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本の紹介:女医問題ぶった斬り! 女性減点入試の真犯人

 良書だと思います。くだんの問題にしっかり斬り込んでいる。タイトルはちょっと大衆ウケを狙いすぎでしょうか。出版社が考えたものかもしれませんが、スマートな内容とは対極的な印象でした。

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発売日:2019年6月18日
単行本 : 217ページ
価格 : 842円 (税込)
出版社 : 光文社
監訳: 筒井 冨美 先生

e0156318_13141310.jpgAmazonから購入する

 今から約1年前、2018年8月のことでした。東京医大における不正入試の調査をすすめるなか、女性や多浪受験生に対する減点操作が明るみに出て話題になりました。特に、女性受験生に対する減点操作については、女性差別であるという非難がマスメディアでも頻繁に取り上げられました。

 このテーマで本が書けるとしたら、女性医師だろうとは思っていました。実際、書籍化したのはSNSでは有名なフリーランスの麻酔科女性医師です。第4章のタイトル「女医の使い方」なんて、もし男性医師が執筆していたら非難囂々だったでしょうね。

 著者の先生は「ゆるふわ女医」をどちらかといえば批判する意見が多いと思っていましたが、その前情報を知って読んだためか、意外と冷静だと感じました。

 私は、女性であろうと男性であろうと、医師の「ゆるふわ」という働き方を否定しません。医師免許という資格を使って、自分の好きなように働くことは何も悪くない。ワークライフバランスは人それぞれです。しかし、今や医学生の半数は女性です。彼女たちがキャリアを積みつつ、快適に働ける環境づくりをすすめていかないと、日本の医療は崩壊してしまう。

 この女性医師問題について、少しでも批判的に感じるところがある男性医師に、読んでもらいたい。






by otowelt | 2019-07-31 00:35 | その他

自然気胸の30日再入院率は13.6%

e0156318_14441648.jpg 下記のWalkerらのシステマティックレビューでは、1年再発率は29%と報告されています。自然気胸の再発の多くが初回治療後早期に発症していることが予想されます。

参考記事:システマティックレビュー:自然気胸の再発率は32.1%

 論文を読んでいて驚いたのは、1週間足らずの入院で1万ドル以上かかっている点でした。うわー・・・オソロシイ・・・。

 過去の報告に基づいて近似曲線を描いてみると、自然気胸の再発率は図のようになります。
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(自然気胸再発率の推移)

Mukhtar O, et al.
Characteristics of 30-day readmission in spontaneous pneumothorax in the United States: a nationwide retrospective study.
J Community Hosp Intern Med Perspect. 2019 Jun 19;9(3):215-220.


目的:
 われわれの研究は、自然気胸患者における30日全原因再入院率の全国推定値を同定し、死亡率、入院期間、入院費用に関して、これら再入院の負担を調査することを目的とした。

方法:
 2013~2014年の国内再入院データベースを用いて、成人自然気胸患者を同定した。研究コホートの患者レベルおよび病院レベルの変数を分析した。プライマリアウトカムは、再入院の理由を含めた30日間の再入院率である。セカンダリアウトカムには、全死因死亡率、医療ソース利用、再入院の予測因子が含まれた。

※この解析では、18歳未満の症例は除外された。

結果:
 合計47108人の自然気胸患者が同定された。30日再入院率は13.6%だった。もっともよくみられた再入院理由は、気胸再発だった。再入院患者の院内死亡率は3.1%だった。気胸による再入院は死亡率が高かった(4.6%、p<0.001)。年齢が45~64歳(ハザード比1.31、95%信頼区間1.15-1.49、p<0.001)、癌の病歴(ハザード比1.34、95%信頼区間1.17-1.53、p<0.001)は30日再入院の予測因子だった。
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(年齢別再入院:文献より引用)

 30日歳入院のリスクを減少させたのは、非保険自費診療(ハザード比0.73、95%信頼区間0.61-0.82、p<0.001)、初回入院での胸膜癒着術(ハザード比0.632、95%信頼区間0.57-0.70、p<0.001)などだった。

