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トリプル吸入療法:COPDに対するレルベア®+エンクラッセ®は呼吸機能を改善

e0156318_23175684.jpg トリプル吸入製剤が発売されるのであれば、GSKが一番乗りと思われます。

Thomas M. Siler, et al.
Efficacy and safety of umeclidinium added to fluticasone furoate/vilanterol in chronic obstructive pulmonary disease: results of two randomized studies
Respiratory Medicine, Articles in Press


目的:
 この研究(NCT01957163; NCT02119286)は、COPD患者においてフルチカゾンフランカルボン酸/ビランテロール(レルベア®:FF/VI 100/25μg)にウメクリジニウム(エンクラッセ®:UMEC 62.5μgおよび125μg)を追加することの効果と安全性を調べたものである。

方法:
 12週間におよぶ多施設共同二重盲検プラセボ対照並行群間試験が実施された。適格患者は、オープンラベルFF/VI(ITT 1238人)にUMEC62.5μg、UMEC125μg、プラセボを追加する群に1:1:1にランダム化割り付けされた。プライマリエンドポイントは85日目のトラフ1秒量とした。セカンダリエンドオピントは84日目の吸入後(0-6h)加重平均1秒量とした。健康関連QOLとしてSGRQスコアが用いられた。

結果:
 GOLD病期はII~IIIを合わせると80%以上であった。ベースラインのCATスコアはおおむね16~17点であった。
 両試験において、トラフ1秒量はプラセボと比較して有意にUMEC(62.5μg、125μg)追加群で改善がみられた(range: 0.111–0.128 L, p<0.001 [85日目])。吸入後加重平均1秒量についても有意な改善がみられた(range: 0.135–0.153 L, p<0.001 [84日目])。SGRQスコアは2試験において結果が一致しなかった。全治療群で、有害事象は同等であった。

結論:
 COPDに対してFF/VIにUMECを追加することで有意な呼吸機能の改善がみられた。


by otowelt | 2015-06-30 00:26 | 気管支喘息・COPD

高齢者は気管支喘息の治療失敗リスクが高い

e0156318_11175889.jpg 高齢者は、吸入手技やアドヒアランスという問題点を常に孕みます。

Ryan M Dunn, et al.
Impact of Age and Gender on Response to Asthma Therapy
Am J Respir Crit Care Med. First published online 11 Jun 2015 as DOI:10.1164/rccm.201503-0426OC


背景:
 気管支喘息の有病率・罹患率の差には、年齢と性別が関連している。

目的:
 年齢や性別が喘息フェノタイプと関連しているかどうか、また軽症~中等症の気管支喘息患者の治療反応に影響するかどうか調べる。

方法:
 1993年から2003年までの10の臨床試験に参加した患者において、年齢や性別が喘息フェノタイプに与える影響、治療失敗に与える影響を調べた。

結果:
 1200人の患者が登録された(年齢中央値30.4歳、男性43.3%、女性56.7%)。30歳以上の患者では高頻度で治療失敗が観察された(17.3% vs. 10.3%; オッズ比1.82, 95%信頼区間1.30-2.54; P < 0.001)。呼吸機能が不良の場合や喘息治療期間が長い場合には、治療失敗リスクは高かった。
 治療内容によって層別化を行うと、吸入ステロイド薬治療を受けている30歳以上の患者では治療失敗が多かった(オッズ比/年1.03、95%信頼区間1.01-1.07)。
 治療失敗に関して男女差はみられなかった(15.2% vs. 11.7%, P =0.088)。

結論:
 特に吸入ステロイド薬治療を受けている高齢者では喘息の治療失敗リスクが高かった。性別による治療失敗率の差は観察されなかった。


by otowelt | 2015-06-29 00:41 | 気管支喘息・COPD

コントロール不良喘息のICSに加えるなら、LAMAか?LABAか?

