<   2012年 11月 ( 32 )   > この月の画像一覧

COPD啓発プロジェクト

2012年11月14日は世界COPDデーでした。

COPD啓発プロジェクト_e0156318_10185640.jpg
http://copd-project.net/
 

 日本COPD対策推進会議等の後援によって、「COPD啓発プロジェクト」が発足することとなりました。
 この啓発プロジェクトは、日本国民のCOPDの理解を向上させ、早期受診へとつなげることを目的として設立されたものです。日本COPD対策推進会議、GOLD日本委員会、日本医学会が後援団体となっています。
 また、認知度を現在の25%から80%にまで引き上げることを目標に、メディアを利用した認知・啓発活動、医療関係者への啓発活動を実施していく予定です。

※GOLD日本委員会が2011年に1万人におこなったインターネット調査では、COPD認知度は「どんな病気かよく知っている」(7.1%)と「名前は聞いたことがある」(18.1%)。

by otowelt | 2012-11-22 10:20 | 気管支喘息・COPD

死前期の患者さんに大量の酸素投与は必要か?

死前期の患者さんに大量の酸素投与は必要か?_e0156318_1163520.jpg 緩和ケアチームの設立やオピオイドの理解が進み、多くの病院では癌の終末期の呼吸困難感に対して少量のオピオイドを使用されていることと思います。システマティックレビューでもその有効性は確立しています。
Jennings AL, et al. A systematic review of the use of opioids in the management of dyspnoea. Thorax. 2002 Nov;57(11):939-44.

 ただ、特に肺癌を診療している方々は、亡くなられる最後の瞬間にはリザーバーマスク全開で酸素投与されている状況をよく目にすると思います。当然ですが死前期にはSpO2は極端に下がります。そのSpO2の低下に対して大量の酸素投与がなされていることが多いと思います。

―――果たしてもう余命幾ばくもない患者さんに大量の酸素投与をおこなうことに意味はあるのでしょうか?

 33人の軽度の労作時呼吸困難感を呈する進行癌患者さんの酸素投与の有無を比較した試験がありますが、酸素投与が呼吸困難感や歩行距離の改善をもたらすことはなかったという報告があります。ただ、この試験は“死前期”の酸素投与とは意味合いが異なります。
Bruera E, et al. A randomized controlled trial of supplemental oxygen versus air in cancer patients with dyspnea. Palliat Med. 2003 Dec;17(8):659-63.
 同様に、38人のホスピスの安静時呼吸困難感を呈する癌患者さんの酸素投与の有無を比較した試験があります。これについても酸素投与と室内気投与ではアウトカムに差はみられませんでした。ただし、両群ともに統計学的に有意なプラセボ効果がみられております。
Booth S, et al. Does oxygen help dyspnea in patients with cancer? Am J Respir Crit Care Med. 1996 May;153(5):1515-8.
 手持ちの扇風機を顔に当てるか足に当てるかで呼吸困難感に変化があるか調べた面白い試験もあります。5分間とかなり短い時間での検証ではありますが、顔に当てる方が呼吸困難感の軽減が大きかったというプラセボ効果が認められました。
Galbraith S, et al. Does the use of a handheld fan improve chronic dyspnea? A randomized, controlled, crossover trial. J Pain Symptom Manage. 2010 May;39(5):831-8.

 すなわち、鼻カニューラなり扇風機なり何かしら患者さん自身に風を送ることには呼吸困難感を軽減させるプラセボ効果があることが示唆されます。

 2010年には、終末期呼吸困難における臨床試験が行われました。これはオーストラリア、アメリカ、イギリスの9施設における成人の二重盲検ランダム化試験で、余命幾ばくもない死前期呼吸困難でPaO2が7.3kPa(54mmHg程度)以上の患者さん239人を登録したものです。1:1で酸素療法群、室内空気群に割り付けました。プライマリエンドポイントは、numerical rating scale (NRS)としました。開始から6日目まで、酸素療法群で朝の呼吸困難感が−0.9ポイント(95%信頼区間 −1.3~ −0.5)、室内気群では朝の呼吸困難感は−0.7ポイント(95%信頼区間−1.2 - −0.2) 変化しましたが有意差はみられませんでした(p=0.504)。夜のNRSについても有意差はみられませんでした (p=0.554)。
死前期の患者さんに大量の酸素投与は必要か?_e0156318_1114762.jpg
Abernethy AP, et al. Effect of palliative oxygen versus room air in relief of breathlessness in patients with refractory dyspnoea: a double-blind, randomised controlled trial. Lancet. 2010 Sep 4;376(9743):784-93.より引用

