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Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast

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 Henry Khunrath Pancoastは1875年2月26日にフィラデルフィアで生まれました。父親が内科医師をしており、幼い頃から医師に対して憧れのようなものを感じていたといいます。1982年にFriends Central 高校を卒業しました。しかし同時期に両親を両方とも亡くし、銀行窓口業務を2年間行い大学資金を作ることになりました。そして、やや周りから遅れて1894年にペンシルヴァニア州立大学医学部に入学しました。1898年に同大学を優秀な成績で卒業しています。

 彼はペンシルヴァニア州立大学病院に勤務し、外科講座で1900年から主に外科手術について学び始めました。しかしながら、院内ではほぼ麻酔科医としての勤務で外勤もかなり限られた診療ばかりをしていたといいます。そんな矢先、1902年に病院にいたレントゲン医師であるLeonardが退職しました。当時外科部門の中に放射線科が存在していたため、誰かがこの業務を引き継ぐ必要がありました。外科部長の命により、結果的にPancoastはこの任に就くことになります。しかしそれは同時に彼にとっては何かを変えるチャンスでもありました。

 彼の活躍により放射線科は一躍有名となりました。当時、放射線科というのは診療科単一として認識されているものではなく、あくまで診断に必要な検査としての付加的な位置付けだったのです。「この病院は当科がないと成り立ちません、他の診療科と同じように必須の診療科です」と彼はのちに述べています。彼は、放射線科の診療科としての確立に奮闘しました。1903年には患者数も伸び、1904年にようやくペンシルヴァニア州立大学で診療科として独立することができました。劣悪であった職場環境が一気に改善することになりました。彼は、主に放射線治療分野での研究を重ね、1911年にペンシルヴァニア州立大学放射線科教授になりました。こうしてPancoastは、アメリカ合衆国で最初の放射線科教授として名を馳せたのです。

 1932年に肺尖部の肺癌を報告しました。これが今にPancoast腫瘍として名を残す論文です。そして、7年後の1939年5月20日にペンシルヴァニア州メリオンにて逝去しました。
Pancoast HK. Superior pulmonary sulcus tumour: tumour characterized by pain, Horner’s syndrome, destruction of bone and atrophy of hand muscles. JAMA 1932;99:1391-6.

 Pancoast腫瘍は、肺尖部に発生して胸壁へ浸潤する腫瘍を総称するものですが、広義解釈として、Pancoast症候群は、腫瘍によって尺骨神経支配の上肢の疼痛や同側のHorner症候群をきたすものと理解されています。
 Detterbeckらにより、厳密なPancoast腫瘍の定義がなされています。「Pancoast腫瘍は肺尖部に発生した肺癌で、肺尖胸壁の構造に浸潤するものである。胸壁に浸潤するのは第二肋骨レベルでありそれ以下のものは肺尖部の浸潤という基準をみたすものではない。胸壁浸潤は、臓側胸膜への浸潤に限定してもよい。あるいは、骨膜や上部肋骨、椎骨に到達してもよい。鎖骨下の血管、腕神経叢や星状神経節に浸潤してもよい。」
Detterbeck FC. Changes in the treatment of Pancoast tumors. Ann Thorac Surg 2003;75:1990-7.

 今でも肺尖部にできた腫瘍のことを、”Pancoast型”という単語にして呼ぶことも多く、呼吸器科医の中で彼の名前は生き続けることでしょう。


<音楽と医学>
モーツァルトの死因は毒殺だったのか?
ラフマニノフはMarfan症候群ではなかったのかもしれない
ショパンの死因は結核ではなかったかもしれない
ベートーヴェンの難聴と肝硬変の原因はワインの飲みすぎによる鉛中毒
ブラームスは外科医ビルロートの親友だった

<偉人たち>
Ziehl-Neelsen染色の考案者1:Franz Ziehl
Ziehl-Neelsen染色の考案者2:Friedrich Carl Adolf Neelsen
Boerhaave症候群の提唱者:Herman Boerhaave
Pancoast腫瘍の提唱者:Henry Pancoast
Clara細胞の発見者:Max Clara
サコマノ法の考案者:Geno Saccomanno
Mendelson症候群の提唱者:Curtis Lester Mendelson
Hoover徴候の提唱者:Charles Franklin Hoover
Gram染色の発見者:Hans Christian Joachim Gram

by otowelt | 2012-10-16 17:46 | コラム:医学と偉人

特発性上葉優位型肺線維症の呼吸機能悪化は急速で予後不良

e0156318_18552345.jpg ブログ休止中に読みたかったRespiratory Investigationの論文です。PPFEについては今年の8月にERJのPPFE12例を検討した論文を紹介しました。
pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)12例の臨床・画像・病理学的特徴

