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医療従事者の投資

医療従事者の投資_e0156318_15251836.jpg いつもと趣向を変えたエッセイです。

・はじめに
 私は投資の専門家ではないので、突っ込みどころがたくさんあるかもしれませんが、経済学に興味がある素人の一意見として御笑覧下さい。


・医療従事者の投資
 医療従事者が投資を行う場合、どういったプランで行うべきかという成書はありません。職種に限らずとも、いわゆる毎日仕事をしている人間がどのように投資をすればいいのか、詳しく記した本も数えるくらいしかありません。私自身も、投資に明るい人からしてみればただの素人です。初心者なりに、毎日働きしながら投資を行うなら一体どういった投資がリスクが少なく妥当な選択肢かというのを考えてきました。

 銀行預金も見方を変えれば投資なのかもしれません。しかしながら、銀行預金の利回り(預金者にとってのイコール利益)は極めて低く、タンス預金とほとんど変わりません。利回りのよい投資方法はたくさんあるにもかかわらず、大多数の人が銀行預金という形で資産を保持しています。

 この理由として、
1.銀行預金とその他投資を比較した仕事量対効果のイメージが湧かないこと
2.医療従事者は元来理系であり投資について学ぶ機会が少ないこと、あるいは学ぶ時間がないこと
3.医療従事者は資格職であり、そもそも投資のニーズが少ないこと

が挙げられると思います。

 もちろん、住宅や車を購入してそれを資産にしているケースも多いですが、どちらかと言うとそれは資産として捉えているわけではなく、“生活に必要だから購入した”という動機の方が大きいかもしれません。

 医療従事者は、施設の副業規定に抵触しない投資であれば可能です。実は、一定規模内であれば国家公務員であろうと不動産投資すらも可能です。証券口座を開設する場合、「公務員」などの職業欄すら設けているくらいです。ただし、念のため施設の業務規約を確認した方が無難でしょう。


・投資はコワイ?
 では、銀行預金以外の投資はコワくないのか?という疑問が湧きます。

 たとえば投資の代表格として、株式が挙げられます。「株をやっている」と聞けば、危険・コワイといったイメージがあるという医療従事者は少なくありません。斯く言う私も、インデックスファンドではない株式については投機に近いイメージを持っています。私たちがこう思う理由は、先に挙げた理由のうちの投資について学ぶ機会が少ないという点が大きいと思います。また、マスメディアで取り上げられる投資スタイルの多くは、株式やFX(外国為替証拠金取引)です。投信はドラマティックさに欠けるからです。外科医のドラマが多くて、内科医のドラマが少ない理由と似ていますね。

 「デイトレードで1000万円儲けた!」、「主婦がFXで100万円儲けた!」など一部の美談が取り沙汰されています。その一方で「株で破産した」なんていう失敗談も耳にすることもあり、株式は非常にギャンブル要素が大きいものだと思っている人は多いでしょう。そのため、普段仕事をしている医療従事者はリスクが高い投資を避けるべきだという意見には私も賛成です。株式にこだわるのであれば、リスクの低い銘柄や株主優待狙いで投資をするくらいが丁度いいと思います。個人的には株主優待よりもふるさと納税の方を優先していますが。


・株式以外の投資
 しかし、投資とは株式だけではありません。たとえば、投資信託があります。

 投資信託は元本割れ(投資資金が減る)するリスクが比較的少ない投資の代表格でもあります。しかし、銀行や証券会社が投資信託の商品を大量にコマースしている上、これも何となくコワイ・難しいというイメージが先行して、医療従事者にとってこの類の投資は選択肢から消えてしまいます。

 投資信託とは、投資信託協会の説明を引用するならば「投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品で、その運用成果が投資家それぞれの投資額に応じて分配される仕組みの金融商品」です。つまり、プロにまかせるというやり方です。ファンドと呼ばれているものは、おおむね投資信託とイコールと考えていいと思います。

 一般的な投資信託の安全性については、少なくとも株式よりは安全であることは間違いありません。ただし投資信託であっても、投資先の安全性を重視すれば利回りは低くなり、高い利回りを求めると安全性は低下します。銀行の投資信託に関して言えば、投資信託は手数料と信託報酬という雑費が大きく結果的にタンス預金とほとんど変わらない事態も起こりえますので、オンライン証券で投資する以外の選択肢はないでしょう。タンス預金はイヤだという医療従事者で、なおかつリスクをできるだけ取りたくないという場合には個人向け国債あたりが妥当でしょう。必要な支出があれば、一部解約すれば問題ありません。

