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市中肺炎における肺エコー診断は感度特異度ともに良好

Angelika Reißig, et al.
Lung ultrasound in the diagnosis and follow-up of community-acquired pneumonia. A prospective multicentre diagnostic accuracy study
CHEST.2012doi:10.1378/chest.12-0364


背景:
 このプロスペクティブ多施設共同試験の目的は、市中肺炎の診断において肺エコー:lung ultrasoundの精度を検証するものである。

方法:
 ヨーロッパの14施設において362人の市中肺炎を疑われた患者を登録した。ベースライン特性、既往歴、身体所見、検査データ、肺エコーを抽出。市中肺炎患者において病初期のデータと13-16病日を比較した。
 肺エコーは、病変部位の数、位置、形、サイズ、呼吸依存性の運動があるかどうかをみた。さらに、壊死性病変の頻度、air bronchogramがあるかどうか、液体貯留などもレビューした。

結果:
 2007年11月から2011年2月までの間、市中肺炎は229人(63.3%)に同定された。患者の年齢中央値は63.8歳(range 19-95)であり、男性のほうがやや多い傾向にあった(63.0%)。95%が入院患者であった。
 肺エコーは感度93.4%(95% CI89.2%-96.3%)、特異度97.7%(95%CI93.4%-99.6%)、陽性尤度比40.5(95%CI 13.2-123.9)、陰性尤度比0.07(95%CI0.04-0.11)。
 聴診と肺エコーの組み合わせは陽性尤度比を42.9(95%CI10.8-170.0)に上昇させ、陰性尤度比を0.04(95%CI0.02-0.09)へ低下させた。97.6% (205/210)のCAP患者は、呼吸依存性の浸潤影移動がみられ、86.7% (183/211)にair bronchogram, 76.5% (156/204)に辺縁の不明瞭化、54.4% (105/193)に胸水が同定された。
 フォローアップ期間中、13-16病日にCRP中央値は137から6.3 mg/dlへ減少、白血球数は11.7 Gpt/l
から7.4 Gpt/lへ減少。病変部位面積の中央値も15.3から0.2 cm2へ、胸水は50mlから0 mlへ減少した。肺炎症状数の中央値は3から1へ減少。
市中肺炎における肺エコー診断は感度特異度ともに良好_e0156318_22522059.jpg
ディスカッション:
 8%の肺炎は肺エコーでは同定できなかったが、これはおそらく肺炎そのものが胸膜まで到達していなかったためと思われる。
 fluid bronchogramがあった1人の患者が3ヵ月後に肺癌があることがわかったため、偽陽性についてはある程度の確率で存在するものである。
 過去の報告でもあるように、肺炎のサイズを肺エコーで同定した場合、レントゲンのそれと比べるといくぶんか小さくみえることがある(Eur J Ultrasound.1996;3:161-167.)。そのためサイズの評価には注意が必要である。

結論:
 肺エコーは非侵襲的でCAP診断において精度の高い有用なツールであると考えられる。これはレントゲンが有用でなかったり適用できない場合に重要となる。およそ8%の肺炎の領域は肺エコーでは同定できなかった。すなわち、肺エコーが目立たないからといって肺炎を除外するものではない。

by otowelt | 2012-07-13 01:16 | 感染症全般

COPDに対するvilanterolのプラセボ対照ランダム化試験

COPDに対するvilanterolのプラセボ対照ランダム化試験_e0156318_9471419.jpg
7月号のCHESTが全然刊行されないなぁと思ったら、サイトデザイン等を一新していたようだ。読者にわかりやすいように一新しました、と書かれている。

Nicola A. Hanania, et al.
The Efficacy and Safety of the Novel Long-Acting b 2 Agonist Vilanterol in Patients With COPD
A Randomized Placebo-Controlled Trial
CHEST.2012;142(1):119-127


背景:
 Vilanterol (GW642444M) (VI)は、新規の吸入LABA(長時間作用型β2刺激薬)であり、吸入ステロイドと1日1回併用することで24時間の活性がある。このスタディは、用量反応性、効果、安全性を中等度から重症COPD患者においてVI3~50mgの用量で検証したものである。
GlaxoSmithKline study number: B2C111045; www.clinicaltrials.gov registration number: NCT00606684