 この結果は終末期呼吸困難に酸素投与に意味がないという結果にも解釈できますが、室内気のカニューラ投与にプラセボ効果があるとも解釈できます。また登録した患者さんのPaO2が高い点も、結果に影響を与えているような気がします。

 終末期の患者さんなので臨床試験そのものが組みにくい現状がありながらも、室内気であろうと酸素投与であろうとプラセボ効果がみられるのは確実のようです。ただ、SpO2がもはや測定できないような死前期の患者さんへリザーバーマスクでの酸素投与を全開にしたところで、予後が大きく変わるわけではありません。プラセボ効果を期待しているのであれば、それほどの流量は必要ないはずです。患者さん本人や家族様に“重症感”を強く与えてしまう可能性はありますが、それが皆さんにとって良いことか悪いことかはわかりません。死とはこうあるべきだという価値観は医療従事者や患者サイドで異なりますし、酸素をつけていなければ不信感を持たれる家族様も中にはいらっしゃるかもしれません。
 それでもなお、死亡直前に酸素流量を全開にした音が部屋全体に鳴り響くことは、おごそかな死を迎えるにあたって本当に必要な治療なのか悩まずにはいられません。

by otowelt | 2012-11-20 11:12 | 肺癌・その他腫瘍

バレニクリン(チャンピックス)は心血管イベント増加とは関連せず

外来でチャンピックスを使用されている呼吸器科医も多いと思います。重要な論文です。

Henrik Svanström, et al.
Use of varenicline for smoking cessation and risk of serious cardiovascular events: nationwide cohort study
BMJ 2012;345:e7176 doi: 10.1136/bmj.e7176 (Published 8 November 2012)


目的:
 バレニクリンが、ほかの禁煙治療であるブプロピオン(DNRI)と比べて重篤な心血管イベントの上昇と関連しているかどうか調べる。

デザイン:
 Nationwide historical cohort study、デンマークにおける2007年から2010年の試験

患者および方法:
 バレニクリン新規使用者(n=17926)とブプロピオン(n=17926)を登録。
 Cox回帰分析によって、傾向スコアマッチによる心血管イベントのハザード比を算出した。プライマリアウトカムは、6ヶ月後の急性冠症候群、虚血性脳卒中、心血管イベント死亡、およびそれらの組み合わせとした。

結果:
 57の主要な心血管イベントがバレニクリン使用者に発生した(1000人年あたり6.9例)。一方、ブプロピオン使用者では60イベント(1000人年あたり7.1例)であった。主要イベントのハザード比は0.96 (95% CI 0.67 to 1.39)であった。バレニクリン使用は、急性冠症候群(1.20, 0.75 to 1.91)、虚血性脳卒中(0.77, 0.40 to1.48)、心血管イベント死亡(0.51, 0.13 to 2.02)とも関連していなかった。
 サブグループ解析では、主要な心血管イベントは心血管疾患の既往の有無によって差はみられなかった(既往あり:1.24、0.72 to 2.12、 既往なし:0.83、0.51 to 1.36、P=0.29)。
バレニクリン(チャンピックス)は心血管イベント増加とは関連せず_e0156318_13375324.jpg
結論:
 バレニクリンは禁煙治療としてのブプロピオンと比較して、主要な心血管イベントのリスク増加をもたらさなかった。

by otowelt | 2012-11-19 13:41 | 呼吸器その他

QFT陽転者はQFT陰性者より約8倍結核を発症しやすい

タイトルに少し語弊がありますが、正式にはQFT陰性者というよりもnonconverterの意味なので注意して下さい。

Shingai Machingaidze, et al.
Predictive Value of Recent QuantiFERON Conversion for Tuberculosis Disease in Adolescents
Am. J. Respir. Crit. Care Med. November 15, 2012 vol. 186 no. 10 1051-1056


