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肺炎随伴性胸水と膿胸に対する胸腔内の線維素溶解療法のメタアナリシス

肺炎随伴性胸水と膿胸に対する胸腔内の線維素溶解療法のメタアナリシス_e0156318_1155850.jpg胸腔内感染に対するt-PA+DNase胸腔内投与によって、胸水ドレナージ効果が改善し、手術コンサルテーション頻度が低下し入院期間が短縮したというNEJMの報告が記憶に新しい。
胸腔内感染に対するt-PA+DNase胸腔内投与はドレナージを改善させる

一度は闇に葬り去られそうになった胸腔内注入療法だが、再び脚光を浴びるようになった。CHESTからメタアナリシスが出ている。バイアスがかなり多いメタアナリシスながらも、採択されている。

Surinder Janda, et al.
Intrapleural Fibrinolytic Therapy for Treatment of Adult Parapneumonic Effusions and Empyemas: A Systematic Review and Meta-analysis
CHEST 2012; 142(2):401–411


背景:
 われわれの試験の目的は、肺炎随伴性胸水と膿胸に対して線維素溶解(fibrinolytics)療法とプラセボを比較したランダム化比較試験からシステマティックレビューおよびメタアナリシスをおこなうことである。

方法:
 MEDLINE, EMBASE, PapersFirst, Cochraneで検索をおこなった。キーワードは以下の通り:“pleural effusion” or “parapneumonic” or “empyema” or intrapleural”
or “pleur” AND “fi brinolytic” or “antithrombotic” or “thrombolytic”or “streptokinase” or “urokinase,” “alteplase” or “t-PA” or“DNase”。
 2人の研究者が独立して記事をレビューし、データを抽出した。臨床試験の質の評価は、Jadadスケールに基づいた。

結果:
 7つのランダム化比較試験(合計801人の患者)で線維素溶解療法とプラセボが比較されており、これをメタアナリシスに組み込んだ。線維素溶解療法は、治療失敗(手術を要したか死亡したか)のアウトカムに利益がみられた(RR, 0.50; 95% CI, 0.28-0.87)。
肺炎随伴性胸水と膿胸に対する胸腔内の線維素溶解療法のメタアナリシス_e0156318_1053208.jpg
 また、外科手術単独の失敗アウトカムにしぼってみると(RR, 0.61; 95% CI, 0.45-0.82)であった。すなわち、治療失敗を回避する上で有用であると考えられる。
肺炎随伴性胸水と膿胸に対する胸腔内の線維素溶解療法のメタアナリシス_e0156318_1054581.jpg
 在院日数については差はみられず(standard mean difference, −0.69; 95% CI, −1.54-0.16)、死亡単独についても差はみられなかった(RR, 1.14; 95% CI, 0.74-1.74)。
 出版バイアスは統計学的に有意にみられた。funnel plotでは、両側底部の該当試験がなかった。出版されていない試験については今回検索を試みていない。そのため、出版バイアスの存在がこのメタアナリシスの妥当性に影響している可能性については疑問が残ってしまう。
肺炎随伴性胸水と膿胸に対する胸腔内の線維素溶解療法のメタアナリシス_e0156318_1123954.jpg

結論:
 このメタアナリシスにより、線維素溶解療法は潜在的に成人の肺炎随伴性胸水と膿胸に治療失敗を回避するという効果がみられる。heterogeneityが有意にみられ出版バイアスの観点からも、この処置をルーチンに推奨するエビデンスとしては不十分であろうが、線維素溶解療法は限局した胸水には考慮してもよいかもしれない、というのも外科的手術を回避できる可能性があるからだ。適切なランダム化比較試験に期待したい。

by otowelt | 2012-08-08 11:06 | 感染症全般

肺癌スクリーニング検査のアルゴリズムにルーチンに気管支鏡を行う意義

予防医学的見地からの話題。

Susan C. van ’t Westeinde, et al.
The Role of Conventional Bronchoscopy in the Workup of Suspicious CT Scan Screen-Detected Pulmonary Nodules
CHEST 2012; 142(2):377–384


