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GALATHEA試験・TERRANOVA試験:COPDに対するベンラリズマブは無効

e0156318_1312221.png COPDの中でも好酸球性フェノタイプにファセンラ®が効かないという報告です。


Criner GJ, et al.
Benralizumab for the Prevention of COPD Exacerbations.
N Engl J Med. 2019 Sep 12;381(11):1023-1034.


背景:
 中等症~最重症のCOPD患者の増悪予防における、インターロイキン-5受容体αモノクローナル抗体ベンラリズマブの有効性と安全性は明らかにされていない。

方法:
 登録されたCOPD患者は、40~85歳の中等症~重症のものと定義された。
 GALATHEA試験およびTERRANOVA試験において、COPDガイドラインに基づく吸入療法を行っているにもかかわらず増悪を繰り返すCOPD患者を(好酸球数数が≧220/mm3:<220/mm3が2:1の割合)登録した。登録患者は、ベンラリズマブ(GALATHEA試験において30mgまたは100mg、TERRANOVA試験において10mgまたは30mgまたは100mg)を8週間ごと(初回3回は4週ごと)に投与する群と、プラセボを投与する群にランダムに割り付けた(56週間)。プライマリエンドポイントは、ベンラリズマブによる治療効果とし、ベースラインの血中好酸球数が220/mm3以上の患者における56週時の年間COPD増悪率比(ベンラリズマブ群 vs プラセボ群)と定義した。また、安全性についても評価した。

結果:
 GALATHEA試験において、COPD年間増悪率(推定値)は、ベンラリズマブ30mg群1.19回/年(95%信頼区間1.04-1.36)、ベンラリズマブ100mg群1.03回/年(95%信頼区間0.90-1.19)、プラセボ群1.24 回/年(95%信頼区間1.08-1.42)だった(プラセボ群と比較した率比:30mg群0.96、P=0.65、100mg 群0.83、P=0.05)。
 TERRANOVA試験において、COPD年間増悪率(推定値)は、ベンラリズマブ10mg群0.99 回/年(95%信頼区間0.87-1.13)、30mg群1.21回/年(95%信頼区間1.08-1.37)、100mg群1.09 回/年(95%信頼区間0.96-1.23)、プラセボ群1.17回/年(95%信頼区間1.04-1.32)であった(プラセボ群と比較した率比:10mg群0.85、P=0.06、30mg群1.04、P=0.66、100mg群0.93、P=0.40)。
 両試験とも、56週時点においてベンラリズマブのいずれの用量群も、プラセボ群と比較した年間COPD増悪率比は有意差に達しなかった。
 有害事象のタイプと頻度は、ベンラリズマブ群とプラセボ群で同様だった。

結論:
 中等症~最重症のCOPDにおいて、中等度または重度のCOPD増悪を繰り返す、血中好酸球数が 220/mm3以上の患者に対するベンラリズマブの上乗せによっても、プラセボよりCOPD年間増悪率が低くなることはなかった。






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by otowelt | 2019-09-17 00:20 | 気管支喘息・COPD

肺癌サバイバーは心血管系疾患リスクが高い

e0156318_10535567.png 以前から言われている知見の1つです。これはどの癌腫でも似た報告がありますね。

Yoon DW, et al.
Increased risk of coronary heart disease and stroke in lung cancer survivors: A Korean nationwide study of 20,458 patients.
Lung Cancer. 2019 Aug 24;136:115-121.