e0156318_11175889.jpg 個人的にはACOSに対してはICS/LAMAの選択肢でいいのでは、と思います。

Kayleigh M Kew, et al
Long-acting muscarinic antagonists (LAMA) added to inhaled corticosteroids (ICS) versus addition of long-acting beta2-agonists (LABA) for adults with asthma
Cochrane Airways Group DOI: 10.1002/14651858.CD011438.pub2


背景:
 LABAはICSと組み合わせれて成人喘息に使用されているが、喘息に対する安全性の懸念が残る。LAMAはCOPDの長期管理薬として使用されているが、コントロール不良の患者に対する代替選択肢として有望である。

目的:
 ICS単独でコントロールがつかない気管支喘息患者に対してICSにLAMAを加えることの効果を、ICSにLABAを加えた効果と比較する。

方法:
 並行群間およびクロスオーバーデザインのランダム化比較試験を抽出し、ICS単独で効果がない場合にLAMAあるいはLABAを少なくとも12週間追加検証した研究を選んだ。
 事前に規定したプライマリアウトカムは、経口ステロイドを要する喘息発作、QOL、重篤な有害事象とした。

結果:
 8試験が適格基準を満たした。二重盲検ダブルダミー試験は4試験であり、治療期間は14~24週であった。ICSにチオトロピウム(レスピマット)、サルメテロールが併用されていた。
 経口ステロイドを要する喘息発作については2つの併用群で差はみられなかったが、試験間でのデータ不一致もみられた(オッズ比1.05, 95%信頼区間0.50 to 2.18; 1753 participants; 3 studies)。LAMA使用者はわずかにQOLやACT (AQLQ:平均差-0.12, 95%信頼区間-0.18 to -0.05; 1745 participants; 1745; 4 studies; ACQ:平均差0.06, 95%信頼区間0.00 to 0.13; 1483 participants; 3 studies)に変化を与えた。LABAよりもLAMAを上乗せする方がいくばくか呼吸機能上の恩恵は受けられそうだった(1秒量平均差0.05 L, 95%信頼区間0.01 to 0.09; 1745 participants, 4 studies)。しかしながら、データのばらつきが多い評価項目があり、臨床的に信頼性のある差を導き出すことは難しかった。

結論:
 ICSに加える合剤としてLAMAとLABAを比較した場合、限られたデータではあるもののLAMAの方がLABAよりも呼吸機能の改善という点ではよかったかもしれない。QOLについてはわずかな差はあるように思われたが、ほとんど差はみられなかった。現時点でICS/LABAよりもICS/LAMAを用いるべきと強くガイドラインに提唱するデータはそろっていない。


by otowelt | 2015-06-26 00:52 | 気管支喘息・COPD

COPDに対するワクチン

e0156318_23175684.jpg・インフルエンザワクチン
 COPDの患者さんに限らず、多くの日本人がインフルエンザワクチンを毎年摂取している最近。そりゃあインフルエンザにかからない方が安全だというのは分かりますが、インフルエンザワクチンを接種することでとういった効果が得られるでしょうか。

 最も重要なのは、やはり気道症状の軽減がはかれる点です1)。COPDの患者さんがインフルエンザに罹患すると、聴診すればヒューヒュー、ごはんは食べていない、ぐったりしてタイヘン!ということはよくあるのです。ワクチンそのものの有害事象で悪化しないの?と聞かれることがありますが、享受する利益の方が圧倒的に大きいのでCOPDの患者さんは全例インフルエンザワクチンを接種してよいと考えられます2)

 ちなみにメタアナリシスではインフルエンザワクチンを接種すると、COPD急性増悪の回数が有意に減ることがわかっています(加重平均差-0.37、95%信頼区間-0.64~-0.11、p=0.006)3)。ただこのメタアナリシス、組み込まれた研究の数が少ない。