背景:
 CT検査での肺癌スクリーニングを受けた人で少なくとも1つの肺結節影を指摘される人は、50%にものぼるとされている。肺結節影をスクリーニングで指摘された場合、ワークアップとして通常の気管支鏡がどういった役割を果たすのかは現時点ではまだはっきりしていない。もし気管支鏡による評価が除外できるのであれば、肺癌スクリーニングプログラムでの費用効果は大きく、気管支鏡による有害事象も回避できるかもしれない。

方法:
 CT検査で肺癌スクリーニングで異常を指摘された連続患者を、2004年4月から2008年12月までの間登録した。NELSON試験と同等の手法でおこなわれたものであり、全ての患者はベースラインスクリーニングで異常を指摘されたのち、1年後ないし3年後に再度異常を指定されたものを組み込んだ。結節影は、>500 mm3(>9.8 mm 径)を陽性基準とした。
 2病院で気管支鏡がおこなわれたが、CT蛍光ガイドあるいは極細気管支鏡は使用していない。
 診断的感度および陰性適中率が算出された。95%の結節影で、気管支鏡アウトカムの判断基準は外科的切除検体に基づいた。もし外科的切除をしない場合、400日volume-doubling timeに基づいて良性かどうか判定した。

結果:
 連続した318人の肺結節影のうち、308人に気管支鏡が施行された。結節影の平均直径±SDは、14.6 ± 8.7 mmであり、2.8%が結節影の大きさが30㎜をこえるものであった。308人の気管支鏡検査を受けた人のうち、279人が検体を採取され、39人が採取されなかった。前者279人のうち、最終的に悪性と診断されたのは158人(56.6%)で、後者のうち最終的に悪性と診断されたのは20人(51.3%)であった。気管支鏡を受けずに最終的に悪性と診断されたのは107人中24人(22.4%)であった。
肺癌スクリーニング検査のアルゴリズムにルーチンに気管支鏡を行う意義_e0156318_1029257.jpg

 気管支鏡の感度は13.5% (95% CI, 9.0%-19.6%)で、特異度および陽性適中率は100%、陰性適中率は47.6% (95% CI, 41.8%-53.5%)であった。
 全体で癌だと診断された結節影のうち、1%のみが気管支鏡のみで診断され、レトロスペクティブには低線量CTでも造影CTでも可視できなかった。

結論:
 通常の気管支鏡検査は、肺癌スクリーニングプログラムで異常と指摘された患者にルーチンですすめられるべきではない。

by otowelt | 2012-08-08 10:35 | 肺癌・その他腫瘍

COPD急性増悪では気道粘膜にCysLT1受容体蛋白が発現

Jie Zhu, et al.
Cysteinyl Leukotriene 1 Receptor Expression Associated With Bronchial Inflammation in Severe Exacerbations of COPD
CHEST 2012; 142(2):347–357


背景:
 Cysteinyl leukotriene 1 (CysLT 1 )受容体は、喘息患者(特に急性増悪患者)において気道粘膜に多く発現するとされているが、COPDにおける発現については何もわかっていない。

方法:
 気管支粘膜生検検体(Ben Taub General Hospitalで施行、テキサス州)における免疫組織化学染色とin situ hybridizationによって、炎症性細胞CysLT 1 受容体蛋白とmRNA発現を以下の患者で検証した。(1)15人の非喫煙者コントロール(FEV 1 ≧ 80% predicted; FEV 1 /FVC≧ 70%)、(2) 16人の喫煙者(58 ±8 pack-years)で中等度から重度の安定したCOPD患者、(3) 15人のCOPD患者で重度の急性増悪で入院した患者。