目的:
 肺癌治療の進歩により、肺癌サバイバーは増えた。心血管系疾患(CVD)は非癌死亡の主要な原因の1つとされており、CVDマネジメントは癌サバイバーシップケアの重要な点である。しかしながら、肺癌手術を受けた肺癌サバイバーにおける心血管系リスクのデータは不足している。われわれは、肺癌サバイバーと一般非癌集団の間のCVD発症を比較した。

方法:
 韓国国内健康保険サービスデータベースを用いて、2007年~2013年で20458人の肺癌手術を受けた患者を抽出した。アウトカム変数は、冠動脈性心疾患(CHD)、心筋梗塞(MI)、虚血性脳卒中(IS)、死亡とした。アウトカムは2016年まで追跡された。

結果:
 20458人の肺癌手術を受けた患者と、27321人の非癌コントロール患者を比較した。肺癌サバイバーは、すべての心血管系疾患リスク上昇(補正ハザード比1.27, 95%信頼区間1.19-1.36), CHDリスク上昇(補正ハザード比1.26, 95%信頼区間1.16-1.36)、ISリスク上昇(補正ハザード比1.22, 95%信頼区間1.07-1.39)と関連していた。
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(すべての心血管系疾患リスク:文献より引用)

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(CHDおよびISリスク:文献より引用)

 化学療法および放射線治療は心血管系イベントリスク上昇、CHDリスク上昇、MIリスク上昇と関連していた。1年間および3年間まで心血管系イベントがなかった肺癌サバイバーのいずれにおいても、非癌集団と比較すると心血管系イベントリスク上昇は高かった。

結論:
 一般非癌集団と比較すると、肺癌サバイバーはCHD、ISリスクが高かった。そのため、肺癌サバイバーにおいて、とりわけ化学療法や放射線治療を受ける場合には、心血管系リスクを注意深く評価する必要がある。



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by otowelt | 2019-09-15 00:41 | 肺癌・その他腫瘍

呼吸器疾患があると鍼治療後の気胸リスクが高くなる

e0156318_1627308.png 思ったより頻度が低いですね。ものすごく稀です。
 当院にもまれに、鍼治療後の気胸患者さんが来院されます。問い合わせても「鍼治療とは関係ありません」と言われることが多いのが残念です。

Lin SK, et al.
Incidence of iatrogenic pneumothorax following acupuncture treatments in Taiwan.
Acupunct Med. 2019 Aug 21:acupmed2018011697.

背景:
 気胸は鍼治療におけるまれな合併症であるが、そのリスク因子はよくわかっていない。

目的:
 この研究は、台湾における国内健康保険研究データベースにおける100万人のサンプルコホートを用いて、鍼治療後に入院を要する気胸を起こした頻度を調べたものである。

方法:
 1997年から2012年の間に当該コホートを用いて調べた。患者は、性別、保険金額、合併症、居住地域、鍼治療を受けた数によって層別化された。ロジスティック回帰分析によって気胸リスクを推定した。

結果:
 鍼治療後7日後までの情報が得られた、41万1734人における540万7378回の鍼治療がコホートから同定された。医原性気胸の発生は100万回の鍼治療あたり0.87で、解剖学的にリスクが高い部位の鍼治療では100万回の鍼治療あたり1.75だった。多変量ロジスティック回帰分析によれば、呼吸器手術歴(補正オッズ比7.85、95%信頼区間3.49-9.25)、慢性気管支炎(補正オッズ比2.61、95%信頼区間1.03-6.87)、気腫(補正オッズ比4.87、95%信頼区間1.03-7.96)、肺炎(補正オッズ比2.09、95%信頼区間1.44-2.72)、結核(補正オッズ比3.65、95%信頼区間1.39-9.56)、肺癌(補正オッズ比3.85、95%信頼区間1.53-9.73)が鍼治療後の気胸リスクを上昇させた。女性よりも男性のほうが気胸リスクは高かった(補正オッズ比3.41、95%信頼区間1.36-8.57)。治療回数は気胸リスク上昇とは関連していなかった。

結論:
 慢性気管支炎、気腫、結核、肺癌、肺炎、呼吸器手術既往などの呼吸器疾患の病歴がある患者は鍼治療後の気胸リスクが上昇した。



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by otowelt | 2019-09-13 00:11 | 呼吸器その他

胸膜プラークは肺癌のリスクを上昇させない

e0156318_1553490.png トップジャーナルで塵肺の論文が出るとテンションが上がります。滅多にない出来事なので。

Brims FJ, et al.
Pleural Plaques and the Risk of Lung Cancer in Asbestos-exposed Subjects.
Am J Respir Crit Care Med. 2019 Aug 21. doi: 10.1164/rccm.201901-0096OC.


