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M. aviumとM. intracellulareの臨床的・疫学的な違い

e0156318_13334416.jpg 上司の論文です。このブログ、タイトルがイタリック(斜字)にできないんです。

Suzuki K, et al.
Clinical significance and epidemiologic analyses of Mycobacterium avium and Mycobacterium intracellulare lung disease from post-marketing surveillance.
Respir Investig. 2018 Jan;56(1):87-93.


背景:
 日本において肺非結核性抗酸菌症(NTM)の多くはMACであるが、その2病原菌の臨床的特徴についてはまだよく分かっていない。

方法:
 クラリスロマイシンが市場に流通した後の130施設におけるデータを解析した。M. avium感染症患者とM. intracellulare感染症患者を比較した。

結果:
 368人の患者を解析したところ、67.4%がM. avium感染症、32.6%がM. intracellulare感染症だった。層別化解析で、両病原菌で性別、疾患タイプ、合併症、既往歴、喫煙歴に差は観察されなかった。しかしながら、M. intracellulare感染症は肺に基礎疾患を有している患者に多かった(p=0.0217)。M. intracellulare感染症の患者は、高齢であるほどその感染率が増えていった(p = 0.0296)。年齢に関連した変化は女性に顕著だった(p = 0.0018)。
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(文献より引用)

 中国四国地方および九州地方ではM. intracellulare感染症が多く、M. avium感染症はそれ以外の地方に多かった。
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(文献より引用)

結論:
 このサーベイにより、M. avium感染症患者とM. intracellulare感染症の臨床的・疫学的差異が明らかとなった。


by otowelt | 2018-02-28 00:43 | 抗酸菌感染症

患者さんに伝わりにくい医学用語 その3:標準(ひょうじゅん)

e0156318_1819237.jpg・標準(ひょうじゅん)

医師:「・・・という治療が標準的です。」

患者さん:「はぁ・・・」

 私たち医師は「標準治療」という言葉の意味をよく知っています。それは、ある程度コンセンサスが得られた正しい治療という意味です。しかし、患者さんにとって「標準」とは「至極普通の」という意味に捉えられます。つまり、「標準的な治療だ」と言われても、「この先生はしっかりとした治療をしてくれないんだ」と誤解してしまうことがあるのです。

 とはいえ、「これが現時点での最高の医療です!」と言える医師はまずいないでしょう(自信たっぷりの天才外科医なら断言できるかもしれませんが)。そのため、私たちは標準という言葉を使わざるを得ないのも事実。

 誤解されることがあるため、私は「標準」という言葉はあまり使わず、「妥当と思われる」「効果的と考えられる」などのように言い換えています。とはいえ、「思われる」「考えられる」のようなシッポをつけてしまうのは、私の日本人的な性格のあらわれかもしれませんが・・・。



by otowelt | 2018-02-27 00:13 | コラム:伝わりにくい医学用語

IPF患者における重喫煙歴と気腫合併は肺癌発生のリスク

e0156318_7331272.jpg 思ったよりも頻度が高いですね。胸部レントゲン写真ではなかなか早期発見が難しいので、どのくらいの頻度で胸部CTを撮影するべきでしょうか。

Kato E, et al.
Incidence and predictive factors of lung cancer in patients with idiopathic pulmonary fibrosis.
ERJ Open Res. 2018 Feb 2;4(1). pii: 00111-2016.


背景および方法:
 IPFの患者の肺癌の頻度とリスク因子はまだよくわかっていない。われわれは、632人のIPF患者を後ろ向きに調べ、肺癌の発生とリスク因子を調べた。

結果:
 70人の患者が追跡期間中央値3.8年のうちに肺癌を発症した。1000人年あたり25.2症例の頻度であった。もっともよくみられたのは扁平上皮癌(30%)であり、82.9%は肺末梢に発生し、75.7%はUIP病変に隣接して発生した。多変量Cox回帰ハザードモデルでは、喫煙歴35pack-years以上、気腫合併例は肺癌の発生に関連していた。肺癌診断後の1年、3年、5年死亡率は、それぞれ53.5%、78.6%、92.9%だった。
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(肺癌発症のKaplan-Meier曲線:文献より引用)