結論:
 自然気胸患者の30日再入院率は13.6%であり、気胸再発が最たる原因だった。30日再入院は、高い死亡率と高額な入院費用に関連していた。中年および癌の病歴は30日再入院のリスクを上昇させた。


by otowelt | 2019-07-30 00:45 | 呼吸器その他

血清HMGB1はIPF患者における急性増悪を予測

e0156318_10574046.jpg びまん性肺疾患の世界ではよく論議されていた知見ですね。PMX-DHPがIPF急性増悪期のHMGB1を減少させるという報告もありました(Blood Purif. 2011;32(4):310-6. )。

Yamaguchi K, et al.
Serum high-mobility group box 1 is associated with the onset and severity of acute exacerbation of idiopathic pulmonary fibrosis.
Respirology. 2019 Jul 3. doi: 10.1111/resp.13634.


背景および目的:
 HMGB1高値は、前炎症性シグナルを促進させることから肺傷害のメディエーターとして知られている。過去の研究ではHMGB1はIPF急性増悪の患者において肺および血中で増加していることが示されている。この研究では、血中HMGB1が安定期IPFおよび急性増悪期の疾患進行・予後の予測能があるかどうか調べた。

方法:
 計76人の安定期IPF患者のうち、17人がIPF急性増悪を起こした。COPD患者37人、健康コントロール患者74人が組み入れられた。血清HMGB1値を4群間で比較し、安定期IPF患者において、HMGB1濃度と急性増悪発症および予後との関連を評価した。HMGB1の予後予測能はIPF急性増悪患者において決定された。

結果:
 健康コントロール冠者と比べると安定期IPF患者では血清HMGB1が高かった。またIPF急性増悪の患者は、これらの群のいずれよりも血清HMGB1が高かった(安定期IPF:6.26 ± 5.27, 健康コントロール:3.42 ± 2.69、IPF急性増悪:19.20 ± 16.76 ng/mL)。安定期IPF患者とCOPD患者の間では血清HMGB1の値に差はなかった。HMGB1が高いと安定期IPF患者において急性増悪を早期に発症し、IPF急性増悪の患者では生存が短くなることがわかった(それぞれP = 0.030、0.001)。

結論:
 血清HMGB1高値は、安定期IPF患者において早期急性増悪よ予測し、IPF急性増悪患者では生存が短くなる。すなわち、HMGB1は、疾患の急性悪化と関連していることが示唆された。



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by otowelt | 2019-07-29 00:15 | びまん性肺疾患

筋炎関連ILDに対するアザチオプリンおよびミコフェノール酸モフェチル

e0156318_93123.png 膠原病関連ILDの研究がさかんになってきました、最近。

J.A. Huapaya, et al.
Long-term treatment with azathioprine and mycophenolate mofetil for myositis-related interstitial lung disease
CHEST, DOI: https://doi.org/10.1016/j.chest.2019.05.023


背景:
 間質性肺疾患(ILD)に対するアザチオプリン(AZA)およびミコフェノール酸モフェチル(MMF)の有効性が報告されているが、それは主に膠原病関連間質性肺疾患(CTD-ILD)においてである。この研究の目的は、肺機能検査に対するAZAおよびMMFの効果と筋炎関連ILD(M-ILD)におけるプレドニゾン用量への影響を調べることである。

方法:
 ジョンズ・ホプキンス病院におけるM-ILDの後ろ向き研究で、AZAあるいはMMF、その他ステロイド減薬因子を用いている患者を組み入れた。線形混合効果モデルで性別、年齢、抗ARS抗体、喫煙歴を補正し、%努力性肺活量(FVC%)、%拡散能(DLCO%)、プレドニゾン用量を比較した。

