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吸入β刺激薬で治療されている成人気管支喘息発作に対してアミノフィリン点滴はアウトカム改善せず

e0156318_224778.jpg 気管支喘息発作に対して、個人的にはアミノフィリンを使うことはあまりありません。
 小児科領域のシステマティックレビューでは、β2刺激薬やステロイドにアミノフィリンを加えることで、投与6時間以内の呼吸機能の改善をもたらしたという結果がありますが、インパクトはやはり小さいものです。
Mitra A, et al. Intravenous aminophylline for acute severe asthma in children over two years receiving inhaled bronchodilators. Cochrane Database Syst Rev. 2005 Apr 18;(2):CD001276.
 日本ではアミノフィリンがどうも好まれている印象がありますが、少なくともテオフィリンなどのキサンチン誘導体を内服している患者さんにすぐに点滴をおこなうような真似だけはしたくないものです。

Nair P, et al.
Addition of intravenous aminophylline to inhaled beta(2)-agonists in adults with acute asthma.
Cochrane Database Syst Rev. 2012 Dec 12;12:CD002742. doi: 10.1002/14651858.CD002742.pub2.


背景:
 気管支喘息は、時にあるいは頻繁に増悪をもたらし救急部の受診の原因となる慢性の病態である。アミノフィリンは、急性の気管支喘息発作で広く用いられてきた。しかしながらその役割については、特に吸入β2刺激薬への追加的利益では明らかでない。

目的:
 救急部で急性の気管支喘息発作に対して吸入β2刺激薬に加えて静注点滴アミノフィリンで治療をおこなう意義を検証する。

方法:
 Cochrane Airways Group registerより試験を抽出(MEDLINE, EMBASE, CINAHL standardised searches)。Abstractを読み、手作業で呼吸器系ジャーナルも参照した。2人の独立したレビュアーがスクリーニングをおこない、信頼性のある論文を抽出した。2012年9月まで参照した。
 試験は、吸入β2刺激薬で治療されている成人の気管支喘息発作患者に対してアミノフィリン点滴とプラセボ点滴にランダムに割り付けられた比較試験を選んだ。ステロイドやほかの気管支拡張薬の有無は問わないものとした。

結果:
 15試験が前回のコクランシステマティックレビューで組み込まれたが、今回さらに2試験を追加した。スタディの質は中等度であった。アミノフィリンの用量やほかの使用薬剤についてスタディ間の異質性が確認され、試験間で気管支喘息発作の重症度にも差異がみられた。
 アミノフィリンの点滴は、入院率(OR 0.58; 95% CI 0.30 to 1.12; 6 studies; n = 315)に統計学的な有意差をもたらさなかった。2000年のシステマティックレビューと同様に、気流制限アウトカムについても利益をもたさなかった。
 アミノフィリン治療患者では、動悸や不整脈(OR 3.02; 95% CI 1.15 to 7.90; 6 studies; n = 249)、嘔吐(OR 4.21; 95% CI 2.20 to 8.07; 7 studies; n = 321)の副作用が有意にみられた。しかしながら、振戦については有意差はなかった(OR 2.60; 95% CI 0.62 to 11.02; 5 studies; n = 249)。

結論:
 救急部を受診した成人の気管支喘息発作に対して吸入β2刺激薬にアミノフィリンの点滴を加える意義は臨床的に乏しく、入院率を減らすものでもない。100人にアミノフィリンを点滴するごとに、20人に嘔気を、15人に不整脈や動機をもたらすことを考えれば、利益とリスクを天秤にかければ少なくとも推奨される治療法ではない。


by otowelt | 2013-01-10 00:47 | 気管支喘息・COPD

CRPと呼吸機能減衰は男性にのみ有意に関連

e0156318_8542080.jpgスウェーデンから、CRPと呼吸機能の関連についての論文です。

Olafsdóttir IS, et al.
CRP is associated with lung function decline in men but not women: A prospective study
Respir Med. 2013 Jan;107(1):91-7. doi: 10.1016/j.rmed.2012.09.020.


