのくらいが癌でどのくらいが癌ではないのかについて、われわれ臨床医にはイメージはあまりない。

Boksoon Chang, et al.
Natural History of Pure Ground-Glass Opacity Lung Nodules Detected by Low-Dose Computed Tomography
CHEST. 2012 doi: 10.1378/chest.11-2501


背景:
 肺内における限局性のスリガラス陰影は、一般的にゆるやかに増大するとされているが、その自然経過についてはよくわかっていない。このスタディの目的は、悪性疾患歴のない患者における肺内のpure GGOの結節影の自然経過を解明することである。

方法:
 われわれはレトロスペクティブに低線量CTにおいてスクリーニングされた患者のデータベースを用いた。そのうち、pure GGOと同定された肺内の結節影を初回スクリーニングから2年以上フォローアップした。
 
結果:
 1997年6月から2006年9月までの間、122のpure GGOが89人の患者に同定された。結節影の最大径の中央値は5.5 (3–20) mmであり、フォローアップ中央値は59ヶ月であった。89人のうち12人において増大が確認された:13.5% (12/89)。結節影のみにしぼると、122のpure GGOのうち、12で増大がみられた:9.8% (12/122)。
 結節影の増大は、有初期のサイズ、内部のsolid portionの新規発生と有意に関連していた。ダブリングタイムの中央値は769(330–3031) 日であった。11の増大した結節影は外科的に切除され、すべて原発性肺癌であった。
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結論:
 悪性疾患既往のない患者において、90%のpure GGOは増大しない。

by otowelt | 2012-07-22 20:42 | 呼吸器その他

日本語訳:GOLD慢性閉塞性肺疾患の診断、治療、予防に関するグローバルストラテジー2011年改訂版

半年くらいかかってしまうが、GOLDは日本語訳もしっかり出してくれるので、それを待っている呼吸器内科医も多いだろう。無料で全文読める。

GOLD慢性閉塞性肺疾患の診断、治療、予防に関するグローバルストラテジー2011年改訂版
http://www.goldcopd.org/uploads/users/files/GOLDReport2011_Japanese.pdf
日本語訳:GOLD慢性閉塞性肺疾患の診断、治療、予防に関するグローバルストラテジー2011年改訂版_e0156318_2353394.jpg

by otowelt | 2012-07-20 23:10 | 気管支喘息・COPD

シムビコートにおけるSMART療法

 個人的にはアドエアの方が過去のデータの質もよいので気に入っているのだが、患者アドヒアランスを考慮するとSMART療法の承認を受けてシムビコートの使用が呼吸器内科医間で増える可能性が高いと思われる。
シムビコートにおけるSMART療法_e0156318_1246222.jpg
 
 先月シムビコートに対するSMART療法が解禁となったことが記憶に新しいが、おととい記者セミナー(一ノ瀬正和先生発表)がおこなわれた。すでに海外では普通に行われている喘息治療であり、あまりにも日本の承認が遅い。
 SMART療法はシムビコートに含まれているLABAであるホルモテロールが、効果発現までに短時間で作用するという特性を持っているからである。これまでのLABAは発現までの時間が長いという点から、発作時の頓用としては使用できない経緯があった。
 先月新たに承認された1日2回投与の定期吸入に加えて頓用吸入する治療法(SMART療法)では、発作発現時に1吸入し、数分経過しても発作が持続する場合には、追加で1吸入することが可能である。1回の発作発現につき最大は6 吸入までとされている。

Kenneth R Chapman, et al.
Single maintenance and reliever therapy (SMART) of asthma: a critical appraisal
Thorax (2010). doi:10.1136/thx.2009.128504


 SMART療法で有名な論文は2009年のThoraxだろうが、この論文においてSMART療法を善しとする患者群は私たちが臨床で出会う患者群よりも重症な患者群であることがわかる(SMART療法に治療された患者の17.1%がコントロール可能であった)。ブデソニド単剤に比べてシムビコートの使用量を減らすことができ、発作抑制には効果的であると思われるが、喘息死自体を減らすかどうかは定かではない。