 考察にも書かれていますが、胸膜肥厚の有無をとってもPPFEとやや差異がある臨床像ですし、ましてや提唱している人や国がバラバラなので、PPFE、網谷病、IPUFの定義をいずれ統一しないとダメだと思います。

Kentaro Watanabe, et al.
Rapid decrease in forced vital capacity in patients with idiopathic pulmonary upper lobe fibrosis
Respiratory Investigation Volume 50, Issue 3 , Pages 88-97, September 2012


背景:
 われわれは時に、原因のはっきりしない分類不能の間質性肺炎患者を経験する。特発性上葉優位型肺線維症(Idiopathic pulmonary upper lobe fibrosis:IPUF)は、現在定義されている特発性間質性肺炎のいずれにも該当しない。このスタディは、IPUFの臨床的、機能的、病理学的特徴を調べるためにおこなった。

方法:
 われわれは9人の組織学的にIPUFと確定した患者を取りあげる。臨床的、組織学的特徴が評価された。ベースラインの呼吸機能検査が全員測定されたが、1人は別の病院で施行されていた。少なくとも1年以上にわたってFVCの経年的低下を観察されたのは7人の患者であった。
 病理組織は、患者1-4および6-9がVATSによって採取され、患者5および9は剖検で診断がつけられた。

結果:
 全患者はやせ形で、BMIは16.0–19.8kg/m2であった。5人が女性であり、4人が男性であった。年齢は43歳から81歳までであった。7人の患者は気胸の既往があった。6人は最初の症状を訴えてから1.8年―5.7年で死亡した。5人にステロイドが投与されたが、臨床的に効果はみられなかった。
 組織学的特徴は、肺胞内コラーゲン沈着、胸膜直下領域に弾性線維が密に構成していることであった。これらの所見は、pleuroparenchymal fibroelastosis(PPFE)と同一の所見であった。しかしながら、臓側胸膜は2人の患者で密なコラーゲンを伴って肥厚しており、残りの7人については胸膜肥厚はあったとしても局所的なものであった。
 呼吸機能障害は特徴的であった。FVCの急速な減少が経時的に認められ、ほとんど直線形の右肩下がりであった。経年的FVC減少率は中央値で−20.3% (range, −7.7% to −26.5%)であり、特発性肺線維症のような慢性線維性間質性肺炎で報告されているようなものよりも急速なものであった。

結論:
 IPUFは、呼吸機能を急速に悪化させる独特の肺線維症であり、予後不良である。

by otowelt | 2012-10-16 12:54 | びまん性肺疾患

癌患者さんの気道狭窄に気管ステントはいつ入れるべきか

 私たち呼吸器内科医が見ていて辛いと思う病態の1つに、気道狭窄があります。特に癌の患者さんでは、癌が中枢気道を狭窄することで容易に窒息をきたします。狭窄による呼吸困難感は、患者さんにとって信じられないくらい苦しい症状です。

 「一体いつ気道ステントを挿入するのが妥当なのか?」という疑問を抱いた医療従事者の方は多いと思います。私も何度その疑問を抱いたか知れません。

 気道狭窄があるにも関わらずほとんど無症状の癌患者さんの場合、「無症状だし気道の異物感も大きいんだから、入れる必要は無い」と判断されることがあります。一方、パフォーマンス・ステータスが3や4の癌の終末期の患者さんが気道狭窄で苦しんでいる場合ですと、おそらくステント挿入手技自体が危険と判断されます。じゃあ、そもそも気道ステントを入れるタイミングが無いじゃないか、というジレンマが発生します。

 1990年にDumonがDumonステントを開発してからというもの、様々な気管支ステントが利用されています(Chest 97:328-332、1990.)。しかしながらいまだに気道ステントのガイドラインはなく、一体どのような患者さんに挿入するのがよいか、臨床医によって患者さんの病状によって意見がバラバラなのが現状です。
呼吸器インターベンションのERS/ATS共同ステートメントはありますが、気道ステントの項目は1ページも満たしません。
ERS/ATS statement on interventional pulmonology. European Respiratory Society/American Thoracic Society. Eur Respir J 2002; 19:356.