背景:
 ツベルクリン反応(TST)と同じように、クオンティフェロン:IFN-γ release assay (IGRA)には、陽性化(conversions)と陰転化(reversions)が起こりうる。TST陰転化は、結核発症リスクを上昇させる可能性があるが、IGRA陰転化についてのリスクはまだよくわかっていない。
※Conversion:
 M. tuberculosisの新規の感染によって新たな免疫学的活性を持つことを指します(ツベルクリン反応、クオンティフェロンの陽転化など)
※Reversion:
 すでにツベルクリン反応やクオンティフェロンが陽性の状態であって、複数回の測定によって陰性化が確認されることです


目的:
 最近クオンティフェロンGold In-Tube(QFT)が陽転化した後の結核の頻度を非陽転化症例と比較する。

方法:
 IGRAステータスが陽性である若年者(QFT converter 534人)と、ランダムに選択された2年以上にわたる陰性者(QFT nonconverter 629人)を結核感染のコホート試験から同定した。引き続く結核の発症を2群で比較した。
 
結果:
 QFT陽性者では、結核発症率は100人年あたり1.46症例(95%CI, 0.82–2.39)であった。累積発症率は2.8% (95% CI, 1.58–4.59)であった。QFT陰性者では、有意に結核発症率(100人年あたり0.17症例 [95% CI, 0.02–0.62])と累積発症率(0.32% [95% CI, 0.03–1.14])が低かった。
 全結核発症リスク比は8.54 (95% CI, 2.51–29.13)であり、プロトコル定義結核発症リスク比は9.1 (95% CI, 1.65–50.36)であった。

結論:
 結核罹患率が高い地域における若年者では、最近QFTが陽性化した症例では、2年以上QFTが陰性である症例と比較して結核を発症するリスクは約8倍高い。

by otowelt | 2012-11-19 08:47 | 抗酸菌感染症

ICUにおけるHESの輸液蘇生は生理食塩水を上回る有益性なし

ICUにおけるHESの輸液蘇生は生理食塩水を上回る有益性なし_e0156318_13215324.jpgデンプン製剤・ゼラチン製剤による腎毒性は累積投与量と相関することが明らかにされています。

J.A. Myburgh, et al.
Hydroxyethyl Starch or Saline for Fluid Resuscitation in Intensive Care
N Engl J Med 2012; 367:1901-1911


背景:
 輸液蘇生に使用するヒドロキシエチルデンプン(HES)の安全性および有効性はあまり評価されておらず、腎有害作用が報告されている(Crit Care Med. 2011 Jun;39(6):1335-42.)。

方法:
 ICU入室患者7000人を、ICU退室、死亡、ランダム化後90日のいずれかまで施行する全輸液蘇生に対して、130kD・モル置換比(molar substitution ratio)0.4の6%HES(130/0.4、Voluven)を0.9%生理食塩水に混合して用いる群と、生理食塩水のみを用いる群に1:1でランダムに割り付けた。プライマリアウトカムは90日以内の死亡とした。セカンダリアウトカムは、急性腎障害・腎不全、腎代替療法による治療など。

結果:
 HES群の3315人中597人(18.0%)と生理食塩水群3336人中566人(17.0%)が死亡(HES群の相対リスク 1.06、95%CI0.96 to 1.18; P=0.26)。6サブグループにおいて死亡率に有意差はみられなかった。
 腎代替療法は、HES群の3352人中235人(7.0%)と生理食塩水群3375人中196人(5.8%)で使用された(相対リスク 1.21,95% CI 95% CI, 1.00 to 1.45; P=0.04)。HES群と生理食塩水群で、腎障害は34.6%、38.0%発生(P=0.005)、腎不全は10.4%、 9.2%発生(P=0.12)。
 HESは、有害事象が有意に多かった(5.3% vs. 2.8%, P<0.001)。