 COPD治療薬として、ホルモテロール吸入剤であるオーキシスタービュヘイラーも同社より発売となる。もし同様のメリットを打ち出す予定であれば、COPD急性増悪時におけるオーキシス頓用も選択肢として入る可能性がある。

by otowelt | 2012-07-19 13:02 | 気管支喘息・COPD

JCOG0301試験:高齢者局所進行NSCLCにおいて低用量CBDCAと放射線治療の併用は放射線単独より生存を延長

高齢者肺癌治療のエビデンスに一石を投じた臨床試験、JCOG0301。

Shinji Atagi, et al.
Thoracic radiotherapy with or without daily low-dose carboplatin in elderly patients with non-small-cell lung cancer: a randomised, controlled, phase 3 trial by the Japan Clinical Oncology Group (JCOG0301)
Lancet Oncol 2012; 13: 671–78


背景:
 化学放射線療法の組み合わせが高齢者の局所進行非小細胞肺癌(NSCLC)においてOSを改善するかどうかはまだわかっていない。このスタディの目的は、高齢者NSCLCにいて放射線治療にカルボプラチンを併用することで、放射線単独と比較して生存期間を延長できるかどうかを検証したものである。

方法:
 JCOGによるランダム化対照第3相試験(JCOG0301)で、患者は71歳以上で切除不能III期NSCLCとした(ただしT3N1M0を除く)。ランダムに化学放射線治療群(60 Gy plus concurrent low-dose carboplatin [30 mg/m² per day, 5 days a week for 20 days])あるいは放射線単独群に割り付けられた。ECOG-PS、病期、施設でバランスがとれるようにbiased coinの原理を使用。プライマリエンドポイントはOS、セカンダリエンドポイントは奏効割合、PFS、有害事象発生割合、重篤な有害事象発生割合、増悪部位(照射野外・照射野内の別)とした。試験は中間解析の結果、早期終了となった。

結果:
 200人の患者が2003年9月1日から2010年5月27日までの間に登録され、100:100にランダム化割り付けされた。年齢中央値は77歳、80%が男性、90%に喫煙歴があった。化学放射線治療群で88%の患者が全治療を完遂し、放射線治療群では93%が完遂した。10ヶ月後に当該中間解析がおこなわれた。この時点において、フォローアップ中央値は19.4ヶ月(IQR 10.3–33.5)であった。
 中止規約にのっとり、JCOGデータおよび安全性モニタリング委員会はこの臨床試験において化学放射線療法群にOSでの良好な結果が出たため早期出版を推奨した。OS中央値は、化学放射線治療群および放射線治療単独群においてそれぞれ22.4ヶ月(95% CI 16.5–33.6)、16.9ヶ月(13.4–20.3)であった(HR 0.68, 95.4% CI 0.47–0.98, stratified log-rank test one-sided p value=0.0179)。
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 初回再発部位についてもデータ収集されたが、両群とも再発部位に差はみられなかった。
 化学放射線治療群において、より多くの患者にgrade 3-4の血液毒性がみられ、白血球減少(61 [63.5%] vs none), 好中球現象(55 [57.3%] vs none), 血小板減少(28 [29.2%] vs two [2.0%])という結果であった。grade 3感染症が化学放射線治療群によくみられた(12 patients [12.5%] vs four patients [4.1%])。grade 3–4の肺臓炎と後期肺毒性については両群とも同等であった。全体で7人の治療関連死がみられた(3 vs 4)。

結論:
 局所進行NSCLCの選択された高齢者群において、化学放射線治療の組み合わせは放射線治療単独と比較して有意に利益をもたらすものであり、こういった集団には考慮されるべきである。

コメント:
Juan P Wisnivesky, et al.
Treating elderly patients with stage III NSCLC
The Lancet Oncology, Volume 13, Issue 7, Pages 650 - 651, July 2012

 高齢者の局所進行NSCLCにおいて堅固なエビデンスとなる、理想的なランダム化比較試験の1つである。特に高齢者においては、治療選択肢が少ないという観点からこの化学放射線治療は有望な治療法となるであろう。

by otowelt | 2012-07-18 17:10 | 肺癌・その他腫瘍

HIV感染予防薬としてのツルバダをFDAが承認

HIV感染予防薬としてのツルバダをFDAが承認_e0156318_17472511.jpg
賛否両論があったものの、今年5月頃に話題になったツルバダのPrEPについて、このたびFDAが承認した。