 ACCPからも呼吸器インターベンションのガイドラインがありますが、気道ステントの項目の記載は極めて少量です。
American College of Chest Physicians. Interventional pulmonary procedures: Guidelines from the American College of Chest Physicians. Chest 2003; 123:1693.

 ガイドラインではありませんが、気管支内視鏡学会雑誌である『気管支学』に興味深い論文があります。岡山赤十字病院呼吸器内科の松尾圭祐先生らが2007年に書かれた論文ですが、非常に共感のできる内容です(気管支学 29:26-29, 2007)。すなわち、以下の症例が気道ステントの適応になるのではないかという提唱がなされています。

1.中枢気道の高度の狭窄があり呼吸困難などの症状を有するか肺機能検査にて気流制限を呈する症例
2.ステント留置により予後の改善が得られる症例
3.狭窄より末梢側の気道や肺が保たれている症例


 この論文によれば、パフォーマンス・ステータス1あるいは2の患者さん、気道ステント挿入後に後治療をおこなった患者さんは、気道ステント挿入後の予後良好因子であるとされています。また気道ステントの種類についても、将来的に抜去の可能性を視野に入れるのであればシリコンステントが良いだろうと述べられています。シリコンスントの場合、全身麻酔が必要であることがほとんどですので、少々侵襲性が大きすぎるのが難点です。そのため、姑息的に金属ステントが選択されることも現場では少なくないと思います。

 あの時、患者さんに気道ステントを入れてあげたらもう少し長生きできたのだろうか、と思うことは呼吸器内科医であれば何度も経験したことがあるでしょう。いや、緩和的鎮静の選択肢でよかったのだと自分に言い聞かせることもあるでしょう。たとえ医師同士のカンファレンスにおいて満場一致の結論であったとしても、その患者さんと最も多くの時間を分かち合った主治医が、患者さんや家族ととことん話し合って悔いの残らないような選択肢を選べたらと常々思っています。

by otowelt | 2012-10-16 00:53 | コントラバーシー

血中fibulin-3濃度によって、アスベストに曝露した健常者と悪性胸膜中皮腫患者を鑑別することができる

フィブリン3と訳しているサイトが多いですが、私たちの知っているフィブリン(fibrin)とは違いますので、ファイブリン3と訳すほうが妥当かもしれません。感度・特異度をみてもその有用性がわかると思いますが、臨床で困ることも多い疾患ですので、是非とも実用化が望まれます。

Harvey I. Pass, et al.
Fibulin-3 as a Blood and Effusion Biomarker for Pleural Mesothelioma
N Engl J Med 2012; 367:1417-1427


背景:
 悪性胸膜中皮腫を早期に発見して個別治療戦略を確立するためには、新規バイオマーカーが必要とされてきた。われわれは、血漿中と胸水中のfibulin-3について、信頼性の高いバイオマーカーかどうか検討すべく感度・特異度を調べた。

方法:
 血漿中(悪性胸膜中皮腫患者92人、非癌アスベスト曝露者136人、中皮腫に関連しない胸水93人、健常コントロール43人)、胸水中(悪性胸膜中皮腫患者74人、良性胸水39人、中皮腫に関連しない胸水54人)、またはその両方のfibulin-3濃度を測定した。その後、盲検によってその妥当性の検証を行った。免疫組織化学的解析によって腫瘍組織のfibulin-3を調べ、酵素免疫測定法によって血漿中・胸水中のフィブリン-3濃度が測定された。