背景:
 全身性の炎症は呼吸機能障害に関連している。多くのクロスセクショナルスタディでは、全身性炎症と呼吸機能障害は、女性に比べて男性に強い関連性があるという報告がなされている。この試験の目的は、全身性炎症と呼吸機能の関連を縦断的にみた場合、性差があるかどうか調べたものである。

方法:
 われわれはレイキャヴィークに1940年から1950年の間に生まれた住民をランダムに抽出し、3ステージにわけて研究をおこなった。すなわち、ベースライン(1973年~1975年、1983年~1985年)、フォローアップ(2001年~2003年)である。
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結果:
 参加者(n=1049、女性574人)のベースライン登録時平均年齢は28±6歳であり、フォローアップ平均期間は27±4年だった。いずれの時期でも、呼吸機能(一秒量と努力肺活量)とCRPが調べられた。
 登録時CRPは、男性0.63mg/L(0.57±0.70)、女性0.88mg/L(0.80±0.97)だった(p<0.0001)。
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 単変量解析(四分位)では男性に有意なCRPと呼吸機能の関連が確認された。
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 男性では、一秒量の変化(p=0.04)と努力肺活量の変化(p= 0.01)はベースライン登録時のCRPに有意に関連していたが、女性では関連性は観察されなかった。
 多変量解析では、ベースライン登録時のCRPは有意に一秒量減少(3.1 mL/year, 95% CI: 5.1-0.99)、努力肺活量減少(2.5 mL/year, 95% CI: 4.4-0.65)と関連していたが、これも男性にのみ有意にみられた所見であり、女性では関連性は観察されなかった。フォローアップ中も、男性のみがCRPの変化(1SD標準化)は一秒量減少(0.19 mL/year, 95% CI: 0.30-0.07)、努力性肺活量減少(0.11 mL/year, 95% CI: 0.22-0.01)と関連していた。
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結論:
 このプロスペクティブ試験では、全身性炎症と呼吸機能の減衰が男性で強く関連していることがわかったが、女性では観察されなかった。これは呼吸機能の減衰メカニズムにおける性差があることを示唆するものかもしれない。

by otowelt | 2013-01-09 00:28 | 呼吸器その他

抗ARS抗体陽性間質性肺炎ではPM/DMの有無による差はみられず

金沢から抗ARS抗体陽性の間質性肺炎の論文です。非常に興味深い内容です。

Hazuki Takato, et al.
Pulmonary manifestations of anti-ARS antibody positive interstitial pneumonia - With or without PM/DM.
Respiratory Medicine Volume 107, Issue 1 , Pages 128-133, January 2013


背景:
 アミノアシルtRNA合成酵素に対する自己抗体(抗ARS抗体)は、多発性筋炎/皮膚筋炎:polymyositis and dermatomyositis (PM/DM)に対する特異的な抗体であり、これによる間質性肺炎(IP)と強く相関しているといわれている。
 このスタディの目的は、抗ARS抗体陽性IP患者の臨床的特徴をPM/DMの有無によって比較することである。
 抗ARS抗体:anti-Jo-1, anti-PL-7, anti-PL-12, anti-OJ, anti-EJ, anti-KS, anti-Zo, anti-Ha

方法:
 2005年1月から2010年12月までの間、金沢大学病院においてレトロスペクティブに36人の抗ARS抗体陽性IP患者を同定した。16人の患者がPM/DMを有しており、20人の患者がPM/DMを有していなかった。患者は、PM/DM-IP群と特発性-IP (IIP)群に分けられた。
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 臨床症状、身体所見、検査データ、呼吸機能検査、胸部CT検査、気管支肺胞洗浄液(BALF)の細胞分画が比較された。