結果:
 気管支粘膜炎症細胞(CD45陽性)とCysLT 1受容体蛋白を発現した細胞は、有意に重度のCOPD急性増悪患者で発現がみられた(CysLT 1受容体蛋白:中央値[range]=139 [31-634])。安定したCOPD患者と健常者コントロールではそれぞれ(32 [6-114])、16 [4-66]) ( P<.001 for both)。CysLT 1受容体遺伝子発現は双方ともの間で同等の差であった。CysLT1受容体蛋白発現CD45陽性細胞は重度のCOPD急性増悪患者で高い比率であった(中央値[range]=22% [8-81])。安定したCOPD患者と健常者コントロールではそれぞれ(10% [4-32]) ( P<.03) 、NSC (7% [1-19]) ( P<.002)。重度のCOPD急性増悪患者において、CysLT1受容体発現細胞の相対度数は以下の通りであった:tryptase陽性肥満細胞>CD68陽性単球/マクロファージ>好中球>CD20陽性Bリンパ球=EG2陽性好酸球。
COPD急性増悪では気道粘膜にCysLT1受容体蛋白が発現_e0156318_959880.jpg
 さらに、CysLT1受容体蛋白発現の細胞数と、CD45陽性細胞の数には有意な相関がみられ( r=0.78; P<.003)、tryptase 陽性肥満細胞との間にも相関がみられた( r=0.62; P<.02)。

結論:
 気管支粘膜CysLT1受容体陽性炎症細胞は、COPDで重度の急性増悪をきたした気管支粘膜に存在する。

by otowelt | 2012-08-08 07:38 | 気管支喘息・COPD

カナダから2つのコホート試験:気管支拡張薬と不整脈の関連性

今まで月始にすぐ刊行されていたCHESTだが、刊行日が変更になった様子。

気管支拡張薬と不整脈の関連について2つ論文が出ていた。

Machelle Wilchesky,et al.
Bronchodilator Use and the Risk of Arrhythmia in COPD: Part 1: Saskatchewan Cohort Study
CHEST. 2012;142(2):298-304.


1つ目の試験は、カナダ・サスカチュワン州における200万人規模のヘルスケアデータベースのコホート試験の結果で、イプラトロピウムおよびLABAの使用が不整脈のリスク比を上昇させたというもの。
・新規のipratropium (RR, 2.4; 95% CI, 1.4-4.0)
・新規のlong-acting β-agonists (LABAs) (RR, 4.5; 95% CI, 1.4-14.4)
カナダから2つのコホート試験:気管支拡張薬と不整脈の関連性_e0156318_2238175.jpg

不整脈の多くは、心房細動あるいは心房粗動であった。
ただ、この試験においては不整脈の発症が極めて”限定的な”事象であったことが推察されており、リスク比の上昇が本当に確かなものなのかは、さらなるコホート試験を要すると付け加えられている。

Machelle Wilchesky, et al.
Bronchodilator Use and the Risk of Arrhythmia in COPD: Part 2: Reassessment in the Larger Quebec Cohort
CHEST. 2012;142(2):305-311.


2つ目の試験もカナダからのもので、これはケベック州のコホート試験である。76000人以上のCOPD患者で、1000人年あたり10.3の不整脈発症がみられた。リスク比の上昇については
・新規のshort-acting β-agonists(RR, 1.27; 95% CI, 1.03-1.57)
・新規のlong-acting β-agonists(RR, 1.47; 95% CI, 1.01-2.15)
の2剤については有意な上昇であったが、サスカチュワンの試験でリスク比の上昇があった新規のイプラトロピウムについては差がみられなかった(RR, 1.23; 95% CI, 0.95-1.57)。

by otowelt | 2012-08-07 22:44 | 気管支喘息・COPD

結核診断前のフルオロキノロンは、結核患者の死亡リスクを上昇

結核診断前のフルオロキノロンは、結核患者の死亡リスクを上昇_e0156318_13183343.jpgタイトルに不備があり、少し訂正しました。
たくさんツイートがございましたが、お察しの通りこれは結核診断をマスクしてしまうことが原因です。

van der Heijden, Y. F, et al.
Fluoroquinolone exposure prior to tuberculosis diagnosis is associated with an increased risk of death
The International Journal of Tuberculosis and Lung Disease, Volume 16, Number 9, 1 September 2012 , pp. 1162-1167(6)