結論:
 ICUの患者において、6%HES(130/0.4)で輸液蘇生を受けた場合、生理食塩水による輸液蘇生を受けた場合と比較すると90日死亡率に有意差はなかった。しかしながら、HESは腎代替療法による治療を受ける事例が多かった。


by otowelt | 2012-11-18 13:23 | 集中治療

IPF治療にST合剤を加えることはper-protocol解析で総死亡率低下に寄与

 免疫抑制治療をおこなっている患者さんにST合剤の予防量が最初から入っていなかったのか疑問が残る試験です(見た範囲では記載がありません)。ともかく、免疫抑制剤の治療内容を問わずper-protocol解析では生存に差が出ているという報告です。本当にST合剤の生存を検証するのであれば、無治療IPFに対するランダム化比較試験が妥当かと思われます。

Ludmila Shulgina, et al.
Treating idiopathic pulmonary fibrosis with the addition of co-trimoxazole: a randomised controlled trial
Thorax Online First, published on November 10, 2012


背景:
 特発性肺線維症(IPF)は、治療法の限られた重篤な疾患である。しかしながら、過去の小さなスタディではST合剤(co-trimoxazole)が利益があるとされている。

方法:
 多施設共同二重盲検において181人の線維化のある特発性間質性肺炎を登録し、89%がdefinite/probable IPFと診断された(他はf-NSIPなど)。適格基準は40歳以上、MRC≧2、少なくとも6週間治療内容が変わっていない患者。二次性の慢性間質性肺炎と同定された場合、プレドニゾロン、アザチオプリン、ミコフェノール酸モフェチル以外の免疫抑制剤使用患者は除外された。


患者らはランダムにco-trimoxazole 960mg1日2回を投与する群とプラセボ群に12ヵ月間割り付けられた(通常治療に上乗せ:プレドニゾロンやアザチオプリン内服患者も登録)。
 評価項目は、プライマリエンドポイントを努力肺活量(FVC)とし、そのほかDLCO、EuroQol (EQ5D)-based utility、6分間歩行試験、MRC息切れスケールなどをセカンダリエンドポイントとした。総死亡率と有害事象が記録された。

結果:
 co-trimoxazoleは、FVCに対して影響を与えなかった(平均差15.5 ml (95% CI −93.6 to 124.6))。また、DLCO(平均差−0.12 mmol/min/kPa (95% CI 0.41 to 0.17))、6分間歩行試験、MRC息切れスケールにも差がみられなかった(ITT解析)。per-protocol解析では、プラセボと比較してEQ5D-based utility (平均差0.12 (95% CI 0.01 to 0.22))、酸素投与量増加を要した患者比率に差がみられ(OR 0.05 (95% CI 0.00 to 0.61))、総死亡率を下げた(co-trimoxazole 3/53, placebo 14/65, HR 0.21 (95% CI 0.06 to 0.78), p=0.02))。
 co-trimoxazoleは気道感染を減らしたが、悪心や皮疹を増加させた。
IPF治療にST合剤を加えることはper-protocol解析で総死亡率低下に寄与_e0156318_920286.jpg
Discussion:
・治療内容(ステロイドや免疫抑制剤)による補正もおこない解析をおこなっているが、それとは別に今回の効果がみられている(半数近い患者がプレドニゾロン、30%の患者がアザチオプリンを使用)

結論:
 線維化のある慢性間質性肺炎に対するco-trimoxazoleの標準治療への上乗せは呼吸機能への影響には寄与しないが、QOLや死亡を減少させる可能性がある。

by otowelt | 2012-11-14 09:34 | びまん性肺疾患

オセルタミビルとザナミビルの長期投与の安全性

ハイリスク患者と頻回に接触するワクチン未接種の医療従事者は長期予防内服の該当になることもあります。

Anekthananon T,et al.
Oseltamivir and inhaled zanamivir as influenza prophylaxis in Thai health workers: a randomized, double-blind, placebo-controlled safety trial over 16 weeks.
J Antimicrob Chemother. 2012 Nov 9. [Epub ahead of print]