結果:
 血漿中fibulin-3濃度には、年齢、性別、アスベスト曝露期間、X線写真上の変化の程度による差はみられず、悪性胸膜中皮腫患者(デトロイトのコホート 105±7 ng/mL、ニューヨークのコホート 113±8 ng/mL)では、悪性胸膜中皮腫のないアスベスト曝露者(それぞれ 14±1 ng/mL,24±1 ng/mL)よりも有意に高かった(P<0.001)。胸水中fibulin-3濃度は、悪性胸膜中皮腫患者(デトロイトのコホート 694±37 ng/mL、ニューヨークのコホート 636±92 ng/mL)で、悪性胸膜中皮腫に起因しない胸水を呈する患者(それぞれ 212±25 ng/mL、151±23 ng/mL)よりも有意に高いものであった(P<0.001)。
 腫瘍細胞は26検体すべてにおいて、fibulin-3選択的に染色された。悪性胸膜中皮腫がある患者とない患者の比較では、血漿中fibulin-3濃度のROC曲線は、fibulin-3 52.8 ng/mLのカットオフ値で、感度 96.7%、特異度95.5%。早期悪性胸膜中皮腫患者とアスベスト曝露者との比較では、カットオフ値をfibulin-3 46.0 ng/mL とした場合、感度100%、特異度94.1%。盲検による妥当性検証では、アスベスト曝露者96人と悪性胸膜中皮腫患者48人の比較でAUC 0.87 であった。

結論:
 血漿中fibulin-3濃度は、アスベストに曝露した健常者と悪性胸膜中皮腫患者を識別することが可能である。血漿中fibulin-3濃度に胸水中fibulin-3濃度を併用すると、悪性胸膜中皮腫による胸水とその他の悪性胸水・良性胸水とを細かく鑑別することができる。

by otowelt | 2012-10-15 00:14 | 肺癌・その他腫瘍

beyond PDにおけるEGFR-TKIの継続使用はOSを改善する可能性がある

当院からのスタディです。EGFR-TKIを使用していると、腫瘍の増大がみられPDと判定されることがあります。このようなbeyond PDの状態であってもEGFR-TKIを継続使用するという選択肢があります。レトロスペクティブの試験ですが、興味深い選択肢ではあります。

Kenichi Nishie, et al.
Epidermal Growth Factor Receptor Tyrosine Kinase Inhibitors Beyond Progressive Disease: A Retrospective Analysis for Japanese Patients with Activating EGFR Mutations
Journal of Thoracic Oncology: 10 October 2012, doi:10.1097/JTO.0b013e31826913f7


背景:
 EGFR遺伝子変異のある非小細胞肺癌の患者においてEGFR-TKIを使用しているにもかかわらず増悪した(PD)後:beyond PDのEGFR-TKIの継続使用が妥当であるかどうかははっきりしていない。

方法:
 われわれは、近畿中央胸部疾患センターにおいて2002年から2010年までの連続したEGFR遺伝子変異陽性の非小細胞肺癌の患者で、ファーストラインあるいはセカンドラインでのEGFR-TKI使用後に放射線学的PD(RECIST 1.0)となった患者を登録し、レトロスペクティブに解析をおこなった。われわれは、2群に患者を分けた。すなわち、EGFR-TKIを継続使用する群と、化学療法にスイッチする群である。これらについて臨床的アウトカムを比較した。生存期間の多変量解析では、年齢、性別、PS、脳転移、EGFR遺伝子変異(exon 19 deletion vs L858R)、EGFR-TKIの使用の有無、EGFR-TKI開始時期(ファーストライン vs セカンドリアン)が含まれた。

結果:
 合計551人の非小細胞肺癌の患者がEGFR遺伝子変異スクリーニングを受け、186人がEGFR遺伝子変異陽性であった。135人がEGFR-TKIの投与を受けた。112人がファーストラインあるいはセカンドラインでEGFR-TKIを使用し、23人はセカンドラインよりも後でEGFR-TKIを使用した。PD後のEGFR-TKI使用については、64人の患者が選択され解析された。男性が13人、女性が51人であり、平均年齢は65.5歳(42-86)であった。これらのうち、31人にexon 19 deletion、33人にexon 21 L858R変異がみられた。39人の患者がEGFR-TKIをPD後も使用していた。25人が殺細胞性抗癌剤単独にスイッチした。
 単変量解析においてOS中央値は、EGFR-TKI継続使用群で32.2ヶ月、化学療法にスイッチした群では23.0ヶ月であった。これらは統計学的に有意差がみられた(p = 0.005)。PFSに差はみれらず(p = 0.176)。
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 Cox解析ではPD後のEGFR-TKI使用は生存の改善に関連していた(HR 0.42, 95% CI: 0.21-0.83, p = 0.013)。

