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PETTS試験:セカンドライン抗結核薬は、同耐性およびXDR-TBのリスクを上昇

e0156318_9331615.jpg 連続ですが、LancetからXDR-TBの話題です。

Tracy Dalton, et al.
Prevalence of and risk factors for resistance to second-line drugs in people with multidrug-resistant tuberculosis in eight countries: a prospective cohort study
Lancet 2012; 380: 1406–17


背景:
 超多剤耐性結核(XDR-TB)は、セカンドライン抗結核薬を多剤耐性結核(MDR-TB)に使用することでその頻度が増えている。われわれは、8か国においてセカンドライン抗結核薬の使用が耐性に影響を与えるかどうか、the Preserving Eff ective TB Treatment Study (PETTS)試験においてプロスペクティブに検証した。

方法:
 2005年1月1日から2008年12月31日までの間、われわれは連続した成人MDR-TB患者をセカンドライン抗結核薬開始時点で登録した。実施国は、エストニア、ラトビア、ペルー、フィリピン、ロシア、南アフリカ、韓国、タイ。薬剤感受性テストは、11のファーストライン抗結核薬とセカンドライン抗結核薬に実施された。感受性についてはCDCで集約しておこなった。Middlebrook 7H10 agar (BD)を用いて比率法で測定した(イソニアジド 0.2 μg/mL、リファンピシン1.0 μg/mL、エサンブトール5.0 μg/mL、ストレプトマイシン2.0 μg/mL、オフロキサシン2.0 μg/mL、シプロフロキサシン2.0 μg/mL、カナマイシン5.0 μg/mL、カプレオマイシン10.0 μg/mL、アミカシン4.0 μg/mL、PAS2.0 μg/mL、エチオナミド10.0 μg/mL)。
 われわれは、セカンドライン抗結核薬に対する耐性とXDR-TBのリスク因子を同定するために、臨床的および疫学的データの結果を比較した。

結果:
 3034人の登録者のうち、エストニア46人、ラトビア100人、ペルー177人、フィリピン397人、ロシア115人、南アフリカ293人、韓国99人、タイ51人の合計1278人が適格基準を満たした。これら1278人の患者のうち、43.7%が少なくとも1つのセカンドライン抗結核薬に耐性(ただし国間差があり、タイでは33.3%、ラトビアでは62.0%)、20.0%に少なくとも1つのセカンドライン注射薬の耐性、12.9%に少なくとも1つのフルオロキノロン耐性がみられ、6.7%がXDR-TBであった。
 セカンドライン抗結核薬の治療歴は、これら薬剤の耐性リスク因子であった。
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 また、セカンドライン抗結核薬の治療歴は、XDR-TBリスクを4倍に上昇させた。
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 フルオロキノロン耐性とXDR-TBは男性よりも女性に多かった。失業者、アルコール中毒、喫煙者は、セカンドライン注射薬の耐性に関連していた。他のリスクファクターについては薬剤・国間で差はみられなかった。

limitatinos:
・国がバラバラなので、オリジナルデータそのものに地域差があること
・診療録の抜粋であるため、データに抜けがある可能性があること
・CDCで集約して薬剤感受性検査は行っているが、国ごとのベースラインの検査の差は細かく補足できていない

結論:
 セカンドライン抗結核薬による治療歴は、これらの耐性に強く関連しており、XDR-TBリスクを上昇させた。

by otowelt | 2012-10-24 05:31 | 抗酸菌感染症

XDR-TBへの追加耐性はアウトカム不良と関連

 呼吸器内科医や感染症科医の若い先生は、結核症例をたくさん経験することが必要です。しかし、結核病棟がない病院で治療できるのは結核性胸膜炎の患者さんばかりですので、どうしても他の呼吸器内科医や感染症科医におくれをとってしまいます。若い時期は、頑張って結核患者さんを何人も経験しておくことをおすすめします。将来どこの病院に行っても、結核診療が役に立つことは間違いありません。
 耐性結核の論文を読むとき、セカンドラインとかグループ3とかいろいろなカテゴリーが出てくるので、ややこしいなぁと思ったことは結核診療をしている医師の誰しもが経験したことがあるかと思います。少しおさらいをしてみます。WHOが定めている結核薬のグループは以下の通りです。

●ファーストライン抗結核薬
 グループ1 – イソニアジド、リファンピシン、エサンブトール、ピラジナミド
 ※ストレプトマイシンはファーストラインから外されました。
●セカンドライン抗結核薬
 グループ2 - 注射製剤:カナマイシン、アミカシン、カプレオマイシン、ストレプトマイシン、エンビオマイシン
 グループ3 - フルオロキノロン:シプロフロキサシン、レボフロキサシン、モキシフロキサシン、オフロキサシン
 グループ4 - 経口静菌性抗菌薬:エチオナミド、サイクロセリン、パラアミノサリチル酸(PAS)、プロチオナミド、テリザドン
●サードライン抗結核薬
 グループ5 – クロファジミン、リネゾリド、アモキシシリン/クラブラン酸、イミペネム/シラスタチン、チオアセタゾン、高用量イソニアジド、クラリスロマイシン
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 耐性結核は人が作り出したものです(man-made disease)。患者が服薬を忘れたり、不適切な結核治療を医師がおこなったか、のいずれかの産物であると言われています。XDR-TBの上にXXDR-TBなんて言葉も最近は出てきています。XXDR-TBは、ファーストラインとセカンドラインすべてに耐性の結核のことを指しますが、もうここまで来ると専門家に関係なく医学的に手出ししにくいのが現状です。
Migliori GB, et al.First tuberculosis cases in Italy resistant to all tested drugs. Euro Surveill 2007;12(5):E070517.1.