結論:
 IPF患者における肺癌は頻度が高く、喫煙歴が多く、気腫合併例において顕著だった。ほとんどの肺癌はUIPに隣接して発生した。


by otowelt | 2018-02-26 00:09 | びまん性肺疾患

AANZDEM研究:COPD急性増悪の疫学と臨床アウトカム

e0156318_1633480.jpg 確かに、あまり大規模なデータがないなと思っていました。
 全身性ステロイドを使う頻度がかなり少ないですね。こんなもんでしょうか。

Anne Maree Kelly, et al.
Epidemiology, treatment, disposition and outcome of patients with acute exacerbation of COPD presenting to emergency departments in Australia and South East Asia: An AANZDEM study
Respirology, DOI: 10.1111/resp.13259


背景および目的:
 COPD急性増悪(AECOPD)は、救急部でよくみられる疾患だが、その疫学やアウトカムデータは不足している。われわれは、救急部におけるAECOPDの疫学、臨床的特徴、治療、アウトカムを調べた。

方法:
 オーストラリア、ニュージーランド、シンガポール、香港、マレーシアの46施設で実施されたAANZDEM研究で、救急部を受診してAECOPDと診断された患者を登録した。プライマリアウトカムは、その疫学、臨床的特徴、治療、アウトカム(在院日数、死亡率)とした。

結果:
 46の救急部で、415人のAECOPD患者が同定された(全コホートのうち13.6%)。年齢中央値は73歳で、60%が男性で、65%が救急車で搬送された。91%がすでにCOPDの診断を受けていた。80%の患者は吸入気管支拡張薬を投与され、66%は全身性ステロイドを投与され、pH7.30未満の患者の57%が非侵襲性換気の治療を適用された。78%の患者が入院し、7%がICUへ入室した。院内死亡率は4%で、在院日数中央値は4日だった(95%信頼区間2-7日)。

結論:
 AECOPD患者は救急車で搬送されることが多く、入院率が高い。


by otowelt | 2018-02-23 00:35 | 気管支喘息・COPD

複雑性胸水/膿胸に対する胸腔内治療の失敗予測因子

e0156318_1155850.jpg 海外ではDNaseの使用が増えています。

Danai Khemasuwan, et al.
Predictive variables for failure in administration of intrapleural tPA/DNase in patients with complicated parapneumonic effusions /empyema
DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2018.01.037

背景:
 tPAとDNaseを組み合わせた胸腔内治療は、複雑性胸水(CPE)/膿胸の外科的介入の必要性を減らすとされている。本研究の目的は、この併用治療の失敗のリスク因子を同定することである。

方法:
 われわれは、後ろ向きにCPE/膿胸の治療にtPA/DNaseを用いられた患者を抽出した。患者背景、放射線学的データ、胸水データを調べた。勾配ブースティングツリーを用いて、tPA/DNase治療の失敗を予測する臨床的因子の候補をランキングした。

結果:
 5年におよぶ調査で、CPE/膿胸にtPA/DNaseを用いられた患者は84人だった。全体の3分の2(57人)で治療が成功した。同治療の失敗の予測因子のうち、胸膜肥厚がもっとも重要であり、壊死性肺炎、胸水総タンパク、被包化胸水と続いた。

結論:
 胸腔内治療が失敗しやすい患者は、胸膜肥厚や膿瘍・壊死性肺炎の存在であることがわかった。前向きの多施設共同研究でこの知見を確認することが望ましい。


by otowelt | 2018-02-22 21:13 | 感染症全般

重症COPDに対する長期アジスロマイシンは増悪・入院を減らすが耐性菌は増加

e0156318_1633480.jpg 耐性菌の増加との綱引きですね。

Xavier Pomares, et al.
Clinical and safety outcomes of long-term azithromycin therapy in severe COPD beyond the first year of treatment
CHEST DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2018.01.044