背景:
 結核診断前のフルオロキノロン曝露はよくあることだが、そのアウトカムに対する影響や死亡リスクなどはよくわかっていない。

デザイン:
  Tennessee Department of Healthにおいて2007年から2009年までの間の結核患者で、結核診断前6ヶ月以内にフルオロキノロン曝露がある患者を解析した。プライマリアウトカムは、結核診断時の死亡と結核治療中の死亡の混合アウトカムとした。

結果:
 609人の結核患者のうち、214人(35%)が結核診断前にフルオロキノロンに曝露されていた。71人(12%)の患者が死亡し、10人(2%)が結核診断時、61人(10%)が結核治療中に死亡した。多変量ロジスティック回帰分析により、死亡の独立したリスクとして高齢であること(OR 1.05 per year, 95%CI 1.04-1.07), HIV感染(OR 8.08, 95%CI 3.83-17.06), US birth (OR 3.03, 95%CI 1.03-9.09), 結核診断前のフルオロキノロン曝露(OR 1.82, 95%CI 1.05-3.15)が挙げられた。
 結核診断前にフルオロキノロンに曝露された患者はより培養・塗抹が陰性になりやすかった。

結論:
 結核診断前にフルオロキノロンに曝露されることで、結核死亡リスクが上昇する。これは、結核が疑われる患者ではフルオロキノロンの使用について警告する必要があることを示唆している。

by otowelt | 2012-08-07 13:19 | 抗酸菌感染症

サルコイドーシスにおける気管支粘膜血管所見のレビュー

●サルコイドーシスにおける気管支粘膜の血管増生
サルコイドーシス疑いの患者さんに対して気管支鏡をおこなうと、気管支粘膜の血管増生を観察することがある。これはサルコイドーシスの診断基準で気管支鏡所見という項目に
 1)網目状毛細血管怒張(network formation)
 2)小結節
 3)気管支狭窄
の3つが記載されているためである。
サルコイドーシスにおける気管支粘膜血管所見のレビュー_e0156318_1124814.jpg
サルコイドーシスにおける気管支粘膜血管所見のレビュー_e0156318_11245267.jpg
呼吸器内科医であれば、気管支鏡で血管増生を確認して「ああ、これはサルコイドーシスらしいね」と口にすることもあると思われるが、この発言には果たしてどの程度の意義があるのだろうか。レビューというほど大きな主題ではないのだが、個人的に以下に論じてみたい。

サルコイドーシスにおける気管支鏡所見は全例の60%に異常がみられるとされている。その多くが粘膜所見である。
Andrew F. Shorr, et al. Endobronchial Biopsy for Sarcoidosis: A Prospective Study. Chest 2001;120:109–114
CT検査ではこうした粘膜所見は65%でしか同定できないとされており、気管支鏡をのぞいて初めてわかることが多い。
F Lenique, et al. CT assessment of bronchi in sarcoidosis: endoscopic and pathologic correlations. Radiology 1995 194:2 419-423
こういった粘膜病変での気管支鏡下生検では多くの場合サルコイドーシスが病理学的に証明される。
Armstrong JR, et al. Endoscopic findings in sarcoidosis. Ann Otol 1981; 90: 339–343.