結果:
 66人のM-ILD患者がAZAで治療され、44人がMMFで治療された。非喫煙者はAZA群で有意に多かった(p=0.03)。AZA群の53%、MMF群の15.9%が抗Jo-1抗体陽性だった(p<0.0001)。治療開始時、平均FVC%およびDLCO%変化はAZAのほうがMMFよりも有意に低かった。両群ともに、2~5年におよびFVC%は改善しプレドニゾン用量は減少した。しかしながら、DLCO%は、AZA群のみが改善した。補正モデルでは、治療後FVC%もDLCO%も有意な差は観察されなかった(それぞれ平均差1.9%、-8.2%)。しかし、AZA群では36ヶ月時点でプレドニゾン用量が6.6mg減った。
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(%努力性肺活量:文献より引用)
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(%DLCO:文献より引用)

 有害イベントはMMFよりAZAのほうが頻度が高かった(33.3% vs 13.6%, p=0.04)。トランスアミナーゼ上昇はAZA群で15.2%、MMF群で2.3%だった。

結論:
 M-ILDにおいて、AZA治療はFVC%改善, DLCO%改善, プレドニゾン用量減少と関連していた。MMFで治療された患者は、FVC%およびプレドニゾン用量が改善した。36ヶ月後、AZAで治療された患者はMMFで治療された患者よりもプレドニゾン用量が少なかった。



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by otowelt | 2019-07-25 00:17 | びまん性肺疾患

尿毒症性胸膜炎の臨床的検討

e0156318_9511053.jpg 意外と見逃されやすい病態なので、結核や石綿に左右されないようにしたいですね。

梅澤 佳乃子ら.
尿毒症性胸膜炎患者における局所麻酔下胸腔鏡検査による胸膜病変の検討.
気管支学. 2019 年 41 巻 3 号 p. 233-238


背景:
 慢性腎不全患者における難治性胸水例が呼吸器内科に紹介となることがある.胸水貯留の原因の一つとして尿毒症性胸膜炎が知られているが,局所麻酔下胸腔鏡所見に関しての報告は少ない.

目的・方法:
 2012年2月から2014年8月に当院にて局所麻酔下胸腔鏡検査を施行し,尿毒症性胸膜炎と診断した維持透析患者9例を対象とし,その臨床的特徴を検討した.

結果:
 平均年齢は65歳,男性8例,女性1例.胸水量は中等量が7例,大量が2例.透析期間は中央値36か月(12~252か月),胸水貯留指摘から検査までの期間は中央値4か月(1~7か月).淡血性から血性胸水が7例,黄色胸水は2例.胸腔鏡所見は8例でびまん性胸膜肥厚と線維素が形成され,詳細な観察は困難であった.生検可能な8例に対して胸膜生検を施行し,全例で線維素性胸膜炎として矛盾しない結果であり,除外診断として尿毒症性胸膜炎と診断した.

結論:
 慢性腎不全患者における難治性胸水の原因として尿毒症性胸膜炎を念頭に置く必要があり,その特徴的な胸腔鏡所見はびまん性胸膜肥厚と線維素形成であった.



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by otowelt | 2019-07-24 00:59 | 気管支鏡

日経メディカルの記事について

 2019年7月19日に公開した「「クラミジア肺炎」と言うの、やめませんか」(URL:https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/blog/kurahara/201907/561241.html)の記事について、複数の読者の方から事実関係の誤認があるとのご指摘をいただきました。確認したところ、医学的に古い情報に基づいた記載があったことが分かりました。本件についてお詫びをさせていただくとともに、記事中のどの部分が不正確だったのかについて説明します。

 記事中では、1999年に、遺伝子分析に基づき「肺炎クラミジア」と「オウム病クラミジア」の分類が、Chlamydia(クラミジア)属からChlamydophila(クラミドフィラ)属に再編されたことを紹介しました。しかしその後、専門家たちの間でこの分類の再編が不要であるというディスカッションがなされ、数年前に「クラミジア属に戻すべきだ」というコンセンサスが得られていました(Int J Syst Evol Microbiol. 2017 Feb;67(2):512-513.、Int J Syst Evol Microbiol 2010; 60: 2694.)。