方法:
 602人の患者(ITT)が二重盲検下にランダム化され、539人(90%)が試験を完遂した。VIを3, 6.25,12.5, 25, 50 mgの用量あるいはプラセボ1日1回を28日間投与する群に割り付けられた。プライマリエンドポイントは、治療期間28日終了時におけるFEV1のベースラインからの変化とした。Day1,28での0–24h加重平均FEV1、Day1からのFEV1の≥100 mLの上昇あるいは≥12%の上昇とした。
 安全性解析は、有害事象、バイタルサイン、心電図解析、臨床検査データなど。

結果:
 1日1回の28日間のVIは、プラセボと比較して有意に一秒量を用量依存性に改善した。25~50μgの用量において臨床的に妥当な治療効果が確認された。すべての用量のVIにおいて有害事象は忍容できた。
COPDに対するvilanterolのプラセボ対照ランダム化試験_e0156318_22595268.jpg

結論:
 VI 25 、50μgを1日1回使用することでCOPDに対しする呼吸機能に利益をもたらすことができる。安全性プロファイルも忍容性がある。

by otowelt | 2012-07-11 06:39 | 気管支喘息・COPD

犬との接触は、赤ちゃんにとってむしろ健康的である可能性

犬との接触は、赤ちゃんにとってむしろ健康的である可能性_e0156318_10171747.jpg 海外の呼吸器内科のツイッターで話題になっていたので少し読んでみた。
 エコアンやカーペットなどの広告をみていると、今の風潮は無菌的な環境が子供に望ましいという感じだが、何でもかんでもクリーンにすればいいというものではなさそうだ。

Eija Bergroth, et al.
Respiratory Tract Illnesses During the First Year of Life: Effect of Dog and Cat Contacts
Pediatrics, Published online July 9, 2012(doi: 10.1542/peds.2011-2825)


目的:
 生まれた赤ん坊の最初の年に、犬や猫に接触することと気道症状や感染との関連性・効果を検証するものである。

方法:
 フィンランドにおいて2002年9月から2005年5月まで397人の小児を妊娠期から出生1年目まで観察した研究で、呼吸器症状や感染の情報に加えて猫や犬との接触についてウィークリーダイアリーと1年時のアンケートに答えてもらい関連性を調査した。

結果:
 多変量解析において、犬を自宅で飼っている場合は犬を飼っていない場合と比較してより健康的な赤ん坊であった(気道症症状や感染症)(補正OR 1.31; 95%CI: 1.13–1.52)。さらに、犬を飼っている場合には耳感染症(中耳炎のことだろう)が少なく(補正OR: 0.56; 95% CI: 0.38–0.81)、抗菌薬投与必要性も少ない傾向にあった(補正OR: 0.71; 95% CI: 0.52–0.96)。
犬との接触は、赤ちゃんにとってむしろ健康的である可能性_e0156318_10112593.jpg

 単変量解析においては、犬と猫との接触の1週あたりの時間および年間平均の接触時間は、気道感染合併を減少させた。犬、猫ともに1日6時間未満のリビング駐留が最も気道症状を軽減させるものであった。

ディスカッション:
 この試験においては、犬と猫の接触と比較して、犬単独の接触は有意な呼吸器症状軽減をもたらした。これはHatakkaらの研究(Scand J Infect Dis. 2010;42(9):704–711)結果を支持するものであり、hatakkaらは1~6歳児童において、急性気道症状の再発を動物が防いだという結果を報告している。また、Grüberらは2歳になるまでの赤ん坊と一緒に犬を飼うことで風邪(common cold)を減少させたと報告している(Pediatr Allergy Immunol. 2008;19(6):505–512)。一方で、動物との接触は有意な気道症状の利益をもたらさないという否定的な報告もある(Arch Environ Health. 2000;55(5):300–303)。
 本試験結果では、6時間未満の短時間家にあがる犬がいる場合にもっとも気道症状の軽減に効果的であったが、この理由として以下のように考えられる。短い時間家にあがるということは、多くは外で過ごす犬である。そういった犬が家にあがることで、外のよごれが家の中に持ち込まれる。このよごれの量が今回の結果につながったのではないか。すなわち、赤ちゃんの時期によごれに曝露されることが、免疫を助長させる上でよい結果につながったのかもしれない。しかしながら、赤ちゃんの免疫そのものを客観的に観察したわけではないため、これはあくまで一仮説にすぎない。

