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サルコイドーシスによる肺高血圧症に対するボセンタンは平均肺動脈圧を下げる

サルコイドーシスによる肺高血圧症に対するボセンタンは平均肺動脈圧を下げる_e0156318_1354472.jpg サルコイドーシスの肺高血圧症に対するボセンタンの論文です。

Robert P. Baughman, et al.
Bosentan for sarcoidosis associated pulmonary hypertension: A double-blind placebo controlled randomized trial
Chest. 2013. doi:10.1378/chest.13-1766


背景:
 サルコイドーシスに関連した肺高血圧症(SAPH)は、呼吸困難感が遷延するサルコイドーシス患者においてよくみられる問題である。

目的:
 SAPH患者における肺動脈の血行動態に対するボセンタン治療の効果を同定すること。

デザイン:
 右心カテーテル検査でSAPHと診断した患者を、ボセンタンあるいはプラセボに割り付けた二重盲検プラセボ対照試験。ボセンタン:プラセボ=2:1で割り付けた。ボセンタンは最大用量で125mg1日1回とした。サルコイドーシスケアをおこなっている複数の施設で行われた。

評価項目:
 呼吸機能検査、6分間歩行試験、右心系血行動態(平均肺動脈圧、肺血管抵抗)。

結果:
 35人の患者が16週の治療を完遂した(23人がボセンタン、12人がプラセボ)。ボセンタン治療を受けた患者では、16週の治療によって平均肺動脈圧-4 (標準偏差6.6) mm Hg (p=0.0105)、肺血管抵抗-1.7 (標準偏差2.75) Wood’s units (p=0.0104)の減少がみられた。プラセボで治療を受けた患者では、これらの血行動態アウトカムには影響はみられなかった。また、6分間歩行距離については両群とも差はみられなかった。ボセンタンで治療を受けた患者のうち2人が酸素必要量の増加を要した。
サルコイドーシスによる肺高血圧症に対するボセンタンは平均肺動脈圧を下げる_e0156318_13555616.jpg
(平均肺動脈圧:文献より引用)

結論:
 ボセンタンはSAPHの患者において肺動脈の血行動態を改善させることができた。


by otowelt | 2013-11-18 00:25 | サルコイドーシス

新しい吸入合剤:フルティフォーム®、レルベア®

 近日中に、吸入ステロイド薬(ICS)/長時間作用型β2刺激薬(LABA)の合剤に選択肢が2つ増えることになります。その商品名は、フルティフォーム®とレルベア®です。

 いずれもフルチカゾンをベースにしたICS/LABAですが、レルベアはアラミスト®と同じフランカルボン酸エステルです。また、フルティフォームとシムビコートは同じホルモテロールというLABAを使用しています。

新しい吸入合剤:フルティフォーム®、レルベア®_e0156318_11223114.jpg
. ICS/LABA一覧(自作)

 比較的軽度の気管支喘息の患者さんに対して、約2週間のフルチカゾンによるrun-in periodの後、フルチカゾン/ホルモテロール(フルティフォーム)(100μg/10μg1日2回)、フルチカゾン(100μg1日2回)、ホルモテロール(10μg1日2回)、プラセボを比較した12週間のランダム化比較試験があります。これによれば、フルチカゾン/ホルモテロールは朝の吸入前一秒量の変化、吸入2時間後の一秒量の変化、効果不良による吸入薬中止といったアウトカムを改善させました。
Nathan RA, et al. Safety and efficacy of fluticasone/formoterol combination therapy in adolescent and adult patients with mild-to-moderate asthma: a randomised controlled trial. BMC Pulm Med. 2012 Oct 18;12:67.

 また、フルティフォームはブデソニド/ホルモテロールに非劣性であったとする報告もあります。
・Cukier A, et al. Fluticasone/formoterol dry powder versus budesonide/formoterol in adults and adolescents with uncontrolled or partly controlled asthma. Respir Med. 2013 Sep;107(9):1330-8.
・Bodzenta-Lukaszyk A, et al. Fluticasone/formoterol combination therapy versus budesonide/formoterol for the treatment of asthma: a randomized, controlled, non-inferiority trial of efficacy and safety. J Asthma. 2012 Dec;49(10):1060-70.