背景:
 石綿への曝露は、その曝露用量に依存して肺癌リスクを上昇させる。肺癌と胸膜プラークとの関連については議論の余地がある。

目的:
 胸膜プラークと肺癌リスクの関連を調べること。

方法:
 被験者は2コホートから集められた。①クロシドライト(青石綿)鉱山、製粉労働者、ウィッテヌーム住民、②混合石綿繊維、混合石綿従事職コホート。全被験者は1990年から毎年胸部レントゲン写真、低線量CT(LDCT)で評価され、国内がんおよび死亡レジストリとリンクされアウトカムを調べた。年齢で補正したCox回帰を用いて、性別、喫煙歴、石綿曝露、石綿肺および胸膜プラークの有無ごとに肺癌のハザード比を推定した。

※ウィッテヌームは石綿生産で有名な町だった。
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結果:
 4240人の追跡時平均年齢は65.4歳で、3486人(82.0%)が男性だった。1315人(31.0%)が胸膜プラークを有しており、1353人(32.0%)に放射線学的な石綿肺がみられた。3042人(71.7%)が既喫煙者で平均喫煙歴は33pack-yearsだった。
 200人に肺癌が発症した。肺癌のリスクは累積喫煙歴、石綿曝露歴が高いほど、また石綿肺があると高くなった。胸膜プラークは、肺癌のリスクを上昇させなかった(コホート①ハザード比1.03, 95%信頼区間0.64-1.67, p=0.89; コホート②ハザード比0.75, 95%信頼区間0.45-1.25, p=0.28)。

結論:
 胸部画像検査において胸膜プラークがあっても、それがその後の肺癌リスクを上昇させるわけではない。石綿曝露量や強度が異なる2コホートで同様の結論だった。





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by otowelt | 2019-09-12 00:24 | 肺癌・その他腫瘍

AJRCCMでのやりとり:外科的肺生検とクライオバイオプシー

e0156318_1543237.jpg AJRCCMで「IPF診断における外科的肺生検とクライオバイオプシー」について議論が交わされています。

参考記事:クライオバイオプシーと外科的肺生検の病理医による一致率は不良

クライオバイオプシーがダメという論調ではなくて、サンプリングエラーをどこまで考えるかという話です。

Romagnoliらの文章を引用します。

「In conclusion, if one considers TBLC as “the baby”, we suggest that the bathwater is dirty and requires a paradigm change. (中略) If we can “clean-up” the bathwater via robust pathological markers that render the probability of diagnosis independent of biopsy size, the baby will be much more comfortable.」

(Romagnoli, et al. Cryobiopsy Compared with Surgical Lung Biopsy in ILD: Reply to Maldonado et al., Froidure et al., Bendstrup et al., Agarwal et al., Richeldi et al., Rajchgot et al., and Quadrelli et al. AJRCCM, August 23, 2019 as DOI: https://doi.org/10.1164/rccm.201906-1252LE)



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by otowelt | 2019-09-11 09:05 | びまん性肺疾患

COPDの処方選択肢の変遷:COLIBRI-COPDコホート

e0156318_1312221.png 個人的にはLAMAは軽症例で用いてもよいと思いますが、ICSとLAMA/LABAの動向は納得できます。

Roche N, et al.
Trends over time in COPD treatment choices by respiratory physicians: An analysis from the COLIBRI-COPD French cohort.
Respir Med. 2019 Jul 26;156:8-14.