結論:
 これらの結果は、出生1年までの間に犬との接触することが気道感染に予防的にはたらくことが示唆される。

by otowelt | 2012-07-10 05:22 | 感染症全般

血清クレアチニンとシスタチンCによる複合GFR推定式は、より正確である

血清クレアチニンとシスタチンCによる複合GFR推定式は、より正確である_e0156318_17231312.jpg先日の腎臓学会においてCKD重症度分類が改訂されたことは周知のこと(実臨床やマネジメントにおいて大きな改訂ではなかった)だが、GFRの推定にCre-シスタチンC複合推定のほうが妥当性が増すという報告がNEJMよりなされた。
 シスタチンCはCreに比べて腎機能低下の影響を早期から受けやすい。そのため、抗菌薬や抗癌剤でも有益に使用できる可能性があるのだが、呼吸器内科医という診療特性上、個人的にはコントロール不良の糖尿病患者でたまに測定するくらいしか使用したことがない。

Lesley A. Inker, et al.
Estimating Glomerular Filtration Rate from Serum Creatinine and Cystatin C
N Engl J Med 2012; 367:20-29


背景:
 血清Creによる糸球体濾過量(GFR)の推定は、日常診療においてよく用いられている。しかしながら、この推定は実際には不正確であり、慢性腎臓疾患の過剰な診断をきたすおそれがあるとされている。
 Cystatin C(シスタチン C)は、GFRの予測において血清Creに代替可能なマーカーである。

方法:
 合計13研究の5352人から構成される患者集団で横断的解析によってシスタチンCに基づく推定式およびシスタチン Cと血清Creを組み合わせた推定式を作成。その後、GFRが測定されていた5研究1119人で、これらの予測推定式の妥当性を検証。
 シスタチンCと血清Cre測定法は、一次標準物質にトレース可能であった。

結果:
 実際に測定されたGFR 平均値は、development data setsで68 mL/min/1.73 m2、validation data setsで70 mL/min/1.73 m2だった。validation data setsにおいて、Cre-シスタチンC推定式は、Cre推定式およびシスタチンC推定式よりも有意に優れていた。3推定式におけるそれぞれの偏りは同程度であり、実際のGFRと推定GFRの差の中央値は、Cre-シスタチンCの複合推定式で3.9 mL/min/1.73 m2であったのに対して、Cre推定式では 3.7 mL/min/1.73 m2(P=0.07)、シスタチンC推定式で3.4 mL/min/1.73 m2(P=0.05)だった。
 Cre-シスタチン複合推定式において、推定精度が向上した(interquartile range of the difference, 13.4 vs. 15.4 and 16.4 ml per minute per 1.73 m2, respectively [P=0.001 and P<0.001])。Cre推定GFRが45~74 mL/min/1.73 m2であった被験者で、複合推定式によって実際のGFRの<60 mL/min/1.73 m2 または≧60 mL/min/1.73 m2の分類が改善(net reclassification index, 19.4% [P<0.001])。推定GFRが 45~59 mL/min/1.73 m2の被験者の16.9%が、GFR≧60mL/min/1.73m2に正確に再度分類されることとなった。

結論:
 血清Cre-シスタチンC複合のGFR推定式は、これら単独によるGFR推定式よりも優れていた。

by otowelt | 2012-07-08 17:41 | 内科一般

エホバの証人に対する心臓外科手術に不利益はみられず

 医師をやっていると必ず一度はエホバの証人の患者さんに出会うことがあると思う。ものみの塔協会が無輸血治療に言及する際に、引用する文献は1993年の論文であるが、
Kitchens CS. Are transfusions overrated? Surgical outcome of Jehovah's Witnesses. Am J Med 1993;94:117-119
 時間の都合で論文全文を詳しく読んではいないが、おそらく今後は今回のデータを引用していくことになると思われる。ただ、これはいわゆる予定手術での解析結果であるので、よくニュースで問題になる緊急手術や交通外傷などとは異なる。

Gregory Pattakos, et al.
Outcome of Patients Who Refuse Transfusion After Cardiac SurgeryA Natural Experiment With Severe Blood Conservation
Arch Intern Med. 2012;():1-7. doi:10.1001/archinternmed.2012.2449


目的:
 Cleveland Clinicにおいて心臓手術を受けたエホバの証人信者Jehovah’s Witness patients (Witnesses)の心筋梗塞や出血による再手術などの術後合併症を検証する。