1988年の気管支学によく引用される論文が2つある。
市川洋一郎ら. サルコイドーシスの気管支内視鏡所見 : 45 例のまとめと特徴的気管支病変の呈示. 気管支学 10(4), 378-384, 1988
松岡緑郎ら. サルコイドーシスの気管支鏡所見およびその経時的変化の検討(治療過程における気管支鏡所見). 気管支学 9(4), 340-345, 1988

前者の文献では、自験例45例において網目状血管増生は34例(75%)と高率にみられた。顆粒状粘膜変化は網目状血管増生に随伴してみられることが多く、14例(31%)にみられた。小結節形成は10例(22%)にみられた。7例(15%)は正常粘膜所見であった。網目状血管増生と顆粒状粘膜変化は若年層にみられることが多く、小結節形成や正常粘膜所見は中高年層に多くみられたと報告されている。
また、後者の文献は114例のサルコイドーシス患者の気管支鏡所見を観察したものである。細血管増生所見は、レントゲン病期0期では13例中9(63%)、I期では50例中45例(90%)、II期では45例中41例(91%)、III期では6例中5例(83%)で認められた。細血管増生所見は両側肺門リンパ節腫脹とは、臨床経過は一致しなかった。ただ、気管支内の結節性病変は、リンパ節腫脹の改善に一致して消失、軽快した。

また1994年の日本の文献では、66人の自験例をもとに気管支鏡所見を5分類にわけている。1型:正常所見、2型:軟骨輪を超えた粘膜血管増生(2a型:血管増生増加のみ、2b型:不正な血管)、3型:サルコイド結節、4型:気管支粘膜プラーク、5型:気管支壁の不整。1型が16.7%、2型が63.6%、3型が28.8%、4型が10.6%、5型が10.6%であった。この報告でも63.6%と高率に血管所見がみられている。
Tsuchiya T, et al. Bronchoscopic classification in sarcoidosis Nihon Rinsho. 1994 Jun;52(6):1535-8

1981年に101人のサルコイドーシス患者に対する気管支鏡所見をまとめたものがあるが、その論文では気管狭窄がみられたのが26%、結節性病変は64%、血管増生は38%、粘膜浮腫は55%であった。この論文では血管所見の頻度はやや少ない。
Armstrong JR, et al. Endoscopic findings in sarcoidosis. Ann Otol 1981; 90: 339–343.


●なぜ血管増生が起こるのか
近年の文献に目を向けてみると、2009年のCHESTの論文が有名である。ここでは気管支粘膜における結節性病変の機序が記載されているが、血管病変についての記載は乏しい。
Vlassis S. Polychronopoulos, et al. Airway Involvement in Sarcoidosis. CHEST.2009;136(5):1371-1380
形態学的にはまず全身の炎症が気管支粘膜に波及し、発赤や肉芽腫を形成する。これが進行すると、さらに結節性の病変が明らかとなりcobblestone appearanceとなる。このCHESTの論文に言及されているのは主に粘膜のプラークや結節性病変が主体であり、血管増生についてはさほど大きく取り上げられていない。

1987年の学会発表では、サルコイドーシスにおける気管支粘膜血管異常がどのように成り立っているかを考察したものがあった。
三宅川登ら. 肺サルコイドーシスの気管支粘膜血管の異常に関する気管支鏡的検索, 特にその成り立ちについて(Bronchial vessels). 気管支学 9(増刊), 75, 1987.
自験例32例を検証した結果、単純な血管増強はまず気管支軟骨輪間の気管支粘膜の中央に軟骨輪に平行して1本の太い血管があり、それから直角に多数の細い血管が分岐し軟骨輪上の粘膜下で隣接する血管と吻合した結果網目状にみえるのではないかと考察されている。この拡張血管は本来粘膜下で構成される血管が拡張したものでありその原因はリンパ節腫脹であると考えられる。走行が不整な血管増生は、サルコイド結節を中心に広がるものがほとんどであった。
サルコイドーシスにおける気管支粘膜血管所見のレビュー_e0156318_11491590.jpg
模式図にするとこのような感じだろうか。