●米当局、エイズ予防薬を世界で初めて承認
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1701R_X10C12A7EB2000/
 米食品医薬品局(FDA)は16日、既存のエイズ治療薬「ツルバダ」を、感染を防ぐための予防薬としても承認した。開発したカリフォルニア州のギリアド・サイエンシズ社によると、エイズ予防薬の承認は世界初。
 エイズの死者は治療薬の普及により減少しているが、米国では感染者数が年間5万人増加している。FDAのハンバーグ局長は「エイズとの戦いで、重要な節目となる」との声明を発表した。
 ツルバダは日本でもエイズ治療薬として販売されているが、ギリアド社によると、米国以外で予防薬としての申請はしていない。
 予防薬としての利用は、パートナーがエイズウイルス(HIV)感染者の場合など、感染リスクの高い人が対象。毎日の服用が必要で、年間約1万4千ドル(約110万円)かかるという。
 FDAによると、一方がHIV感染者のカップルを対象とした調査の結果、非感染者がツルバダを毎日服用した場合に、HIVに感染する危険が4分の1に減った。(日本経済新聞)

●米FDA、HIV感染予防薬を世界で初めて承認
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2889803/9259569?ctm_campaign=txt_topics
 米食品医薬品局(FDA)は16日、米カリフォルニア(California)州に本社を置く製薬会社ギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)が開発した抗レトロウイルス薬「ツルバダ(Truvada)」を、エイズウイルス(HIV)への感染を予防する薬として世界で初めて承認した。
 ツルバダは2004年にHIV感染者用の治療薬として承認を受けているが、健康な成人向けの暴露前感染予防薬(PrEP)としても今回新たに承認された。
 男性同性愛者や異性愛カップルを対象にした臨床試験でツルバダがHIV感染のリスクを軽減することが示されたことを受け、FDAの諮問委員会が5月にHIV感染予防約として承認するよう勧告していた。
 エイズ専門家の中にはHIVに対する強力な対抗手段になると歓迎する人がいる一方、医療従事者からは予防薬の登場により感染リスクの高い性行為が増えるのではないかと懸念する声も上がっている。
 また、この薬を服用するには年間1万4000ドル(約110万円)の費用が掛かると推定されており、多くの人には手が届かないとみられている。
 FDAはセーフセックス、リスク軽減のカウンセリング、定期的なHIV検査といった他の予防法を含む包括的なHIV予防策の一部としてツルバダを使用すべきだと勧告している。(AFP BBニュース)

●米当局がエイズ予防薬を初めて承認、「重要な節目」に
http://jp.reuters.com/article/worldNews/idJPTYE86G05C20120717
 米食品医薬品局(FDA)は、ギリアド・サイエンシズ(GILD.O: 株価, 企業情報, レポート)のエイズ治療薬「ツルバダ」について、感染リスクの高い人向けのエイズ予防薬としても初めて承認した。
 ギリアドによると、予防薬としての利用は、HIVに感染したパートナーと性交渉を持つ可能性がある場合など、感染リスクの高い人が対象。ツルバダは抗HIV薬2種類を1つの錠剤にしたもので、現在、他の抗レトロウイルス薬と組み合わせて、12才以上のHIV感染者の治療に用いられている。
 ツルバダを予防薬として使用する場合は、安全な性行為や感染リスク削減のためのカウンセリング、定期的なHIV検査とともに毎日服用することになる。
 FDAのマーガレット・ハンバーグ局長は「エイズとの戦いで今日の承認は重要な節目となる」と述べた。同局長によると、米国では毎年、HIV感染者数が約5万人増えているという。 
 2010年に発表された報告書では、ツルバダを毎日服用した男性同性愛者のHIV感染率は44%低くなったことが明らかになっている。
 ただ、今回の承認が人々に誤った安心感を与え、コンドームの使用率が下がり危険な性行為が増えるなどと懸念する声もある。
 承認の一環としてFDAはツルバダの警告ラベル表示を強化し、医師に対して同薬の処方前と、服用中は最低3カ月に1回の頻度で服用する人がHIVに感染していないか検査するよう徹底させる。(ロイター)