目的:
 インフルエンザウイルスに対するノイラミニダーゼ阻害薬の長期の化学的予防が必要だが、その安全性データは数週間に限られている。われわれは、オセルタミビルとザナミビルを16週にわたる初期予防として使用した。

方法:
 われわれは並行群間二重盲検ランダム化(2:1)試験において、オセルタミビル/プラセボあるいは吸入ザナミビル/プラセボを16週間にわたって健常人に投与した。プライマリエンドポイントは、薬剤による試験中断、Grade2以上の有害事象。

結果:
 129人のオセルタミビル/65人のプラセボと131人のザナミビル/65人のプラセボ患者が登録。102人がGrade2以上の有害事象がみられた。
 感染や発熱の併発[26/102 (25.5%)], 生化学的検査異常[25/102 (24.5%)]、消化器症状[18/102 (17.6%)]が最もよくみられた有害事象であった。試験中薬剤関連のドロップアウトはなかった。8人の重篤な感染と発熱患者が報告された。ラボデータ、呼吸機能、心電図検査については特に有意差みられず。

結論:
 オセルタミビルとザナミビルは医療従事者にとっても忍容性がある。両薬は初期インフルエンザ化学予防に推奨され、16週間まで投与可能。

by otowelt | 2012-11-14 07:38 | 感染症全般

石綿に関わる法律やその申請について

※2012年11月13日改訂しました。

 呼吸器科医をしていますと、石綿肺疑いの患者さんが来られることがあると思いますので、呼吸器科医としてある程度は理解しておくことが必要だと思います。おおまかな流れは以下の3点のみです。

①石綿手帳の交付
②労災の申請
③石綿健康被害救済制度の申請

・石綿に関連する健康管理手帳(労働安全衛生法)
 まず、呼吸器科医が出会う石綿肺の患者さんの多くは健康管理手帳を持っている患者さんだと思います。特に指定医療機関の場合には健康診断を多く診ることになるでしょう。石綿の健康管理手帳は、転職または退職して現在石綿に係る業務から離れている方が対象になります。
 事業者は、石綿等を製造し、または取り扱う業務に常時従事する労働者、または常時従事していた労働者であって、現に使用しているものについては、事業者が6か月以内ごとに1回、定期に石綿健康診断を実施する必要があります(労働安全衛生法第66条第2項)。また過去に石綿等を製造し、または取り扱う業務に従事し、健康診断で一定の所見(胸部レントゲン上の異常)がある場合や当該業務に一定の従事期間がある場合は、離職の際に、事業場所在地(離職後は申請者住所地)の都道府県労働局に石綿に係る健康管理手帳(石綿健康管理手帳)の交付の申請をすることにより、石綿健康管理手帳が交付されます(労働安全衛生法第67条)。石綿健康管理手帳が交付された場合、無料で6か月ごとに1回、定期健康診断を受けることができます。
 石綿健康管理手帳は、事業場が倒産等によって現在存在していなくても、申請することが可能です。
 ちなみに、じん肺の健康管理手帳の場合、6ヶ月ではなく1年ごとに1回の定期健康診断となります。
 必要な書類は以下の通りです。
石綿に関わる法律やその申請について_e0156318_1130912.jpg
※粉じん業務の場合は、(3)の書類は必要なく、(1)及び(2)の書類に加えて、じん肺管理区分決定通知書(管理2または管理3)の写し
※石綿業務の胸部所見の要件による申請の場合は、(1)(2)および(3)の書類に加えて、次の1または2のどちらかが必要です。
 1.胸部エックス線直接撮影または特殊なエックス線撮影による写真及び不整形陰影または胸膜肥厚の陰影がある旨の記述等のある医師による診断書(同様の記載のある石綿健康診断個人票またはじん肺健康診断結果証明書の写しでも可)
 2.じん肺管理区分が管理2以上のじん肺管理区分決定通知書の写しおよび当該決定の際に都道府県労働局長に提出されたじん肺健康診断結果証明書の写し


申請用紙は、各地の労働基準監督署で入手できますが、申請先は地方労働局です。地方労働局の安全衛生課(安全課と労働衛生課に分かれている局においては労働衛生課)が事務を担当しています。