背景:
 数十年にわたって、COPDの治療新しいエビデンスと多くのガイドラインが刊行されたが、ガイドラインに準じていない処方もしばしば見受けられる。

方法:
 COLIBRI-COPDコホートにおいて、スパイロメトリーでCOPDと確定診断された患者において、2012年2月から2018年11月の間の主治医の処方選択を解析した。吸入薬(SABA、LABA、SAMA、LAMA、ICS)治療を受けた患者を5治療カテゴリーに分類した。すなわち、以下の通りである。

①初期維持治療なし群(無治療あるいはSAMA、SABAのみ処方)
②1つの長時間作用性気管支拡張薬群(LABAあるいはLAMA)
③2つの長時間作用性気管支拡張薬群(LABA+LAMA)
④1つの長時間作用性気管支拡張薬群とICS群(LABAあるいはLAMA+ICS)
⑤2つの長時間作用性気管支拡張薬群とICS群(LABA+LAMA+ICS)


結果:
 4537人の患者データが登録された。期間中、3つの主要な変化が観察された。
1. GOLD 1あるいはGOLD Aカテゴリーの患者のほとんどで初期維持治療なし群の増加がみられた(GOLD Aカテゴリーは調査時期初期19.1%→終期41.2%)。
2. 2つの長時間作用性気管支拡張薬群はGOLD2~4およびGOLD A~Dで増加が みられた(GOLD B 15.4%→29.7%)
3. GOLD 1~3およびGOLD AでICS使用が減った(2つの長時間作用性気管支拡張薬群とICS群で35.3%→11.1%)

結論:
 COPDに対する治療プロファイルの経時的変化は、論文刊行およびガイドライン推奨からの新しいエビデンスが臨床診療に影響を及ぼした可能性がある。






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by otowelt | 2019-09-10 00:41 | 気管支喘息・COPD

PRACTICAL試験:軽症喘息におけるシムビコート®頓用戦略の妥当性

e0156318_9473145.png 軽症喘息において、「シムビコート®さえ持っておけば」という戦略が成立することはもう間違いありません。
 Novel START試験と合わせて読んでおきたいですね。

・参考記事:Novel START試験:シムビコート®頓用は軽症喘息に最適な選択肢?

Hardy J, et al.
Budesonide-formoterol reliever therapy versus maintenance budesonide plus terbutaline reliever therapy in adults with mild to moderate asthma (PRACTICAL): a 52-week, open-label, multicentre, superiority, randomised controlled trial.
Lancet. 2019 Aug 23. pii: S0140-6736(19)31948-8.


背景:
 軽症喘息の成人において、ICSに即効性LABAを組み合わせて発作時治療として用いることは、SABA単独の発作時治療よりも重症増悪を減らす。われわれは、ブデソニド/ホルモテロールによる発作時治療の有効性を、ブデソニド定期+発作時テルブタリンによる治療と比較した。

方法:
 この研究は、ニュージーランドにおける15施設が参加した多施設共同非盲検ランダム化比較試験である。ブデソニド/ホルモテロール配合剤よる発作時治療と、低用量ブデソニド維持療法+テルブタリン発作時治療の有効性を比較するために行われた。
 適格患者は、自己申告または医師によって喘息と診断された18~75歳で、割り付け前の12週間に発作時SABA単独治療、または発作時SABA治療+低~中用量のICS維持療法を行っていた患者とした。
 登録患者は、ブデソニド/ホルモテロール配合剤(1噴霧中に200μg/6μg、発作時に1吸入追加)による治療群、またはブデソニド(1回200μg1吸入1日2回)+テルブタリン(250μg、必要時2吸入追加)による治療群に、1:1の割合でランダムに割り付けられた。0週、4週、16週、28週、40週、52週に患者は外来受診した。
 プライマリアウトカムは、ITT集団における患者1人あたりの重症増悪年間発生。重症増悪は、喘息によって3日間以上の全身性ステロイド使用、または全身性ステロイドを要する喘息に由来した入院・救急受診と定義された。