背景:
 アジスロマイシンの長期投与はCOPD増悪を減少させるが、1年を超えてのその効果と安全性についてはよくわかっていない。

方法:
 重症度Dの4回以上の増悪経験のある、アジスロマイシン500mg1日3回/週を追加投与されたCOPD患者を後ろ向きに登録した。24ヶ月を超えて治療されたものを長期使用者と定義し、COPD増悪の頻度、入院、在院日数について初年度、2年、3年で評価した。マクロライド耐性菌や副作用についても調査した。

結果:
 109人の重症COPD患者が登録され、そのうち24ヶ月を超えていた39人が長期使用者に該当した(35.8%)。この群は、12ヶ月時点でCOPD増悪が平均よりも56.2%低かった。また、24ヶ月で70%減、36ヶ月で41%減だった。同様に入院についても、62.6%減、75.8%減、39.8%減だった。COPD増悪の減少とは対称的に、耐性菌は50%増加した。忍容性は良好で、短期的な消化器症状がみられたり(7.1%)、聴力障害が長期投与群の5.1%にみられたりした。

結論:
 重症COPD患者に対する24~36ヶ月の長期アジスロマイシン投与は、COPD増悪や入院を減らすが、マクロライド耐性菌を増加させた。


by otowelt | 2018-02-21 00:17 | 気管支喘息・COPD

保存治療3日目で効果乏しいとき、膿胸は早期に外科手術すべき

e0156318_10322082.jpg アウトカムはやはり栄養ありきかなと思います。

宮原 栄治ら
急性膿胸に対する胸腔鏡手術における術後在院期間に関与する因子の検討
呼吸器外科32 巻 (2018) 1 号 p. 12-17


背景:
 急性膿胸22症例を対象として胸腔鏡下膿胸腔掻爬術の術後在院期間に影響する因子を検討した.

結果:
 飲酒歴・術前合併症・術前ドレナージ留置の有無,膿胸腔排液の細菌培養陽性陰性,において有意差は認めなかった.また,年齢,BMI,喫煙指数,手術時間,術中出血量との間に有意な相関は認められなかった.術前および術後1週目のAlb2.5 g/dl未満の症例では以上の症例に比較し,術後在院期間が有意に延長していた.また,症状発現から手術,医療機関受診から当科紹介の各期間と術後在院期間との間には正の相関を認め,症状出現から手術までの期間が23日未満の症例は以上の症例に比較し,また医療機関受診から当科受診までの期間が15日未満の症例は以上の症例に比較し,術後在院期間が有意に短縮していた.

結論:
 膿胸診断時は,保存治療開始早期に(3日目を目処に)炎症反応の低下を認めなければ外科治療を考慮することが重要と考えられた.


by otowelt | 2018-02-20 00:26 | 感染症全般

外科手術を受けた孤立性肺非結核性抗酸菌症の検討

e0156318_21415744.jpg 肺孤立影でNTMを診断するのは至難の業です。男性で上葉にあると、たまに術前にkansasiiが検出できることがあります。

笠井 由隆ら.
肺悪性腫瘍を疑い外科切除を行った孤立性肺非結核性抗酸菌症の検討
呼吸器外科 32 巻 (2018) 1 号 p. 2-6


背景:
 2010年1月から2016年12月までに当院で術前に肺悪性腫瘍を疑って外科切除を行い,術後に非結核性抗酸菌症と診断された12例について検討した.

結果:
 男性10例,女性2例,平均年齢は66歳であった.菌種はM. aviumが8例,M. intracellulareが3例,M. kansasiiが1例であった.腫瘤径の平均は30 mm(11~74 mm)であった.12例中7例はFDG-PETを行っており,SUVmaxの平均は6.98(3.18~13.40)であった.術式は肺葉切除4例,区域切除1例,部分切除7例であった.術後化学療法は5例に行われていた.術後再発は認めなかった.