結果:
 皮膚所見、筋肉痛、血清クレアチニンキナーゼ上昇がPM/DM-IP群でみられた。PM/DM-IP群とIIP群のいずれの群においても胸部CTで両側下葉の容積減少、スリガラス影、網状影、牽引性気管支拡張がみられ、BALFで高いリンパ球比率(IIP: 44.0% ± 21.0% (mean ± SD), PM/DM-IP: 50.5% ± 23.5%)、低CD4/8比(IIP: 0.36 ± 0.34, PM/DM-IP: 0.44 ± 0.42)がみられた。また、両群とも呼吸機能の減少がみられ、予測肺活量(%)の減少(IIP: 80.1% ± 15.4%, PM/DM-IP: 73.6% ± 16.4%)、予測残気量(%)の減少(IIP: 70.7% ± 21.7%, PM/DM-IP: 71.5% ± 17.1%)、予測全肺気量(%)の減少(IIP: 73.4% ± 13.6%, PM/DM-IP: 71.6% ± 13.0%)、予測DLCO(%)の減少(IIP: 57.5% ± 26.7%, PM/DM-IP: 46.4% ± 10.3%)が観察された。
 両群とも、初期治療としてのステロイドや免疫抑制剤の反応はよかった。
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結論:
 抗ARS抗体陽性患者において、IPはPM/DMの有無を問わずよくみられるものである。慢性のIPで特にNSIPを見た場合、抗ARS抗体を測定すべきである。

by otowelt | 2013-01-08 00:11 | びまん性肺疾患

ICUの血圧測定は、収縮期血圧や非侵襲性測定法ではなく平均血圧をA-lineで測定する方が有用

e0156318_10574725.jpgICUにおけるMAPの重要性がわかる論文です。

Lehman, Li-wei H, et al.
Methods of Blood Pressure Measurement in the ICU
Critical Care Medicine: January 2013 - Volume 41 - Issue 1 - p 34–40


目的:
 ICUにおける血圧測定モニタリングにおいて、収縮期血圧か平均血圧のいずれが治療プロトコール上のターゲットにすべきかどうかその有用性を検証された報告はとても少ない。このスタディの目的は、実臨床における侵襲性血圧測定(A-line)と非侵襲性血圧測定(オシロメトリック式血圧測定)を比較し、その2測定の差が臨床的にどのように影響を及ぼすか調べたものである。

デザイン:
 侵襲性血圧測定と非侵襲性血圧測定を大規模ICUデータベース:Multiparameter
Intelligent Monitoring for Intensive Care (MIMIC)-II Databaseを使用して比較したレトロスペクティブ試験。両血圧測定の一対比較(ペアワイズ比較)をおこなった。収縮期血圧と平均血圧を侵襲性および非侵襲性でおこない、急性腎傷害とICU死亡率との関連を調べた。

セッティング:
 三次医療施設における成人ICU

患者:
 2001年から2007年までICUに入室した成人患者

結果:
 27022人の両血圧測定をおこなった一対比較解析で、非侵襲性血圧測定は低血圧時に収縮期血圧を過度に見積もっていることがわかった。
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 急性腎傷害とICU死亡は1633人、4957人の患者に認められた。われわれの試験の結果によれば、低血圧時の非侵襲性血圧測定による収縮期血圧はこれら両病態に有意に差がみられた(急性腎傷害の頻度:p = 0.008、ICU死亡:p < 0.001)。非侵襲性血圧測定と侵襲性血圧測定の平均血圧はよい一致がみられ、急性腎傷害の頻度(p = 0.28)やICU死亡(p = 0.76)の間に有意差がみられなかった。
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結論:
 侵襲性と非侵襲性の収縮期血圧測定では、臨床的に有意な解離が低血圧時に観察される。ただ、両測定方法による平均血圧は、患者の予後解析における動態でも一致した解釈が可能かもしれない。われわれの試験結果によれば、収縮期血圧よりも平均血圧の方がICUでの治療モニタリングに有用であろうと考えられる。

by otowelt | 2013-01-07 12:22 | 集中治療

東日本大震災における胸部外傷

e0156318_16201243.jpg 東日本大震災から2年近く経とうとしているのですね。
 ディスカッションで述べられているように、生存できなかった犠牲者の多さが胸部外傷受診の低さにつながったのではないかと思います。

