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さらば、難しいPubMedよ! その4

6.質の高い論文を探す方法
 前回の続きです。ここで、定期的スクリーニングから話題が離れます。My NCBIで定期的スクリーニングの仕組みが構築できた人は、ここから先の話は読まなくてよろしい。最初にも書いたように、私は定期的スクリーニングして持続的に医学論文を読んでいくことが何より重要であると考えており、ゲリラ的にスポット検索をすることはほとんどありません。

 若手医師の皆さんは、抄読会や勉強会で何か1つ論文を選ばないといけないことがあるでしょう。その場合どうやって調べていますか。え?「呼吸器内科医」というブログでテキトーによさそうなのを選んでいる?よし、お小遣いをあげよう!!・・・まぁ、このブログがそうした使い方をされているのも存じ上げていますが、それは裏技ということで、横に置いておきましょう。

 中堅医師の方々も、雑誌の原稿や総説を書くときに質の高い論文をリファレンスに入れないといけないことがあるでしょう。UpToDateやコクランレビューから選ぶのも手ですが、ここではPubMedを用いて、ゲリラ的に質の高い論文を探す方法を紹介したいと思います。
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 使うのは「Clinical Queries」です。PubMedトップページの真ん中やや下にあります。「Clinical Queries」の詳しいメカニズムは割愛しますが、独自のフィルター設定がされており、エビデンスの高い文献を得ることができます。遺伝医学の段を使うことはありませんが、左2つの臨床試験、システマティックレビューは時系列に質の高い文献が表示されるので、オススメです。
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 たとえば「気胸」というタイトルがついた論文について抄読会で使えそうなモノはないかと探してみると、さっそくトップのところに面白そうな論文がヒットしていますね。


・Walker SP, et al. Recurrence rates in primary spontaneous pneumothorax: a systematic review and meta-analysis. Eur Respir J. 2018 Sep 6;52(3). pii: 1800864.
・Ramouz A, et al. Randomized controlled trial on the comparison of chest tube drainage and needle aspiration in the treatment of primary spontaneous pneumothorax. Pak J Med Sci. 2018 Nov-Dec;34(6):1369-1374.


 というわけで、ゲリラ的に文献を探すには、こういう手法もあります。ただしかし、これだと定期スクリーニングができないので、「普段から文献を読むクセ」を身に付けることはできません。

 私が研修医にいつも伝えていることは、「My NCBIを愛でよ」ということです。とにかく自分が登録したたくさんの検索式をたくさん保管して、自分だけのMy NCBIを作ってみてください。




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by otowelt | 2019-02-15 00:42 | レクチャー

日本人の多剤耐性結核患者に対するベダキリン併用

日本人の多剤耐性結核患者に対するベダキリン併用_e0156318_13203583.jpg 当院の上司のベダキリンについての論文です。

Tsuyuguchi K, et al.
Safety, efficacy, and pharmacokinetics of bedaquiline in Japanese patients with pulmonary multidrug-resistant tuberculosis: An interim analysis of an open-label, phase 2 study
Respiratory Investigation, In press, corrected proof, Available online 7 February 2019


背景:
 ベダキリンは、結核菌の ATP (アデノシン5'-三リン酸)合成酵素を特異的に阻害する新しい作用機序のジアリルキノリンであり、アメリカやEUを含む50ヶ国で成人の多剤耐性肺結核(pMDR-TB)に対して承認されている。

方法:
 この研究は、成人pMDR-TB日本人患者におけるベダキリンの安全性、有効性、薬物動態を評価するため実施した。この研究では、患者は個別のバックグラウンドレジメンにベダキリンを24週間以上併用された(最大48週間)。有効性は、ベダキリン開始から喀痰培養陰性化までの期間とした。

結果:
 治療関連有害イベント(TAEAs)は調査段階で6人中5人(83.3%)に観察された(ベダキリン投与期間+1週間)。1人を超えるTEAEsが観察されたのは、肝機能異常(6人中4人)、感覚異常(6人中3人)、鼻咽頭炎、面皰、悪心(それぞれ6人中2人)だった。QT延長は1人(13.3%)にみられた。治療中断に陥ったTEAEsはなかった。喀痰培養陰性化までの期間は14-15日だった。
日本人の多剤耐性結核患者に対するベダキリン併用_e0156318_14165730.png
(文献より引用:喀痰培養陰性化までの日数)

 血清ベダキリンCmaxはベダキリン投与から4~6時間で達成され、AUC24hは2週時点で50637~107300 ng*h/mL(5人)で、24週時点で58513~77148 ng*h/mL(2人)だった。