 利回りをもう少しよくしたい場合には、ETF(株式上場投資信託)が最もリーズナブルだと思います。ETFとは何かというと、日経平均株価やTOPIXなどの指数に連動する投資信託が市場にそのまま上場したものです。それって株式と同じじゃないかと思われる方もいるかもしれません。もちろんリスクがゼロとはいいませんが、ETFはかなり安全な部類に入る投資信託だと思います(商品にもよりますが)。投資信託はそもそも複数箇所に分散投資しているという性質上、よほどの事態がなければ大暴落という事態が防げるという利点があります。ETFの場合、余計な人材を仲介しないためコストが安いというメリットがあります。といっても個人向け国債やMRFと比較するとリスクは高いかもしれません。ただ、投資に慣れて将来のプランを立てることができれば、医療従事者でもETFの長期的保有は簡明な選択肢だと私は思っています。


・医療従事者にとっての投資のハードル
 「投資とは何なのか」という最初のスタートラインを知るためには、それなりの勉強が必要です。インターネットには初心者向けの情報が溢れていますので、本を購入しなくても勉強することは可能です。理系の職業に就いている私たちの多くは、この経済学にアレルギーを持っています。しかし、常にアップデートされる医学と比べてその情報量は決して多くありません。

 本気で投資家を目指すわけではありませんから、最低限のラインを知っておけばいいと思います。タンス預金のままではイヤだ、と少なくとも現状の資産に不安な人は、資産運用について一度勉強してみてはいかがでしょう。


by otowelt | 2013-11-07 00:30 | その他

HIV陽性/陰性カップルにおけるHIV感染パートナーへの早期の抗レトロウイルス療法の費用対効果

HIV陽性/陰性カップルにおけるHIV感染パートナーへの早期の抗レトロウイルス療法の費用対効果_e0156318_9534571.jpg パートナーに対する早期ARTの社会医学的な観点の論文です。

Rochelle P. Walensky, et al.
Cost-Effectiveness of HIV Treatment as Prevention in Serodiscordant Couples
N Engl J Med 2013; 369:1715-1725


背景:
 HIV陽性/陰性カップルに対する、HIV感染パートナーへの早期の抗レトロウイルス療法の費用対効果はよくわかっていない。HIV感染進行コンピュータシミュレーションおよびHIV予防試験ネットワーク052試験のデータを使用して、当該感染パートナーに対する早期抗レトロウイルス療法の費用対効果を調べた。

方法:
 HIV陽性/陰性カップルに対して、南アフリカとインドにおいて抗レトロウイルス療法の早期開始と待期的開始を比較した。5年間および生涯にわたる評価項目として、累積HIV伝播率、生存期間、費用、費用対効果などが挙げられた。早期治療について、増加分の費用対効果比が年間1人あたり国内総生産(GDP)(南アフリカは8100ドル、インドは1500ドル)を下回ったときには費用対効果が非常に高いものと定義し、GDPの3倍を下回った場合には費用対効果が高いと定義し、待期的開始と比べて総費用が減少し生存期間が延長した場合には費用節約効果ありと定義した。

結果:
 南アフリカでは、早期の抗レトロウイルス療法は5年間は日和見疾患を予防することができ、費用節約効果がみられた。生涯では費用対効果が非常に高かった(生存期間延長1 年あたり590ドル)。インドでは、早期治療は5年間は費用対効果が高く(生存期間延長1年あたり1800ドル)、生涯では費用対効果が非常に高かった(生存期間延長 1年あたり530ドル)。
 南アフリカとインドの両方とも早期治療により短期間のHIV伝播を予防することができたが、生存期間が延長するとともにこの効果は減弱した。生存期間が延長した理由として、治療を受けた患者にもたらされる臨床的な利益が挙げられた。