・労働災害(労働者災害補償保険法)
 労働災害(労災)によって療養補修給付が認定されれば、医療費が無料になります。そのため、健康管理手帳は実質的に無意味になりますので、注意が必要です。 健康管理手帳交付と労災申請のいずれを行うべきかは医療従事者が判断しなければならないこともあります。患者さん本人や医療事務の仕事だと割り切ってしまわれる呼吸器科医の先生も多いと思いますが、これは患者さんの健康被害に対する正当な制度で、医学的にも難しい内容ですので主治医が積極的に協力する必要があります。
 まず、じん肺の管理区分は、管理1、管理2、管理3イ、管理3ロ、管理4の5段階に分かれています。数字が大きくなるに従いじん肺の病態は重度になっていきます。じん肺法によって、管理区分の規定がこのじん肺の胸部X線所見に基づいて分類されています。
石綿に関わる法律やその申請について_e0156318_1132960.jpg
※著しい肺機能の障害とは、以下のいずれかを満たすものである。
 (ア)パーセント肺活量(%VC)が60%未満である場合
 (イ)パーセント肺活量(%VC)が60%以上80%未満であって、次の①または②に該当する場合
  ①1秒率が70%未満であり、かつ、パーセント1秒量が50%未満である場合
  ②動脈血酸素分圧(PaO2)が60Torr以下である場合または肺胞気動脈血酸素分圧較差(AaDO2)が年齢別の限界値を超える場合(だいたい32~35Torrあたりです)
石綿に関わる法律やその申請について_e0156318_11322889.jpg
 石綿肺の場合、じん肺管理区分2または3のみでは健康管理手帳の要件を満たすだけですが、一定の合併症が伴えば労災認定の要件も充足することになりますので、医師はこの労災認定の要件についても知っておく必要があります。おおまかには、石綿肺であれば管理区分2または3で合併症(肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸)にかかっているとき、管理区分4の場合に労災申請が可能です。肺がんや中皮腫の場合、管理区分申請がなくとも労災認定を申請することが可能です。呼吸器科医であれば特に中皮腫の患者さんから相談を受けることが多いと思いますが、基本的に悪性中皮腫の病理学的診断が明確で、1年以上の石綿曝露があれば認定されます。どういうわけか、胸膜肥厚斑や石綿小体がないので申請できないと思い込んでおられる医療従事医者は多いです(肺がんの申請と混同されているようです)。中皮腫の場合、これらの所見がなくとも協議の上認定されることも多々あります。ただし、悪性胸膜中皮腫の病理診断と臨床診断が合致していないと認定されないこともありますので注意が必要です。ただ、いくら規定を作ってもそれに該当されない方や境界線上のような方もたくさんいらっしゃいます。複雑な場合はとりあえず労働基準監督署に相談するようおすすめする方がよいと思います。
以下にそれぞれの疾患について詳しく記載します。

1.石綿肺
 石綿ばく露労働者に発生した疾病で、じん肺管理区分が管理4に該当する石綿肺は業務上の疾病として取り扱います。(じん肺管理区分が管理2以上の石綿肺に合併した次の疾病は業務上の疾病として取り扱います。肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支拡張症、続発性気胸がこれに含まれます。

2.肺がん (中皮腫の認定より厳しめです)
石綿ばく露労働者に発症した原発性肺がんであって、以下のa.またはb.に該当する場合には、業務上の疾病として取り扱います。
 a.じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺の所見が得られていること。
 b.次のi.又はii.に掲げる医学的所見が得られ、かつ、石綿ばく露作業への従事期間が10年以上あること。
   i.胸部エックス線検査、胸部CT検査、胸腔鏡検査、開胸手術又は剖検により、胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)が認められること。
   ii.肺内に石綿小体又は石綿繊維が認められること。
なお、石綿ばく露作業への従事期間が10年に満たなくても、
・5000本以上の石綿小体(乾燥肺重量1g当たり)
・5μm超の場合で200万本以上の石綿繊維(乾燥肺重量1g当たり)
・2μm超の場合で500万本以上の石綿繊維(乾燥肺重量1g当たり)
・5本以上の石綿小体(気管支肺胞洗浄液1ml中)
のいずれかが肺内に認められた場合には、その原発性肺がんは業務上の疾病として取り扱うことができます。そのほか石綿ばく露作業への従事期間が10年に満たないものの、上記i.やii.に該当する医学的所見が得られているという場合には、労働基準監督署長は本省に協議して判断することになります。