結論:
 24週以上におよぶバックグラウンドレジメンにベダキリンを併用された患者で、あらたな安全性懸念は生じなかった。また喀痰培養陰性化が投与後早期にみられた。少なくとも24週間にわたる多剤レジメンの一部として、ベダキリンの併用が日本人の成人pMDR-TB患者にとって適切な治療法であることを示唆している。


by otowelt | 2019-02-14 00:35 | 抗酸菌感染症

LTBIに対するリファペンチン+イソニアジドの3ヶ月レジメン

LTBIに対するリファペンチン+イソニアジドの3ヶ月レジメン_e0156318_1302985.jpg HIV感染・非感染がややヘテロな解析ですが、3HPが標準になるとよいですね。ちなみにリファペンチンは日本では使えません。

Hamada Y, et al.
Three-month weekly rifapentine plus isoniazid for tuberculosis preventive treatment: a systematic review
Int J Tuberc Lung Dis. 2018 Dec 1;22(12):1422-1428.


背景:
 結核(TB)の予防的治療を適用しても依然として不十分な状況である。リファンペンチン(RPT)とイソニアジド(INH)の3ヶ月レジメン(3HP)はその規模を容易に拡大できるかもしれない。われわれは、6ヶ月あるいは9ヶ月のINH単独治療と比較した3HPの効果をアセスメントするため、システマティックレビューをおこなった。

方法:
 われわれは、ランダム化比較試験を同定するため、PubMed、Embase、the Web of Science、Cochrane Central Register of Controlled Trialsデータベースを検索した。可能であればランダム効果モデルを用いてデータをプールした。

結果:
 4研究が組み込まれた。そのうち、2研究はHIV共感染における6ヶ月あるいは9ヶ月のINH(6/9H)と3HPを比較したものであり、1研究はHIV陰性成人におけるもの、1研究はHIV陰性優位の小児・思春期患者におけるものである。
 活動性TBのリスクは3HPと6/9Hの間に有意差はなかった(HIV感染成人患者:リスク比0.73、95%信頼区間0.23-2.29、HIV非感染成人患者:リスク比0.44、95%信頼区間0.18-1.07、小児・思春期患者:リスク比0.13、95%信頼区間0.01-2.54)。肝障害のリスクは成人HIV感染患者(相対リスク0.26、95%信頼区間0.12-0.55)、成人HIV非感染患者(相対リスク0.16、95%信頼区間0.10-0.27)のいずれににおいて有意に3HP群のほうが低かった。3HPはすべてのサブグループにおいて高い治療完遂率達成と関連していた。
LTBIに対するリファペンチン+イソニアジドの3ヶ月レジメン_e0156318_15332835.png
(文献より引用)

結論:
 HPはINH単独治療と同等の予防効果を示し、有害事象が低く、完遂率が高かった。3HPは予防治療において規模拡大に大きく寄与しうる。





by otowelt | 2019-02-13 00:15 | 抗酸菌感染症

さらば、難しいPubMedよ! その3

4.便利な検索タグだけ理解しておく
 検索式は、前回書いたように検索画面の右下に表示されているものを使えばよいのですが、自分で式をタイプしなければならないこともあります。その中で、知っておくと便利なタグを紹介しましょう。

■[jo]
 ジェイオーです。これはジャーナルの名前のことです。たとえば、「N Engl J Med[jo]」と検索欄に打ち込むと、かの有名なNew England Journal of Medicineのみが検索できるのです。ただ、このタグには注意が必要でして、たとえば「Lancet[jo]」と入力すると、Lancetシリーズのすべての論文が検索されてしまうのです。オリジナルのLancetのみを検索したい場合は「"Lancet"[jo] 」と入力してください。” ”で囲うことで、ジャーナルの名前はここからここまでと決めることができるのです。

■[title]
 これ、結構重宝します。たとえば、気胸の論文って、文献のタイトルに必ず「pneumothorax」が入っているもんです。気胸の診断や治療について述べた論文のクセして、タイトルに「pneumothorax」が入っていないワケがない。そのため、「pneumothorax[title]」と検索すると、「文献タイトルにpneumothoraxが含まれているすべての文献」を検索できるのです。検索疾患が決まっているときは、このタグはかなりオススメです。肺癌の論文もタイトルに必ず「lung cancer」が入っているので、[title]タグはかなり有効です。

