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特発性肺線維症(IPF)が孕む医師患者間のギャップ その2

e0156318_9301181.jpg●IPFの説明から逃げない
 特発性肺線維症(IPF)という疾患は、難治性です。根治することはありません。しかし、ピレスパ®やオフェブ®といった治療法の登場により、医療従事者と患者さん双方に希望の光が照らされているのは事実です。それでもなお、IPFはゆるやかに進行します。
 IPFの診療において最も重要なのは、「患者さんへの説明から逃げないこと」だと思います。もちろん、逃げている医師なんて世の中にいないと信じていますが、とかくこのIPFという疾患はその学問的難易度の高さから、病状説明をないがしろにしがちな側面もあります。それが患者さん側にとっては、“逃げ”であると捉えられることがあるようです(実際のIPF患者さんから指摘されたことがあります)。
 それを前提に以下の文章を書いてみました。


●患者さんに説明する前に医療従事者が知っておくべき内容
・特発性肺線維症(IPF)が特発性間質性肺炎(IIPs)の病型の1つであることを理解するのは極めて難しいため、混同する場合には特発性肺線維症の病名のみを用いた方がよい。ただし漢字でも7文字あるので、患者さんによってはIPFというアルファベット表記の方が覚えやすいこともある。
・肺に異常=肺がん、と考えてしまい、どのような陰影であっても悪性疾患の可能性を不安に思っている患者さんは多い。
・患者さんが最も知りたい情報は、IPFの治療法と予後である。特に、この先どのくらいのスピードでどうなっていくのか不安に思う患者さんがほとんどである。
・IPFは言うまでもなく予後不良の疾患であり、その疾患概要や予後説明を詳細に行うのであれば、それはがんの告知と同等と考えるべきである。(さまざまなサポートを要する)


●患者さんへの実際の説明例(検査前)
1.両方の肺にご覧のようにカゲが出ています。正常の写真と比べると、白っぽくなっているのが分かりますよね。
2.おそらく現在出ている息切れの症状は、この肺に見えてるモヤモヤとしたカゲが原因ではないかと思います。
3.このカゲの正体が何なのかこれから当院で調べていく必要がありますが、その前にどういった病気を考えているのかお伝えしたいと思います。
4.まず、可能性として肺がんなどの悪性腫瘍は考えにくいと思います。医療に絶対という言葉はありませんので、まれながんでこういったカゲになることもありますが、可能性としてはかなり低いと私は思います。
5.私が考えているのは、肺がカタくなって膨らみにくくなる病気です(後述<Memo>参照)。この肺がカタくなる病気というのは複数あるので、全部お伝えすると混乱してしまうかもしれません。診断がある程度しぼれてからご説明した方がよいでしょうか?(ある程度話の内容を理解できそうであれば、病名を紙に書きだしてもよい)
6.いずれにしても慢性的な病気だと考えていますので、一刻も早く診断をしなければならない事態というわけではないので、その点は心配なさらないで下さい。
7.考えている一部の病気には治療法があるものもありますが、現時点ですべての治療法を説明するとやはり混乱されると思うので、詳しい検査結果が分かってからお伝えした方がよいと思います。
※数字のセクションごとに理解できているか質問の時間や間をとることをオススメします。
※あくまで1つの例であり、ベストな説明方法ではありませんのでご了承ください。


<Memo>「肺がカタくなる」を説明する
 台所のスポンジをイメージして下さい。これは非常に細かい繊維できているので、握るとやわらかく弾力があります。これが正常の肺です。カタくなった肺と言うのは、ハチの巣をイメージして下さい。テレビで見たことがあるかもしれませんが、スポンジと違って外面はカチカチにカタくなっています。これは、スポンジと比べて繊維が非常に分厚くカタいためです。IPFという病気は肺がハチの巣のようにカタくなってしまうため、息を吸ってもうまく肺が膨らまないのです。このIPFの肺のことを私たちは文字通り「蜂巣肺」と呼んでいます。