結果:
 2016年5月4日~2017年12月22日までの間に、890人が登録され、解析対象となったのは885人だった。437人がブデソニド/ホルモテロール頓用群(平均年齢43.3±15.2歳、女性56%)、448人がブデソニド維持+テルブタリン群(平均年齢42.8±16.7歳、女性54%)に割り付けられた。診断時年齢はおおむね19歳前後と、若年発症である。88%の患者が過去1年に重症増悪をきたしていない。FeNOは、それぞれ26.0ppb(範囲15.0–51.0)、30.0ppb (18.0–62.5) だった。
 患者1人あたりの年間重症増悪は、ブデソニド/ホルモテロール頓用群のほうが低かった(絶対発生率:0.119 vs 0.172、相対率0.69、95%信頼区間0.48~1.00、p=0.049)。 
 初回の重症増悪までの期間は、ブデソニド/ホルモテロール頓用群のほうが長かった(ハザード比0.60、95%信頼区間0.40~0.91、p=0.015)。初回の中等症あるいは重症増悪までの期間についても同等だった(p=0.004)。
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(初回の重症増悪までの期間:文献より引用)
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(初回の中等症あるいは重症増悪までの期間:文献より引用)

 ブデソニドの平均1日吸入量は、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用群のほうが少なかった(176.0±143·0μg vs 302.5±84.8μg、群間差-126.5μg、95%信頼区間-171.0~-81.9、p<0.001)。
 鼻咽頭炎がもっともよくみられた有害事象で、それぞれ35%、32%にみられた。

結論:
 軽症~中等症の成人喘息患者において、ブデソニド/ホルモテロール頓用は低用量ブデソニド+頓用テルブタリンよりも症状軽減のために効果的であった。これはブデソニド/ホルモテロール配合剤による発作時治療は、軽症喘息患者への低用量ICSの代替レジメンであるとした2019GINAの推奨を支持するものである。



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by otowelt | 2019-09-09 12:59 | 気管支喘息・COPD

PAGE試験:軽症~中等症肺胞蛋白症に対するGM-CSF吸入療法

e0156318_9102518.png 肺胞蛋白症に対するGM-CSF治療は自然寛解例が20%存在するため評価が難しいとされていますが、軽症~中等症例におけるPAGE試験の結果がNEJMに掲載されました。

Tazawa R, et al.
Inhaled GM-CSF for Pulmonary Alveolar Proteinosis
N Engl J Med 2019; 381:923-932


背景:
 肺胞蛋白症とは、肺胞内にサーファクタントが異常に蓄積する特徴を有す疾患である。その多くは自己免疫性であり、肺胞マクロファージによる肺サーファクタントの除去を阻害する顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)に対する自己抗体が原因とされている。非ランダム化第2相試験において、重症肺胞蛋白症患者に対する組換えヒトGM-CSF吸入に軽度の治療効果が示されたものの、軽症~中等症の患者に対する有効性はまだ明らかとなっていない。

方法:
 二重盲検プラセボ対照試験(PAGE試験)において、室内気のPaO2が70mmHg 未満(有症状の場合は75mmHg未満)の自己免疫性肺胞蛋白症患者64人を対象に、組換えヒト GM-CSF(サルグラモスチム)125μgあるいはプラセボ1日2回7日間の吸入を隔週で24週間投与した(プラセボ群の1人は脱落)。プラセボ群に割り付けられた肺胞蛋白症患者が増悪する可能性を除外するため、重症肺胞蛋白症患者(PaO2<50 mmHg)は本研究から除外となった。プライマリエンドポイントは、A-aDO2のベースラインから治療25週目までの変化量に設定。セカンダリエンドポイントとして、症状(咳嗽、喀痰産生、労作時呼吸困難)、mMRCスケール(0-4点)、肺活量、DLco、PaO2、6分間歩行距離、胸部HRCT所見、血清KL-6、血清CEA、血清SP-D、血清SP-A、血清高感度CRP、血清MCP-1、抗GM-CSF抗体、CATスコアが設定された。また胸部CTで各患者ごとに平均肺濃度をHUで算出し、濃度上昇を評価した。