Kimiaki Sato, et al.
Chest injuries and the 2011 Great East Japan Earthquake
Respiratory Investigation(2013), doi:10.1016/j.resinv.2012.11.002


背景:
 大地震における胸部外傷についてはまだよくわかっていない。われわれは、2011年3月11日の東日本大震災によって診断ないし治療された胸部外傷について患者プロファイルを記載することとした。

方法:
 大震災から最初の1週間の間に石巻赤十字病院を受診した3938人の診療録をレトロスペクティブにレビューした。
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 合計77人の患者が病院到着時死亡していた。残りの3861人のうち42人(1.1%)が胸部外傷を有していた。胸部外傷は身体所見や胸部レントゲン、胸部CTに基づいて診断された。

結果:
 胸部外傷は42人の患者にみられ、22人が男性、20人が女性であった(年齢範囲21-99歳)。胸部外傷の最もよくみられた原因は津波であった(21人)。その次に転落(9人)、交通事故(1人)であった。しかし、11人については情報が喪失していた。
 最もよくみられた胸部外傷の病因は裂傷や挫傷といった表層外傷であった(37人)。5人のみが肋骨骨折をきたしており、胸腔内異常は気胸(3人)、血胸(1人)、誤嚥(1人)といった内訳であった。

ディスカッション:
 Wenchuanにおける地震や、阪神淡路大震災では10%以上の患者に胸部外傷がみられたとされている(World J. Surg. 2010;34:728–32.、Chest 1996;110:759–61.)。今回の東日本大震災における胸部外傷は少なかったが、これは全体の重症度が低かったり地震の規模が小さかったわけではなく、規模の大きさや津波の影響、低体温の影響などによって致死的に陥った犠牲者が多数存在したためではないかと考えられる。

結論:
 胸部外傷の患者数は驚くべきことに少数であった。ほとんどの患者が入院を要さなかった。重篤な胸部外傷による少数生存者は、大地震による津波によって説明される外傷であった。
 

by otowelt | 2013-01-05 10:57 | 救急

入院を要するCOPD患者に対して抗菌薬投与はステロイドへ上乗せ効果をもたらす

e0156318_10101938.jpg意外にエビデンスの少ない、COPD急性増悪に対する抗菌薬の臨床試験です。実はCOPD急性増悪に対するステロイドの使用も臨床試験はあまり多くありません。

Mihaela S. Stefan, et al.
Association Between Antibiotic Treatment and Outcomes in Patients Hospitalized With Acute Exacerbation of COPD Treated With Systemic Steroids
CHEST. 2013;143(1):82-90


背景:
 抗菌薬は、COPD急性増悪(AE-COPD)において広く使用されているが、導入済であるステロイドに対して付加的効果があるかどうかはよくわかっていない。われわれは、ステロイド治療を受けている入院AE-COPD患者の大規模コホートで抗菌薬とアウトカムの関連を調べた。

方法:
 40歳以上の入院AE-COPD患者で、2006年1月1日から2007年12月1日までの間、アメリカ410急性期医療施設においてレトロスペクティブコホート試験を実施した。53900人の患者が適格基準を満たし、85%が抗菌薬を最初の2病日に受けており、50%がキノロンによる単独治療、22%がマクロライド+セファロスポリン、9%がマクロライドによる単独治療を受けていた。
 抗菌薬を受けていない患者と比較して、抗菌薬治療を受けた患者は死亡率が低かった(1% vs 1.8%, P < .0001)。多変量解析では、抗菌薬の使用は院内死亡率の40%のリスク減少(RR, 0.60; 95% CI, 0.50-0.73)およびCOPDによる30日再入院の13%のリスク減少(RR, 0.87; 95% CI, 0.79-0.96)に寄与した。後期の人工呼吸管理およびClostridium difficile腸炎による入院は両群で有意差はみられなかった。

結論:
 汎用されている抗菌薬治療レジメン間ではほとんどアウトカムの差はなかった。ステロイド導入済の入院AE-COPD患者において、抗菌薬を追加することが良い結果をもたらすかもしれない。

by otowelt | 2013-01-05 00:09 | 気管支喘息・COPD

胸水中メソテリンは悪性胸膜中皮腫の診断に有用であり、腎機能に影響されない

胸水中メソテリンの有用性に関する報告です。e0156318_9511737.jpg

Clare E. Hooper, et al.
A prospective trial evaluating the role of mesothelin in undiagnosed pleural effusions
Eur Respir J 2013 41:18-24.