 レルベアについての臨床試験は以前当ブログで紹介しました。

気管支喘息に対するフルチカゾン/ビランテロールはアドエア®と同等の有効性


 重要な点として、新規合剤であるフルティフォームとレルベアは現時点では気管支喘息にしか適応が通らない状態で販売開始となる予定なので、COPDの治療選択肢には入れることはできません。また、シムビコートのようにSMART療法のような使い方はできませんので注意して下さい。

 それぞれの特徴を挙げるとすると、フルティフォームはpMDIですのでアドエアエアゾールと同じく、DPIが苦手な患者さんによいかもしれません。また、レルベアは1日1回の吸入でコントロールが可能になった初めてのICS/LABAの合剤ということもあり、かなり期待されているようです。ただ、レルベアはエリプタという吸入器デバイスがやや大きめです。フルタイド®ロタディスクと同じくらいの大きさをイメージしておくとよいかもしれません。

 レルベアについてはグラクソスミスクラインが大々的にウェブサイト(http://relvar.jp/top.html)を立ち上げていますので、興味のある方はご覧になってみてはいかがでしょうか。


by otowelt | 2013-11-16 09:14 | 呼吸器その他

気胸にどのくらいの太さのドレーンを入れるべきか

気胸にどのくらいの太さのドレーンを入れるべきか_e0156318_10415347.jpg
・はじめに
 私は研修医や看護学校でも時折教鞭をとっているので、どこかのお医者さんが作った看護学校の問題を試験問題の作成の際、参考にさせていただくことがあります。いつだったか、こんな問題を見かけたことがあります。

自然気胸に対して胸腔ドレーンを留置する場合、適切なドレーンの径はどれか?
 a) 12Fr b) 16Fr c) 20Fr d) 24Fr e) 28Fr

 呼吸器専門医の間でも意見が分かれる問題だと思います。いまだに正解のない世界です。


・太いドレーンの方がよいのか?
 ―――ドレーンの単位であるフレンチ(Fr)は3Fr=外周1mmという計算式が成り立つそうです。そもそもフレンチサイズはドレーンの外周をmmで表したものです。円周=2πrですから、ドレーンの外周=ドレーン外径×3.14(π)です。そのため、24Frはπで割って外径約8 mmという計算になるわけです(厳密には7.6mmですが)。
膿胸などの感染性の胸水に対してはフィブリンや膿がドレーン孔を閉塞しないように太いドレーンを入れた方がよいと言われています。細径でもアウトカムを変えずにむしろ疼痛を少なく管理することができるという報告もありますが(Chest. 2010 Mar;137(3):536-43.)、膿胸に対して10Fr未満のドレーンを入れてうまく管理できた記憶がありません。16Frでも細すぎるくらいで、最低でも20Fr、できれば24Frが推奨する外科医が多いと思います。

 気胸の場合、COPDや肺の構造改変がある患者さんでは太めの胸腔ドレーンを入れた方がよいと言われています。その理由は、細径の場合に局所的なベルヌーイの定理(のようなもの)がはたらくからではないかと考えられています。

 太いドレーンであるほど、ドレナージ効果やアウトカムの確実性は上がると思いますが、反面疼痛という合併症は強くなります。細いドレーンで成功することを目指すことは患者さんにとって本当に良いことなのか、いまだに分かっていません。


・MDQAで質問
気胸にどのくらいの太さのドレーンを入れるべきか_e0156318_21414320.jpg
 MDQA(http://www.mdqa.jp/)において、現場で働く医師に対して質問させていただいたところ、以下のような回答が得られました。内容は、一部編集・省略しています。