 前置きが長くなりましたが、ERJからXDR-TBの論文です。

G.B. Migliori, et al.
Drug resistance beyond XDR-TB: results from a large individual patient data meta-analysis
ERJ Published online before print October 11, 2012


背景:
 WHOのStop TB Partnershipは、多剤耐性結核(MDR-TB)に対して、セカンドライン抗結核薬であるカナマイシン、カプレオマイシン、フルオロキノロン、エチオナミド、サイクロセリン、PASなどの抗結核薬を使用してきた。MDR-TBのうち、主要セカンドライン6剤中3剤以上に耐性を示す結核を超多剤耐性結核(XDR-TB)と定義した。
 XDR-TBにさらなる耐性がみられる場合、患者アウトカムを悪化させるかどうかわかっていない。このスタディはXDR-TB患者の治療アウトカムを追加的耐性の有無によって比較することとした。

方法:
 XDR-TB患者アウトカムがメタアナリシスに組み込まれた。XDR-TB単独の場合、XDR+注射セカンドライン薬(カプレオマイシン、カナマイシン/アミカシン)2種類に耐性(XDR+2sli)、XDR+注射セカンドライン耐性(sli)+group 4(G4)が1剤以上耐性(たとえば、エチオナミド、サイクロセリン、PAS)(XDR+sliG4)、XDR+sli+G4+EBあるいはPZA耐性の群(XDR+sliG4EZ)に分けた。

結果:
 9898人のMDR-TB患者コホートのうち、405人がXDR-TBであった。そのうち、301人がXDR単独、68人がXDR+2sli、48人がXDR+sliG4、42人がXDR+sliG4EZであった。HIV共感染は多くなかった。
 治療成功率はXDR単独(43%)、他のXDR-TBではXDR+2sliが30%, XDR+sliG4が34%,XDR+sliG4EZが14%であった。
 多変量解析において、治療成功のオッズ比はXDR単独と比較するとXDR+2sliで有意に低かった(補正OR: 0.4; 95%CI 0.2-0.8)。一方で治療失敗+死亡のオッズ比はXDR患者すべてにおいて高く、追加的耐性はそのリスクを上昇させた(補正OR range: 2.6-2.8)。
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結論:
 XDR-TBに追加的耐性のある患者はよりアウトカム不良と関連していた。


 私もMDR-TBを豊富に経験しているわけではありませんが、MDR-TB治療の根幹は、ファーストライン、フルオロキノロン、注射製剤(アミカシン、ストレプトマイシン、カナマイシン)の3種類がまず使えることが重要になります。XDR-TBなどの場合や、これらが医学的理由で全てが使用できない場合、経口セカンドラインであるサイクロセリン、エチオナミド、PASが追加候補として選ばれます。この段階で合計4剤以上導入されていることが望ましいとされています。プロチオナミドやテリザドンといったセカンドラインは日本では使用されていません。これらではレジメン構築ができない場合、サードライン治療薬が導入されます。すなわち、クロファジミン、リネゾリド、アモキシシリン/クラブラン酸、イミペネム、クラリスロマイシンといった薬剤です。サードラインの中では結核に対してはリネゾリドが世界的にも使用頻度が多いと思います。
 International Standards for Tuberculosis Care (ISTC)が教育しているものが若手医師にはわかりやすい戦略だと思います。
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by otowelt | 2012-10-23 06:52 | 抗酸菌感染症

CURB65が2点以上の市中肺炎で、βラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用は死亡率減少に寄与

Chamira Rodrigo, et al.
Single versus combination antibiotic therapy in adults hospitalised with community acquired pneumonia
Thorax Online First, published on October 16, 2012 as 10.1136/thoraxjnl-2012-202296


背景:
 βラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用がβラクタム系抗菌薬単独に比べて利益があるかどうか、重症度に応じた入院市中肺炎との相関は明らかでない。

方法:
 われわれはイングランドおよびウェールズにおける72の二次医療機関から紹介となった5240人の成人入院市中肺炎患者を調べた。
 適格基準は、16歳以上の患者、胸部レントゲンで新たな陰影がみられ市中肺炎に矛盾しない所見、下気道感染症状があるもの、市中肺炎に対して治療がおこなわれたものとした。10日以内に病院を退院した患者は除外された。抗菌薬のうち、βラクタム系およびマクロライドを使用した患者を登録した。そのため、フルオロキノロンなどの他系統の抗菌薬曝露があるケースは除外された。
 プライマリアウトカムは30日入院死亡率とした。セカンダリアウトカムは在院日数、ICU入室、人工呼吸器装着必要性、血管作動薬必要性、死亡までの期間、30日再入院率とした。解析はSPSS V.20.0を使用。重症度分類はCURB65を使用した。