■AND
 検索欄でスペースにすると、勝手にANDになります。たとえば「COPD asthma」と両方のワードを入れると、PubMedが勝手に「COPD AND asthma」に切り替えてくれます。これは、COPDとasthmaの両方の情報を含む文献を探す、という意味です。検索式を勉強する際、同列に「OR」「NOT」も出てきますが、基本的に「AND」だけでよいと思います。だって、2つのキーワードの両情報を含んだ文献を探していることが多いでしょう?どちらか一方だけ含む論文を探すすことなんてそうそうありません。

■AND hasabstract
 私はどのような検索においても、最後にこの「hasabstract」を入れます。これは、アブストラクトがある文献、すなわち原著論文やレビューなどある程度以上の論文を絞り込めるわけです。症例報告がほとんど除外されるため、ルーチンでこのタグを入れておいてもよいと思います

※ただし、前回書いたように、CHEST誌は症例報告にアブストラクトをつけてくるようになりました。

■[pt]
 このタグは、論文をゲリラ的に探すのに役立ちます。文献の種類を特定するためのタグです。たとえばランダム化比較試験を検索したいときは「Randomized Controlled Trial[pt]」、メタアナリシスを検索したいときは「Meta-analysis[pt]」と入力すればよいです。

 これらのタグは基本的にPubMed検索画面の左のほうにチェックボックスがあるので、それを使ってもよいです。ただ、いちいちこれを広げてチェックしながら検索するのが面倒なので、私はめぼしい検索式はすべてMy NCBIに登録しています。
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5.簡単な検索式を作ってみよう
 簡単なタグを使って、気胸の論文を探せるかどうか、試してみましょう。上述したように、気胸の論文はタイトルに必ず「pneumothorax」が入っています。そのため、「pneumothorax[title]」はまず決定です。そして、症例報告や画像レポートなど雑多な文献を除外するため、「AND hasabstract」を入れて、質を上げましょう。
 ではこの「pneumothorax[title] AND hasabstract」をPubMedで検索してみましょう。エイッ。どうでしょう、4200件くらいヒットしました。ザっと見た感じ、1ヶ月に15~20くらいの気胸に関する論文がアップデートされているようです。私はこのくらいなら、定期的スクリーニングの検索式として有効だと思います。
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 イヤイヤ、ランダム化比較試験しかスクリーニングしないぞ!というのであれば、検索結果を見てみましょう。全体で67件のヒット、年に1回更新されるかされないかの頻度になってしまいましたね。
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 質の高い文献のみをスクリーニングの条件に入れてもよいのですが、気胸やその他稀な呼吸器疾患は文献の質にこだわりすぎると論文の取りこぼしが多くなるので、実は[title]タグとhasabstractだけで結構絞れるのです。

 あなたも一度自分だけの検索式を作ってみてはいかがでしょうか。それを「Create alert」からどんどんMy NCBIの検索式倉庫に収納していってください。自分の好きな論文が自動通知される仕組みさえ作れば、あなたももう論文スクリーニングマスターです!

 次回は、抄読会などでゲリラ的に論文を探さないといけない場合にPubMedをどう使うか、紹介しましょう。










by otowelt | 2019-02-12 00:10 | レクチャー

さらば、難しいPubMedよ! その2

3.検索式を登録する
 前回の続きです。My NCBIに「検索式」を登録しなければ定期的スクリーニングの仕組みを構築できないのですが、そもそも「検索式」って何よってハナシです。たとえば、PubMedの検索欄に「COPD」と入力してください。おそらく8万件くらいの文献がヒットするはずです。これは、「COPD」というワードが、タイトルやアブストラクトなどに含まれている全文献をヒットさせているからです。では次に、「COPD asthma」と入力してみてください。グっとヒット件数が減ったはずです。これは、COPDとasthmaの両方の情報を含んでいる文献を検索しているからです。

 さて、PubMed検索結果の画面で右下のほうを見てください。なんかよくわからん英語がズラっと書かれているテーブルがありますね。この[ ]でくくられた部分がPubMedの「タグ」なのですが、こんなもん全部覚えなくてよい。

 ちなみにこの検索式は「("pulmonary disease, chronic obstructive"[MeSH Terms] OR ("pulmonary"[All Fields] AND "disease"[All Fields] AND "chronic"[All Fields] AND "obstructive"[All Fields]) OR "chronic obstructive pulmonary disease"[All Fields] OR "copd"[All Fields]) AND ("asthma"[MeSH Terms] OR "asthma"[All Fields])」です。なんのこっちゃ分かりませんよね。落語の『寿限無』みたいな。(笑)
 
 自分なりの検索式をイチから作るのが面倒ならば、少しパクればよいのです。病院でだれか必ず一人、こういうのをやっている人間がいますし、何ならこの記事からまずはパクればよい。というわけで、私の検索式の一部を紹介したいと思います。