 私は細径までは使用しませんが、気胸に関しては16Fr以下の細めのチューブを推奨しています。空気は胸水と異なり、適切に胸腔に挿入したら太い径は必要ないと考えております。太いチューブは若い男性は疼痛にも弱い傾向があり患者さんにも負担をかけると思います。緊張性気胸は時間が勝負なので診断したらサーフロー針で患側の前胸部から脱気をまずしてそれから細めのチューブを適切に入れる方針でよいと考えています。緊張性気胸だから太いチューブを入れる必要はなく、適切な挿入がやはりポイントと思います。また、アスピレーションキットは細いですが逆にこしが無い分、肺を刺すリスクもあり積極的には使用しておりません。


by otowelt | 2013-11-15 14:39 | 呼吸器その他

結核治療の既往がある患者に対するTNF阻害薬は安全か

結核治療の既往がある患者に対するTNF阻害薬は安全か_e0156318_13284474.jpg 結核既往の半数が腸結核である点、結核の治療が導入については“irrespective of the confirmation of TB diagnosis”である点がかなり気になります。IGRA陽性率が低いですね・・・。

Kyung-Wook Jo, et al.
Incidence of tuberculosis among anti-tumor necrosis factor users in patients with a previous history of tuberculosis
Respiratory Medicine Volume 107, Issue 11, November 2013, Pages 1797–1802


背景:
 結核治療の既往がある患者におけるTNF阻害薬について調べること。

方法:
 結核治療の既往がある患者で、2004年12月から2012年9月までの間TNF阻害薬を投与された101人を登録した。南韓国の牙山医療センターで実施された。

結果:
 101人の平均年齢は40.4±16.0歳で、51人(50.5%)が男性だった。基礎疾患は、Crohn病が55人(54.5%)、関節リウマチが27人(26.7%)、強直性脊椎炎が13人(12.9%)だった。胸部レントゲン写真では、33人(32.7%)に結核既往が確認できた。ツベルクリン反応およびインターフェロンγ遊離アッセイはそれぞれ21.8%、44.6%で陽性だった。過去の不適切な結核治療や最近の濃厚接触のために潜在性結核感染として治療されたのは11人(10.9%)だった。TNF阻害薬を開始して中央値で31.5ヶ月フォローアップされた。
 TNF阻害薬を開始してから6年、潜在性結核感染に対して治療を受けていなかった1人の患者が結核を発症した。これは10万人年あたり336の頻度であった。

結論:
 結核の既往を有する免疫修飾性疾患の患者において、TNF阻害薬による治療はその結核発症頻度に鑑みて忍容性がある。


by otowelt | 2013-11-15 00:01 | 抗酸菌感染症

大豆イソフラボンによって放射線治療の副作用が軽減

大豆イソフラボンによって放射線治療の副作用が軽減_e0156318_1714946.jpg 放射線治療を受ける患者さんに大豆イソフラボンを摂取してもらうと面白いかもしれませんね。

Hillman, Gilda G, et al.
Radioprotection of Lung Tissue by Soy Isoflavones
Journal of Thoracic Oncology:November 2013 - Volume 8 - Issue 11 - p 1356-1364


背景:
 放射線による肺炎と線維化は肺癌における放射線治療の妨げとなる。臨床前肺癌モデルにおいて、大豆イソフラボンは腫瘍結節影に対して放射線ダメージを増強し、正常肺に対しては同時に保護的な作用があると報告されている。我々は、大豆イソフラボンの肺組織に対する放射線保護的な役割について検証した。

方法:
 放射線治療3日前~4ヶ月後までの間、Balb/cマウスが経口大豆イソフラボン治療を受けた。放射線治療は左肺に12Gy照射された。放射線治療後、マウスは毒性と呼吸数を2,3,4ヶ月後にモニターされた。反応性を評価するために肺組織を病理学的に観察した。

結果:
 放射線治療は正常毛包に対してダメージを与え、左胸郭領域に脱毛を惹起した。大豆イソフラボンによって放射線による皮膚障害と脱毛は保護できた。
 肺への放射線治療によって4ヶ月後にわたってマウスの呼吸数が増加した。これは放射線の晩期障害によるものと考えられる。しかしながら、これも大豆イソフラボンによって緩和することができた。
大豆イソフラボンによって放射線治療の副作用が軽減_e0156318_1752340.jpg
(文献より引用)