●Truvada approved by FDA as first HIV-prevention pill
http://www.cbsnews.com/8301-504763_162-57473116-10391704/truvada-approved-by-fda-as-first-hiv-prevention-pill/
Truvada has been approved by the Food and Drug Administration as the first pill to prevent HIV.
 Gilead Sciences' Truvada has been taken by people over 12 with human immunodeficiency virus in conjunction with other antiretroviral drugs since it was first approved by the FDA in 2004. The new approval applies in combination with safer sex practices for preventative use in healthy individuals who are at a high risk for HIV or who may have sex with HIV-positive partners.
 "Today's approval marks an important milestone in our fight against HIV," FDA Commissioner Dr. Margaret A. Hamburg said in a press release. "Every year, about 50,000 U.S. adults and adolescents are diagnosed with HIV infection, despite the availability of prevention methods and strategies to educate, test, and care for people living with the disease. New treatments as well as prevention methods are needed to fight the HIV epidemic in this country."
 In the announcement, the FDA strongly recommended against Truvada's use to prevent disease transmission in individuals who may already have HIV.
 The most common side effects reported with Truvada were diarrhea, nausea, abdominal pain, headache and weight loss. Serious side effects were uncommon.
 In May, a panel of expert advisers who make recommendations to the FDA voted to back Truvada's use for HIV prevention in healthy, high-risk individuals but the FDA was not bound to accept the panel's recommendation. The experts at the time questioned the drug's effectiveness for females, who have shown much lower rates of protection in the research.
 Research showing Truvada may prevent HIV transmission first arose in 2010, when a government study found it cut infection risk in healthy gay and bisexual men by 42 percent, when accompanied by condoms and STD counseling. Another study found the pill may reduce HIV risk by 75 percent among heterosexual couples in which one partner is infected with the virus. Some doctors had already been prescribing Truvada off-label for HIV prevention.
 Following the FDA advisory panel's initial recommendation in May, some HIV advocates hailed the announcement as "nearing a watershed moment in our fight against HIV."(CBS News)

by otowelt | 2012-07-17 17:50 | 感染症全般

肺炎球菌性化膿性筋炎

肺炎球菌性化膿性筋炎_e0156318_11284958.jpg肺炎球菌性化膿性筋炎の話題。

Rebecca J. Zadroga, et al.
Pneumococcal Pyomyositis: Report of 2 Cases and Review of the Literature
Clin Infect Dis. (2012) doi: 10.1093/cid/cis424


背景:
 Staphylococcus aureus, Streptococcus pyogenesなどは化膿性筋炎の最たる病原微生物であるが、Streptococcus pneumoniaeは、pyomyositis:化膿性筋炎の原因としてはまれである。1972年に報告されてから(Journal of neurosurgery 1977; 47:755–60.)、いくつか成人および小児での報告はみられるものの、この肺炎球菌性化膿性筋炎が、宿主の免疫ステータスによって臨床的表現型が異なるのかどうか定かではない。

方法:
 われわれは2人の肺炎球菌性化膿性筋炎患者を報告し、これまでの全症例のレビューをおこなうことで、健常者とリスク宿主との間の臨床的特性を比較した。

症例1
 47歳のAfrican Americanの男性は、4週間続く左肩の鈍痛を自覚していた。彼は20年前にHodgkin lymphomaと診断され、マントル照射と脾摘を受けている。入院4か月前に肺炎球菌ワクチンを接種していたものの、S. pneumoniae type 19Aの菌血症を伴う肺炎と診断された。抗菌薬治療によって軽快したものの、悪性リンパ腫が再発した。その後R-CHOPを施行し、化学療法中に自己免疫性溶血性貧血を発症。化学療法は断念し、高用量のステロイド治療に切り替えられた。入院4週間前に左肩の疼痛が悪化、この前に何度か同様の主訴で診察されているものの、発熱もなく身体所見も特に異常はみられなかった。CTガイド下生検によって、筋肉内にS. pneumoniae type 19Aの膿瘍が同定された。診断後、cephalexin 1g1日3回経口投与を6週間続けた。その後再発なく経過している。