方法:
 1983年1月1日から2011年1月1日までの間、非エホバの証人である87453人、エホバの証人である322人の心臓外科手術を受けた患者を本試験に登録。propensity scoreマッチング法によって、心臓手術を受けたエホバの信者群と輸血が行われた非エホバの信者群の術後合併症および長期予後を検討した。
 年齢、BMI、NYHA重症度、心機能、高血圧・糖尿病既往歴とマッチングし、解析をおこなった。

結果:
 解析の結果、入院中の死亡、脳卒中、心房細動、腎障害発現率は両患者群で差はみられなかった。
 術後の心筋梗塞、人工呼吸器装着期間の長期化、出血による再手術はエホバの信者群で有意に低い結果であった[myocardial infarction, 0.31% vs 2.8%(P=.01); additional operation for bleeding, 3.7% vs 7.1%(P=.03); prolonged ventilation, 6% vs 16% (P<.001);intensive care unit length of stay (15th, 50th, and 85th percentiles)]。
 また、1年生存率はエホバの証人群で有意に高く(95%; 95%CI, 93%-96%; vs 89%; 95% CI, 87%-90%; P=.007)、20年生存率は同等であった(34%; 95% CI, 31%-38%; vs 32% 95% CI, 28%-35%; P=.90)。

結論:
 心臓外科手術においてエホバの証人は、輸血をおこなう通常の患者と比べて術後合併症や生存に差はみられない。

by otowelt | 2012-07-06 11:18 | 内科一般

lepidic predominant adenocarcinomaにおけるゲフィチニブ後のセカンドライン治療

 呼吸器内科医として大事なポイントだが、ニューモシスティス肺炎をカリニ肺炎と現在言わないように、lepidic predominant adenocarcinomaのことをBACとはもう言わない。
 将来の若手に時代遅れと言われないよう、いつも知識をアップデートしておきたい。

Michaël Duruisseaux, et al.
Chemotherapy Effectiveness After First-Line Gefitinib Treatment for Advanced Lepidic Predominant Adenocarcinoma (Formerly Advanced Bronchioloalveolar Carcinoma) Exploratory Analysis of the IFCT-0401 Trial
Journal of Thoracic Oncology., POST AUTHOR CORRECTIONS, 3 July 2012


仮説:
 このスタディは、ファーストラインでゲフィチニブに効果のあった進行lepidic predominant adenocarcinoma(LPA)患者(以前のBAC)に対して、その後の抗癌剤の効果を検証したものであり、Intergroupe Francophone de Cancerologie Thoracique (IFCT)-0401試験に登録された患者での報告である。
Cadranel J, et al. IFCT-0401 Trial Group. IFCT-0401 Trial: a phase II study of gefitinib administered as first-line treatment in advanced adenocarcinoma with bronchioloalveolar carcinoma subtype. J Thorac Oncol 2009;4:1126–1135.

方法:
 全体で88人の進行LPA患者がIFCT-0401試験に登録された。全員ファーストラインでゲフィチニブを使用されている。ゲフィチニブによる病勢悪化や毒性のあった症例において、セカンドラインは特に所定のレジメンを必須とは設定しなかった。しかしながら、カルボプラチンとパクリタキセルの組み合わせをPS0-1患者で推奨し、PS2ではゲムシタビン単剤を推奨した。これらの患者において、治療効果を検証した。

結果:
 ゲフィチニブによる治療失敗ののち、合計47人(53%)がセカンドライン治療を受けた。その患者群は、若年層が多く(p = 0.007)、PSは概して良好であった(p = 0.01)。
 本プライマリエンドポイント解析において43人のセカンドライン化学療法を受けた患者を検証した。38人が白金製剤を用いたレジメン(taxane-based, n = 29; gemcitabine-based, n = 9)、5人が単剤治療であった(gemcitabine, n = 3; pemetrexed, n = 2)。
 化学療法による全奏効率ORRは、21% (95%CI: 10-36)であり、疾患制御率DCRは56% (95% CI: 40-71), PFS中央値は3.0ヶ月(95% CI: 2.4-4.9)であった。白金製剤を含む併用療法を受けた患者38二院に限ると、ORRは21% (95% CI: 10-37), DCRは55%(95% CI: 38-71), PFS中央値は2.9ヶ月(95% CI: 2.4-4.4)であった。タキサンベースのレジメン患者29人およびゲムシタビンベースのレジメン患者12人においては、それぞれORRは28%と0%であり、PFS中央値は3.3ヶ月と2.0ヶ月であった(p = 0.0243)。ペメトレキセドを受けた2人の患者は奏効が長期に継続していた。多変量Coxモデル解析では、タキサンベースの化学療法あるいはペメトレキセドの使用のみがPFSに有意に相関していた。