 これら病原微生物の名称についても、現時点ではまだ混在はあるものの、肺炎クラミジア(Chlamydia pneumoniae)、オウム病クラミジア(Chlamydia psittaci)といった表記に統一する動きがあるそうです。またクラミジア属とクラミドフィラ属は、「属」の上位分類である「科」においてはどちらもクラミジア科(Chlamydiaceae)なので、クラミドフィラ属が残ったとしても、これらの総称としてカタカナで「クラミジア肺炎」と表現することに問題はないという指摘もいただきました。

 最新情報を十分に確認せず、読者の皆様に不正確な情報を提供してしまったことをお詫びいたします。なお、誤認のあった「病原微生物の分類や名称の変更」は、この記事の主要テーマでもあり、記事を部分的に修正することはできません。そこで記事本文は、公開当時のままで掲載を続けます。ご了承ください。





by otowelt | 2019-07-23 07:45 | その他

気道可逆性検査はCOPDと喘息の鑑別には役に立たない?

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Christer Janson, et al.
Bronchodilator reversibility in asthma and COPD: Findings from three large population studies
European Respiratory Journal 2019; DOI: 10.1183/13993003.00561-2019


背景:
 気道可逆性(BDR)試験は、閉塞性気道疾患の診断法として用いられている。この研究の目的は、喘息およびCOPDの被験者においてBDRを測定する異なる方法を比較すること、またBDRが症状負担やフェノタイプ特性にどの程度関連しているかを調べることである。

方法:
 3つの大規模国際集団研究において、16歳以上の35,628人にサルブタモール200μg吸入前および15分後に1秒量(FEV1)および努力性肺活量(FVC)が測定された。被験者は3群に分類された:現在の喘息(2833人)、COPD(1146人)、気道疾患なし(31,649人)。呼気フロー(FEV1上昇)に関しては3基準、肺容量(FVC上昇)に関しても3基準を用いて定義した。

結果:
 FEV1が12%以上かつ200mL改善した気道可逆性がある頻度は、喘息で17.3%、COPDで18.4%だった。一方で気道疾患のない被験者では5.1%だった。喘息では気道可逆性がwheezes(オッズ比1.36、95%信頼区間1.04-1.79)、アトピー(オッズ比1.36、95%信頼区間1.04-1.79)と関連していた。一方、COPDにおいてFeNOが上昇している場合、気管支拡張薬投与前のFEV1で補正しても、呼気フローないし肺容量関連の気道可逆性のいずれもが症状の悪化、増悪、健康ステータスと関連していなかった。
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(文献より引用)

結論:
 喘息と同じようにCOPDの被験者においても、少なくとも気道可逆性はよくみらえる現象である。これはすなわち、集団ベース研究において喘息とCOPDを鑑別する上で気道可逆性の測定に限界があることを示唆する。しかしながら、喘息においては気道可逆性はフェノタイプマーカーになるかもしれない。


by otowelt | 2019-07-23 00:05 | 気管支喘息・COPD

世界的なLTBI有病率はどのくらいか?

e0156318_1302985.jpg 4~5人に1人というところですね。

 メディカルトリビューンで詳しく解説しています。

「世界で4人に1人が結核菌に感染」(URL:https://medical-tribune.co.jp/rensai/2019/0716520754/

Cohen A, et al.
The global prevalence of latent tuberculosis: a systematic review and meta-analysis.
Eur Respir J. 2019 Jun 20. pii: 1900655. doi: 10.1183/13993003.00655-2019.