結果:
 2016年9月から2016年12月までに78人の肺胞蛋白症患者がスクリーニングされた。解析対象となったのはプラセボ群1人脱落を計算すると、63人(GM-CSF群33人、プラセボ群30人)だった。脱落前の特性データでは、GM-CSF群の平均年齢は56.5±12.4歳、プラセボ群の平均年齢は57.2±12.9歳だった。いずれの群も女性が42%だった。mMRCはそれぞれ1.55±0.94点、1.42±0.96点だった。平均PaO2は、それぞれ66.4±8.66mmHg, 68.8±8.96mmHgで、平均A-aDO2は、37.5±9.99mmHg、35.2±11.4mmHgだった。血清KL-6は両群とも極めて高値であり、平均値でそれぞれ5264±3102U/mL, 8104±10345U/mLだった。
 A-aDO2の平均(±標準偏差)変化量は、GM-CSF群(33人)のほうがプラセボ群(30人)より有意に改善した(ベースラインからの変化量平均-4.50±9.03 mmHg vs 0.17±10.50 mmHg,P=0.02)。
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(文献より引用)

 胸部CTにおける肺野濃度変化のベースラインから治療25週目までの変化量についても、GM-CSF群のほうが良好だった(群間差-36.08 HU,95%信頼区間 -61.58~-6.99)。重篤な有害事象は、GM-CSF群6人とプラセボ群3人にみられた。
 平均6分間歩行距離はベースラインでほとんどが360mを超えており、本研究の対象例では有効性を示すにいたらなかった。
 ベースラインから治療25週目までの平均血清KL-6変化は、GM-CSF群で −1199±3098 U/mL、プラセボ群で4.70±9154 U/mLと差がみられ、これは過去の研究でも示されている通りだった。

結論:
 このランダム化比較試験において、組換えヒトGM-CSF吸入は軽症~中等症の肺胞蛋白症患者に対して動脈血酸素分圧を改善させるという点においては有益であるものの、臨床上の利益(QOL質問票スコア改善や6分間歩行距離改善)までは改善させなかった。



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by otowelt | 2019-09-07 08:03 | びまん性肺疾患

SLEにおける間質性肺疾患の臨床的特徴

e0156318_93123.png SLEの間質性肺疾患についての貴重な報告です。

Toyoda Y, et al.
Clinical features of interstitial pneumonia associated with systemic lupus erythematosus
Respir Investig. 2019 Sep;57(5):435-443.


背景:
 全身性エリテマトーデス(SLE)はしばしば肺に影響を与える。しかしながら、間質性肺炎(IP)の頻度は約10%と他の膠原病よりも低いがゆえに、どのIP型がSLEと関連しているかは不明であえる。

方法:
 われわれは、2011年1月から2015年12月までに徳島大学病院に入院したSLE患者69人の診療録および胸部高分解能CT(HRCT)を後ろ向きにレビューした。胸部HRCTが撮影されていない患者は除外された。診断基準(The 1982 revised criteria for the classification of systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum 1982;25./ Derivation and validation of the Systemic Lupus International Collaborating Clinics classification criteria for systemic lupus erythematosus. Arthritis Rheum 2012;64:2677e86.)に基づいてSLEは4人の膠原病科医が診断した。

結果:
 外科的肺生検は誰一人として適用されなかった。
 55人(80%)が女性で、SLE発症の平均年齢は42.4歳だった。IPは20人(29%)にみられ、そのうち女性が14人(70%)で、SLE発症の平均年齢は53.4歳だった。有意にIPがなかった集団よりも高齢だった(p=0.003)。有意ではなかったが、IP合併例は男性のほうが多かった。胸膜病変は6人(8.7%)、肺高血圧症は4人(5.8%)、肺胞出血は1人(1.4%)にみられた。
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(患者特性:文献より引用)