3.中皮腫
 石綿ばく露労働者に発症した胸膜、腹膜、心膜又は精巣鞘膜の中皮腫であって、次のa.またはb.に該当する場合には、業務上の疾病として取り扱います。
 a.じん肺法に定める胸部エックス線写真の像が第1型以上である石綿肺の所見が得られていること。
 b.石綿ばく露作業への従事期間が1年以上あること。
労働基準監督署長が中皮腫の業務上外の判断を行う場合、病理組織検査記録等を収集し、確定診断がなされているかを確認します。病理組織検査が行われていない事案については、臨床所見、臨床経過、臨床検査結果、他疾患との鑑別の根拠等を確認することになります。

4.良性石綿胸水
 石綿ばく露労働者に発症した良性石綿胸水については、石綿ばく露作業の内容及び従事歴、医学的所見、療養の内容等を調査の上、協議することになります。

5.びまん性胸膜肥厚
 石綿ばく露労働者に発症したびまん性胸膜肥厚であって、次のa.またはb.のいずれの要件にも該当する場合は、業務上の疾病として取り扱います。
 a.胸部エックス線写真で、肥厚の厚さについては、最も厚いところが5mm以上あり、広がりについては、片側にのみ肥厚がある場合は側胸壁の二分の一以上、両側に肥厚がある場合は側胸壁の四分の一以上あるものであって、著しい肺機能障害を伴うこと。
 b.石綿ばく露作業への従事期間が3年以上あること。
なお、上記a.に該当するもののb.には該当しないびまん性胸膜肥厚の事案は、協議することになります。

 なお、労災には、療養補償給付(病院でかかる医療費)、休業補償給付(労災によって賃金が得られないための補償)、傷病補償年金(療養1年半後も傷病が治らないとき)、遺族補償給付などがあります。下図は、呼吸器科医も書類に記載することが多い療養補償給付と休業補償給付の流れです。
石綿に関わる法律やその申請について_e0156318_11342275.jpg

・石綿(アスベスト)新法:石綿による健康被害の救済に関する法律
 この法律は労災が認められない「隙間」に落ち込んでしまった患者さんや家族に対して迅速な対応を目的に制定された法律です。 2006年2月10日に公布されました。同年3月20日から申請受付となっています。その後、「石綿による健康被害の救済に関する法律の一部を改正する法律」が2008年7月1日に本法施行令が改正され、指定疾病に「著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺」及び「著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚」が追加されることとなりました。労働者がアスベストによって病気になった場合は、労災補償の対象となりますが、労働者の家族やアスベスト工場の周辺住民は、労災保険給付が受けらません。石綿新法は、このような労災補償の枠外に置かれたアスベスト被害者の救済を目的としています。また、死亡後5年以上が経過し、労災保険給付請求権に時効にかかってしまった遺族に対する救済措置も定めています。
新法で救済の対象となる指定疾病は、以下の4種類です。
(1)中皮腫
(2)肺がん
(3)著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺
(4)著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚
石綿に関わる法律やその申請について_e0156318_11353515.jpg
 また、特別遺族給付金についてこの法律が関与しております。特別遺族給付金には、特別遺族年金と特別遺族一時金があります。特別遺族年金は原則年額240万円、特別遺族一時金は1,200万円ですが、平成34年3月27日までが請求期限です。
 いずれの申請についても、環境再生保全機構に申請することになります。
石綿に関わる法律やその申請について_e0156318_11374077.jpg

石綿に関わる法律やその申請について_e0156318_11385513.jpg



by otowelt | 2012-11-13 11:48 | レクチャー

実臨床におけるオマリズマブ(ゾレア)の有効性の検討

実臨床におけるオマリズマブ(ゾレア)を検討した論文です。

Lamiae Grimaldi-Bensouda, et al.
Does omalizumab make a difference to the real-life treatment of asthma exacerbations? Results from a large cohort of patients with severe uncontrolled asthma
CHEST. 2012 doi: 10.1378/chest.12-1372