背景:
 1999年、WHOは世界人口の少なくとも3分の1が潜在性結核感染症(LTBI)に罹患していると推定し、近年それは4分の1にアップデートされた。しかしながら、これはまだツベルクリン反応(TST)調査と組み合わせているため議論の余地がある。TSTよりも高い特異度を有するインターフェロンγ遊離試験(IGRA)は、その後広く実施されてきたが、世界的なLTBI有病率を推定するためには用いられていない。

方法:
 われわれは、2005年~2018年に出版された研究から、IGRAおよびTSTの両データを有するものを用いて、LTBI有病率を推定するべくシステマティックレビューおよびメタアナリシスをおこなった。地域および世界的なLTBI有病率が算出された。結核の低蔓延国、中蔓延国、高蔓延国によって層別化し、ランダム効果モデルを用いて各地域の統合推定値が算出された。

結果:
 3280の研究がスクリーニングされ、36ヶ国から88研究が組み入れられた。そのうち、41がIGRA(67167人)、67がTST(28万4644人)の研究だった。世界的なLTBI有病率は、IGRAに基づくと24.8% (95%信頼区間 19.7–30.0%)、TST(10mmをカットオフ値に設定)に基づくと21.2% (95%信頼区間17.9–24.4%)だった。有病率の推定値は、WHOの発生率とよく相関していた(Rs = 0.70、p <0.001)。

結論:
 IGRAおよびTSTの両サーベイを用いたLTBIの世界的有病率を調べた初めての研究において、世界人口の4分の1が結核菌に感染していることが分かった。両試験は、不完全ではあるものの、予防治療に適格な個人を同定する上で使用されるため、関連性があると考えてよいだろう。水面下で活動性結核を増やす原因となっている、潜在的な結核感染患者集団をターゲットにするなお一層の努力強化が必要である。




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by otowelt | 2019-07-22 00:50 | 抗酸菌感染症

抗結核薬の副作用の実際

e0156318_1302985.jpg・はじめに
 ここでは、もっともよく使われる抗結核薬であるイソニアジド(INH)、リファンピシン(RFP)、エタンブトール(EB)、ピラジナミド(PZA)の4剤の副作用について記載します。それぞれ副作用があるので、患者さんに1つ1つ説明することが望ましいのですが、まれな副作用まで説明していると日が暮れてしまいます。ゆえに、頻度が高く代表的なものを伝えることが望ましいと思います。

・皮疹
 実臨床で一番多いのは皮疹です。これはどの製剤でも起こりえるため、原因薬剤の同定が難しいです。あまりにも皮疹が重症の場合、いったん休薬することになりますが、軽度のものであればステロイド含有軟膏や保湿で対応することが多いです。
 また、どの薬剤にもみられるやっかいな副作用として肝障害も重要です。多くがPZAやINHによるものですが、ときにビリルビン上昇を伴うRFPの肝障害もあるため注意が必要です。定期的に採血する意義は肝障害の早期発見にあります。

・INH
 成書には代表的なINHの副作用として末梢神経障害が挙げられていますが、個人的にINHを投与していて末梢神経障害に難渋した経験はほとんどありません。ただ、アルコール多飲者、高齢者、妊婦などビタミンB6を欠乏しやすい患者に対してはピリドキシンの補充は必要でしょう。ちなみに、INHで頻度が高い副作用は、やはり肝障害です。40~69歳の患者における潜在性結核感染症に対するINH単剤使用例において、ASTあるいはALTが500IU/L以上になる頻度は4~6%とされています1)

・RFP
 RFPの代表的な副作用も肝障害とされていますが、頻度が高いのは嘔気などの消化器症状です。あまりにも症状が強いときは、いったん休薬するか、朝・昼・夕に分割するなどの工夫をしてリトライしたいところです。RFPの肝障害は胆汁うっ滞型の重症のものが多いため、早期発見に努めるべきです。また、RFP内服中は体液、特に尿が赤色になることは知っておきたいです。視界がオレンジ色のように見えると訴えて来院した患者にEBの副作用を疑ったことがありますが、実は長く装着していたコンタクトレンズがリファンピシン色に着色していたという事例を経験したことがあります。