●患者さんへの実際の説明例(検査後)
1.検査の結果、特発性肺線維症が最も考えられる診断だと思います。私たちは英語3文字で、アイピーエフ(IPF)と呼ぶことが多いです。なんだか難しそうな病名に聞こえますが、今からゆっくり説明します。
2.特発性(とくはつせい)という言葉は聞き慣れないと思いますが、急に起こるという意味の突発性(とっぱつせい)とは違います。特発性というのは特段発症する原因がないこと、すなわち原因が不明ということを意味しています。そして以前ご説明申し上げた通り、線維症と言うのは肺のスポンジがカタくなる病態です。言い換えると、特発性肺線維症とは「原因不明の肺がカタくなる病気」という意味です。
3.肺のスポンジは拡大するとブドウの房のように見えます。このブドウの房で私たちは呼吸をしていますが、ハチの巣のようにカタくなってしまった壁が邪魔で、うまく呼吸ができなくなります。IPFは時間とともに肺胞が次第にカタくなっていき、ゆるやかではありますが進行していくことが知られています。
3.残念ながら“根治”させる治療法は現在のところありません。ただ、進行を遅らせることができる薬(ピレスパ®、オフェブ®)があります。炎症を抑えるステロイドという薬や免疫を抑える薬によって治療されてきた歴史がありますが、現在はこういった治療は効果が十分ではないと考えられています。
4.進行は個人差が大きいですが、数年の経過で呼吸がしんどくなることが多いとされています。呼吸がしんどくなった場合には在宅酸素療法を受けた方が症状がラクになるかもしれません。
5.風邪などがきっかけになってこの病気(IPF)が急速に悪化することがあるので、定期的に通院していただく必要があります。
6.IPFは厚生労働省の難病に指定されており、一定の基準を満たせば医療費などの補助を受けることができます。
※一度に説明を行うと混乱することが多いので、複数回の診察に分けてゆっくり説明する方がよいと思います。
※数字のセクションごとに理解できているか質問の時間や間をとることをオススメします
※あくまで1つの例であり、ベストな説明方法ではありませんのでご了承ください。




by otowelt | 2015-09-18 00:51 | びまん性肺疾患

特発性肺線維症(IPF)が孕む医師患者間のギャップ その1

e0156318_9301181.jpg●「結局、この病気は難しくて分からなかった」
 私はその昔、特発性間質性肺炎のアルファベットだらけの疾患群に興味津々でした。IPF、NSIP、COP、DIP、RB-ILD・・・。難しい病気を相手に勉強しているんだという自負もあってか、患者さんがその病気についてどう理解しているかという点をないがしろにしていた気がします。

 その昔、臨床所見、放射線学的所見の結果から特発性肺線維症(IPF)と診断した患者さんがいました。病理学的には線維化を伴う非特異性間質性肺炎(NSIP)パターンが混在しており、典型的な通常型間質性肺炎(UIP)パターンではありませんでした。そのため、患者さんには「特発性肺線維症の可能性はありますが、特発性間質性肺炎のうち線維化が主体の非特異性間質性肺炎かもしれません。」といった感じの内容をできるだけ分かりやすい言葉で説明していましたが、どれだけ分かりやすい言葉を使っても理解してもらえませんでした。

 私は今でもこの患者さんに本当に寄り添えていたのか、後悔しています。その患者さんは亡くなる前に「結局この肺がカタくなる病気って、難しくて分かりませんでした・・・」と私に言いました。ピルフェニドン(ピレスパ®)が使われ始めたばかりの時代でしたが、すでに呼吸不全に陥っていたその患者さんは積極的な治療を受けることなく死亡しました。どの薬剤にも予後を劇的に改善する効果がないのであれば、あなたの病名はIPFだとはっきり言ってあげればよかった。

 間質性肺疾患は、呼吸器疾患の中で群を抜いて疾患の分類が細分化されており、アカデミックに議論されることが多い疾患です。とりわけ若い医師の方々はその未知の病態にえもいわれぬ憧れを抱くことが多いと思いますが、重要なのは目の前にいる患者さんがその病気を理解しているかどうかです。医学生ですら理解しがたいこの病気を患者さんが理解するのは至難の業でしょう。