 組織学的な評価では、放射線によって炎症細胞浸潤が肺胞や細気管支領域にみられ、進行性の線維化がみられた。これらの有害事象も大豆イソフラボンによって緩和された。

結論:
 大豆イソフラボンは、放射線による皮膚障害、脱毛、呼吸数増加、肺炎、線維化に対して保護的に作用することが明らかとなった。


by otowelt | 2013-11-14 00:10 | 肺癌・その他腫瘍

鎖骨下静脈の中心静脈カテーテル挿入が困難な場合、内頚静脈か大腿静脈のいずれがよいか

鎖骨下静脈の中心静脈カテーテル挿入が困難な場合、内頚静脈か大腿静脈のいずれがよいか_e0156318_9301093.jpg 個人的には鎖骨下静脈よりも内頚静脈のアクセスの方が慣れているのですが、いまだに決着がついていない「内頚静脈 vs 大腿静脈」という議論があります。

Jean-François Timsit, et al.
Jugular vs. Femoral Short-Term Catheterization and Risk of Infection in ICU Patients: Causal Analysis of 2 Randomized Trials
American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine, in press.


背景:
 ICUにおける中心静脈カテーテルの留置に際して鎖骨下静脈のアクセスが困難なとき、内頚静脈か大腿静脈のいずれを選択すればいいのか議論の余地がある。

方法:
 2つの多施設共同試験のデータを用いて、大腿静脈および内頚静脈におけるカテーテル関連血流感染症(CR-BSI)、主要なカテーテル関連感染症(M-CRI)、カテーテル先端コロナイゼーションのリスクを比較した。また、ドレシングの破綻、皮膚コロナイゼーションの頻度も比較した。われわれはInverse probability of treatment weighting (IPTW)法による周辺構造モデル を用いてバイアスの補正をおこなった。

結果:
 2128人の患者(2527カテーテル、19481カテーテル・日)を登録した。CR-BSIの頻度、(1000カテーテル・日あたり内頚静脈1.0 vs. 大腿静脈1.1、ハザード比0.63[95%信頼区間0.25~1.63]、p=0.34)、M-CRIの頻度(1000カテーテル・日あたり内頚静脈1.8 vs. 大腿静脈1.4、ハザード比0.91[95%信頼区間0.38~ 2.18]、p=0.34)、コロナイゼーションの頻度(1000カテーテル・日あたり内頚静脈11.6 vs. 大腿静脈12.9、ハザード比0.80[95%信頼区間0.25~1.63]、p=0.15)に差はみられなかった。
 しかしながら、IPTW Coxモデルではコロナイゼーションは女性の方に多くみられ(ハザード比0.39、95%信頼区間0.24~0.63、p<0.001)、カテーテルを4日超留置している場合に多くみられる傾向にあった(ハザード比0.73、95%信頼区間0.53~1.01、p=0.05)。非クロルヘキシジンドレシング剤使用者でも、コロナイゼーションは多くなった(ハザード比0.60、95%信頼区間0.39~0.90、p=0.01)。
鎖骨下静脈の中心静脈カテーテル挿入が困難な場合、内頚静脈か大腿静脈のいずれがよいか_e0156318_9183630.jpg
(文献より引用:非クロルヘキシジンドレシング剤使用者のCR-BSI)

結論:
 大腿静脈および内頚静脈のカテーテル関連感染症は同程度であった。女性や非クロルヘキシジンドレシング剤使用者、4日を超えるカテーテル留置の場合には内頚静脈の方が望ましいかもしれない。鎖骨下静脈のアクセスが困難な場合、大腿静脈および内頚静脈からのアプローチはいずれも容認できる。


by otowelt | 2013-11-13 00:20 | 集中治療

メタアナリシス:コントロール不良気管支喘息に対するチオトロピウム追加は呼吸機能を改善

メタアナリシス:コントロール不良気管支喘息に対するチオトロピウム追加は呼吸機能を改善_e0156318_21391120.jpg 興味深い観点のメタアナリシスです。

Tian JW, et al.
Tiotropium versus placebo for inadequately controlled asthma: a meta-analysis.
Respir Care. 2013 Oct 29.