■呼吸器全般
((Eur Respir J[jo]) OR (Chest[jo]) OR (Thorax[jo]) OR (Lancet Respir Med[jo]) OR (Am J Respir Crit Care Med[jo]) OR (Respirology[jo]) OR (Respiration[jo]) OR (“Respiratory Medicine”[jo])) AND hasabstract

■COPD
COPD AND ((Int J Chron Obstruct Pulmon Dis[jo]) OR (Eur Respir J[jo]) OR (Chest[jo]) OR (Respirology[jo]) OR (Respiration[jo]) OR ("Respiratory Medicine"[jo]) OR (Thorax[jo]) OR (Lancet Respir Med[jo]) OR (Int J Tuberc Lung Dis[jo]) OR (Am J Respir Crit Care Med[jo]) OR (N Engl J Med[jo]) OR ("Lancet"[jo]) OR (BMJ[jo]) OR (JAMA[jo]) OR (Ann Intern Med[jo]) OR (JAMA Intern Med[jo]) OR (CMAJ[jo])) AND hasabstract


 では、PubMedの検索欄のところに、上記「呼吸器全般」の検索式をコピーしてそのまま検索してみてください。私が呼吸器領域で普段から読んでいる論文が時系列で上から表示されます。この検索式はどういうことを書いてあるかというと、「ERJ、CHEST、Thorax、Lancet Respiratory Medicine、AJRCCM、Respirology、Respiration、Respiratory Medicineの医学雑誌に掲載された、アブストラクトがある論文すべて」という条件です。[jo]というのはジャーナルの名前という意味のタグです。雑誌名は、「(Lancet Respiratory Medicine[jo]) 」でも「(Lancet Respir Med[jo])」の短縮形でも検索できます。「AND hasabstract」というのは、アブストラクトが閲覧できる文献を必要条件に組み入れているのです。レターや症例報告のようにアブストラクトがない文献を、ハナっから除外したいからです。この検索式の欠点は、たとえばNew England Journal of Medicineに掲載された呼吸器系の原著論文がひっかからないことです。当然です。[jo]にその医学雑誌を組み入れていないのですから。

※最近CHEST誌は、症例報告にアブストラクトをつけてくるようになったので、厳密に原著論文だけを検索したいなら別の検索式を構築する必要があります。

 次にこのパクった検索式をそのままあなたのMy NCBIに登録してみましょう。「Create alert」をクリックしてください。

 「Name of saved search」を好きな名前(私は「呼吸器全般」)にして、リマインドメールを送ってもらうかどうか設定して登録します。

 こういう検索式をいくつも登録することで、My NCBIに自分だけの「検索式倉庫」が出来上がります。検索式をどのように工夫して登録するかはある程度慣れが必要ですが、まずはこういう仕組みがあることを知って、利用してみてください。

 次回は、検索式についてもう少し詳しく書いてみましょう。ただ、あまりアドバンスな内容にすると逆に使いにくくなってしまいますから、若手医師がおさえておくべき基本だけをお伝えしたいと思います。









by otowelt | 2019-02-10 00:49 | レクチャー

さらば、難しいPubMedよ! その1

・はじめに
 研修医や若手医師から、「PubMedの使い方が分からない」「どうやって英語論文を探せばよいのかわからない」と相談を受けることがあります。ここでは最大のシェアを誇るPubMedの簡単な使い方を紹介したいと思います。
 
 若手医師にとってPubMedが分かりにくいのは、指導医が難しいアドバンスな検索方法ばかり教えるからです。PubMedをそんな難しく考えないでください。テレビを見るときに、音質や画面の設定を細かく調整しますか?アンテナレベルがどのくらいあるか確認しますか?テレビが好きな人はそうすればよろしい。しかし、視聴さえできればよいと思っているなら、テレビの電源をオンするだけでよいのです。PubMedも同じなんです。電源のつけ方を知りたい人間に、テレビの仕組みを教えるのはナンセンスです。


1.PubMedを使う目的を明確にする
 私は毎日PubMedを見ます。この理由は、呼吸器内科領域のエビデンスを取りこぼしたくないからです。世界中の呼吸器内科医が知っているであろう第3相試験の概要を自分が知らない、ということに耐えられないのです。そのため、私は「ある程度の質が高い論文を定期的にスクリーニングする」という目的でPubMedを使っています。しかし、若手医師の中には「抄読会で発表するホットで面白い論文を調べる」という目的でPubMedを開く人もいるでしょう。

 実はこの2つ、まったくPubMedの使い方が異なるのです。どちらがカンタンかと問われれば、定期的スクリーニングです。そしてどちらが有益かと問われれば、やはり定期的スクリーニングなのです。

 抄読会で発表するネタを仕込むのは、月1回くらいの頻度でよいかもしれません。しかし、抄読会が終わればPubMedのことなんて忘れてしまう。さて、みなさんはそれでよいでしょうか?ゲリラ的に検索する技術だけ身につける意味なんてあるでしょうか?