背景:
 オマリズマブは、コントロール不良の重症アレルギー性喘息患者に対してプラセボと比較すると入院や救急受診のリスクを減少させるとされている。実臨床(real-time settings)におけるオマリズマブを処方された患者におけるこの縦断的試験で、標準治療に上乗せした治療としての使用が重症喘息増悪のリスクを減少させるかどうか検証した。

方法:
 適切な吸入あるいは経口ステロイドと長時間作用型β2刺激薬の使用にもかかわらずコントロールが不良な重症喘息の成人患者コホートでオマリズマブを登録時に使用されていない患者を登録。喘息発作による入院リスクおよび/または救急受診のリスクについて年齢、性別、喫煙歴、BMI、GERD、アレルギーステータス、アレルギー性鼻炎、治療内容、オマリズマブ治療2ヶ月より前の入院あるいは救急受診で調整し、Andersen-Gill(Cox)モデルを用いて算出した。

結果:
 全体で767人の患者が登録。患者374人がオマリズマブを最低でも1度投与された(平均観察気管20.4ヶ月)。オマリズマブ使用は、入院および/または救急受診の補正相対リスクの減少と相関:0.57 (95%CI: 0.43-0.78)。オマリズマブ使用者では、治療中の間では非治療期間に比べてこの補正相対リスクはやはり減少:0.40 (95% CI: 0.28-0.58)。

結論:
 実臨床におけるコントロール不良重症喘息患者におけるオマリズマブ追加投与は、喘息発作による入院および/または救急受診のリスクを減少させる。

by otowelt | 2012-11-13 00:31 | 気管支喘息・COPD

IPFにおけるDHEA/DHEA-S不均衡的減少が抗線維化機構を抑制

Criselda Mendoza, et al.
DHEA has strong antifibrotic effects and is decreased in idiopathic pulmonary fibrosis
ERJ November 8, 2012 erj00274-2012


背景:
 特発性肺線維症(IPF)は、筋線維芽細胞と異常肺リモデリングに特徴づけられた、年齢関連性の肺疾患である。デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、ステロイドプロホルモンであり年齢とともに減少するが慢性変性疾患によっても減少するとされている。

方法:
 われわれは、血清DHEAおよび硫酸化DHEAレベルを137人のIPF患者と年齢および性別をマッチさせた58人のコントロールで測定し、ヒトの肺の線維芽細胞に対する影響を調べた。

結果:
 IPFのうち87人が男性、50人が女性であった(64.1±9.9歳)。
 血清DHEA/DHEA-Sは有意に男性のIPF患者で減少していた(DHEA, 平均(最大-最小): 4.4 (0.2-29.2) vs 6.7 (2.1-15.2) ng/ml; p<0.01; DHEAS,中央値: 47 (15.0-211) vs 85.2 (37.6-247.0)μg/dl; p<0.001)。一方女性ではDHEA-Sのみが有意に減少(中央値: 32.6 (15.0-303.0) vs 68.3(16.4-171); p<0.001)。
 DHEAは線維芽細胞増殖を減少させるはたらきがあり、~2倍の線維芽細胞アポトーシスを確認した。これらは、カスパーゼ-9活性化による内因性経路を経ているものと考えられた。
 さらにこれらは、プロアポトーシス蛋白のいくつかのアップレギュレーションに付随しており(Bax and cyclin-dependent kinase-inhibitor CDNK1A)、抗アポトーシス蛋白のダウンレギュレーションに関連していた(c-IAP1/c-IAP2など)。DHEAは、TGF-β1によるコラーゲン産生を有意に減少させ、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化やPDGFによる線維芽細胞遊走を抑制した。

結論:
 IPF患者においてDHEA/DHEA-Sの不均衡的減少がみられ、この分子が複数の抗線維化特性を有することがわかった。

by otowelt | 2012-11-12 20:25 | びまん性肺疾患