目的:
 このメタアナリシスは、不適切にコントロールされた気管支喘息に対して通常の治療レジメンにチオトロピウムを加えることの効果と安全性を評価したものである。

方法:
 PubMed、Medline、CENTRALデータベース、Clinicaltrials.govから、不適切にコントロールされた気管支喘息に対して4週間以上のチオトロピウムあるいはプラセボを投与したランダム化二重盲検試験を抽出した。

結果:
 6試験が適格基準を満たした。チオトロピウムを加えることは、プラセボと比較して有意に呼吸機能検査結果を改善させた。具体的には、朝および夜のピークフロー(加重平均差20.59 L/min, 95%信頼区間15.36~25.81 L/min, P<.001、加重平均差24.95 L/min, 95%信頼区間19.22~30.69 L/min, P<.001)、トラフおよびピーク一秒量(加重平均差0.13 L, 95%信頼区間0.09~0.18 L, P<.001、加重平均差0.10 L, 95%信頼区間0.06~0.14 L, P<.001)、一秒量AUC0-3h(加重平均差0.13 L, 95% 信頼区間 0.08~0.18 L, P<.001), トラフおよびピーク努力性肺活量(加重平均差0.1 L, 95%信頼区間0.05~0.15 L, P<.001、加重平均差0.08 L, 95%信頼区間0.04~0.13 L, P<.001), 努力性肺活量AUC0-3h(加重平均差0.11 L, 95%信頼区間 0.06~0.15 L, P<.001)である。ACQ-7の平均変化はチオトロピウム群で低かったが、臨床的に有意ではなかった。また、AQLQスコア(p = 0.09)、夜の中途覚醒(p = 0.99)、レスキュー使用(p = 0.06)には差はみられなかった。チオトロピウム群で有意な副作用の増加は観察されなかった(オッズ比0.80、95%信頼区間0.62~1.03、p = 0.08)。

結論:
 不適切にコントロールされた気管支喘息患者において、通常の治療レジメンにチオトロピウムを加えることは副作用を増加させずに有意に呼吸機能を改善させる。


by otowelt | 2013-11-12 00:07 | 気管支喘息・COPD

特発性肺線維症患者におけるデヒドロエピアンドロステロンの減少

特発性肺線維症患者におけるデヒドロエピアンドロステロンの減少_e0156318_11181612.jpgIPFとDHEAの関連についての話題です。

Mendoza C, et al.
DHEA has strong antifibrotic effects and is decreased in idiopathic pulmonary fibrosis.
ERJ November 1, 2013 vol. 42 no. 5 1309-1321


背景:
 特発性肺線維症(IPF)は、筋線維芽細胞の集簇と異常な肺リモデリングに特徴づけられる加齢に関連した肺疾患である。デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は、年齢とともに減少するステロイドプロホルモンであるが、極度の減少は慢性変性疾患に関連すると考えられている。

方法:
 われわれは137人のIPF患者と58人のコントロール患者において、血清DHEAおよびその硫酸化型(DHEA-S)を測定し、ヒト肺線維芽細胞に対するDHEAの効果を調べた。

結果:
 血清DHEA/DHEA-SはIPFの男性患者で有意に減少していた(DHEA中央値[range] 4.4[0.2–29.2] vs. 6.7[2.1–15.2] ng/mL, p<0.01、DHEA-S中央値[range] 47 [15.0–211] vs. 85.2 [37.6–247.0] mg/dL, p<0.001)。女性においてはDHEA-Sのみが減少していた(32.6 [15.0–303.0] versus 68.3 [16.4–171] mg/dL, p<0.001)。
特発性肺線維症患者におけるデヒドロエピアンドロステロンの減少_e0156318_11134264.jpg
(文献より引用)