2種類の血管、すなわち動脈系と静脈系にわけて論じた報告もある。すなわち気管支動脈系と気管支静脈系の2種類である。
小林英夫. サルコイドーシスと気管支鏡―実地的視点から―. 気管支学.2005;27:7-11
鮮紅色血管は、周囲に放射状に拡がりネットワークを形成しながら径が縮小していくものである。網目形成は分節的で、主気管支では3~4 軟骨輪程度の範囲に及び、新たなネットワークへ移行している。サルコイドーシスにおける多くの血管はこの分布パターンであり、気道への出現様式から気管支動脈由来と推定される。紫紅色でやや太く、上皮の不透明感を伴い、かつ軽度膨隆し網目形成が顕著でない血管も少数混在し、ネットワーク形成の高度な症例で観察され、気管支静脈系と思われる。


●結論
過去の報告を見る限りは、サルコイドーシスにおける気管支粘膜の血管増生は60~80%と頻度が高いものと推察される。この血管増生は、リンパ節腫脹の軽快によっても改善しないという報告もあるため、局所的リンパ節腫脹に由来するかどうかはまだ結論が出ていない。気管支粘膜の血管増生は、健常者とサルコイドーシス患者を含めて感度・特異度を算出するような試験を組まない限り、サルコイドーシス患者において血管増生が特異的な所見かどうかは断言できない。咳嗽などによっても血管増生は偽陽性所見を呈することがあるため、サルコイドーシスの診断をおこなう上で、参考所見程度にとどめておくほうが無難かもしれない。

文責"倉原優"

by otowelt | 2012-08-05 11:50 | レクチャー

胃内残存量が多いICU患者において経鼻十二指腸栄養は推奨されない

胃内残存量が多いICU患者において経鼻十二指腸栄養は推奨されない_e0156318_188960.jpg 経鼻十二指腸栄養をほぼルーチンでおこなっているICUもあるだろう。

Davies, Andrew R, et al.
A multicenter, randomized controlled trial comparing early nasojejunal with nasogastric nutrition in critical illness
Critical Care Medicine: August 2012 - Volume 40 - Issue 8 - p 2342–2348


背景:
 経鼻十二指腸栄養は、ICUの患者においてより安全に栄養供給が経腸で可能とあるため近年その有効性が報告されている(Crit Care Med 2000; 28:2217–2223)。特に、胃の運動が低下したような患者においては胃内容量の減少の観点から安全性も報告されている(J Trauma 2001; 51:1075–1082、Crit Care Med 2002; 30:586–590)。

目的:
 現行のガイドラインでは、重症成人患者における経腸栄養は推奨されているが、胃の運動不良を起こす患者をときに経験することがある。われわれは、こういった患者において早期の経鼻十二指腸栄養が経腸栄養におけるエネルギー供給効率を高めることができるかどうか検証した。

デザイン:
 プロスペクティブランダム化比較試験

セッティング:
 オーストラリア17施設の外科内科ICU

患者:
 181人の人工呼吸器装着患者でICU入室から72時間以内に胃内残存量が増加している18歳以上の患者を対象とする。

介入:
 患者はランダムに早期経鼻十二指腸栄養と経鼻胃管に割りつけられた。

結果:
 プライマリアウトカムは、経腸栄養としての標準化推定エネルギー必要量の割合とした。セカンダリアウトカムはVAPの頻度、消化管出血、院内死亡率とした。
 92人の患者が早期経鼻十二指腸栄養、89人が経鼻胃管をおこなわれた。ベースラインの患者特性に差はみられなかった。経鼻十二指腸チューブ留置は、中央値15時間(IQR 7-32)後に79人(87%)の患者に留置できた。目標エネルギーを経腸栄養によって達成できた比率は、経鼻十二指腸栄養で72%、経鼻胃管で71%であった(mean difference 1%, 95% CI −3% to 5%, p = .66)。
胃内残存量が多いICU患者において経鼻十二指腸栄養は推奨されない_e0156318_185168.jpg