 少しでもIPFについて患者さんに理解してもらえる病状説明とは何なのか、自分なりに記載してみたいと思います。


●なぜ患者さんが理解しにくいのか
 IPFは、中高年以上の患者さんに発症する特発性間質性肺炎の1種です。身体所見でfine cracklesが聴診され、胸部高分解能CT(HRCT)で両側下葉に蜂巣肺がみられる疾患です。しかしながら、多くのIPFの患者さんが自身の疾患について「理解が難しい」と感じており、説明する側も苦慮することがしばしば。

 患者さんがIPFを難しく感じる理由はいくつかあります。まず、医師ですら目の前の患者さんが本当にIPFなのかどうか断言することができない場合がある。これはどういうことかといいますと、IPFには鑑別疾患がたくさんあります。それぞれの特徴に差異はありますが、慢性過敏性肺炎(CHP)、サルコイドーシスなどの線維性間質性肺疾患はIPFと鑑別が困難なことがあります。そして、膠原病を後から発症する肺病変先行型の間質性肺疾患もあります。また、COPDを合併している患者さんがこういった線維化をきたす肺疾患を罹患した場合、さらに鑑別診断が複雑化します。どれほど読影に長けている放射線科医であったとしてもその患者さんがIPFであるとは断言しません。あくまで胸部HRCT上UIPパターンである、と言及するはずです。また、NSIPのうち、線維化がみられる病型をfNSIP(fibrosing NSIP, fibrotic NSIP)と呼称することもあり、確実にこの患者さんはIPFだと断言できる症例は限られているのが現状です。外科的肺生検がなくとも、臨床所見、放射線学的所見と合わせてIPFと診断することが可能ですが、現時点ではIPFという病名をつけるのは慣習的にハードルの高い基準にあり、呼吸器科領域では「安易にIPFと言うべきではない」という考えもあります。

 私は、診断基準で規定されているIPFという病名は、特に臨床試験において当該疾患を組み入れるための基準であるという側面が強いと考えています。臨床応用すべきではないとまで思いませんが、幾許か診断基準というものに引っ張られ過ぎている部分があるのではないか、と。間質性肺疾患についても、あなたはIPF、あなたはNSIPと100%振り分けられないケースがたくさん存在します。簡単にIPFだと言えない状況を作り出してしまったのは、臨床試験において間質性肺疾患を学問的に細分化することがそのまま臨床適用された弊害ではないかとも考えています(これはあくまで個人的意見です)。

 私たち医療従事者側の複雑な事情を患者さんは知る由もありません。「慢性過敏性肺炎や特発性肺線維症が鑑別に挙がります。ただ、薬剤性や膠原病も否定できないので特発性かどうかは断言ができません。」という内容を患者さんが理解するのはおそらく不可能でしょう。

(つづく)

by otowelt | 2015-09-17 00:44 | びまん性肺疾患

ブレオマイシン肺傷害モデルに対するポリフェノールの有効性

e0156318_2351037.jpg 少し気になった論文。

Impellizzeri D, et al.
Protective effect of polyphenols in an inflammatory process associated with experimental pulmonary fibrosis in mice.
Br J Nutr. 2015 Sep;114(6):853-65.


背景:
 ポリフェノールはさまざまな生物学的変化をもたらし、これまで多くの効果が示されてきた。慢性疾患に対しての有効性も報告されている。

目的:
 この研究の目的は、ブレオマイシンによる肺傷害モデルを用いて、ポリフェノール(レスベラトロール、ケルセチン)の潜在的な効果を調べることである。同時に、マンゴフェリンが多く含まれるマンゴー葉抽出物、ジヒドロケルセチンが多く含まれるブドウ葉抽出物の有効性も検証した。

方法:
 マウスの気道内にブレオマイシンを投与され肺傷害を作成した。ポリフェノールはブレオマイシン投与直後に経口投与した。それを毎日1週間投与した。

結果:
 レスベラトロール、マンゴフェリン、ケルセチン、ジヒドロケルセチンは浮腫形成と体重減少を抑制することができた。また肺組織における多核白血球浸潤を抑制し、気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞を減少させた。さらに、ポリフェノールは、一酸化窒素合成酵素の発現誘導を抑制し、肺傷害の酸化的ストレスを軽減した。アポトーシスの程度をBid/Bcl-2バランスによって評価したが、これにおいてもポリフェノールの有効性が示された。