 DHEAは線維芽細胞の増生を減少させ、同細胞のアポトーシスを約2倍に増加させた。カスパーゼ-9(細胞内の自発的なストレス応答)活性化がその機序であると考えられる。この効果は、いくつかの前アポトーシスタンパクのアップレギュレーション、および抗アポトーシスタンパクのダウンレギュレーションに付随していた。またDHEAはトランスフォーミング増殖因子-b1によるコラーゲン産生、線維芽細胞から筋線維芽細胞への分化を抑制した。

結論:
 IPF患者においてDHEA/DHEA-Sの不釣り合いな減少が観察された。


by otowelt | 2013-11-11 00:45 | びまん性肺疾患

呼吸数は数えるべきか?

呼吸数は数えるべきか? _e0156318_10415347.jpg・はじめに
 私は呼吸器内科医ですから、毎日のように肺炎の患者さんを診察します。身体所見を疎かにしていると怒られるかもしれませんが、最近はバイタルサインのうち呼吸数をあまり数えていない自分がいます。さすがに呼吸が促迫している場合や呼吸様式の異常を診た場合には、呼吸の観察のときに呼吸数をカウントすることもあります。しかし元気な肺炎患者さんを診たとき、呼吸数を疎かにしてしまう場面は少なくありません。呼吸器内科医としてあるまじきことなのかと思いきや、意外にも呼吸数を測定していないスタッフは多いことを最近知りました。

 正確な呼吸数を把握するには、十分な時間(1分間等)をかけて呼吸数を確認しなければなりません(Ann Emerg Med. 2005 Jan;45(1):68-76.)。というのも×4、×2で倍々に数値を出すと誤差が大きくなるためです。しかし、実臨床上はこういった簡便な手法の方が主流だと思います。

 しかしながら、呼吸数が18回であっても22回であっても、39度の発熱がある市中肺炎の患者さんに対するアセスメントは大きく変わりません。もちろん前者が鼻カニューレを要して、後者がリザーバー付きマスクを要する低酸素状態であれば全く話は変わりますし、ショックの合併の場合は呼吸数の早期把握が重要になります。

・MDQAで質問
呼吸数は数えるべきか? _e0156318_21414320.jpg
 MDQA(http://www.mdqa.jp/)において、現場で働く医師に対して質問させていただいたところ、以下のような回答が得られました。内容は、一部編集・省略しています。

-大学病院でコンサルテーションをしている時やHIV外来をしている時に積極的に自分で測定することはほとんどありません。外勤で老人ホームのかかりつけ医として仕事をする時の方が役に立つ印象を受けます。特に肺炎の発症が疑われる状況でホームで治療するか、搬送を指示するかの際には酸素飽和度と同じくらい呼吸数を参考にしています。ホームの看護師にも協力してもらって、報告に呼吸数を入れるようにしてもらっています。身体所見全般に言えることかもしれませんが、リソースが足りないところでの判断で威力を発揮するかもしれません。呼吸数は低酸素、高CO2両方を反映するので、結果として呼吸器以外の広範な臓器障害を反映します。腹痛の患者さんが、腹部所見はぱっとしないのに妙に呼吸数が早いのでおかしいと思って搬送したら重篤な病態だった、という経験もあります。

‐数えるべきか数えなくてもよいかと言われると、「数えるべき」というのが教科書的に正しい答えになるでしょうが、自分自身も全員自分で数えているかと言われると全員ではありません。数え方も標準化されていないと思いますし(15秒数えて4倍するか、20秒数えて3倍するか、30秒数えて2倍するか、1分数えるか)。医師または看護師の「見た目で大丈夫そう」という判断と、実際数えてみた呼吸数に解離があるようなら「数えるべき」ということになるでしょうし、あまり解離がないのなら「全例数える必要はない」ということになるでしょう。