結果:
 処方されたβラクタム系抗菌薬の頻度は以下の通りであった:co-amoxiclav(42.7%), amoxicillin (23.3%), benzylpenicillin(17.6%), piperacillin with tazobactam (12.8%) 、cephalosporins
(3.6%)。抗菌薬併用は3239人(61.8%)の患者でおこなわれた。併用されたマクロライドは、clarithromycin(96.1%), erythromycin (3.7%) 、azithromycin(0.2%)であった。
 抗菌薬併用を受けた患者は有意に若かった(年齢中央値73歳(IQR 56–84) vs 76歳 (IQR59–85), p=0.001)。
 30日院内死亡率は24.4%であった。単変量解析では併用群の30日死亡率が低かった(23.0% vs 26.8%; OR 0.81,95% CI 0.72 to 0.93, p=0.001)。同様に多変量モデルにおいて、併用群では中等度から重症の市中肺炎患者(CURB65=2、補正OR 0.54,95% CI 0.41 to 0.72)、超重症市中肺炎患者(CURB65≧3、補正OR0.76, 95% CI 0.60 to 0.96)において有意に30日院内死亡率が少なかった。
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limitations:
・抗菌薬治療期間のデータや、ほかの抗菌薬の考察はできていない
・ICU入室については閾値が高くバイアスとなっている可能性がある

結論:
 CURB65が2点以上の入院市中肺炎におけるβラクタム系抗菌薬とマクロライド系抗菌薬の併用は院内死亡率を減少させる。

by otowelt | 2012-10-23 00:47 | 感染症全般

なぜ呼吸困難のスケールがこれほどややこしいのか

 呼吸困難感とは呼吸努力を増加させる必要性(呼吸努力感)や呼吸時の不快感を自覚することです。呼吸苦と呼吸困難、これらの用語の使い方にはスタッフによって持論があるとは思いますが、今回の本題はそこではありません。
Meakins JC : Dyspnea. JAMA 103 : 1442- 1445, 1934.

 息切れ・呼吸困難の評価としては、修正Borgスケール、VAS(Visual Analogue Scale)、NRS(Numerical Rating Scale)、Fletcher-Hugh- Jones(F-H-J)分類、MRC息切れスケール(British Medical Research Council)などが使用されていますが、なぜこれほどたくさん呼吸困難のスケールがあるのでしょう。これでは、臨床現場では混乱してしまいますよね。ちなみに世界的にはMRC息切れスケールがよく使われています。

 まず、それぞれの呼吸困難スケールを1つずつみていきましょう。前者の3つ、修正Borgスケール、VAS、NRSは、直接的評価です。すなわち直接患者が呼吸困難を評価するスケールになります。そのため、6分間歩行試験などの運動負荷試験、運動療法における呼吸困難の評価に有用とされています。“修正”Borgsスケールとよく書いていますが、Gunnar Borg医師はもともと主観的運動強度 Ratings of perceived exertion (RPE)の評価のために、スケールを提唱しました。1986年にアメリカスポーツ医学会は臨床応用に際して、カテゴリー比スケールとしてCR10スケール、すなわち修正Borgスケールを提唱しました。それが現在使用されているスケールになります。
BORG, G. Psychophysical bases of perceived exertion. Medicine and Science in Sports and Exercise, 14: 377-81, 1982.

 修正Borgスケールの特徴はポイント4がポイント2の2倍、ポイント8はポイント4の2倍といった強度評価が可能な点にあります。一方NRSとVASは見たままの通りの評価です。一見よく似ていますが、電話や口頭での調査も可能なので、VASよりも記録しやすいという利点があります。
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 後者の2つ、F-H-J分類MRC息切れスケールは、間接的評価です。すなわち、問診などで医療スタッフが評価するスケールです。そのため、リハビリテーションの効果判定には適しません。
 
 F-H-J分類を見て、誰もが一度は思ったはずです。「100mしか歩けない患者さんは、どの分類に入るんだろう?」と。このF-H-J分類、最初のフレッチャー(Fletcher)を飛ばして読む人が多いと思いますが、そもそもこの分類を提唱したのはFletcher医師です。彼はイギリスMRCの委員長でもありました。Hugh-Jones先生はそれを紹介した医師ですので、二人は別々の医師であることを知っておく必要があるでしょう。日本呼吸器学会のガイドラインに記載されているようにF-H-J、と全部ハイフンでつなぐのは正式には誤った記載です。ちなみに、どちらも名字です。Hugh-Jonesまでが名字です。
・Fletcher CM. The clinical diagnosis of pulmonary emphysema ; an experimental study. Proc Royal Soc Med 45 : 577―584,1952.
・Hugh-Jones P, Lambert AV. A simple standard exercise test and its use for measuring exertion dyspnoea. Brit Med J 1:65―71,1951.
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 そして、Fletcherらが使っていた分類をもとに作られたイギリスMRC (British Medical Research Council)息切れスケールの 使用が推奨されるようになりました。すなわち、F-H-J分類は消え去りました。MRCは改訂がいろいろ加えられ、混沌としてしまいました。そのためMRC息切れスケールは、国によって全く異なるものになってしまいました。文献によっては"modified"がついているものやついていないものもバラバラで、定義も一定していません。日本のMRC息切れスケールの場合、表にあるようにGrade0からGrade5までの6段階になっています。
Hughes JMB, Pride NB, ed. Lung Function Tests : Physiological Principles and Clinical Applications. UK : Saunders, 1999.