症例2
 妄想型統合失調症、アルコール依存症、HCV感染症(未治療:HCV load, 3780000copies/mL)のある52歳のホームレス男性が発熱と右膝の腫脹を主訴に来院。彼は11日前に膝に鈍的外傷を受けており、その頃から膝が腫れているとのことであった。38.8℃で白血球は17800/mm3であった。膝関節液からS. pneumoniaeが検出された。血液培養は陰性であった。右膝周囲から皮下組織・筋肉にかけて広範囲に膿瘍がみられ、これらからもS. pneumoniaeが検出された。彼は外科的ドレナージを要し、ceftriaxone 1g1日1回点滴静注を2週間続け、その後1週間のモキシフロキサシン経口投与をおこなった。治療後、コンタクトがとれなくなった。

結果:
 合計35症例の肺炎球菌性化膿性筋炎が報告されており、11人は生来健康であった患者、24人がリスク因子を持つ患者であった。リスクは、Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP)に基づいて以下の因子を含むものとした:65歳以上あるいは2歳未満、慢性心疾患、慢性肺疾患、糖尿病、髄液ろう、人工内耳、アルコール依存、慢性肝疾患、喫煙者、鎌状赤血球症およびヘモグロビン症、無脾、HIV感染症、慢性腎疾患、白血病、悪性リンパ腫、悪性疾患、免疫抑制剤使用(ステロイド含)、臓器移植患者、多発性骨髄腫。
 患者の3分の2が、先行する気道症状あるいは髄膜炎を有していた。リスク宿主は、筋感染症状の発生とその診断に長いインターバルをもつ傾向にあり、症状顕在化時に播種性であるリスクが有意に高かった。リスク因子のある患者のうち79%がドレナージを受けていたが、これは生来健康であった患者でも同等の比率であった。病態が複雑となった患者の頻度は有意にリスクのある患者群で多かった(p=0.04)(これは、死亡、臓器不全、続発性感染症、複数のデブリードマン、遷延するdeformity(機能不全、変形)と定義)。
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結論:
 1人の死亡を除くと、抗菌薬および外科的治療によって総じて生存予後は良好であった。しかしながら、リスクのある患者においては症状が複雑になることを予測しておく必要がある。

by otowelt | 2012-07-17 06:58 | 感染症全般

テトラスパニンCD151の欠失により肺線維症を発症

テトラスパニンCD151ノックアウトマウスにおける大阪大学の研究。

Kazuyuki Tsujino, et al.
Tetraspanin CD151 Protects against Pulmonary Fibrosis by Maintaining Epithelial Integrity
Am. J. Respir. Crit. Care Med. July 15, 2012 vol. 186 no. 2 170-180


背景:
 特発性肺線維症(IPF)は原因がはっきりしていない治療選択肢の少ない慢性肺疾患である。テトラスパニンは多くの疾患に関与するとされているが、線維化における役割はよくわかっていない。
 テトラスパニンCD151は、インテグリンなどの接着分子を細胞膜上の微小領域に配置することで細胞機能を調節する膜4回貫通型蛋白ファミリーであり、ヒトにおいてCD9, CD81, CD63を含めて現時点では34種類報告されている。

目的:
 テトラスパニンCD151の肺線維症における役割を明らかにする。

方法:
 CD151ノックアウトマウスにおいて、組織学的、生化学的、生理学的解析がおこなわれ、野生型マウスとCD9ノックアウトマウスと比較された。さらなる機構的な解析がin vitro, in vivoでおこなわれ、IPF患者からのサンプルにおいてもおこなわれた。

結果:
 マイクロアレイ試験において結合組織疾患に関連する遺伝子がCD151ノックアウトマウス肺において豊富に検出されたが、CD9ノックアウトマウスでは検出されなかった。これに合致するように、CD151ノックアウトマウスは、自然発生的に年齢に応じて肺の線維化が起こった。CD151欠失は肺線維芽細胞機能に影響を与えないが、基底膜において接着力が弱まることによって上皮整合性が減退することがわかった(肺上皮細胞の基底膜への接着が弱まることが肺線維症発症の原因であると示唆された)。CD151欠失肺胞上皮細胞は、p-Smad2活性化を伴う平滑筋型αアクチン(α-SMA)発現の増加によって、肺の線維化変化をもたらすものと推察される。
 CD151ノックアウトマウス肺における上皮の整合性の消失は経気道的ブレオマイシン曝露によって悪化し、死亡の増加を伴う重篤な肺線維化をきたした。IPF患者においてCD151陽性肺胞上皮細胞の数が減少していることもわれわれは突き止めた。