結論:
 南アフリカにおける早期の抗レトロウイルス療法は5年間は費用節約効果が高く、南アフリカおよびインドでは、生涯の費用対効果が非常に高かった。HIV陽性/陰性カップルに対する早期抗レトロウイルス療法が支持される。



by otowelt | 2013-11-06 00:01 | 感染症全般

大気汚染によって低出生体重児のリスクが増加

大気汚染によって低出生体重児のリスクが増加_e0156318_911913.jpg PM2.5は世界の大気汚染における長期的課題です。


Marie Pedersen, et al.
Ambient air pollution and low birthweight: a European cohort study (ESCAPE)
The Lancet Respiratory Medicine, Early Online Publication, 15 October 2013, doi:10.1016/S2213-2600(13)70192-9


背景:
 環境大気汚染は胎児発育に害を与え、幼少期の呼吸器系に対する悪影響と密接に関連している。われわれは、出生体重における環境大気汚染の低濃度曝露が母体にどういった影響を与えるか調べた。

方法:
 ヨーロッパ12ヶ国における14の母親-小児コホート試験からデータを抽出した。1994年2月11日から2011年6月2日までの間、出生体重、週数、児の性別の情報が得られた単胎出生の74178人の女性が試験に登録された。プライマリアウトカムは低出生体重児とした(37週以降、2500g未満)。
 登録した母親の妊娠中の住所地における浮遊粒子状物質(PM2.5、PM10)の平均濃度が測定された。また近隣主幹道路の交通量も調べられた。ランダム効果モデルによってこれらの影響を検証した。

結果:
 妊娠中、PM2.5濃度が5 μg/m3上昇することは、低出生体重のリスク増加と関連性がみられた(補正オッズ比1.18, 95%信頼区間1.06—1.33)。リスク増加は現時点でのEUの年間PM2.5基準である25 μg/m3であっても観察された(20 μg/m3未満範囲における5 μg/m3上昇ごとのオッズ比1.41, 95%信頼区間1.20—1.65)。また、PM10(10 μg/m3上昇ごとのオッズ比1.16, 95%信頼区間1.00—1.35), NO2(10 μg/m3上昇ごとのオッズ比1.09, 95%信頼区間1.00—1.19), 主幹道路付近の交通密度(1日あたり5000台増加ごとのオッズ比1.06, 95%信頼区間1.01—1.11)についても低出生体重のリスクを増加させた。
 PM2.5濃度を妊娠中に10 μg/m3に減少させることの人口寄与危険度は、低出生体重例を22%(95%信頼区間8-33%)減少させることに相当する。

結論:
 妊娠中の大気汚染および交通への曝露は胎児発育の抑制と関連する。都市部の大気汚染がヨーロッパで制御可能となれば、低出生体重例を減ずることができるかもしれない。


by otowelt | 2013-11-05 00:23 | 呼吸器その他

新刊のご紹介

「jmed 28―非専門医のための肺炎診療指南書 あなたも名医!侮れない肺炎に立ち向かう31の方法」(山本舜悟)

 微力ながら一部協力させていただいたので、是非紹介させてください。



 研修医時代、私の指導医だった山本舜悟先生が編集された“肺炎診療指南書”です。私が初期研修を受けた病院は、指導医の先生の多くが神がかり的な知識と臨床力を持っているという、『ゴッドハンド輝』のヴァルハラのような病院でした(私にはそう見えました)。当時の指導医の先生方が日本・世界の医療の第一線で活躍しておられるのを見ると、自分は何と恵まれた環境にいたのかと尚も驚かされます。右も左も分からないヒヨコ研修医に対して、山本先生は圧倒的な臨床知識とジョジョ知識でもって懇切丁寧に指導していただき心より感謝しております。
 さて、この肺炎診療指南書。私なんかが参加してよいのかというほど、どっぷり肺炎の臨床に染まった方々が執筆しておられます。内容は、第1章 市中肺炎の診断はどうする?、第2章 「場」によって市中肺炎の対応はこう変わる!、第3章 病院での市中肺炎の治療―症状に応じたベストチョイスを!、第4章 ゼッタイ押さえておきたい!病原体ごとに異なる診療上の注意点、第5章 知っておきたい院内肺炎のこと、第6章 知っておきたい特殊な患者における診療上の注意点、第7章 肺炎は予防も大事!、第8章 お悩みQ&A―ほかの先生はどうしているの?こんなとき!という構成でおよそ270ページあります。
 偏ってしまう恐れがあったので敢えて感染症科医だけで執筆者を構成しなかった、とのことです。確かにテーマに対する各々の切り口は斬新です。読んでいるだけでこちらまで奮い立つ内容になっています。肺炎に特化した書籍というのはなかなかありませんので、是非手に取ってみて下さい。
 近日中にもう1冊刊行予定とのこと。そちらも楽しみにしたいですね。

by otowelt | 2013-11-03 10:24 | 感染症全般

beyond PDとしてのクリゾチニブの使用

世界肺癌学会から。クリゾチニブのbeyond PDに関する報告です。

Sai-Hong I. Ou, et al.
Clinical benefit of continuing crizotinib beyond initial disease progression in patients with advanced ALK-positive non-small-cell lung cancer
15th World Conference on Lung Cancer MO07.01