※論文を書く際、身に付ける意味は大いにあります。それはまた別の話。

 あなたの医師人生において、興味ある分野の知見を継続的に積み上げていくには、定期的にスクリーニングする仕組みを構築するべきです。私が好きな言葉に「怠惰を求めて勤勉に行き着く」というものがあります。博奕打ちがイカサマを必死に練習している様子を見て、「楽して大金を稼ごうという人種なのに、やけに勤勉ね」と女性に呆れられるシーンで登場する言葉です。麻雀と医学を結びつけるのは不適切かもしれませんが、将来の仕事量の軽減に期待して先行投資するというのは私にとって優先度が高いことです。

 私は、慢性咳嗽の患者さんが来ても、いちいち問診項目を思い出したり調べたりすることはありません。電子カルテの自分のテンプレートに慢性咳嗽の問診票や鑑別すべき疾患を登録しているからです。同様に、いくつかの疾患の診断基準に関するスコアリングもテンンプテートとして登録しています。これは、患者さんが来院したとき、調べものや入力で時間を取られたくないからです。「事前に苦労を買って、将来の時間を買う」ということです。

 こういう行動を起こす条件は、現在苦労する時間よりも将来返ってくる時間リターンのほうが大きい場合です。前苦労の方が大きくて節約できる時間が少なければ、時間を先行投資する意味がありません。

 私がPubMedで定期的スクリーニングの仕組みを作る理由は、医師人生における論文検索の時間を節約するためです。海外のドクターの多くは、後述するMy NCBIを利用していますが、日本人のほとんどの医師はまだNCBIのアカウントを作っていないそうです(内部の人間に聞きました)。


2.My NCBIを使うだけでよい
 みなさんがPubMedを週1回・月1回でも定期的にチェックしたいと思うならば、「My NCBI」を愛用しましょう。メールアドレスとパスワードだけ登録すれば、何度もスクリーニングのために検索ボックスにワードを入力する作業から解放されます。

 PubMedの右上に「Sign into NCBI」というボタンがあるのでクリックしてみましょう。まだNCBIアカウントを作成していないのなら、「Register for an NCBI account」というところからメールアドレス・パスワードを設定してアカウントを作ってください。

 アカウントを作成すると、ログインしているときにマイアカウントが右上に表示されるようになります。以後、PubMedを使うときは、「My NCBI」を使うよう心がけて下さい。
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 さて、私のMy NCBIを見てみましょう。基本的に常に最新の呼吸器系論文をテーマ別に検索できるようになっています。「COPD」「喘息」というタイトルは私がつけたものですが、これは一定の条件で保存したスクリーニング検索式に関して、論文の更新があったものを「What's new」に数字で表示してくれる仕組みです。この数字をクリックすると、更新があった論文だけをチェックすることができます。
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 たとえば、私が保存している「COPD」というのは、「COPDに関して信頼性が高い医学雑誌のうち、アブストラクト情報が掲載されているCOPDの文献」という条件です。COPDの新しい論文がChestやERJで掲載されれば、通知がくるようになっているのです。

 これってすごくラクじゃないですか?日々更新されていく膨大な文献の中からCOPDの論文を探さなくても、ちゃんとMy NCBIに通知が来るんですから。指定のメールアドレスに通知を送るよう設定しておけば、メールで「新しい論文があるよ!」と教えてくれます。

 事前に少し時間をかけて準備するだけで、少なくともあなたが医師を続けている間、ホットな情報が届くのです。これはかなり効率的な時間投資だと思うので、特に若手医師のみなさんは普段からMy NCBIを使うクセをつけてください。

 さて、次回は具体的にどういう「検索式」をMy NCBIに保存しているか紹介したいと思います。




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by otowelt | 2019-02-09 00:47 | レクチャー

電子たばこのほうがニコチン置換療法より禁煙に有効

電子たばこのほうがニコチン置換療法より禁煙に有効_e0156318_1059273.png 「電子たばこなんてダメ!」と叫んでいた人たちは、どうするのでしょうね。意見をひっくり返すのか、そのままアンチ電子たばこの道を突き進むのか。ちなみに日本の加熱式たばことは別物なのでご留意を。タバコ葉が入っている加熱式たばこと液体ニコチンの電子たばこを比較してはダメです。

Hajek P, et al.
A Randomized Trial of E-Cigarettes versus Nicotine-Replacement Therapy.
N Engl J Med. 2019 Jan 30. doi: 10.1056/NEJMoa1808779.