結論:
 ブレオマイシンによる肺傷害に対して、ポリフェノールは抗炎症効果を有する。


by otowelt | 2015-09-16 00:12 | びまん性肺疾患

アメリカにおける早期気管切開を受けにくい因子

e0156318_001327.jpg 

Joshua J. Shaw, et al.
Who Gets Early Tracheostomy?: Evidence of Unequal Treatment at 185 Academic Medical Centers
Chest. 2015. doi:10.1378/chest.15-0576


背景:
 人工呼吸器を要する患者に対する早期の気管切開の利益はすでに判明しているが、挿管から気管切開までの期間に違いが出る理由についてはよく分かっていない。われわれは、気管切開までの期間の乖離について臨床的および社会的背景を同定した。

方法:
 アメリカの大学病院などが属するUniversity HealthSystem Consortiumの2007年~2010年のデータを用いて、成人で気管切開を受けた患者をレトロスペクティブに解析した。挿管から7日未満の早期気管切開群と、晩期気管切開群に分けて解析した。コホートは気管切開までの期間によって層別化し、単変量および多変量解析によって比較した。

結果:
 49191人の患者が気管切開を受けた。42%が早期(21029人)で58%が晩期(28162人)だった。単変量および多変量解析では、女性、黒人、ヒスパニック、メディケイド患者では早期の気管切開を受ける頻度が少なかった。早期気管切開は、死亡率の低下と関連していた(オッズ比0.84; 95%信頼区間0.79–0.88)。

結論:
 早期気管切開は生存に利益をもたらす。気管切開までの期間は、性別、人種、保険の種別によって乖離がみられた。エビデンスに基づく気管切開アルゴリズムが適用されることで、全体の死亡率を改善させることができるかもしれない。


by otowelt | 2015-09-15 00:15 | 集中治療

夜勤明けに手術をしても大丈夫

e0156318_9371346.jpg 夜勤明けで手術をしている外科医は多いですが、それがあまり取り上げられたことはありません。

Anand Govindarajan, et al.
Outcomes of Daytime Procedures Performed by Attending Surgeons after Night Work
N Engl J Med 2015; 373:845-853


背景:
 主治医の睡眠不足が患者アウトカムに与える影響は分かっていない。われわれは、深夜以降に診療ケアを行っていた医師が、その後の日中に待期的手術を行った場合、そのアウトカムに与える影響を調べた。

方法:
 カナダオンタリオ州において、人口ベースのレトロスペクティブマッチコホート研究を実施した。深夜から午前7 時まで夜間診療していた医師がその後の日中に行った12種類の待期手術のうちのどれかを受けた患者と、同じ医師が夜間診療がなかった翌日に行った同手術を受けた患者を、1:1でマッチさせた。アウトカムには、患者の死亡、再入院、手術合併症、入院期間、手術時間が含まれた。一般化推定方程式(GEE)を用いて患者のアウトカムを比較した。

結果:
 医師1448 人によって手術を受けた、合計38978人の患者を登録した。このうち40.6%は大学病院で手術を受けた。夜間診療を行っていた医師によってその翌日日中に手術を受けた患者と、マッチコントロール患者患者とのあいだに、プアイマリアウトカムである患者死亡、再入院、手術合併症に有意差は観察されなかった(夜間診療群:22.2% vs. 非夜間診療群:22.4%、P=0.66、補正オッズ比 0.99、95%信頼区間0.95~1.03)。粗死亡率は、どちらも1.1%と同じであった。大学病院・非大学病院、医師の年齢、手術の種類で層別化しても、そのアウトカムに有意な差はなかった。二次解析では、入院期間や手術時間についても群間差はなかった。
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(手術別の補正ホッズ比:文献より引用)