背景:
 メソテリン(mesothelin)は、中皮細胞から産生される40-kDaの糖蛋白である。これは、悪性胸膜中皮腫(MPM)の診断に役立つツールとして提唱されている。しかし、腎機能障害によって影響を受けることが過去の試験でわかっている(Lung Cancer 2011; 73: 320–324.、Clin Chem 2009; 55: 1431–1433.)。
 われわれは、血清および胸水中メソテリンのMPMに対する診断能について検証をおこない、腎機能障害が結果に及ぼす影響についても調べた。

方法:
 われわれはプロスペクティブに230人の新規未診断胸水患者を登録し、血清(n=216)および胸水(n=206)のメソテリンをELISAによって測定した。

結果:
 230人中28人(12%)がMPMであった。MPMとそのほかの疾患との鑑別において、血清メソテリンは感度59.3%、特異度64.7%、陰性的中率(NPV) 91.2%、陽性的中率(PPV) 20.5%であり、胸水中メソテリンは感度72.0%、特異度87.5%、NPV 95.5%、PPV 46.2%であった。マッチ比較では、胸水メソテリンの診断特性は血清よりも高かった(p=0.0001)。
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 MPMにおける血清メソテリンは、腎機能障害患者において有意に高かったが(p=0.007)、胸水中メソテリンは影響を受けなかった。良性胸水でGFR59ml/min以下であった35人のうち19人(54%)で血清メソテリンの偽陽性が確認された。
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結論:
 胸水中メソテリンの診断精度は血清よりも優れており、腎機能に影響を受けない。中皮腫の検査前確率が低い患者では、高いNPVであるがゆえにメソテリンが陰性であればその確からしさは増すであろう。ただ、未診断胸水においてメソテリンをルーチンに測定することは有用でないかもしれない。

by otowelt | 2013-01-04 04:32 | 肺癌・その他腫瘍

呼吸器専門医数が少ないほど、気管支喘息やCOPDの死亡率が高い

呼吸器内科医にとってきわめて重要な報告であるため、ご紹介させていただきます。

山谷睦雄ら.
わが国における気管支喘息および慢性閉塞性肺疾患死亡率:呼吸器専門医数および呼吸器内科教授在籍との関係
日医雑誌141: 2003-2007, 2012.


背景:
 日本呼吸器学会将来計画委員会がこれまで実施した施設調査では、呼吸器科医師の地域間の偏在が明らかになっている。また、呼吸器科勤務医が致死的な疾患を有する高齢者を多く扱い、入院患者、救急などに対応するために超過勤務を強いられ、過酷な状況で勤務している実態も明らかになっている。

方法:
 呼吸器科勤務医不足によって、医療を受ける患者の生命予後に与える影響を検討した。
 気管支喘息死亡率およびCOPD死亡率は厚生労働省平成21 年人口動態統計を使用した。総務省統計局平成22 年国勢調査人口等基本集計より求めた人口を分母に、同基本集計より求めた気管支喘息およびCOPD の死亡者数を分子にして、都道府県別の気管支喘息死亡率およびCOPD 死亡率(対10万人)を計算した。
 呼吸器専門医数は日本呼吸器学会の専門医一覧(平成23年8月15日付)から都道府県別に集計した。厚生労働省平成20年患者調査より病院数を求め、病院当たりの呼吸器専門医数を計算した。