背景:
 電子たばこは禁煙の試みとして一般的に用いられているが、禁煙治療として承認されているニコチン製品と比べると有効性に関するエビデンスは限られている。

方法:
 われわれはランダムにイギリス国民保健サービスの禁煙プログラムに参加している成人に対して、被験者の選択によるニコチン代替製品(パッチ、ガム、鼻スプレーなど)を最長3ヶ月提供、あるいはもう一方には、AspireのOne Kit電子たばこスターターパック(写真、第2世代詰め替え式電子タバコ、ニコチンリキッド1本あたり濃度18mg/mL)を提供し、好みのフレイバーと濃度のニコチンリキッドを自分で追加購入するよう許可した。
電子たばこのほうがニコチン置換療法より禁煙に有効_e0156318_1038879.png
(Aspire One Kit)

 禁煙治療には、いずれの群にも禁煙に対する行動支援を週1回、4週間以上にわたって介入した。プライマリアウトカムは、1年間の禁煙率(禁煙決断日から2週間で5本を超えないことが条件)で、1年後の最終診察時に生化学的検査で判定した(呼気中一酸化炭素濃度8ppm未満)。追跡不能例や生化学的検査ができなかった場合には、禁煙は達成されていないものと判定した。

結果:
 合計886人の参加者がランダム化された(439人が電子たばこ群、447人がニコチン置換療法群)。1年禁煙率は、電子たばこ群18.0%、ニコチン置換療法群9.9%だった(相対リスク1.83、95%信頼区間1.30-2.58、p<0.001)。これは禁煙に対するNNTが12であることを意味する(95%信頼区間8 -27)。いずれの禁煙治療も、通常の喫煙と比べると満足度が低かったが、電子たばこのほうが満足度は高く、「吸いたい」という動機は有意に低かった。
電子たばこのほうがニコチン置換療法より禁煙に有効_e0156318_10553086.png
(文献より引用:プライマリアウトカム)

電子たばこのほうがニコチン置換療法より禁煙に有効_e0156318_10511757.png
(文献より引用:喫煙衝動)

 1年後に禁煙ができていた参加者のうち、52週時点で当初割り付け群の電子たばこ、ニコチン代替製品を使い続けていたのはそれぞれ80%(79人中63人) 、9%(44人中4人)だった。総じて、咽頭あるいは口腔違和感は電子たばこ群により多くみられ(65.3% vs 51.2%)、悪心はニコチン置換療法に多かった(37.9% vs 31.3%)。電子たばこ群では、ベースラインから52週までの咳嗽と喀痰の頻度がニコチン置換療法よりも低かった(咳嗽:相対リスク0.8、95%信頼区間0.6-0.9、喀痰:相対リスク0.7、95%信頼区間0.6-0.9)。喘鳴や息切れの頻度は両群に差はなかった。

結論:
 行動支援が伴う場合、電子たばこはニコチン置換療法よりも禁煙効果が高い。



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by otowelt | 2019-02-08 00:22 | 呼吸器その他

COPDにおける6分間歩行数と6分間歩行距離の差

COPDにおける6分間歩行数と6分間歩行距離の差_e0156318_1633480.jpg 歩数に着目するとは、なかなか斬新ですね。

Zeng GS, et al.
The relationship between steps of 6MWT and COPD severity: a cross-sectional study
IJCOPD, Volume 2019:14 Pages 141—148


背景:
 6分間歩行距離(D6MWT)は、COPD患者の機能的ステータスのアセスメントに広く用いられている。一方で、6分間歩行数(S6MWT)の役割にはほとんど注目されていない。この研究の目的は、COPDにおけるS6MWTとその他の生理学的パラメータの間の関連性を調べることである。

患者および方法:
 安定期COPD患者70人がこの横断研究に連続して登録された。スパイロメトリーやインパルス・オシロメトリー(IOS)、DLCOを含む肺機能検査が安静時に行われた。QOLは、修正MRC息切れスケール、St. George's respiratory questionnaire(SGRQ)、COPDアセスメントテスト(CAT)、臨床COPD質問票を含む健康関連QOL(HRQoL)質問票によって評価された。歩数と距離の両方がその後の6分間歩行検査(6MWT)によって測定された。