 COPDに限らず、65歳以上の高齢者における研究ではインフルエンザワクチン接種によって肺炎またはインフルエンザによる入院のリスクが27%減少し(補正オッズ比 0.73、95%信頼区間0.68~0.77)、死亡リスクは48%減少しました(補正オッズ比 0.52、95%信頼区間0.50~0.55)と報告されています4)。日本のCOPDは高齢者が多いので、ワクチン接種による利益がある群としては一致した集団でしょうか。


・肺炎球菌ワクチン
 COPDの患者さんに限らず、成人に使用できる肺炎球菌ワクチンはニューモバックスNP®(23価肺炎球菌多糖体ワクチン:PPSV23)の一択だったのですが、現在はこれに加えてプレベナー13 ®(13価肺炎球菌結合型ワクチン:PCV13)が使用できます。これが非常にヤヤコシイ。

 日本は言わずと知れた先進国ですが、PPSV23の接種率はアメリカの3分の1くらいとものすごく低かったのです。在宅呼吸ケア白書というアンケート調査では、在宅酸素療法を要する慢性呼吸不全の患者さんに対してすら6割程度の接種率でした5)。「これはイカン、先進国の水準どころではないぞ」ということでワクチンの接種率向上を目指し 2014年10月より定期接種化された経緯があります。PCV13が成人の肺炎球菌ワクチンの世界に乗り込んできたのと時期を同じくしているため、何が助成で何が助成でないのかよくわからない医師も少なくありません。繰り返しますが、執筆時点では助成がおりるのはPPSV23のみです。PCV13は助成がおりません。この点は覚えておく必要があります。

 さて、ニューモバックスNP®の方から説明します。PPSV23は侵襲性肺炎球菌感染症を減らす可能性はありますが、COPD急性増悪や肺炎そのものを予防できるだけの威力があるかどうかは報告によってまちまちです6), 7)。「重篤な感染症を予防できるけど、肺炎そのものを予防できるワケではないんだよ」と指導医に教えてもらった人も多いでしょう。ただ、施設入所中の高齢者、といったベースラインの全身状態があまりよくない患者さんでは有効かもしれません8)。COPDの患者さんも高齢者が多いですから、一定の効果はあると私は思っています。

 一方、プレベナー13®はどうでしょうか。PCV13については小児ではまとまった報告はあるものの、特に高齢者ではエビデンスが少なかった。そこで、高齢者に対する臨床試験として2015年に発表されたCAPiTA試験に注目が集まりました9)。この試験によれば、高齢者に対するプレベナーはワクチン血清型の侵襲性肺炎球菌感染症、菌血症を伴わない細菌性肺炎をそれぞれ75%、45%予防可能という結果でした。しかし、市中肺炎全体の予防効果はみられませんでした。ワクチン血清型に限ったものとはいえ肺炎を予防できる可能性が示唆されました。

 以上をふまえ、アメリカ疾病管理予防センター(CDC)の予防接種諮問委員会(ACIP)は2014年に以下の内容を推奨しています10)

•肺炎球菌ワクチンの接種歴が無い、または接種歴が不明の65歳以上の成人は、PCV13をまず先に接種し、次いでPPSV23を接種。
•PCV13の接種歴が無く、かつPPSV23を1回以上接種したことがある65歳以上の成人は、PCV13を接種。
•65歳以上の成人に対するPCV13の推奨※については、2018年に再評価を行い必要に応じて内容を改定する。(※ACIPおよびCDC 所長が今回の推奨改定を承認した場合)


 では高齢者がその大部分を占めるCOPD患者さんのワクチン接種はどうすればいいのでしょう。片方接種?両方接種?