 IPが見つかった患者20人のうち、半数はSLE診断時に指摘された。HRCTにおけるIPパターンは、5人(25%)でUIPパターン、11人(55%)でNSIPパターン、OPパターン2人(10%)、分類不能2人(10%)だった。fine cracklesは11人(55%)に観察された。ばち指があった患者は0人だった。平均%努力性肺活量は89.4±16.3%、平均%1秒量は81.0±8.50%、平均%DLcoは66.6±15.1%だった。平均KL-6は785.3±496.5U/mLだった。

 観察期間中、1人にIP急性増悪が起こったが生存した。画像所見では、IP進行はほとんどの症例でゆるやかであり(緩徐進行が12人[60%])、肺機能は保たれていた。IPの有無で生存率に差はなかった。
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(Kaplan-Meier曲線:文献より引用)

結論:
 SLEの症例において、IPは男性や高齢者に多くみられた。NSIPパターンに咥えて、UIPパターンもSLE関連IPとして同定された。SLE患者の生存はIPとは関連していなかった。



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by otowelt | 2019-09-06 00:54 | びまん性肺疾患

polymicrobialの膿胸は死亡のリスク

e0156318_10322082.jpg BUN、年齢、膿性・非膿性、院内感染、栄養(アルブミン)が膿胸の予後予測因子として知られており、これらをRAPIDスコアを呼びます(Chest. 2014 Apr;145(4):848-855)。実臨床で毎回つけているわけではありませんが、呼吸器科医はこれらの因子が予後予測因子になるのは体感的にわかるはずです。

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(RAPIDスコア)

 そんな手探りの膿胸疫学の分野において、倉敷中央病院から貴重な報告がありました。個人的には半数に歯科疾患を合併していたのが興味深かったです。

Yamazaki A, et al.
Polymicrobial etiology as a prognostic factor for empyema in addition to the renal, age, purulence, infection source, and dietary factors score
Respiratory Investigation, https://doi.org/10.1016/j.resinv.2019.06.008


背景:
 膿胸は、世界的に高い死亡率を有する重要な疾患である。しかしながら、微生物学的所見と予後予測因子についてはほとんど検討されておらず、これら因子に関するデータは不足している。

方法:
 われわれ倉敷中央病院に2007年5月から2015年9月までに入院した16歳以上の膿胸患者について、後ろ向きに解析し、前向きにデータを収集した。
 膿胸の診断基準は、①膿性胸水であること、②胸水培養が陽性であること、③胸水Gram染色が陽性であること、とした。
 胸水から微生物学的所見(培養所見)が得られた患者のみを登録した。患者背景、微生物学的所見、治療、アウトカムについてデータを集め、院内死亡の予測因子をアセスメントした。

結果:
 71人の患者が登録された(男性が47人、年齢中央値74歳)。8人(11%)が膿胸治療中に死亡にいたった。全体の51%が歯科疾患を合併しており、肝疾患・悪性疾患では死亡例が多かった。
 もっともよくみられた細菌は、Streptococcus anginosusグループ(S. constellatus, S. intermedius, 菌種同定にいたらなかったS. anginosusグループ) (37%)で、嫌気性菌(Fusobacterium nucleatum、Parvimonas micraなど)(30%)がそれにつづいた。院内死亡率は11%だった。多変量解析において、polymicrobialの膿胸(オッズ比8.25、95%信頼区間1.08-62.90)、RAPIDスコア(オッズ比6.89、95%信頼区間1.73-27.40)は有意な院内死亡予測因子だった。polymicrobialの膿胸において、もっともよくみられた細菌の組み合わせは、S. anginosusグループと嫌気性菌であったが、菌の組み合わせとアウトカムの間には関連性は観察されなかった。生存群と非生存群の間に治療の有意な差はなかったが、外科手術を受けた患者全員が生存していた。

結論:
 S. anginosusグループと嫌気性菌は膿胸の病原菌としてよくみられ、RAPIDスコアだけでなく、polymicrobialの膿胸も死亡の独立予測因子だった。外科手術は死亡を防ぐ治療オプションになるかもしれない。



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by otowelt | 2019-09-05 00:33 | 感染症全般