 しかしながら、イギリスやATS/ERSは日本のMRC息切れスケールとは少々ことなります。日本のGrade 1~5 とイギリス版のGrade 1~5はほぼ同じですが、イギリスの場合Grade0がありません。またこれらGrade1~5は、ATS/ERS版ではGrade 0~4に相当します。書いていても分からないくらい、ややこしいこと極まりありません。「First floor」という英単語が、イギリスでは2階、アメリカでは1階を意味するのとよく似た現象ですね。

 日本のMRC息切れスケールの問題点は、多くの健常者がGrade0と1の両方に当てはまってしまうことです。激しい運動をして息切れを感じない人なんていません。イギリスやATS/ERSは、「激しい運動時を除き、息切れで困ることはない」というのが健常者の項目の記載ですが、これが正しい記載だと私も思います。そのため、日本のMRC息切れスケールのGrade0の存在意義は不明です。そのため、日本のMRC息切れスケールはどこの国においても通用しません。イギリスおよびATS/ERSのMRCのみが世界共通で通用します。日本のスケールはいまだに91.4メートルなんてややこしい数字を使っていますが、諸外国はめんどくさいのですでに100mに統一しています。

 ではなぜ日本にだけ、F-H-J分類を使っていたりMRC息切れスケールが遅れをとっているのでしょう。こればかりは、呼吸困難スケールを翻訳して臨床実用化に踏み切った方々の怠慢と言わざるを得ないと思います。しっかりとした翻訳と文献の読み込みができておれば、このような混乱は回避できたはずです。呼吸困難スケールは、呼吸器内科医にとっては大事なの1つでもあります。せめて世界標準くらいには追い付きたいものですね。
宮本顕二.  MRC 息切れスケールをめぐる混乱 ―いったいどのMRC 息切れスケールを使えばよいのか?―日呼吸会誌 46: 593-600,2008.



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by otowelt | 2012-10-22 00:58 | コントラバーシー

リスペリドンに効果のあるAlzheimer病患者では、その断薬が精神症状再発のリスクに関連

e0156318_21221396.jpg 認知症患者さんの精神症状へのリスペリドンの継続使用は、やむを得ない場合のみに行うべきであるというのがスタンダードです。ただ、少量のリスペリドンが明らかに認知症患者さんに利益をもたらすことがあるため、このスタディが組まれました。結果的には利益のある患者群がいるだろうと考えられます。

D.P. Devanand, et al.
Relapse Risk after Discontinuation of Risperidone in Alzheimer's Disease
N Engl J Med 2012; 367:1497-1507


背景:
 Alzheimer病で、精神症状あるいは興奮・攻撃性に対して抗精神病薬に効果のあった患者で、継続投薬の後に中止することでの症状が再発するかどうか、そのリスクはよくわかっていない。

方法:
 Alzheimer病患者において、精神症状あるいは興奮・攻撃性のある患者に、非盲検下でリスペリドンを16 週間投与。その折にリスペリドン療法に効果のあった患者を、続いて3種類のレジメンのいずれかに二重盲検下でランダムに割り付けた。
 グループ1:32週間のリスペリドン継続療法
 グループ2:16週間のリスペリドン療法後に16週間のプラセボ投与
 グループ3:32週間のプラセボ投与
プライマリアウトカムは、精神症状または興奮の再発までの期間とした。

結果:
 180人の患者に、非盲検下でリスペリドンを投与(平均用量0.97mg/日)。精神症状と興奮の重症度は低下したものの、錐体外路徴候に軽度の増加があった。
 112人が治療に効果があり、ランダム化フェーズへ移行できたのは110人であった。ランダム化の後最初の16週での再発率は、プラセボ投与群のほうがリスペリドン投与群よりも高かった(60% [24 of 40 patients in group 3] vs. 33% [23 of 70 in groups 1 and 2]; P=0.004; hazard ratio with placebo, 1.94; 95%CI, 1.09 to 3.45; P=0.02)。引き続く16週での再発率は、リスペリドンからプラセボに切り替えた群のほうがリスペリドン投与を継続した群よりも高いものであった(48% [13 of 27 patients in group 2] vs. 15% [2 of 13 in group 1]; P=0.02; hazard ratio, 4.88; 95% CI, 1.08 to 21.98; P=0.02)。
 ランダム化後の有害事象発生率と死亡率にそれぞれの群間で有意差はなかったが、特に最後の16週で比較対象となる患者数が少なかった。

結論:
 Alzheimer病患者において、精神症状または興奮に対し4~8ヶ月間のリスペリドン療法に効果があった場合、リスペリドンの中止は再発リスクの上昇に関連。

by otowelt | 2012-10-21 00:08 | 内科一般

結核患者さんの入院期間はなぜ”2ヶ月”なのか

e0156318_11343599.jpg 結核の患者さんは、基本的に周囲に感染性がないような場合に結核病棟から退院できます。当院の場合、基本的に「結核病棟への入院期間は2ヶ月くらいです」とお伝えすることが多いのですが、これにはいくつか理由があります(病院によっては1ヶ月あるいは3ヶ月と伝えているところもあるかもしれませんが)。最近他科の医師と話していたときに、この話題になったので少し書いてみました。