 アメリカの場合、典型的な高齢COPD患者さんは推奨に準じてPCV13+PPSV23を接種することになります。一方、イギリスやカナダなどの他の先進国では免疫不全のある患者さんに対してPCV13が推奨されていますが、一般的な高齢COPD患者さんに対してはPPSV23単独となります。日本はどうかといいますと、日本呼吸器学会と日本感染症学会が合同で「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(平成27~30年度の接種)」を発表しており、アメリカに準じてPCV13+PPSV23の両方接種を推奨しています。ただし、PCV13は助成がおりませんのでご注意を。

 なお、PCV13+PPSV23を接種する場合、ACIPはPCV13を先に接種した後にPPSV23を接種することを推奨しています。また、65歳未満であれば両者を8週間以上空け、65歳以上では1年以上空けます。過去にPPSV23を接種している患者さんに対しては、1年以上空けてPCV13を接種することを推奨しています。

 PPSV23に対する日本の助成は5歳ごとに定められており、しかも5の倍数の年齢のときだけという分かりにくい仕組みになっていますので、「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(平成27~30年度の接種)」から図を引用しますので参考にしてください。
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(引用URL[日本感染症学会内]:http://www.kansensho.or.jp/guidelines/1501_teigen.html)

 なお、当院のある大阪府堺市は、
・予防接種法に基づく定期接種
・市独自の助成による任意接種 (満65歳以上で定期接種の対象者に該当しない方)
の2種類の助成があります。

(参考文献)
1) Wongsurakiat P, et al. Acute respiratory illness in patients with COPD and the effectiveness of influenza vaccination: a randomized controlled study. Chest. 2004 Jun;125(6):2011-20.
2) Tata LJ, et al. Does influenza vaccination increase consultations, corticosteroid prescriptions, or exacerbations in subjects with asthma or chronic obstructive pulmonary disease? Thorax. 2003 Oct;58(10):835-9.
3) Poole PJ, et al. Influenza vaccine for patients with chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2006 Jan 25;(1):CD002733.
4) Nichol KL, et al. Effectiveness of influenza vaccine in the community-dwelling elderly. N Engl J Med. 2007 Oct 4;357(14):1373-81.
5)在宅呼吸ケア白書2010. 日本呼吸器学会肺生理専門委員会 在宅呼吸ケア白書 COPD疾患別解析ワーキンググループ.
6) Walters JA, et al. Injectable vaccines for preventing pneumococcal infection in patients with chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2010 Nov 10;(11):CD001390.
7) Huss A, et al. Efficacy of pneumococcal vaccination in adults: a meta-analysis. CMAJ. 2009 Jan 6;180(1):48-58.
8) Maruyama T, et al. Efficacy of 23-valent pneumococcal vaccine in preventing pneumonia and improving survival in nursing home residents: double blind, randomised and placebo controlled trial. BMJ. 2010 Mar 8;340:c1004.
9) Bonten MJ, et al. Polysaccharide conjugate vaccine against pneumococcal pneumonia in adults. N Engl J Med. 2015 Mar 19;372(12):1114-25.
10) Tomczyk S, et al. Use of 13-valent pneumococcal conjugate vaccine and 23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine among adults aged ≥65 years: recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices (ACIP). MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2014 Sep 19;63(37):822-5.

by otowelt | 2015-06-25 00:16 | レクチャー

血清および喀痰中のインターロイキンとCOPD急性増悪

e0156318_15554277.jpg CHESTからの報告です。

Juan-juan Fu, et al.
Airway IL-1β and systemic inflammation as predictors of future exacerbation risk in asthma and COPD
Chest. 2015. doi:10.1378/chest.14-2337


概要:
 プロスペクティブコホート研究において、ベースラインのインターロイキン(IL)1β、血清CRP、血清IL-6が152人の患者(気管支喘息63人、COPD89人)で測定し、気道炎症、全身性炎症と将来的な増悪との関連について調べたもの。血清IL-6および喀痰中IL-1β遺伝子発現・タンパクレベルはCOPD急性増悪を繰り返す事例において高かった(P<0.001)。気管支喘息については有意な差は観察されなかった。
 これらの炎症性経路に対する治療介入によって将来COPD急性増悪を減少させることができるかもしれない。
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(文献より引用)


by otowelt | 2015-06-24 00:03 | 気管支喘息・COPD

ACOSはCOPDと比較して入院リスクを上昇させる

e0156318_1563737.jpg ACOSは「増えている(increasing)」というより、私たちが近年作り出した疾患概念だと思っています。

Kim MA, et al.
Asthma and COPD overlap syndrome is associated with increased risk of hospitalisation.
Int J Tuberc Lung Dis. 2015 Jul;19(7):864-9.