結論:
 白金製剤による併用化学療法は、ファーストラインのゲフィチニブのあと進行LPA患者において幾分かの効果がある。われわれの知見によれば、タキサンベースの化学療法あるいはペメトレキセドに対してさらなる臨床試験を組むべきであると考えられる。

by otowelt | 2012-07-06 05:22 | 肺癌・その他腫瘍

改良禁煙ワクチンAAVantiNic

改良禁煙ワクチンAAVantiNic_e0156318_10363665.jpg 禁煙ワクチンについての話題。すでに知られているNicVaxワクチン(Nabi Biopharmaceuticals)については、III相試験でプラセボと有意な差が示せなかった。欠点を克服した新しいワクチンについての報告が先日あったため、海外で結構話題になっている。
 バレニクリンについても実臨床ですごく効果的だと感じることはあまりなく、禁煙治療で決定打となる薬剤はまだないと思う。


Martin J. Hicks, et. al.
AAV-Directed Persistent Expression of a Gene Encoding Anti-Nicotine Antibody for Smoking Cessation
Sci Transl Med 27 June 2012: Vol. 4, Issue 140, p. 140ra87 Sci. Transl. Med. DOI: 10.1126/scitranslmed.3003611


背景:
 アデノ関連ウイルス遺伝子組み換えベクター( adeno-associated virus (AAV) gene transfer vector)と、抗ニコチンモノクローナル抗体NIC9D9を組み合わせたDNAワクチンAAVantiNicを作製した。このワクチンにおいて、生体内での有効性を確認するための実験を実施した。コーネル大学においてマウスを用いた研究をおこなった。

結果:
 AAVantiNicの1回の接種によって、接種していないマウスに比べて抗体持続期間・抗体上昇などが長期にわたって(18週間)確認された。これまでのワクチンでは数週間しか効果が持続できなかった点を克服することができた。また、ニコチン投与後の脳内のニコチン濃度上昇が、ナイーヴマウスに比べて15%におさえることができた。

結論:
 AAVantiNicによるワクチンは禁煙治療において有効となる可能性がある。

by otowelt | 2012-07-05 04:52 | 呼吸器その他

タンザニアにおいて結核菌血症の死亡率は50%

タンザニアにおいて結核菌血症の死亡率は50%_e0156318_15495565.jpg 粟粒結核の症例などの重症結核では抗酸菌専用の血液培養ボトルを使用することがしばしばあるが、結核を診療しない病院では抗酸菌の血液培養自体があまり知られていない。
 AIDSの蔓延する地域では、リンパ球が少ないため重症結核患者も非常に多い。


 
John A. Crump, et al.
Bacteremic Disseminated Tuberculosis in Sub-Saharan Africa: A Prospective Cohort Study
Clin Infect Dis. (2012) 55 (2): 242-250.


背景:
 播種性結核は、結核発症率の高いHIVが蔓延する地域において主要な健康的問題である。タンザニアなどのサハラ以南のアフリカにおいて、播種性結核患者のアウトカムについてはほとんどわかっていない。

方法:
 われわれは、2006年3月10日から2010年8月28日までの間、タンザニアのモシ(キリマンジャロ地方)において連続した13歳以上の発熱(口腔温38℃以上)入院患者を登録し、Mycobacterium tuberculosis菌血症(bioMérieux, Durham, North Carolina)の患者を12か月までフォローアップした。生存、菌血症化した播種性結核、死亡予測因子が解析された。患者には、抗レトロウイルス治療(ART)と結核治療がほどこされた。