 VAPの比率(20% vs. 21%, p = .94)、嘔吐、誤嚥、下痢、死亡率については両群ともに差はみられなかった。重大ではないが微小な消化管出血は早期経鼻十二指腸栄養群において有意に認められた(12 [13%] vs. 3 [3%], p = .02)。

結論:
 人工呼吸器装着患者において胃管からの栄養によって胃内残存量が多くなるような場合、早期に十二指腸へ留置をおこなってもエネルギー効率に差はみられず、肺炎の頻度を減らすものでもない。また、微小な消化管出血のリスクを増加させる。こういった患者においてルーチンの経鼻十二指腸栄養はすすめられない。

by otowelt | 2012-08-04 17:37 | 集中治療

pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)12例の臨床・画像・病理学的特徴

 網谷先生が最初に報告した(Amitani R, et al. [Idiopathic pulmonary upper lobe
fibrosis (IPUF)]. Kokyu 1992; 11: 693–699.)ということで、pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)は網谷病とも呼ばれるが、純粋な網谷病と差異があるため、PPFEと同一のものかどうかは議論の余地があるところである。
 

Taryn L. Reddy, et al.
Pleuroparenchymal fibroelastosis: a spectrum of histopathological and imaging phenotypes
ERJ August 1, 2012 vol. 40 no. 2 377-385


背景:
 pleuroparenchymal fibroelastosis (PPFE)は、上葉優位の胸膜と隣接肺実質の線維化をきたすまれな病態であり、後者は肺胞内に肺胞隔壁の弾性化を伴うものである。

方法:
 このスタディの目的は、画像および組織学的診断基準をみたす症例をレビューしたものであり、共通する臨床的特徴を同定した。
 Royal Brompton and Harefield NHS Foundation Trust(London, UK)のアーカイブから2人の病理医(A.G. Nicholson and J. von der Thusen)によってPPFEの選出が行われた。病理学的に確定的PPFEは、上葉優位の胸膜線維化と隣接した肺胞内に線維化がみられ肺胞隔壁の弾性化を伴うもの、とした。
 HRCTは2人の医師によって読影され(D.M. Hansell andT.L. Reddy)、PPFEの確定例は上葉優位に胸膜肥厚を伴う胸膜直下の繊維化がみられ、下葉には明らかな変化が乏しいあるいは無いもの、とした。

結果:
 12患者(7人が女性、年齢中央値57歳)のうち、訴えた症状は呼吸困難(12人中11人)、乾性咳嗽(12人中6人)であった。7人の患者は、疾患経過中に再発性の感染症がみられた。5人は非特異的に自己抗体が陽性であった。2人の患者は間質性肺疾患(ILD)の家族歴があった。
 HRCTの特徴として、pleuroparenchymal changeのある部位から離れた肺病変は12人中6人にみられた(線維化の共存:5人、気管支拡張症:1人)。
pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)12例の臨床・画像・病理学的特徴_e0156318_9345917.jpg

 下葉から生検組織が採取された7人の患者のうち、4人がPPFEの変化がかなり少ないものであり(1人は過敏性肺炎の特徴があった)、3人はUIPパターンであった。
pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)12例の臨床・画像・病理学的特徴_e0156318_9351153.jpg

 治療はステロイド治療や免疫抑制剤、Nアセチルシステインなどが使用されていた。
pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)12例の臨床・画像・病理学的特徴_e0156318_93934100.jpg
 ▲65歳男性のPPFE