 画像は、満願寺の『地獄極楽変相之図』に書かれた、賽の河原です。親より早く死んだ子供たちが地獄の賽の河原で石を積み続けるのですが、鬼がこれを壊しにやって来ます。地蔵菩薩はそれに救いを与える存在です。この画像を使用した理由は後述致します。



●結核患者さんの退院基準の歴史
 日本はその昔喀痰培養検査で少なくとも2 回の陰性が確認できないと退院できないとしていましたが、これでは入院期間があまりに長くなってしまいます。2005年に結核病学会から、また2007年に私たちの機構から、喀痰塗抹検査が2回陰性なら退院可能とした新基準を提唱しました。これは、喀痰塗抹陰性が培養陰性と同レベルのものであることを重要視したものです。
・日本結核病学会治療・予防・社会保険合同委員会:結
核の入院と退院の基準に関する見解. 結核 80 :389-390, 2005.
・露口一成ら. 国立病院機構退院基準の実際と運用上における問題点. 第81回総会シンポジウム「肺結核患者の新退院基準」. 結核 82 :129-132, 2007.


 しかし厚生労働省は、同時期の2007年に新しい基準を打ち出したのです。これは喀痰の抗酸菌塗抹検査3回陰性という基準です。今は、その厚生労働省の基準が全国的に使用されています。この退院基準には「退院させなければならない基準」と「退院させることができる基準」の2種類あります。前者が適応されることは多くなく、ほとんどが後者の基準を用いて退院していきます。ややリスクを重視した保守的な基準でもあります。
厚生労働省健康局結核感染症課長:「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律における結核患者の入退院及び就業制限の取扱いについて」の一部改正について. 健感発第1001001号(平成19年10月1日)

 ●退院させなければならない基準
  ①病原体を保有していないこと又は、
  ②当該感染症の症状が消失したこと
   ・咳、発熱、結核菌を含む痰の症状が消失した場合

 ●退院させることができる基準
  以下の全てを満たした場合
  ①2週間以上の標準的化学療法が実施され、席、発熱、痰等の臨床症状が消失している。
  ②2週間以上の標準的化学療法を実施した後の異なった日の喀痰の塗沫検査又は培養検査の結果が連続して3回陰性である。
  ③患者が治療の継続及び感染拡大の防止の重要性を理解し、かつ、退院後の治療の継続及び他者への感染の防止が可能であると確認できている。


●「早い組」と「遅い組」
 もちろん喀痰の抗酸菌塗抹検査が最初から陰性ならすぐに退院できますが、そもそもそんな患者さんは結核病棟に入院しなくても外来で治療できます。結核病棟に入院される患者さんは、ほとんど全員が抗酸菌塗抹検査が陽性です。一方、結核の場合初回から培養陰性ということはまずありません。となると、ある程度の結核治療が入らないと塗抹も培養も陰性化することはありません。

 結核病棟の患者さんが退院する時期には「早い組」と「遅い組」があります。軽い病変の場合は前者、ひどい病変や高齢者の場合は後者になることが多いです。
・藤野忠彦ら. 結核入院期間を決定する要因に関する臨床疫学的研究. 結核 83:567-572, 2008.
・森田博紀. 当院における肺結核患者の退院決定の現状. 結核 85:787-790, 2010.


 「早い組」は、喀痰の抗酸菌塗抹検査が3回連続で陰性になることで退院できるケースです。結核治療を初めて、1ヶ月くらいで塗抹が陰性化します。当初2ヶ月と言われていた入院期間が早まるため、喜ぶ患者さんも多いです。しかし、塗抹陰性でも培養陰性まで確認しないと患者さんを受け入れないという規定の入所施設もありますし、多剤耐性結核の場合には塗抹が陰性でも培養を確認しないと退院は厳しいのが現状です。そのため、一概に塗抹が陰性であっても早い組とは限りません。

 「遅い組」は、抗酸菌培養が3回連続で陰性になることで退院できるケースです。この場合塗抹はまだ陽性のままですので、結核菌は、塗抹陽性・培養陰性の死菌になります。結核治療開始1ヶ月後あたりの喀痰の培養から陰性化しますので、2ヶ月目を過ぎたあたりに退院基準を満たします。遅い組の場合、結核診療に慣れておられない先生にその後の治療をお願いする折には、死菌についてお伝えする方が望ましいです。「喀痰塗抹が陽性でした!結核再発かもしれません!」と再度紹介になることがあるからです。

 以上の経緯から、結核患者さんの入院期間を2ヶ月くらいとお伝えしているのです。じゃあ、毎日喀痰検査して少しでも退院が早まる可能性を高くしたらいいんじゃないか、というアイディアも登場しますが、残念ながらそういうわけにはいきません。あまりに繰り返すと検痰の回数過多として査定の対象となります。施設にもよりますが、週に1回程度の喀痰スケジュールが一般的です。週に2回とることもありますが、それで査定されたことは個人的にはありません。