結論:
 EGFR遺伝子変異がみられる非小細胞肺癌の患者において、PD後のEGFR-TKIの継続使用は殺細胞性抗癌剤単独に比べてOSを延長するかもしれない。われわれの試験結果を明確にするため、プロスペクティブ試験が望まれる。

by otowelt | 2012-10-14 06:42 | 肺癌・その他腫瘍

肺線維症に対するピルフェニドンの副作用のメタアナリシス

 ピルフェニドンに対する副作用のメタアナリシスはこのスタディが初めてのようです。ピルフェニドンに最も多い副作用は消化器症状ですが、用量減量(J Clin Pharmacol 47: 1268–1276, 2007)や食物の摂取(Pulm Pharmacol Ther 22: 279–285, 2009)によって軽減されることがわかっています。

Chunguo Jiang, et al.
Adverse Events of Pirfenidone for the Treatment of Pulmonary Fibrosis: A Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials
PLoS One. 2012;7(10):e47024. doi: 10.1371/journal.pone.0047024. Epub 2012 Oct 9.


背景:
 ピルフェニドンは、肺線維症の患者に適応のある新規抗線維化薬である。しかしながら、その毒性については関心が高い。このメタアナリシスでは、肺線維症に対するピルフェニドンの副作用を解析した。

方法:
 2人の著者によって、PubMed, Embase, ClinicalTrials.gov, Cochrane Central Registerでシステマティックな検索を施行した。英語文献のみに限定しなかった。臨床試験は、1999年1月から2011年10月までおこなわれたものとした。ピルフェニドンの用量が1800mg/日を超える文献を登録した。文献から得られたデータは、Review manager 5.0.24.によって解析がおこなわれた。

結果:
 6つのランダム化比較試験(1073人の患者)によれば、ピルフェニドン治療を継続できなかった患者は、プラセボ群よりも有意に多かった(RR = 1.85, 95% CI: 1.28–2.67, P = 0.001)。有害事象別の出版バイアスは確認されなかった。
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 ピルフェニドン群は、有意に消化器症状(悪心、消化不良、下痢、食欲不振)(RR = 2.11, 95% CI: 1.71–2.61, P<0.001)や神経症状(めまい、疲労)(RR = 1.68, 95% CI: 1.39–2.03, P<0.001)、皮膚症状(光線過敏症、皮疹)(RR = 2.88, 95% CI: 1.93–4.31, P<0.001)がプラセボ群よりも多かった。
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結論:
 肺線維症に対するピルフェニドンの使用は、そこまで安全ではないが忍容性のあるものである。注意すべき副作用として、消化器症状、神経症状、皮膚症状がよくみられ、留意すべきであろう。

by otowelt | 2012-10-13 10:25 | びまん性肺疾患

診断時に悪性胸水を合併した肺腺癌は予後不良

 初期から悪性胸水がある患者の方が予後が悪いというデータです。多変量解析的な結論も交わっておりますので、胸水合併が多いと生存予後が不良なのにも関わらず、胸水貯留例ではEGFR遺伝子変異が陽性になりやすい(予後良好因子)という交錯的な内容になっています。
 胸水合併例の肺癌では予後不良であることは知られていましたが(Anticancer Res 1997; 17: 4743-4746.、Clin Cancer Res 1997;3: 47-50.)、それがいつ貯留したものかというスタディはこれが初めてです。

Shang-Gin Wu, et al.
Survival of lung adenocarcinoma patients with malignant pleural effusion
ERJ, 2012 erj00698-2012, Published online before print


背景:
 標的治療が進んだ昨今、肺腺癌患者の生存と悪性胸水の合併との関連についてはよくわかっていない。

目的:
 この試験は、悪性胸水のある肺腺癌患者における臨床的特徴、生存期間、EGFR遺伝子変異を調べたものである。

方法:
 2005年6月から2010年12月までの間、National Taiwan University Hospitalにおいて連続した胸水患者をレトロスペクティブに集めた。患者の臨床的特徴、EGFR遺伝子変異、全生存期間(OS)が解析された。