結果:
 気管支喘息死亡率と呼吸器専門医数、および慢性閉塞性肺疾患(COPD)死亡率と呼吸器専門医数との関係を都道府県別でみると、これらは逆相関を示し、病院当たりの呼吸器専門医数が少ないほど気管支喘息死亡率およびCOPD死亡率は上昇した。呼吸器内科専任教授が不在の県においては、教授が在籍する都道府県に比べて呼吸器専門医数が少ない状況が明らかとなった。
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結論:
 呼吸器内科専任教授の不在は呼吸器専門医の減少を招き、呼吸器科医が専門性を発揮して治療に当たる気管支喘息およびCOPDの死亡率上昇に関連する。呼吸器内科専任教授の不在および呼吸器専門医の不足は気管支喘息およびCOPD患者の生命予後を悪化させることが示唆された。

by otowelt | 2013-01-03 00:53 | 気管支喘息・COPD

終末期癌患者の脱水補正は脱水関連症状や生存を改善せず

 今年もよろしくお願いします。
 終末期癌患者さんには1日500ml程度の輸液でよい、というのが世界的なコンセンサスとしてあります。ただ、脱水を合併した終末期患者さんには輸液を多めに投与すべきかどうかというジレンマがありました。個々の判断はケースバイケースだとは思いますが、実臨床に影響を与えるランダム化比較試験結果かもしれません。
 とかく呼吸器科領域では、あまり輸液を多くすると時に患者さんが喀痰に溺れるような事態を招くことを経験します。そのため、ドライサイドに管理するよう心がけている医師も多いでしょう。

Eduardo Bruera, et al.
Parenteral Hydration in Patients With Advanced Cancer: A Multicenter, Double-Blind, Placebo-Controlled Randomized Trial
JCO January 1, 2013 vol. 31 no. 1 111-118


目的:
 ほとんどの終末期癌患者さんは病院で末梢輸液を受け、ホスピスでは輸液を受けてないが、いずれのプラクティスにもエビデンスは限られている。このランダム化比較試験では、脱水による症状、QOL、進行癌患者の生存に対する輸液の効果について検証する。

患者および方法:
 2007年2月5日から2011年4月16日までの間、Silverado Hospice, Odyssey Hospice, Vitas
Hospice, Houston Hospice, Christus VNA Hospiceにおいて本試験が実施された。
 終末期進行癌患者で、皮膚ツルゴールは鎖骨下領域において減弱しており(2秒超)、脱水アセスメントで脱水がみられ脱水関連症状を有するもの、余命1週間以上は予想される患者を登録した。
 上記6病院129人の癌患者を末梢輸液(生理食塩水1L/日)あるいはプラセボ(生理食塩水100ml/日)にランダムに割り付けた。プライマリアウトカムは、ベースラインと4日目の脱水関連症状の変化(疲労、ミオクローヌス、鎮静、幻覚:0点が最良で40点が最悪)とした。セカンダリアウトカムは、Edmonton Symptom Assessment Scale (ESAS), Memorial Delirium Assessment Scale (MDAS), Nursing Delirium Screening Scale (NuDESC), Unified Myoclonus Rating Scale (UMRS), Functional Assessment of Chronic Illness Therapy–Fatigue (FACIT-F), 脱水アセスメントスケール、血清クレアチニン、血清BUN、全生存率とした。

結果:
 輸液群(n = 63)とプラセボ群(n = 66)は、ベースラインの特徴が同等であった。
 2群間で脱水関連症状の変化に有意差を同定されなかった(−3.3 v −2.8, P = .77)。また、セカンダリアウトカムについても4日目までに有意差はみられず:ESAS (all nonsignificant), MDAS (1 v 3.5, P = .084), NuDESC (0 v 0, P = .13), UMRS (0 v 0, P = .54)。全生存率も両群とも有意差はみられなかった(中央値 21 v 15日, P = .83)。
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結論:
 プラセボと比較して1日1Lの輸液は脱水症状、QOL、生存を改善しなかった。


by otowelt | 2013-01-02 00:02 | 肺癌・その他腫瘍