結論:
 CD151は、肺胞上皮細胞の機能を保つ上で重要な役割と果たす。CD151欠失は肺線維化をもたらし、上皮の基底膜との接着を弱める。CD151は線維化において防御的な役割と果たしており、これは線維化疾患における治療ターゲットとして有力なタンパクとなるかもしれない。

by otowelt | 2012-07-15 22:22 | びまん性肺疾患

EGFR-TKI と殺細胞性抗癌剤の併用

肺癌でEGFR-TKIと殺細胞性抗癌剤を併用することもあるので。

平野聡ら
EGFR-TKI による既治療肺腺癌に対するEGFR-TKI と殺細胞性抗癌剤による併用療法の効果
癌と化学療法 2012年 39巻2号p. 213 –219


目的:
 EGFR-TKI による既治療肺腺癌に対してEGFR-TKI と殺細胞性抗癌剤による併用療法の効果を検討する。

方法:
 2008 年5 月〜2010 年12 月にEGFR-TKI と殺細胞性抗癌剤の併用療法が行われた肺腺癌8 例について奏効率,病勢制御率,無増悪生存期間,治療成功期間,全生存期間について後方視的に検討した。

結果:
 EGFR 遺伝子の検索を行った7 例のうちEGFR 遺伝子変異を有していた症例は6 例,なし1 例であった。前治療数の中央値は5 レジメンであり,全症例がgefitinib,erlotinib のいずれもの治療歴を有していた。8 例のうちSD 6 例(うち3 例は血液毒性で後に継続困難),PD 2 例で病勢制御率は75%,治療成功期間中央値は42 日,無増悪生存期間は84 日,併用療法開始後の生存期間中央値は495 日であった。

結論:
 EGFR-TKI と殺細胞性抗癌剤の併用療法は症例によっては有用な治療法の選択肢の一つとなり得ると考えられた。

by otowelt | 2012-07-15 11:12 | 肺癌・その他腫瘍

禁煙成功者は1年後に体重が4-5kg増加する

禁煙成功者は1年後に体重が4-5kg増加する_e0156318_9571890.jpgHenri-Jean Aubin, et al.
Weight gain in smokers after quitting cigarettes: meta-analysis
BMJ 2012;345:e4439 doi: 10.1136/bmj.e4439 (Published 10 July 2012)


目的:
 体重変化とそのバリエーションを禁煙補助薬などを用いず12ヶ月で成功した人においてメタアナリシスで検証する。

方法:
 the Central Register of Controlled Trials(CENTRAL)、Cochraneデータベースにおいて禁煙の介入をおこなった臨床試験を抽出(ニコチンパッチ、ニコチンアゴニスト、抗不安薬、運動療法など)。また禁煙後の体重についての介入試験をCENTRALより抽出。
 試験は、体重の変化がベースラインからのフォローアップにおいて記載されているものを組み込んだ。ランダム効果・分散逆数で重み付けをおこない(inverse variance methods)、95%の信頼区間が用いられた。禁煙後1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、12ヶ月の体重変化に対する平均標準偏差を求めた。ランダム効果メタ回帰を用いてサブグループ間の差異も調べた。

結果:
 62試験が組み込まれた。治療されていない禁煙成功者において、平均の体重変化は1ヶ月時:1.12 kg (95%CI0.76 to 1.47),2ヶ月時:2.26 kg (1.98to 2.54),3ヶ月時:2.85 kg (2.42 to 3.28), 6ヶ月時:4.23 kg (3.69 to 4.77), 12ヶ月時:4.67 kg (3.96to 5.38)であった。
 平均荷重標準偏差を用いると禁煙後12ヶ月時において、20%程度に体重減少がみられるものの多くは体重増加傾向。体重増加については、異なる薬剤禁煙指導を用いた人においても同様の結果であった。
禁煙成功者は1年後に体重が4-5kg増加する_e0156318_95547100.jpg

結論:
 禁煙成功ののち12ヶ月時にはおよそ4-5㎏の体重増加が起こる。また多くの場合、禁煙開始3ヶ月以内から体重増加はみられている。

by otowelt | 2012-07-13 05:35 | 呼吸器その他