結果:
 合計1400人の胸水患者のうち、890人が悪性胸水と診断された。我々は、全データが集められた448人のstage IVの肺腺癌患者を登録した。365人(81.5%)が初期診断時に悪性胸水を指摘され、83人(18.5%)がのちに胸水増悪をきたした。全体のうち、224人(59.8%)が女性で、329人(73.4%)が非喫煙者であった。悪性胸水が初期に診断された患者は高齢で(p= 0.002)、PSが不良の傾向にあった(p< 0.001)。OS中央値は、初回診断時に悪性胸水のある患者では14.3ヶ月、のちに増悪出現した患者では21.4ヶ月であった(p=0.001)。
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 EGFR遺伝子変異は296人の患者(66.1%)で確認された。初期診断時に悪性胸水のある患者間でのEGFR遺伝子変異率はのちに増悪出現した患者よりも高かった(68.2% vs 56.6%, p=0.044)。L858R変異が、前者において有意に多かった(32.6% vs. 18.1%; p=0.009)。多変量解析では、のちに悪性胸水が増悪出現した患者、EGFR遺伝子変異陽性患者、EGFR-TKI治療を受けた患者はOSを延長した。

limitations:
 ・台湾人しか登録されていないこと
 ・EGFR遺伝子変異がルーチンに測定されているわけではなく、また陽性であるからといってEGFR-TKIを使用していないこと

結論:
 初期診断時に悪性胸水を合併したstage IVの肺腺癌患者は、のちに悪性胸水が増悪出現した患者と比較すると、生存期間が短く、EGFR遺伝子変異、特にL858Rが陽性となりやすかった。

by otowelt | 2012-10-11 10:26 | 肺癌・その他腫瘍

上葉優位の気腫は、呼吸機能低下がはやい

e0156318_23175684.jpg COPD患者さんで、上葉優位か下葉優位になる要素が何なのか、厳密には解明されていません。教科書的には単純に換気血流比によるものと考えられていますが(Chest 1982; 82: 483–487.)、ある研究では、2酵素におけるポリモルフィズムが解毒に関与しておりこれが上下の差として寄与しているのではないかともされています(Am J Respir Crit Care Med 2007; 176: 42–48.)。

Firdaus A.A., et al.
Computed tomography-quantified emphysema distribution is associated with lung function decline
ERJ October 1, 2012 vol. 40 no. 4 844-850


背景:
 肺内の気腫の分布はCOPD患者にみられるが、しかしながら胸部CTの気腫定量評価(上葉/下葉)が、重喫煙(既往も含む)の患者において呼吸機能の減少と関連しているかどうかよくわかっていない。

方法:
 University Medical Center Utrecht (Utrecht, the Netherlands)で施行。
 the Dutch–Belgian Lung Cancer Screening Trial (NELSON)試験に参加した587人の男性で胸部CTと呼吸機能検査をおこない、中央フォローアップ期間2.9年(IQR 2.8-3.0)後に再検査をおこなった。肺は解剖学的肺葉に基づいて自動的に分離解析された。気腫の重症度は、自動的に肺葉ごとに定量化され、15パーセンタイル(Perc15)を用いた評価とした。気腫の分布とFEV1/FVC、FEV1、FVCの減少を関連づけるため、線形混合モデルが使用された。

結果:
 平均年齢±SDは、60.2±5.4歳で、平均ベースラインFEV1/FVCは71.6±9.0%、全平均Perc15は-908.5±20.9 HUであった。喫煙歴は平均で41.2±18.7 pack-yrsであり、登録時に305人(50.1%)が喫煙歴のある患者で、304人(49.9%)が現喫煙者であった。上葉優位気腫のある参加者は、下葉優位気腫のある場合と比較すると、フォローアップ後は低いFEV1/FVC, FEV1、FVCであった(p=0.001)。
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結論: 
 CT定量化による重喫煙者の上葉優位の気腫性病変は、下葉優位の気腫性病変と比較してはやい呼吸機能悪化がみられる。

by otowelt | 2012-10-10 23:24 | 気管支喘息・COPD

気管支拡張症における気道細菌量は、気道炎症、全身性炎症、気管支拡張症増悪と相関

e0156318_2246178.jpg 嚢胞性線維症やびまん性汎細気管支炎と違って、通常の気管支拡張症患者さんでは抗菌薬による予防的効果についてはあまりスタディされていないのが現状です。マクロライドについてはいくつかスタディがあります(Eur Respir J 1999; 13:361.、Respir Med 2008; 102:1494.)。