●2回陰性のリーチ
 ちなみに、喀痰の塗抹・培養の状況は患者さんに逐一お伝えしていますが、ノリのいい患者さんの場合(こう言うと語弊がありますが)、塗抹・培養が2回連続で陰性になると、「リーチがかかった!」と意気揚々とされることがあります。その後もう一度陽性が出てしまうと結核病棟の退院基準を満たせなくなるため、その落胆は大きいものです。そのため、リーチがかかった時は敢えて知らせないこともあります。厚生労働省の基準が出るまでは、2回陰性で退院が可能であるように基準を提唱していたくらいですから、2回陰性ならば医学的にはほとんど感染性はありません。ですが、現行の基準を遵守しなければならない状況では、塗抹2回陰性化後に再陽性化の事象はよく経験することです。18%の結核患者にこの事象がみられたという報告もあります。
市木拓ら. 肺結核治療中に喀痰塗抹2 回連続陰性化後に再陽性化がみられた症例の検討. 結核 87:537-540, 2012.

 現在の厚生労働省の退院基準を遵守する場合、このようにリーチ後にダメだった患者さんは、再び一から塗抹陰性結果を3回連続で積み上げていかなければならないノルマを背負います。これはまるで賽の河原の積み石のようだな、と思ったことが何度かあります。たかだか3回、されど3回。塗抹2回陰性化後の再陽性化は、患者さんにとって徒労感がやはり大きいものです。じゃあ結核患者さんの現行の退院基準は積み石を崩す”鬼”なのか、というとそこまで針小棒大に申し上げるつもりはありません。ただこういったことが、現在の結核病棟の入院長期化の原因となっているのは明白です。もちろん、相手は結核菌ですから何でもかんでも早く退院すればいいというものではありません。ただ現行の基準にはやはりいささか問題があるのは、結核を診療している現場の医師であればよくご存知のことと思います。いつかこの基準に、地蔵菩薩の救済があればよいなぁ、と思っています。

by otowelt | 2012-10-20 11:53 | レクチャー

TOPICAL試験:エルロチニブ開始から28日以内の皮疹はOS延長

e0156318_11294571.jpg呼吸器内科医の皆さんはご存じと思いますが、BR.21試験で発疹のGradeが上がれば上がるほど生存期間の中央値は延長することが示されています。これを再確認するような論文がLancet Oncologyから出ました。28日以内以降皮疹が出なければ逆に生存に不利益であるという内容もインパクトが強いものです。

Siow Ming Lee, et al.
First-line erlotinib in patients with advanced non-small-cell lung cancer unsuitable for chemotherapy (TOPICAL): a double-blind, placebo-controlled, phase 3 trial
The Lancet Oncology, Early Online Publication, 16 October 2012


背景:
 進行非小細胞肺癌(NSCLC)の多くの患者は、パフォーマンス・ステータスが不良であるか合併症があるために日々のケアを受けているだけである。われわれは、エルロチニブがこれらの患者の臨床アウトカムを改善させるかどうか調べた。

方法:
 TOPICAL試験は、ランダム化プラセボ対照第III相二重盲検試験であり、イギリス78の施設でおこなわれた。適格基準は、新規診断で病理学的にNSCLCであると診断された病期IIIあるいはIVの患者で、化学療法投与歴、脳転移症状がないもの、パフォーマンス・ステータスが2以上あるいは合併症の存在から化学療法の適応に無いと判断されたものとした。また、患者は予後が少なくとも8週を見込めるものとした。
 患者はランダムに1:1にプラセボ群とエルロチニブ群(150㎎/日)に割り付けられた。薬剤は、増悪がみられるか毒性が容認できないと判断されるまで続けられた。研究者、臨床医、患者はどちらの群に登録されたかわからないようにした。
 プライマリエンドポイントは、全生存期間(OS)とした。ITT解析がおこなわれ、サブグループ解析では治療開始28日以内のエルロチニブによる皮疹を含めた。

結果:
 2005年4月14日から2009年4月1日までの間、われわれはランダムに350人の患者をエルロチニブ群に、320人の患者をプラセボ群に割り付けた。2011年3月31日までフォローアップを続けた。657人が死亡し、OS中央値は両群に差はみられなかった(エルロチニブ 3.7ヶ月, 95% CI 3.2—4.2, vs プラセボ 3.6 months, 3.2—3.9; 非補正ハザード比[HR] 0.94, 95% CI 0.81—1.10, p=0.46)。エルロチニブ群の59%の患者(302人中178人)が1ヶ月時の皮疹の解析が可能であり、この皮疹についてはOSの独立因子であった。投与1ヶ月以内の皮疹が出た患者は、プラセボ群と比較してOSがよかった(HR 0.76, 95% CI 0.63—0.92, p=0.0058)。プラセボ群と比較すると、皮疹が1ヶ月以内にみられなかった患者はOSが不良であった(HR 1.30, 1.05—1.61, p=0.017)。Grade 3あるいは4の下痢はエルロチニブ群によくみられた(8% [28 of 334] vs 1% [four of 313], p=0.0001)。同様に、高度の皮疹(23% [79 of 334] vs 2% [five of 313], p<0·0001)もエルロチニブ群に多かった。そのほかの有害事象については両群で有意差はみられなかった。