結果:
 508人の登録患者のうち、29人(5.7%)においてM. tuberculosisが血液培養で陽性となった。25人が臨床データがすべて参照可能であった。すべての参加者の年齢中央値は37.4歳(range, 13.6–104.8 years)であった。1ヶ月を超えて咳が続くこと(OR, 13.5; P < .001), 1ヶ月を超えて発熱が続くこと(OR, 7.8; P = .001)、10%を超える体重減少(OR, 10.0; P = .001), リンパ節腫大(OR 6.8; P = .002), HIV感染(OR, undefined; P < .001), CD4数および総リンパ球の減少は、播種性結核に有意に関連していた。播種性結核患者の50%が登録36日以内に死亡した。
タンザニアにおいて結核菌血症の死亡率は50%_e0156318_1546331.jpg
 CD4数の減少(OR, 0.88; P = .049)と総リンパ球数の減少(OR, 0.76; P = .050)は死亡に関連していた。抗酸菌血症のmagnitudeは、CD4が少ない患者においてよくみられたが、死亡を予測するものではなかった。

limitations:
 ・血液培養陽性の播種性結核患者の絶対数が少ないため、解析の信頼性が落ちる
 ・肺結核患者との比較や薬剤耐性結核などの考察ができなかったため、スタディを再度考案中である

結論:
 タンザニアにおいて播種性結核患者の半数が入院1ヶ月で死亡している。免疫抑制状態は死亡と有意に相関していた。HIVおよび結核、播種性疾患の早期診断と治療が重要である。

by otowelt | 2012-07-04 15:51 | 抗酸菌感染症

肺動静脈奇形の有病率は0.038%

興味深いスタディである。
考察にも記載されているが、基本的に50~80歳を対象にしているので、一般人口集団を反映しているとは限らない。

Masayuki Nakayama, et al.
Prevalence of Pulmonary Arteriovenous Malformations as Estimated by Low-Dose Thoracic CT Screening
Intern Med 51: 1677-1681, 2012


背景:
 肺動静脈奇形:Pulmonary arteriovenous malformations (PAVMs)は、臨床においてまれにしか遭遇しない。遺伝性出血性毛細血管拡張症:hereditary hemorrhagic telangiectasia (HHT)を伴うPAVMsはHHT患者の家系において類推された頻度があるものの、一般的人口集団における有病率についてはわかっていない。

方法:
 茨城県北部にある日立総合健診センターにおいて、50歳以上を対象とした肺癌の低線量胸部CTスクリーニング検査によって同定されたPAVMsをもとにレトロスペクティブにその臨床的特性と有病率を検証した。PAVMsをスクリーニングで疑う情報として、辺縁整でhomogeneousである円形の結節様陰影で、血管が陰影に向かって走行する所見があるものとした。最終的に造影CTあるいは血管造影によってPAVMsの確定診断とした。

結果:
 2001年から2007年で、21235人の被スクリーニング者のうち8人の患者(女性7人、男性1人)のPAVMs患者が同定された。PAVMsの有病率は10万人あたり38人(95% CI=18-76)で、PAVMsの直径は平均6.6mm(range 4.0-12.0 mm)、いずれも胸部レントゲンでは同定できないものであった。若年女性と比較して60歳以上の女性は大きなPAVMsを有していた(younger than 60 years, 4.5±0.8 mm vs. older than 60 years, 6.7±0.5mm; p=0.06)。2人(25%)の患者がHHTと診断された。1人の患者は過去に脳膿瘍で手術を受けていた。

結論:
 PAVMsは報告されているよりも有病率が高く、特に女性に多い。

by otowelt | 2012-07-03 05:23 | 呼吸器その他

世界スパイロメトリーデー:世界的に呼吸器疾患の関心は薄い

世界スパイロメトリーデー:世界的に呼吸器疾患の関心は薄い_e0156318_1210516.jpg6月27日は世界スパイロメトリーデーだった。FIRSでは呼吸器疾患の関心の薄さが報告されたが、COPDは慢性疾患なので仕方のないことなのかなぁとも思う。

http://www.wsd2012.european-lung-foundation.org/17509-spirometry.htm

(以下共同通信より)
 世界スパイロメトリーデー(World Spirometry Day)に合わせて6月27日に国際呼吸器学会フォーラム(Forum of International Respiratory Societies、FIRS)で公表された新たなデータは、世界で最多の死者を出している肺疾患についての一般の理解、関心が欠如していることを明らかにしている。
 肺疾患の罹患率は高いにもかかわらずYouGovが4大陸で実施した調査は、人々はがん、心臓疾患、脳卒中の方を心配していることを明らかにしている。この関心の欠如は、ほかの主な病気がこの30年の間に死因としては減少しているのにCOPD(慢性閉塞性肺疾患)による死者は同じ期間に倍増していることをデータが示しているだけに一層衝撃的である。
 

by otowelt | 2012-07-02 12:12 | 気管支喘息・COPD