結論:
 医師が前の日の夜に夜間診療をしていてもしていなくても、その翌日の待期手術における不良アウトカムのリスクは同等であった。


by otowelt | 2015-09-14 00:22 | その他

呼吸器疾患に対するβ遮断薬が孕むジレンマ

e0156318_10365827.jpg・使いにくいβ遮断薬
 「呼吸器内科医はβ遮断薬が嫌い」という格言(?)があります。気管支平滑筋を収縮させるワケですから、COPDなどの閉塞性肺疾患がある患者さんに対しては基本的に禁忌と考えられるためです。β遮断薬の添付文書をザっとながめてみると、たとえば気管支喘息の患者さんには使いにくいようになっています。最近の循環器内科事情には精通していませんが、循環器疾患においてエビデンスが豊富なビソプロロール(メインテート®)やカルベジロール(アーチスト®)などの薬剤では、前者は呼吸器疾患(特に気管支喘息)に対しては慎重投与ですが、後者はなんと禁忌とされています。


・COPDには使ってもよい?
 2011年にBMJに衝撃的な報告がなされました。6000人近いCOPD患者さんを解析したコホート研究において、β遮断薬の使用はCOPD全体で死亡率を低下させたのです1)。また、心臓選択性のβ遮断薬を使用しても、気流閉塞の悪化はほとんど起こらないということが報告されており2)、「循環器疾患のあるCOPD患者さんに対してβ遮断薬はダメ!」というのは時代遅れになってきたのでは・・・という意見がちらほら出始めました。特に、虚血性心疾患のリスクが高そうなCOPD患者さんに対してはむしろβ遮断薬を用いた方がよいのでは、という意見もあります3), 4)

 ただし、酸素療法を要するような超重症のCOPD患者さんに対してはβ遮断薬の有害性の方が上回るとされているので注意が必要です5)。また、ACOS(asthma-COPD overlap syndrome)のような気管支喘息との合併例に対しては安易に使用しない方がよいでしょう。COPDはともかくとして、気管支喘息に対しては有害であるという意見の方が多いためです6)

 虚血性心疾患の既往があったり、将来的にそのリスクが高いCOPD患者さんにおいて、トータルでみればβ遮断剤を使用した方が生命予後の改善に結び付く可能性が高いでしょう。私も、心筋梗塞二次予防、収縮性心不全の患者さんには積極的に導入してもよいかなと考えています。β遮断薬の作用機序に目が行きがちですが、患者さんが元気に長生きできるかどうか、という視点で捉えなければならないと思います。もちろん、個々の症例について効果とリスクを天秤にかける必要があることは言うまでもありません。


(参考文献)
1) Short PM, et al. Effect of beta blockers in treatment of chronic obstructive pulmonary disease: a retrospective cohort study. BMJ. 2011 May 10;342:d2549.
2) Salpeter S, et al. Cardioselective beta-blockers for chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database Syst Rev. 2005 Oct 19;(4):CD003566.
3) Quint JK, et al. Effect of β blockers on mortality after myocardial infarction in adults with COPD: population based cohort study of UK electronic healthcare records. BMJ. 2013 Nov 22;347:f6650.
4) Du Q, et al. Beta-blockers reduced the risk of mortality and exacerbation in patients with COPD: a meta-analysis of observational studies. PLoS One. 2014 Nov 26;9(11):e113048.
5) Ekström MP, et al. Effects of cardiovascular drugs on mortality in severe chronic obstructive pulmonary disease. Am J Respir Crit Care Med. 2013 Apr 1;187(7):715-20.
6) Morales DR, et al. Adverse respiratory effect of acute β-blocker exposure in asthma: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Chest. 2014 Apr;145(4):779-86.

by otowelt | 2015-09-11 00:22 | コントラバーシー

非結核性抗酸菌症に対するベダキリンは有効かもしれない

e0156318_233338.jpg ベダキリンとマクロライドとの併用はQT延長のリスクがあります。
 多剤耐性結核に対するベダキリンの論文はNEJMにすでに掲載されています。

多剤耐性結核に対するべダキリンの有効性

Julie V. Philley, et al.
Preliminary Results of Bedaquiline as Salvage Therapy for Patients with Nontuberculous Mycobacterial Lung Disease.
Chest. 2015. doi:10.1378/chest.14-2764