James D. Chalmers, et al.
Short- and Long-Term Antibiotic Treatment Reduces Airway and Systemic Inflammation in Non–Cystic Fibrosis Bronchiectasis
Am. J. Respir. Crit. Care Med. October 1, 2012 vol. 186 no. 7 657-665


背景:
 気管支拡張症における負のサイクル仮説(vicious cycle hypothesis )は、細菌のコロナイゼーションが気道炎症をもたらし肺にダメージを与えるという議論をもたらしている。この仮説を理論的に拡張すれば、急性あるいは慢性の抗菌薬治療が気道炎症や臨床アウトカムを改善させるという見方ができる。しかしながら、この仮説を非嚢胞性線維症の気管支拡張症患者で裏付けるデータは少ない。

目的:
 非嚢胞性線維症の気管支拡張症患者において、急性あるいは慢性の抗菌薬治療が、気道炎症や臨床アウトカムを改善させるかどうか検証する。

方法:
 細菌量と気道炎症、全身性炎症との関連性を385人の患者において調べた。15人の病状が安定した患者、34人の気管支拡張症増悪患者が静注抗菌薬で治療された。長期抗菌薬治療については、12ヶ月のゲンタマイシンネブライザー治療を受けた患者からの検体を使用した。

結果:
 病状が安定した患者において、気道細菌量と気道炎症マーカーに相関がみられた(P < 0.0001 for all analyses)。高い細菌量では、高い血清ICAM-1、E-セレクチン、VCAM-1が観察された(P < 0.05 above bacterial load ≥1 × 107 cfu/ml)。病状が安定した患者では、気道細菌量と引き続く気管支拡張症増悪(OR 1.20; 95% CI 1.11–1.29; P < 0.0001)、重度の増悪(OR 1.11; 95% CI 1.01–1.21; P = 0.02)と関連していた。短期および長期抗菌薬治療は、気道細菌量の減少、気道炎症、全身性炎症の軽減と関連していた。

結論:
 非嚢胞性線維症の気管支拡張症のける気道細菌量の多さは、気道炎症、全身性炎症、気管支拡張症増悪と関連していた。短期および長期の抗菌薬治療は、気道および全身性炎症マーカーの減少に寄与していた。

by otowelt | 2012-10-10 22:54 | 感染症全般

ありがとうございました

 たくさんのメッセージありがとうございました。一つ一つにお返事はできませんが、全てが心に響くお言葉でした。近日中にブログを再開する予定です。

 私が初期研修医2年目の頃、1日1つ必ず論文を読むという後輩がいました。非常に知識量の多い後輩で、私は彼に触発されて真似をするようになりました。後輩ではありますが、今でも彼は私が尊敬している医師の1人です。論文を読むだけでは自身の消化になるだけだと思ったので、流行りのブログの形式にしたらどうだろうかと思いました。そうすればブログを見てくださるお医者さんが増えて、結果的にその医師が患者さんに良い医療を提供できるのではないか。そういったきっかけで、この「呼吸器内科医」というブログを作りました。
 特に面白いブログでもないのですが、どういうわけかアクセス人数がなぜかどんどん増えていき1日2000人を超えるようになりました。そのため、呼吸器内科の先生方の間でこのブログを知ってくださる方も多くなりました。このブログを読んで、もし患者さんにより良い医療を提供できたお医者さんがいれば、それこそが私の本望でした。先日上京した時、秋田の呼吸器内科の先生にもブログを見ていますと声をかけていただき、非常に嬉しく思いました(あの場ではあまりお話ができず申し訳ありませんでした)。 
 呼吸器内科は内科の中ではメジャーな診療科ですが、日本の呼吸器内科医は少ないのが現状です。その割に呼吸器内科医が読まねばならない論文は多数あり、日々の業務の中でこれをこなすのは難しいと思います。そのため、簡単に最近の呼吸器内科的な情報が手に入るサイトとして、これからも活用していただければありがたく思います。ひいてはそれが患者さんの幸せにつながるのであれば、心より嬉しく思います。

by otowelt | 2012-10-09 11:51 | その他