結果:
 S6MWTとD6MWTの両方ともがスパイロメトリー、IOS、DLCOパラメータ、HRQoLと相関していた。6MWTの前後いずれにおいても吸気量はS6MWTと有意な相関がみられ(それぞれρ=0.338, P=0.004; ρ=0.359, P=0.002)、D6MWTとは相関がみられなかった(それぞれρ=0.145, P=0.230; ρ=0.160, P=0.189)。ステップワイズ重回帰分析では、最終的なモデルにおいてmMRCグレード、年齢、CATスコアはD6MWTの有意な予測因子だった(補正R2=0.445, P<0.01)。DLCOとCATスコアは、最終的なモデルにおいて、S6MWTの有意な予測因子だった(補正R2=0.417, P<0.01)。
COPDにおける6分間歩行数と6分間歩行距離の差_e0156318_16223771.png
(文献より引用)

結論:
 S6MWTは、COPDにおける機能的ステータスとQOLの評価に効果的である。また疾患重症度に関連するさまざまなパラメータと有意な相関がみられた。さらに、S6MWTはD6MWTと比較してCOPDの過膨張をより予測しやすいかもしれない。



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by otowelt | 2019-02-06 00:01 | 気管支喘息・COPD

ORBIT-3, 4試験:慢性緑膿菌感染症を有する非嚢胞性線維症気管支拡張症に対する吸入シプロフロキサシン

ORBIT-3, 4試験:慢性緑膿菌感染症を有する非嚢胞性線維症気管支拡張症に対する吸入シプロフロキサシン_e0156318_10322082.jpg 6割以上が女性の気管支拡張症であり、患者背景の不均一性はさほど大きくないように思うのですが、良好な結果が出なかったくやしさが論文を読んでいて滲み出ています。

Charles S Haworth, et al.
Inhaled liposomal ciprofloxacin in patients with non-cystic fibrosis bronchiectasis and chronic lung infection with Pseudomonas aeruginosa (ORBIT-3 and ORBIT-4): two phase 3, randomised controlled trials
Lancet Respiratory Medicine, https://doi.org/10.1016/S2213-2600(18)30427-2


背景:
 非嚢胞性線維症気管支拡張症の患者において、緑膿菌の肺感染症は頻回の呼吸器系増悪と治療が必要な入院と関連しており、QOLを低下させ、死亡を増加させる。吸入抗菌薬は、頻回の増悪を起こす非嚢胞性線維症気管支拡張症の長期マネジメントとしてこれまで推奨されているが、承認された治療はない。われわれは、2つの第3相試験において吸入リポソームシプロフロキサシン(ARD-3150)の安全性と有効性を検証した。

方法:
 ORBIT-3試験およびORBIT-4試験は、国際ランダム化二重盲検プラセボ対照第3相試験で同じ地域でおこなわれている。適格患者は非嚢胞性線維症気管支拡張症の患者で、過去12ヶ月に少なくとも2回の抗菌薬治療を要する呼吸器系増悪を経験し、緑膿菌の肺感染症の既往があるものとした。患者はランダムに2;1にARD-3150あるいはプラセボに割り付けられた。ARD-3150(リポソーム封入シプロフロキサシン135mg/3mL+フリーシプロフロキサシン54mg/3mL)あるいは6mLプラセボ(空リポソーム希釈混合3mL+生理食塩水3mL)を1日1回、合計6コースの56日治療サイクル、計48週間続けた。
 プライマリエンドポイントはランダム化から48週における初回呼吸器系増悪までの期間とした。私たちは、少なくとも1回の投与量の治験薬を投与されたすべてのランダム化された患者を含む全解析集団について、プライマリおよびセカンダリ有効性、安全性、および微生物学解析を行った。