背景:
 ベダキリンは、ジアリルキリノンと呼ばれる新規薬剤に分類される経口抗抗酸菌治療薬である。菌のATP合成酵素(ATP synthase)を阻害する。ベダキリンは多剤耐性結核に対して有効とされているが、非結核性抗酸菌症(NTM)に対して臨床的に試験されたことはない。

方法:
 われわれは、M. avium complex(MAC)症あるいはM. abscessus(Mab)の治療失敗に陥った肺疾患患者に対してベダキリンを探索的に用いた例を報告する。この薬剤について保険支払が可能であった患者のみを適格基準に登録した。15人の成人患者が選択されたが、10人のみがベダキリン内服可能であった(6人MAC、4人Mab)。10人の患者はベダキリン開始時にはすでに当該疾患に対して1~8年治療を受けていた。80%の患者がマクロライド耐性株を有していた(10人中8人)。患者は結核治療で用いられていたベダキリンの用量と同様のベダキリンを使用され、最も効果的な薬剤も併用した。

結果:
 もっともよくみられた有害事象は悪心(60%)、関節痛(40%)、食欲不振および主観的発熱(30%)であった。QT延長などの心電図異常はみられなかった。6ヶ月治療のあと、60%(10人中6人)の患者は微生物学的に反応がみられ、50%(10人中5人)は培養陰性化が1回以上観察された。

結論:
 この小規模な報告では、進行MACあるいはMabの患者に対するベダキリンの臨床的・微生物学的活性が示されたが、さらに大規模な研究が必要である。


by otowelt | 2015-09-10 00:33 | 抗酸菌感染症

肺動脈性肺高血圧症に対する初期治療のアンブリセンタン+タダラフィルは臨床的治療失敗リスクを低下

e0156318_1015675.jpg ヴォリブリスとアドシルカの併用の報告です。メインドラッグの併用の報告が増えてきました。

Nazzareno Galiè, et al.
Initial Use of Ambrisentan plus Tadalafil in Pulmonary Arterial Hypertension
N Engl J Med 2015; 373:834-844


背景:
 肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者に対して、アンブリセンタンとタダラフィルを初期から併用することが長期アウトカムにどのような影響を与えるか、ほとんどデータがない。

方法:
 二重盲検試験において、PAHの症状がWHO機能分類IIまたはIIIで、PAHに対して治療歴のない患者を、アンブリセンタン10mg+タダラフィル40mgによる初期併用療法を行う群(併用治療群)、アンブリセンタン10mg+プラセボの投与を行う群(アンブリセンタン単剤治療群)、タダラフィル40mg+プラセボの投与を行う群(タダラフィル単剤治療群)に、2:1:1にランダムに割り付けた。薬剤はいずれも1日1回投与とした。time-to-event解析におけるプライマリエンドポイントは、臨床的な治療失敗の初回イベントとし、死亡、PAH悪化による入院、病勢進行、不十分な長期的治療反応性の4つのいずれかの初回発生と定義した。

結果:
 合計500人を解析の対象とした。内訳は併用治療群253人、アンブリセンタン単剤治療群126人、タダラフィル単剤治療群121人だった。プライマリエンドポイントイベントはそれぞれ18%、34%、28%で発生し、単剤治療を統合した群(2つの単剤治療群をあわせたもの)では31%で発生。併用治療群の単剤治療を統合した群に対するプライマリエンドポイントのハザード比は0.50(95%信頼区間0.35-0.72、P<0.001)だった。治療開始24週の時点で、併用治療群において単剤治療を統合した群と比較して、NT-proBNPがベースラインから大きく低下し(平均変化量-67.2% vs. -50.4%、P<0.001)、臨床的な治療反応があった患者の割合が高く(39% vs. 29%、オッズ比1.56[95%信頼区間1.05-2.32]、P=0.03)、6分間歩行距離が延長した(平均変化量48.98m vs. 23.80m、P<0.001)。併用治療群では、単剤治療群と比較して浮腫、頭痛、鼻閉、貧血の有害事象が多く観察された。

結論:
 治療歴がないPAH患者では、アンブリセンタンとタダラフィルを初期から併用することで、アンブリセンタンまたはタダラフィル単剤治療と比較して、臨床的治療失敗のイベントのリスクが有意に低下した。


by otowelt | 2015-09-09 00:03 | 呼吸器その他

クリゾチニブに関連した肺障害は予後不良因子?

e0156318_10111651.jpg ザーコリによる間質性肺炎の話題です。

Créquit P et al.
Crizotinib Associated with Ground-Glass Opacity Predominant Pattern Interstitial Lung Disease: A Retrospective Observational Cohort Study with a Systematic Literature Review.
J Thorac Oncol. 2015 Aug;10(8):1148-55.