結論:
 化学療法の適応にないと判断されたNSCLC患者ではエルロチニブ投与が可能である。投与開始から28日以内に皮疹が起こればエルロチニブの継続に妥当性があるが、一方で28日をこえても皮疹が出ない場合は生存に不利益があるためエルロチニブを続けるべきではないかもしれない。

by otowelt | 2012-10-18 11:30 | 肺癌・その他腫瘍

デング熱における経口ステロイドは合併症予防に効果なし

最近輸入感染症に罹患した患者さんの診断が遅れたため、個人的に勉強している領域だったので非常にタイムリーな論文でした。

Dong T. H. Tam,et al.
Effects of Short-Course Oral Corticosteroid Therapy in Early Dengue Infection in Vietnamese Patients: A Randomized, Placebo-Controlled Trial
Clinical Infectious Diseases 2012;55(9):1216–24


背景:
 デング熱の患者は血液量減少性ショック、血小板減少、出血を含む重篤な合併症を起こしうる。早期のステロイド治療が、こういった合併症を起こすことを予防できるかもしれないとされているが、ウイルス排泄を長期化させる恐れがある。まだ一定の見解はないのが現状である(Journal of Infection 2001;42:104―15.)。

方法:
 われわれは、ベトナムのホーチミンにおいて5-20歳の患者で発熱72時間以下であるデング熱の患者に対して、低用量経口ステロイド(0.5 mg/kg)あるいは高用量経口ステロイド(2 mg/kg)を3日間投与するランダム化プラセボ対照試験を実施した。これによって、ステロイド使用がウイルス血症の際にどのような潜在的弊害をもたらすか検証した。
 ただし、体重20kg未満、すでにデング熱の合併症を発症している患者、既往歴に重篤な合併症がある患者などは除外された。
 デング熱の合併症として認識されているものに加え、われわれはウイルス血症の経時的観察のAUC、ウイルス血症が陰性化するまでの日数、デングウイルス非構造タンパク1ステータスに焦点を当てた。

結果:
 2009年8月から2011年1月までの間、396人がスクリーニングされ、結果的に225人の参加者が1-3の治療群に割り付けられた。ベースラインの臨床的特徴については3群とも同等であった。全患者は全快し、有害事象はまれであった。ステロイド投与患者は高血糖がみられたが(P = .07, trend test)、どの治療群においても臨床的、血液学的、ウイルス学的エンドポイントに相関がみられなかった。
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結論:
 経口プレドニゾロンを早期デング熱患者に用いても、ウイルス血症の延長や有害事象に関連はみられなかった。効果を解析するには至らなかったものの、ショックやその他の合併症の軽減も観察されなかった。

by otowelt | 2012-10-18 05:46 | 感染症全般

メタアナリシス:スピリーバ・レスピマットは総死亡・心血管系死亡リスクを有意に上昇

呼吸器内科医なら誰でもショックを受けたであろう、スピリーバ・レスピマットの死亡率上昇の論文は記憶に新しいです。このBMJのスタディでは、プラセボと比較して総死亡(リスク比1.52;95% CI 1.06 to 2.16)、心血管系による死亡(リスク比 2.05;95% CI 1.06 to 3.99)のリスク上昇が確認されました。
Singh S, et al. Mortality associated with tiotropium mist inhaler
in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and
meta-analysis of randomized controlled trials. BMJ 2011;342:d3215.


予想はしていましたが、Thoraxからメタアナリシスが出てしまいました。COPDを診療されている呼吸器内科医は必読です。

Yaa-Hui Dong, et al.
Comparative safety of inhaled medications in patients with chronic obstructive pulmonary disease: systematic review and mixed treatment comparison meta-analysis of randomised controlled trials
Thorax Online First, published on October 6, 2012 as 10.1136/thoraxjnl-2012-201926


背景:
 COPD患者における吸入治療の比較安全性情報は限られてる。われわれは、総死亡および心血管系による死亡をCOPDに対する吸入治療を受けている患者で比較を行った。

方法:
 システマティックデータベース検索(MEDLINE, CINAHL, Cochrane Library and ClinicalTrials.gov)により、チオトロピウムSoft Mist Inhaler(レスピマット製剤)(Boehringer Ingelheim,Ingelheim am Rhein, Germany)、チオトロピウムハンディヘラー、長時間作用型β2刺激薬(LABAs)、吸入ステロイド(ICS)、LABA-ICS合剤を少なくとも6ヶ月治療おこなったランダム化比較試験を登録した。全ての試験は、総死亡および心血管系死亡の情報を掲載しているものとした。非英語文献、喘息合併例、プロトコルのみongoingの試験は除外された。
 プライマリアウトカムは総死亡、セカンダリアウトカムは心血管系による死亡とした。
 2人の研究者(薬剤師1人、医師1人)によって上記手法によりランダム化比較試験を抽出。直接比較およびMTCによるメタアナリシスを施行した(STATA V.9.0 (StataCorp) 、WinBUGS V.1.4.3 (MRC Biostatistics Unit, Cambridge, UK))