・EB
 EBの視力障害については、現在日本で用いられているような用量であればほとんど問題ないとされていますが、用量依存性に起こりうるため、維持期治療がINHとEBの2剤になっているようなケースでは注意が必要です(その場合、EBを1年以上継続することが多いため)。網膜疾患がある場合にはできるだけEBの処方を避けているが、緑内障があるからといって全例EBを使わないというのは過度な懸念です。EBを内服して3日程度で目がぼやけると訴える人も多いですが、基本的に内服数ヶ月以降に起こる副作用であり、「視力障害が起こるかもしれない」という医療者側からの情報提供が患者心理に影響している可能性が高そうです。

・PZA
 PZAでもっとも懸念されるのはやはり肝障害です。投与早期からトランスアミナーゼの急激な増加がみられることがあり、投与患者の10%程度にみられるため注意が必要です2)。治療初期にトランスアミナーゼの上昇があれば、たいがいPZAです。
 また、PZAは内服すればほぼ必発で尿酸値が上昇します。しばしば10 mg/dLを超えて上昇します。この薬剤性高尿酸血症は痛風を起こすリスクが極端に高くなるわけではありませんが、高尿酸血症をもともと有する患者には用いないほうがよいです。個人的には12mg/dLを超えてくるケースではベンズブロマロンを用いています。アロプリノールは痛風発作を起こした事例が報告されており、避けたほうがよいとされています。
 


(参考文献)
1) 結核療法研究協議会内科会. 日本における潜在性結核感染症治療の状況、続報. 結核. 2018;93(11-12):585-9.
2)Shu CC, et al. Hepatotoxicity due to first-line anti-tuberculosis drugs: a five-year experience in a Taiwan medical centre. Int J Tuberc Lung Dis. 2013 Jul;17(7):934-9.




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by otowelt | 2019-07-20 00:50 | レクチャー

オピオイド誘発性便秘の頻度は約5割

e0156318_9251047.png ESMO2018で発表された内容が論文化されました。筆頭著者は当院の緩和ケアチームの所医師です。

Tokoro A, et al.
Incidence of opioid-induced constipation in Japanese patients with cancer pain: A prospective observational cohort study.
Cancer Med. 2019 Jun 24. doi: 10.1002/cam4.2341.


背景:
 これは、日本人の癌患者においてオピオイド誘発性便秘(OIC)をアセスメントした多施設共同前向き観察研究である。

方法:
 適格患者は、安定期癌患者でECOG PS 0-2とした。OCIの発症は、Rome IV診断基準に基づき、オピオイド治療開始14日以内の日記記録によって規定された。OIC患者の頻度は、1週ごと、合計2週間で算出された。セカンダリ評価項目としてBowel Function Index (BFI)スコア、(医師による患者評価)、自発的排便回数/週(SBMs)(患者評価)、および医師診断によるOIC発症割合である。

結果:
 220人の患者が登録された。平均モルヒネ相当量は22mg/日だった。Rome IV基準によると、累積OIC発症割合は56%(95%信頼区間49.2-43.9%)で、1週目で48%(95%信頼区間40.8-54.6%)、2週目で37%(95%信頼区間30.1-43.9%)だった。累積OIC発症割合は、便秘予防薬を投与された患者のほうが低かった(48%[95%信頼区間38.1-57.5%] vs 65%[95%信頼区間55.0-74.2%])。BFIスコアによるOIC発症割合は、59%(95%信頼区間51.9-66.0%)、主治医評価によるOCI発症割合は61%(95%信頼区間54.3-68.1%)、SBMの頻度によるOIC発症割合は45%(95%信頼区間38.0-51.8%)だった。オピオイド開始前の自発的排便/週の頻度は、OIC発症にもっとも影響する因子だった。

結論:
 便秘症に対する予防薬の使用は、OIC発生率の減少に対して中等度効果があった。報告されたOICの発生率は、診断ツールに応じて変動した。



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by otowelt | 2019-07-19 00:46 | 肺癌・その他腫瘍