結果:
 2014年3月31日から2015年8月19日までの間、われわれはORBIT-3試験において514人の患者を、ORBIT-4試験で533人の患者を登録した。全解析集団は、ORBIT-3試験で278人(少なくとも1回のARD-3150を投与された183人およびプラセボを投与された95人)、ORBIT-4試験で304人(少なくとも1回のARD-3150を投与された206人およびプラセボを投与された98人)が含まれた。
 ORBIT-4試験において、初回呼吸器系増悪までの期間の中央値はARD-3150群で230日、プラセボ群で158日であり、統計学的に有意な72日の差が観察された(ハザード比0.72、95%信頼区間0.53-0.97、p=0.032)。ORBIT-3試験において、初回呼吸器系増悪までの期間の中央値はARD-3150群で214日、プラセボ群で136日であったが、差の78日は統計学的に有意な差ではなかった(ハザード比0.99、95%信頼区間0.71-1.38、p=0.97)。
 ORBIT-3試験およびORBIT-4試験のデータをプール解析すると、初回呼吸器系増悪までの期間の中央値はARD-3150群で222日、プラセボ群で157日であったが、差の65日は統計学的に有意な差ではなかった(ハザード比0.82、95%信頼区間0.65-1.02、p=0.074)。副作用イベントの数および重篤な副作用イベントはORBIT-3試験およびORBIT-4試験における両群で同等だった。
ORBIT-3, 4試験:慢性緑膿菌感染症を有する非嚢胞性線維症気管支拡張症に対する吸入シプロフロキサシン_e0156318_7575210.png
(文献より引用)

結論:
 非嚢胞性線維症気管支拡張症で過去1年に抗菌薬を要する慢性緑膿菌肺感染症を有する患者に対するARD-3150は、ORBIT-4試験ではプラセボと比較して初回呼吸器系増悪までの期間中央値を有意に延長させたが、ORBIT-3試験あるいはプール解析では有意ではなかった。試験間の不一致性は、非嚢胞性線維症気管支拡張症の不均一性および吸入抗菌薬の適切なアウトカム尺度を考慮したうえでさらなる研究が必要であることを支持するものである。

資金提供:
 Aradigm Corporation



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by otowelt | 2019-02-05 00:29 | 感染症全般

possible UIPパターンの一部はconsistent UIPパターンに進展する

possible UIPパターンの一部はconsistent UIPパターンに進展する_e0156318_10574046.jpg 今はdefinite (consistent) UIPパターンの下にprobable UIPパターンが分類されています。そもそもIPFという疾患は、層別化の意義を検証するより前に学術的細分化が進んでしまったがゆえに、実臨床のアベイラビリティと乖離があります。臨床アウトカムに基づいて層別化が進むべきであって、その逆のロジックだと若手医師に説明が難しいのではないでしょうか。CPFEやACOなどの統合概念にも同じことが言えます。

De Giacomi F, et al.
Evolution of diagnostic UIP computed tomography patterns in idiopathic pulmonary fibrosis: Disease spectrum and implications for survival.
Respir Med. 2018 Sep;142:53-59.

背景:
 特発性肺線維症(IPF)における現在の診断的胸部CTパターンが異なる臨床的表現型を表すのか、あるいはただ同じ放射線学的過程の一時的進展を表しているのかは不明である。われわれは、胸部CTで"possible"あるいは"inconsistent" UIPパターンを示すIPF患者を調べ、その頻度、"consistent" UIPパターンにいたる時期、および生存に対する影響を調べた。

方法:
 われわれの施設でIPF連続患者を2005年1月1日から2013年12月31日まで登録した。経時的な胸部CT所見は2人の専門放射線科医によって評価された。ベースラインおよびその後の臨床データを照合した。

結果:
 91人の患者(平均年齢67.4歳、59%が男性)が登録され、"possible" UIPパターンが58人(64%)、"inconsistent" UIPパターンが33人(36%)だった。29人 (32%) が中央値57ヶ月(IQR 33-78ヶ月)で"consistent" UIPパターンに変化した。パターンの進展にかかわらず、肺機能の低下は追跡検査において統計学的に有意だったが、程度に関しては差はなかった。"consistent" UIPパターンへの進展は、IPF診断日あるいは"consistent" UIPパターンと胸部CTで判定された日からの生存悪化には影響しなかった。
possible UIPパターンの一部はconsistent UIPパターンに進展する_e0156318_13192038.png
(文献より引用)

結論:
 初期に"possible"あるいは"inconsistent" UIPパターンと診断された一部のIPF患者は、"consistent" UIPパターンにヶ月~年単位で進展する。それでも、パターンの進展にかかわらず、死亡リスクと死亡原因は同様だった。これは、IPFの放射線学的スペクトラムのなかでは、同程度の死亡が起こることを支持するものである。

補足:
 possible UIPパターンについては、ほぼほぼIPFと考えてよいという意見が台頭しています。Kimらのメタアナリシスが参考になります(Kim H, et al. Sci Rep. 2018 Oct 26;8(1):15886. doi: 10.1038/s41598-018-34230-z.)。
possible UIPパターンの一部はconsistent UIPパターンに進展する_e0156318_1321364.png
(文献より引用)









by otowelt | 2019-02-03 00:32 | びまん性肺疾患