背景:
 COPDは予後不良の疾患であり、ヘルスケアの大きな障壁である。ACOSは近年増加しており、経済的にも健康予後にも悪影響を与える。

目的:
 アジア人のACOSの臨床的特徴を調べ、COPD単独と比較して呼吸器系の問題による入院や死亡にどういった影響を与えるか調べる。

方法:
 このレトロスペクティブコホート研究において、2933人のCOPD患者を登録した(牙山医療センター:2000年1月1日から2009年12月31日)。Kaplan-MeierおよびCox比例ハザードモデルを用い、年齢、性別、喫煙歴、BMI、気流制限の重症度、気道可逆性、呼吸器系の問題によって入院を要したACOSあるいはそれによる死亡を含む臨床パラメータについて解析をおこなった。

結果:
 ACOSは、COPD単独と比較して非入院期間および生存期間が短かった。また、ACOSは年齢、喫煙歴、BMI、%1秒量、1秒量変化で補正をおこなった場合、入院のリスクを有意に上昇させた(P < 0.001)。

結論:
 ACOSはCOPD単独と比較して、呼吸器系の問題による入院のリスクを上昇させた。


by otowelt | 2015-06-23 00:39 | 気管支喘息・COPD

出版のお知らせ:ねころんで読める呼吸のすべて および お詫びと訂正

 「ねころんで読める呼吸のすべて ナース・研修医のためのやさしい呼吸器診療とケア」という本をメディカ出版から出版します。告知から1ヶ月が経過してしまったので、発売に合わせて2回目のお知らせです。今回はお詫びと訂正も兼ねさせて下さい。
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発売日 : 2015年6月22日
価格 : 2,000 円 (税別)
出版社 : メディカ出版
著者 : 倉原 優 (国立病院機構近畿中央胸部疾患センター内科)

e0156318_13141310.jpgAmazonから購入する 

e0156318_13141310.jpgメディカ出版から購入する

・お詫びと訂正
 本書では第1版の刊行にあたり、下記内容の誤りがございました。読者の皆様に謹んでお詫び申し上げますとともに、ここに訂正いたします。


第4 章-5「最も出合いたくない呼吸器疾患」
<訂正箇所>
図13 に関する説明に誤りがございました。
① p.121 下から4 行目
誤)最後に、間質性肺炎の急性増悪の胸部CT 画像をお示しします(図13 上)。
正)最後に、急性間質性肺炎の胸部CT 画像をお示しします(図13 上)。