結論:
 PPFEは、臨床病理学的に明確な疾患概念であり、再発性の肺感染症と相関のあるものである。遺伝的および自己免疫的機序はこれらの変化に寄与すうrかもしれない。PPFEは過去に報告されているよりもより広汎に病変がみられ、異なる間質性肺疾患パターンを混在しうる。

by otowelt | 2012-08-02 06:33 | びまん性肺疾患

肺外結核におけるXpert MTB/RIFは良好な診断能

当院でも臨床試験でXpertを使用している。ERJより、肺外結核におけるXpertの話題。

Enrico Tortoli, et al.
Clinical validation of Xpert MTB/RIF for the diagnosis of extrapulmonary tuberculosis
ERJ August 1, 2012 vol. 40 no. 2 442-447


背景:
 肺外結核:Extrapulmonary tuberculosis (EPTB)は、結核の20%にもおよぶとされている。Xpert MTB/RIF (Xpert) (Cepheid, Sunnyvale, CA, USA)は自動増幅システムであり、肺結核の診断にいてその有用性が報告されている。
 参考:Rapid Molecular Detection of Tuberculosis and Rifampin Resistance. N Engl J Med 2010; 363:1005-1015
肺外結核におけるXpert MTB/RIFは良好な診断能_e0156318_9124695.jpg

 われわれは、EPTBにおけるXpertの診断パフォーマンスについて検証をおこなった。

方法:
 8つのイタリアにおける細菌検査室で実施した。5施設ではすでにルーチンにXpertを業務で使用しており、3つは従来の標準検査に加えてXpertを使用するよう指示した。
 われわれは、連続した肺外検体(1,476検体、1,068患者)を小児成人問わずに解析した。小児は1476検体のうち494検体であった。
 全検体において、抗酸菌塗抹検査(auramine-rhodamine staining)、固形培地での培養検査(Lowenstein-Jensen)、液体培地での培養検査(MGIT 960; Becton Dickinson Biosciences, Sparks,MD, USA)をおこなった。

結果:
 標準的な培養と臨床結核診断の組み合わせと比較すると、Xpertにおける感度・特異度はそれぞれ81.3%、99.8%であった。一方で顕微鏡での感度は48%であった。
 生検検体、尿、膿、髄液における感度は85%を超えており、胃液は80%をわずかに下回った。その反対に、空洞液は感度50%におよばなかった。小児検体において高い感度特異度が観察された(86.9% and 99.7%, respectively)。
肺外結核におけるXpert MTB/RIFは良好な診断能_e0156318_14102424.jpg

結論:
 EPTBの微生物学的診断における根幹はやはり培養であろうと思われるが、Xpertの感度は高く塗抹顕微鏡よりも良い選択肢となるであろう。疾患を否定する能力としては準最適的であろう。

by otowelt | 2012-08-01 14:11 | 抗酸菌感染症

結核性大動脈炎の1例

Mei-Mei Lin, et al.
Images in Cardiovascular Medicine: Tuberculous Aortitis
Intern Med 51: 1983-1985, 2012


 25歳の肺結核の女性が、結核治療中に二次性高血圧を起こして結核性大動脈炎をきたした1例がInternal Medicineに報告されていた。バイパスグラフトを用いて外科手術を受けている。大動脈狭窄のMRAが掲載されているが、できれば大動脈の病理所見もほしかった。

 結核性大動脈炎は、隣接組織からの直接浸潤や遠隔病巣からの血行性の機序が考えられているが、きわめてまれな結核の1つである。一般的には大動脈瘤のような形態をとり、重度の場合にはそれが穿孔することもある。胸部と腹部大動脈のいずれにも起こり得るとされている。
・Kontogiannis V, et al.Papulonecrotic tuberculide and stenosis of the abdominal aorta. Rheumatology (Oxford, England) 39: 205-208, 2000.
・Bukhary ZA, et al. Tuberculous aortitis. Ann Saudi Med 26: 56-58, 2006.

 症状としては高血圧がもっともよくみられるものである。これは腎動脈や大動脈の狭窄によるものである。
Gajaraj A, et al. Tuberculous aortoarteritis. Clin Radiol 32:461-466, 1981.

by otowelt | 2012-08-01 09:02 | 抗酸菌感染症