‐シチュエーションにもよります。外来患者か入院患者にもよります。毎日のように入院患者さんの呼吸数を数えることは基本的にありません。基本は外来患者さん、特にCOPDの患者さんは意識して測ります。具体的には、この患者さんはいつもと違ってつらそうだな(COPDで増悪しているかも?)というシチュエーションや、肺炎で入院するかもしれないというときには必ず数えます。基本は15秒で4倍法(勝手に命名)で測定しています。ただこの方針で、入院を決め手になっているかどうか、行動変容があるかは確かに分からないです。呼吸数が変動している場合、他の検査所見で何らかの理由で入院になっていることがありそうで、それが決め手となっているかは確か難しいですね。

‐初診であれば主訴により、慢性疾患であれば疾患により必要性の差はあると思います。一般に発熱や上気道炎症状の場合は、呼吸数を状態把握のためにバイタルサインとして診療録に記載します。慢性疾患として高血圧で診ている方のバイタルサインは心拍数、血圧が中心になりますが、慢性心不全の方では呼吸数把握が必要です。特に安静時と診察室に入ってきた直後の呼吸数の差は、病態把握に役立ちます(科学的ではありません、印象です)。血圧、心拍数は個人差が大きいのですが、呼吸数はあまり変動がないので、一般内科診療では促迫していると感じた時にしっかりと測定するようにしています。ベテランの先生方のように呼吸数の変動を肌で感じ取ることができればよいですが、研修中は呼吸数と疾患の重症度や変化との関係を学ぶために、できるだけ省略をしないほうが良いと思います。

‐全ての患者さんで必要ではないと思います。慢性の呼吸器疾患、循環器疾患が背景にある方は呼吸数の変化が臨床的イベントの気づきのヒントになるので数えるのがよいと思います。発熱と呼吸数の関係も救急系の雑誌でたまに論文があり臨床研究的には面白い領域だと思います。また、敗血症で最初に動くバイタルサインは呼吸数の上昇と言われているので救急室や病棟当直で呼吸数を把握する事は役にたつ場面が多いかと思います。



by otowelt | 2013-11-08 10:37 | 呼吸器その他

低体温療法は肺炎と敗血症のリスク

低体温療法は肺炎と敗血症のリスク_e0156318_21165324.jpg 近年おこなわれる頻度が多くなった低体温療法についてです。

Geurts, Marjolein, et al.
Therapeutic Hypothermia and the Risk of Infection: A Systematic Review and Meta-Analysis
Critical Care Medicine, 7 October 2013,doi: 10.1097/CCM.0b013e3182a276e8


目的:
 観察研究によれば、低体温療法の合併症として感染症はよくみられるものである。われわれは、低体温療法における感染症のデータを有するランダム化比較試験のシステマティックレビューおよびメタアナリシスをおこなった。

方法:
 PubMed, Embase, Cochraneにおいて2012年10月までの研究を検索した。そのうち、治療群における感染症の頻度を報告した低体温療法のランダム化比較試験を登録した。

結果:
 23の試験、2820人の患者が同定された。1398人(49.8%)が低体温療法群に割り付けられた。他の31のランダム化比較試験、4004人の患者データは感染症の詳細なデータが不足しており、この研究には用いられなかった。ランダム化の手法および感染症の定義の情報が不足していたこともあって、組み込まれたランダム化比較試験の間のバイアスリスクは大きかった。出版バイアスは観察されなかった。
 低体温療法を受けた患者において、全ての感染症のリスクは増加しなかったが(リスク比1.21、95%信頼区間0.95-1.54)、肺炎および敗血症のリスクは増加した(肺炎:リスク比1.44、95%信頼区間1.10~1.90、敗血症:リスク比1.80、95%信頼区間1.04~3.10)。
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低体温療法は肺炎と敗血症のリスク_e0156318_2181019.jpg
(文献より引用)

結論:
 幾ばくかのバイアスはあるものの、利用できるエビデンスによれば低体温療法と肺炎および敗血症の間には強い関連がみられた。一方で全体の感染症のリスク上昇は観察されなかった。


by otowelt | 2013-11-08 00:41 | 集中治療