② p.121 下から2 行目
誤)見ての通り、間質性肺炎の急性増悪の患者さんは、
正)見ての通り、急性間質性肺炎の患者さんは、

③ p.122 図13 タイトル
誤)急性間質性肺炎の急性増悪
正)急性間質性肺炎

 実はこの「間質性肺炎の急性増悪」と「急性間質性肺炎」は天と地ほどの差がある用語です。今回の訂正は、校正にあたり出版社との綿密な疎通がはかれなかった自分の責任ですが、せっかくなのでこれを機に知っていただきたいと思います。
 普段から呼吸器内科の外来をしていると、ほとんどの間質性肺炎はイコール慢性間質性肺疾患です。つまり、慢性で徐々に進行する間質性の病気です(特発性肺線維症、慢性過敏性肺炎、じん肺などなど・・・)。中には亜急性~急性の型をとる間質性肺炎もありますが、一般的にこれらが間質性肺炎として認識されることはそうそうありません。私たちが普段の外来で気を付けているのは、「もともとの間質性肺炎が悪くならないこと」です。この「もともとの間質性肺炎」が何かの原因で急激に悪くなった時、私たちは「間質性肺炎の急性増悪」呼びます。「急性増悪」という言葉は、間質性肺炎に限らず、COPDのような慢性疾患でも使います。とにかく、もともとベースにある安定した病気が急に悪さをすることを私たちは「急性増悪」と呼んでいるのです。普段からイヤイヤ期にある私の長男が、おもちゃ売り場でトミカのプラレールを買ってくれとイヤイヤすること。まさにこれは「イヤイヤ期の急性増悪」です。
 一方、「急性間質性肺炎」はこれそのものが病名です。急性に間質性肺炎を起こす病気全体を表す言葉ではなく、「急性間質性肺炎」という1つの病名なのです。すさまじいスピードで肺の中にびまん性肺胞傷害という病態が起こり、あっという間に呼吸不全に陥る病気です。原因がよくわかっていないため、特発性間質性肺炎の1つとして扱われています。もし未知のウイルスが原因による間質性肺炎だと将来わかれば、○○ウイルス性間質性肺炎といった病名に変わるかもしれません。急性間質性肺炎は一刻を争う状態なので、これを基礎疾患に持つような患者さんは外来にはいません。そのため、「急性間質性肺炎の急性増悪」という言葉は、少なくとも日本の呼吸器診療では使わない用語です。
 初版での訂正につきましては、読者の皆様方に重ねてお詫び申し上げます。

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by otowelt | 2015-06-22 00:30 | 呼吸器その他

実臨床ではCOPDに対するトリプル吸入療法は結構頻繁に行われている!?

e0156318_10134879.jpg 意外な結果でした。 

Miyazaki M, et al.
The reasons for triple therapy in stable COPD patients in Japanese clinical practice
International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease, June 2015 Volume 2015:10(1) Pages 1053—1059


背景:
 トリプル吸入療法(ICS/LABA/LAMA)はCOPDの維持療法として近年治療選択肢の1つとなっている。いくつかの臨床試験においてこれら併用療法のメリットが報告されている。しかしながら、トリプル吸入療法へのステップアップは個々の症例によって違いがある。

方法:
 慶應義塾大学およびその関連病院において実施されたこのCOPDの観察研究において、COPDを有すると呼吸器内科医によって診断・あるいはCOPDの疑いがあるとされた患者を登録した。診療録や患者への質問を通して処方歴、臨床経過がレトロスペクティブに調べられた。

結果:
 445人のCOPD患者のうち95人(21%)がICS/LABA/LAMAのトリプル吸入療法を受けていた。12人がGOLD GradeI、31人がGrade II、38人がGrade III、14人がGrade IVだった。トリプル吸入療法を受けている患者の半分以上は、症状の改善が満足できなかったという理由で開始になっており、32%は喘息合併があるということで開始になっていた。

結論:
 患者の気流閉塞が重症であろうとなかろうと、トリプル吸入療法はCOPDのリアルライフマネジメントでは頻繁に行われている治療法である。症状をよりよくするために開始されている例が多いようである。


by otowelt | 2015-06-19 00:01 | 気管支喘息・COPD

Thoracic Ventを用いた気胸の外来治療は医療費を抑制

 日本では、Thoracic Ventはシーマン株式会社が取り扱っています。気胸治療においては革命児とも言える存在です。シーマン株式会社のウェブサイトには動画つきで紹介されていますので、是非ご覧ください。

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(Thoracic vent:シーマン株式会社より許諾を得て使用[http://www.sheen-man.co.jp/product/products_nonvas/kikyou.html])

Tsuchiya T, et al.
Outpatient Treatment of Pneumothorax with a Thoracic Vent: Economic Benefit
Respiration Online First (DOI:10.1159/000381958)