概要:
 クリゾチニブを進行ALK陽性非小細胞肺癌(NSCLC)に対して使用した場合の初回増悪(PD)後にクリゾチニブを継続投与する(beyond PD)意義について検証。第I相試験PROFILE1001、第II相試験PROFILE1005に登録された進行ALK陽性NSCLC患者でPDと判定されたものの、医師の判断で継続投与により臨床的利益が得られると考えられた患者を対象に解析が行われた。
 PD後のクリゾチニブ継続投与は、PD判定後にクリゾチニブ治療を3週間以上行ったものと定義した。PDと判定された患者194人のうち、クリゾチニブ継続投与された患者は120人(62%)。
 クリゾチニブ継続投与の患者120人と継続投与しなかった患者74人を比較したところ、初回のクリゾチニブ治療が奏効した患者の割合が、前者74%、後者55%。Time to progressionはそれぞれ7.3ヶ月、5.7ヶ月だった。PDからの全生存期間(OS)の中央値が継続投与群16.4ヶ月、非継続群3.9ヶ月で、ハザード比0.27(95%信頼区間0.17~0.45、p<0.0001)。1年生存率はそれぞれ64.7%、23.9%。多変量解析の結果、PD後のクリゾチニブ治療の継続が、有意に生存延長に関与する因子だった。


by otowelt | 2013-11-02 00:06 | 肺癌・その他腫瘍

PointBreak試験:非小細胞肺癌に対する2レジメンの維持療法の比較試験

PointBreak試験:非小細胞肺癌に対する2レジメンの維持療法の比較試験_e0156318_11332977.jpg 昨年のASCOで話題になった肺癌の維持療法として重要な臨床試験であるPointBreak試験です。

Jyoti D. Patel, et al.
PointBreak: A Randomized Phase III Study of Pemetrexed Plus Carboplatin and Bevacizumab Followed by Maintenance Pemetrexed and Bevacizumab Versus Paclitaxel Plus Carboplatin and Bevacizumab Followed by Maintenance Bevacizumab in Patients With Stage IIIB or IV Nonsquamous Non–Small-Cell Lung Cancer
JCO, Published online before print October 21, 2013, doi: 10.1200/JCO.2012.47.9626


目的:
 PointBreak試験は、扁平上皮癌を除く未治療のIIIBあるいはIV期の非小細胞肺癌(NSCLC)の患者を対象に、カルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブを導入したのちペメトレキセド+ベバシズマブで維持療法を行う群(A群)と、カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブを導入したのちベバシズマブで維持療法を行う群(B群)を比較したランダム化第3相試験である。

患者および方法:
 対象は、IIIBあるいはIV期の非扁平上皮NSCLCで、肺癌に対する全身療法の治療歴がなく、ECOG PSが0-1の患者とし、脳転移がある場合は治療で安定していることとした。導入療法は21日ごとに4サイクル行い、ペメトレキセド群ではペメトレキセド(500mg/m2)+カルボプラチン(AUC 6)+ベバシズマブ(15mg/kg)を投与した。パクリタキセル群ではパクリタキセル(200mg/m2)+カルボプラチン(AUC 6)+ベバシズマブ(15mg/kg)を投与した。各維持療法は進行がなかった患者に行われた。プライマリエンドポイントはは全生存期間(OS)、セカンダリエンドポイントは無増悪生存期間(PFS)、腫瘍増大までの期間(TTPD)、奏効率、安全性、患者報告アウトカムとした。