背景: 
 クリゾチニブはALK融合遺伝子変異をターゲットにした経口チロシンキナーゼ阻害薬で、非小細胞肺癌(NSCLC)に対して無増悪生存期間(PFS)の延長が示されている。重篤な間質性肺疾患(ILD)の発症は、ッ重大な有害事象の1つであり、ランダム化比較試験およびケースレポートで報告されている。

方法:
 2011年9月にクリゾチニブに関連したILDを同定した。当該症例について、2010年から2013年までの間に臨床的特徴、CT画像所見を調べ、ILDを起こさなかった患者と比較検討した。系統的な文献検索も行った。

結果:
 研究期間中に29人のNSCLC患者がクリゾチニブの治療を受け、6人がILDを発症した。肺に対する有害事象は2つのタイプが観察された。1つ目は、治療1ヶ月以内に起こる致命的なもの(1人)、2つ目は、そこまで重篤ではなく遅発性に起こるものである(5人)。後者はほとんど臨床症状がないが、CTではスリガラス影がみられ、BALではリンパ急性胞隔炎を起こしていた。これらの症例は、ILDを起こさなかった患者と比べて、PFSが長かった(19.9ヶ月 vs. 6.2ヶ月、p=0.04)。

結論:
 過去の報告を合わせると、クリゾチニブに関連したILDは合計49人(今回の6人を含める)同定された。肺に対する有害事象には2つのタイプがあり、両者で異なる経過をたどった。


by otowelt | 2015-09-08 00:37 | 肺癌・その他腫瘍

気管支拡張症に対する吸入薬の使用は血痰のリスク

e0156318_2302539.jpg 気管支拡張症に対して吸入薬を用いると、血痰リスクが上昇するという報告です。個人的にはあまり処方していません。

Eun Jin Jang, et al.
Association between inhaler use and risk of haemoptysis in patients with non-cystic fibrosis bronchiectasis
Respirology, Article first published online: 21 AUG 2015, DOI: 10.1111/resp.12618


背景および目的:
 非嚢胞性線維症(non-CF)気管支拡張症の気流制限を有する患者には吸入薬が広く用いられている。しかしながら、吸入薬の使用と血痰の関連性についてはほとんど調べられていない。この研究の目的は、血痰のリスクとnon-CF気管支拡張症の患者に対する吸入薬の使用の関連性を調べることである。

方法:
 この症例対照研究では2009年1月1日から2011年12月31日のデータベースを用いて、ICS、LABA、LAMA、SABA、SAMAを用いたことによって臨床的に有意な血痰イベントを呈した例を集め解析した。

結果:
 non-CF気管支拡張症に対して吸入薬を用いた62530人を登録し、そのうち6180人が血痰を呈した。マッチさせた27486人のコントロール患者と比較した。非補正解析では、SAMA、LAMA、SABA、ICS/LABAは有意に血痰のリスクを増加させた。他の吸入薬の使用、合併症、医療機関因子、併用薬の使用によって補正すると、SAMA、SABA、LAMAはやはり血痰のリスクを増加させた(SAMA:オッズ比1.6; 95%信頼区間1.1–1.4; LAMA:オッズ比1.2; 95%信頼区間1.1–1.2; SABA:オッズ比1.2; 95%信頼区間1.1–1.2)。抗コリン薬の使用によって血痰は用量依存性にリスクが上昇した(P for trend, <0.001)。

結論:
 non-CF気管支拡張症に対するSABAの使用、吸入抗コリン薬の使用は血痰のリスクを上昇させる。血痰の出やすい患者に対してはリスク-ベネフィット比を考慮して処方しなければならない。


by otowelt | 2015-09-07 00:04 | 呼吸器その他