結論:
 術前に孤立性非結核性抗酸菌症と悪性腫瘍を鑑別するのはFDG-PETを用いても困難である.また孤立性の場合,気管支鏡による菌検出率も低い.進行症例では術後の再排菌率も高いため,積極的に診断と治療を兼ねて手術を行うべきである


by otowelt | 2018-02-19 00:22 | 抗酸菌感染症

ホームレスは潜在性結核感染症が多い

e0156318_9552565.jpg 日本国内でもホームレスのLTBI・結核は多いと思います。

Aldridge RW, et al.
High prevalence of latent tuberculosis and bloodborne virus infection in a homeless population.
Thorax. 2018 Jan 29. pii: thoraxjnl-2016-209579. doi: 10.1136/thoraxjnl-2016-209579. [Epub ahead of print]


背景:
 イギリスにおける都市部のホームレスは、高い活動性結核の罹患率を有しているが、LTBIの頻度についてはよくわかっていない。この研究では、ロンドンのホームレスのLTBIの頻度を調べた。

方法:
 2011年5月から2013年6月までロンドンのホームレスから研究被験者をリクルートした。LTBIの頻度を推定10%と見積もると(95%信頼区間8-13%)、500人の被験者が必要だった。

結果:
 804人中491人(61.1%)がスクリーニングに同意した。LTBIの頻度は491人中81人(16.5%、95%信頼区間13.2-19.8)だった。ほとんどの被験者(89%)は男性で、30~49歳が52.3%、イギリス生まれが62.1%、現喫煙者が80.2%だった。イギリスで生まれ育った被験者のうち、刑務所に入った経験がある者はLTBIのリスクが上昇した(オッズ比3.49、95%信頼区間1.10-11.04、p=0.018)(年齢、ホームレス期間などで補正)。過去B型肝炎ウイルスに感染していたのは10.4%だった(489人中51人、95%信頼区間7.7-13.1)。同様にC型肝炎ウイルスも10.4%だった(同51人、95%信頼区間7.8-13.1)。

結論:
 ロンドンのホームレスのLTBIの頻度は高い。また、B・C型肝炎ウイルスの治療も同集団のアンメットニーズである。

補足:
 日本の推定感染率と比較すると、この曲線のやや上に位置するのがわかるかと思います。
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by otowelt | 2018-02-16 00:57 | 抗酸菌感染症

IPFに対するオフェブ®の実地臨床レベルの安全性

e0156318_7331272.jpg 後ろ向き研究なので参考程度です。

Tzouvelekis A, et al.
Safety and efficacy of nintedanib in idiopathic pulmonary fibrosis: A real-life observational study.
Pulm Pharmacol Ther. 2018 Jan 20. pii: S1094-5539(17)30243-2. doi: 10.1016/j.pupt.2018.01.006. [Epub ahead of print]


背景:
 ニンテダニブはIPFの進行を緩和させる抗線維化薬である。

目的:
 実地臨床レベルのIPF患者のニンテダニブの安全性・有効性を調べること。

方法:
 2014年10月~2016年10月に実施された多施設共同後ろ向き観察研究である。

結果:
 94人のニンテダニブ内服IPF患者が登録された(72人が男性、平均年齢73.8±7.5歳、平均%努力性肺活量68.1±18.3%、平均%DLCO44.4±14.5%)。下痢がもっともよくみられた副作用だった(55.3%)。20人(21.2%)の患者は副作用のためニンテダニブを中断せざるを得なかった。死亡や脱落例を除外すると、6ヶ月の経過において%努力性肺活量および%DLCOの減少中央値はそれぞれ1.36(95%信頼区間0-2.97)、4.00(95%信頼区間2.01-6.20)だった。360日の経過中、17人(18.1%)が死亡した。

結論:
 観察研究においても、ニンテダニブは忍容性があり効果的と考えられる。実臨床レベルの安全性と効果を検証する前向き研究が望まれる。


by otowelt | 2018-02-15 00:40 | びまん性肺疾患