結果:
 939人がダンラム化された(ペメトレキセド群472人[年齢中央値64.7歳、男性53.2%]、パクリタキセル群467人[年齢中央値64.7歳、53.3%])。維持療法フェーズに進んだのは、ペメトレキセド群292人、パクリタキセル群298人だった。患者背景はペメトレキセド群とパクリタキセル群で差はなかった。
 プライマリエンドポイントであるランダム化からのOS中央値は、ペメトレキセド群12.6ヶ月、パクリタキセル群13.4ヶ月だった(ハザード比1.00、95%信頼区間:0.86-1.16、p=0.949)。1年および2年の生存率は、ペメトレキセド群で52.7%、24.4%、パクリタキセル群で54.1%、21.2%だった。
PointBreak試験:非小細胞肺癌に対する2レジメンの維持療法の比較試験_e0156318_22171739.jpg
(文献より引用:A:ITT、B:維持療法集団)

 ランダム化からのPFS中央値は、ペメトレキセド群6.0ヶ月、パクリタキセル群5.6ヶ月であった(ハザード比0.83、95%信頼区間:0.71-0.96、p=0.012)。TTPDはそれぞれ7.0ヶ月、6.0ヶ月であった(ハザード比0.79、95%信頼区間:0.67-0.94、p=0.006)。奏効率はそれぞれ34.1%と33.0%だった。
 Grade3以上の有害事象で、ペメトレキセド群で多く観察されたものは、貧血14.5%、血小板減少23.3%、疲労感10.9%など。パクリタキセル群で多く観察されたのは、好中球減少40.6%、発熱性好中球減少4.1%、感覚性の末梢神経障害4.1%など。重篤な有害事象および非重篤な有害事象による治療中止は、ペメトレキセド群でそれぞれ2.7%と10.4%、パクリタキセル群では3.6%と9.0%、有害事象による死亡はペメトレキセド群1.8%、パクリタキセル群2.3%だった。

結論:
 カルボプラチン+パクリタキセル+ベバシズマブのレジメンと比較するとカルボプラチン+ペメトレキセド+ベバシズマブ投与後の維持療法によってOSが改善することはなかったが、PFSは有意に延長した。


by otowelt | 2013-11-02 00:02 | 肺癌・その他腫瘍

OSAKA-LCSG 1102:肺扁平上皮癌におけるS-1維持療法の有効性

世界肺癌学会から。個人的に興味のあった研究です。

Shiroyama T, et al.
Oral S-1 and carboplatin followed by maintenance S-1 for chemo-naive patients with advanced squamous cell lung cancer (OSAKA-LCSG 1102)
15th World Conference on Lung Cancer P3.10-019


背景:
 進行非小細胞肺癌(NSCLC)患者を対象としたLETS試験では、S-1+カルボプラチンの併用療法はパクリタキセル+カルボプラチンの併用療法に生存期間(OS)で非劣性だった。しかしながら、肺扁平上皮癌に対する維持療法の有用性については報告されていない。

方法:
 OSAKA-LCSG1102試験は、IIIB期あるいはIV期の扁平上皮癌で、PS 1以下の患者を対象とした。導入化学療法は、21日を1サイクルとして、カルボプラチン(AUC5)、S-1(80mg/m2)を14日間・4サイクル投与した。安定(SD)状態以上の効果が得られた患者にS-1 80mg/m2による維持療法を行い、病勢進行(PD)あるいは許容できない毒性の発現まで維持療法を継続した。プライマリエンドポイントは奏効率とした。

結果:
 登録された33人で解析が行われた。年齢中央値は72歳、97%が男性、IV期の患者が76%だった。
 導入化学療法のサイクル数中央値は4(range 1-4)、4サイクル完遂した患者は全体の60.6%、有害事象で治療を中止した患者は全体の6.1%だった。維持療法を受けたのは10人(30.3%)で、維持療法のサイクル数中央値は3(range 1-13)、有害事象で治療を中止した患者はいなかった。
 奏効率は、部分奏効(PR)が10人で得られた(30.3%、95%信頼区間15.6~48.7)となった。病勢コントロール率(DCR)は75.8%だった。無増悪生存期間(PFS)中央値は、導入化学療法では3.9ヶ月(95%信頼区間:3.2~4.5)、維持療法で6.0ヶ月(95%信頼区間4.2~9.0)だった。解析現時点でのOS中央値は12.6ヶ月。

結論:
 S-1+カルボプラチンによる導入化学療法後のS-1維持療法は肺扁平上皮癌患者における有望な治療選択肢となりうる。


by otowelt | 2013-11-01 00:42 | 肺癌・その他腫瘍