結果:
 42試験、52516人の患者が総死亡の情報を有し、31試験が心血管系による死亡の情報を有していた。24試験が適切な手法によるランダム化試験であると判定された。総死亡におけるチオトロピウム・ハンディヘラーとLABAの比較(I2=59.4%)を除いて、統計学的異質性は最小限であった。
 固定効果モデルでのMTCメタアナリシスでチオトロピウムSoft Mist Inhaler(レスピマット製剤)はプラセボと比較して有意に総死亡と相関がみられた(OR 1.51; 95% CI 1.06 to 2.19)。また、ハンディヘラーとの比較(OR 1.65; 95% CI 1.13 to 2.43)、LABAとの比較(OR 1.63; 95% CI 1.10 to 2.44)、LABA-ICS合剤との比較(OR1.90; 95% CI 1.28 to 2.86)においても、レスピマット製剤の有意な死亡リスクが認められた。
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 このリスク上昇は心血管系死亡と強く相関しており、重症のCOPD患者やチオトロピウム使用量の多い患者によくみられた。probabilityはレスピマット製剤で総死亡8%、心血管系死亡3.5%。
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 LABA-ICS合剤は、全治療群の中で死亡リスクが最も低かった。超過リスクは、ハンディヘラーとLABAではみられなかった。この結果は、MTCおよび直接比較のメタアナリシス双方で同等であった。
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ディスカッション:
 レスピマット製剤の問題点は、その曝露濃度がハンディヘラ―に比べて高く、全身への影響が大きくなることではないかと思われる(Respir Med 2009;103:22-9.)。しかしながら、この全身的影響については日本の試験では認められなかった(Respir Med 2010;104:228-36.)。そのほかの可能性として、レスピマット製剤が不整脈を惹起あるいは悪化させる可能性が指摘されている。

結論:
 このスタディによって、吸入治療の比較安全性スペクトラムを提示した。チオトロピウムSoft Mist Inhaler (レスピマット製剤)は、死亡率上昇に関連するため警告を発すべきである。

by otowelt | 2012-10-17 16:00 | 気管支喘息・COPD

転移性心臓腫瘍

昨日、転移性心臓腫瘍の患者さんがおられたので、少し調べてメモ書きにしてみました。心嚢水貯留があったり、心膜肥厚のある心外膜転移の患者さんは何人か診察したことがありますが、内側の転移性心臓腫瘍の患者さんは2人しか診たことがありません。

●概要
転移性心臓腫瘍は、癌患者の剖検例で7.1%(2.7-14%)、全剖検例の2.3%(0.7-3.5%)で発見されると報告されている。
Al-Mamgani A, et al. Cardiac metastases. Int J Clin Oncol 13: 369-372, 2008.
1960年の古い報告では、癌患者さんの18.3%にみられるという報告もある。
Hanfling SM. Metastatic cancer to the heart. Review of the literature and report of 127 cases. Circulation 1960;22:474–83.
転移性心臓腫瘍の原発巣として頻度が高い腫瘍は、肺癌、血液悪性腫瘍、乳癌、悪性黒色腫とされている。直接浸潤、リンパ行性転移、血行性転移のいずれもが心臓転移の経路として考えられている。原発性心臓腫瘍は男性のほうが多いとされているが、転移性心臓腫瘍は性差がみられない。また、64歳未満と85歳以上で分けた場合、若年のほうが心臓転移が多いとされている。
Bussani R, et al. Cardiac metastases. J Clin Pathol 60: 27-34, 2007.
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●症状
転移性心臓腫瘍の多くは無症状であり、生存中に診断されることは少ない。心臓の転移部位は、心外膜、心筋への転移が多く心内膜側への転移は少ないとされている。1998年の報告では、心膜19%、心外膜33%、心筋42%、心内膜6%という報告がある。基本的には心室に多く、右側に多い傾向がある。
Mukai K, et al. The incidence of secondary tuors of the heart and pericardium. Jpn J Clin Oncol 18: 195-201, 1998.
もっとも多くみられる症状は、心嚢水貯留による症状である。心嚢水は血性であることが一般的である。心室頻拍や心房細動・粗動が起こりうるが、刺激伝導系を障害した場合除脈性不整脈も起こりうるとされている。これらの早期発見には心電図の変化が最も重要である。
・Wolver S, Franklin RW, Abbate A. ST-segment elevation and new right-bundle
branch block: broadening the differential diagnosis. Int J Cardiol. 2007 Jan 8;114(2):247-8

・Cates CU, Virmani R, Vaughn WK, et al. Electrocardiographic markers of cardiac metastasis. Am Heart J 1986;112:1297–303.
まれではあるが、心筋梗塞で発症することもある。これは腫瘍塞栓であることもあれば、冠動脈に腫瘍が浸潤して物理的に閉塞することもある。

●治療
転移性心臓腫瘍は、どの癌であってもおそらく進行期であるため外科的な処置は困難である。心臓単独の転移であったとしてもこの病巣を外科的に切除することはきわめて困難であり心内膜側のみに転移した場合だけが手術適応になる。
Koizumi J, et al. Solitary cardiac metastasis of rectal adenocarcinoma. Jpn J Thorac Cardiovasc Surg 51:330-332, 2003.

by otowelt | 2012-10-17 11:28 | 肺癌・その他腫瘍