背景・目的:
 高い医療費は医療経済的にゆゆしき問題であるため、コスト対効果がよい治療法が重要である。われわれの病院において、気胸の外来治療をThoracic Ventによって2012年12月から開始した。Thoracic Ventを用いた外来気胸治療は医療費を節約できると考えた。

方法:
 患者は気胸治療に際して、4群に分けられた。
 ①Thoracic Vent+外科手術
 ②Thoracic Ventのみ
 ③通常の胸腔ドレナージ+外科手術
 ④通常の胸腔ドレナージのみ
 われわれは、平均医療費、入院期間、外来受診の頻度を4群で比較した。

結果:
 2年間の研究において、65人の気胸患者のうち36人がThoracic Ventで、29人が通常の胸腔ドレナージで治療された。
 手術を要した患者のうち、Thoracic Ventによる治療を受けた患者は通常の胸腔ドレナージで治療された患者と比べて平均入院期間が短く(5.0±1.3日 vs. 10.3±3.4日; p < 0.0001)、全体的な医療費が少なかった(971,830±81,291.8円 vs 1,179,791.1 ± 198,383.1円、p < 0.0001)。
 手術を要さなかった患者のうち、Thoracic Ventによる治療を受けた患者は通常の胸腔ドレナージで治療された患者と比べて全体的な医療費が少なかった(79,960± 25,643.6円 vs 268,588.8± 94,636.5円、p < 0.0001)。
 重篤な合併症は報告されなかった。

結論:
 外来でのThoracic Ventを用いた気胸治療は有意に医療費を抑制する。この経済的な意義は大きい。


by otowelt | 2015-06-18 00:31 | 呼吸器その他

LAMにおける腹腔内のリンパ脈管筋腫は絶食時に小さくなる

e0156318_21492533.jpg 20%前後の日内変動があることを報告した有意義な論文です。

Angelo M. Taveira-DaSilva, et al.
Effect of Fasting on the Size of Lymphangioleiomyomas in Patients with Lymphangioleiomyomatosis
Chest. 2015. doi:10.1378/chest.15-0456


背景:
 リンパ脈管筋腫は孤発性リンパ脈管筋腫症(LAM)患者の38%にみられ、腹部に起こると疼痛や腹囲増大をきたし悪性腫瘍と見誤られることがある。LAMのリンパ行性浸潤は、血清VEGF-Dの上昇と強く関連している。リンパ脈管筋腫は日中にその大きさに変動がみられる。われわれは日中の食事摂取によって乳糜形成とリンパ流の増大をきたし、リンパ脈管筋腫が日内増大する原因になっているのではないかと仮説を立てた。

方法:
 腹部超音波検査と血清VEGF-Dを非絶食下(1日目)および絶食(2日目)の状況でデータ採取した。患者の状態をマスクされた状態で放射線科医がリンパ脈管筋腫の大きさを測定した。Wilcoxon検定により、絶食時の腫瘍径と非絶食時の腫瘍径が比較された。

結果:
 35人の女性が登録された(平均45.2±8.5歳、平均%1秒量82±25%、平均%DLCO 64±25%)。腫瘍径が測定可能であったのは30人だった。
 解析の結果、絶食は腫瘍堆積を平均20.7±39.3 cm3(24±40%)減少させた (p<0.001)。ただし、絶食時のVEGF-D値には非絶食時と比較して有意な差はなかった(10,650±900 pg/ml vs. 12,100±800 pg/ml, p=0.56)。
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(同文献Figure 1.より引用[Chest. 2015. doi:10.1378/chest.15-0456])

結論:
 絶食時にはリンパ脈管筋腫の腫瘍が小さくなる。逆に、食事摂取とLAM細胞による部分的な乳糜管閉塞の合併により腫瘍が大きくなるのかもしれない。絶食時に画像検査をおこなうことは、腫瘍がLAMによるものか悪性によるものか鑑別の一助になるかもしれない。


by otowelt | 2015-06-17 00:18 | びまん性肺疾患