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ALIC⁴E試験:インフルエンザ様疾患に対するオセルタミビルは併存疾患がある患者や高齢者で恩恵が大きい

ALIC⁴E試験:インフルエンザ様疾患に対するオセルタミビルは併存疾患がある患者や高齢者で恩恵が大きい_e0156318_16593354.png 「有熱期間が半日~1日くらい短くなるくらいですね」と説明することが多い抗インフルエンザ治療薬ですが、併存疾患があったり高齢であったりする場合には、より恩恵を受けるというエビデンスが示されました。

Butler CC, et al.
Oseltamivir plus usual care versus usual care for influenza-like illness in primary care: an open-label, pragmatic, randomised controlled trial
Lancet, December 12, 2019DOI:https://doi.org/10.1016/S0140-6736(19)32982-4


背景:
 ヨーロッパのプライマリケアでは、リアルワールドでは効果がないと認識されているため、また特に有益な個人が臨床試験で特定できないことから、インフルエンザ様症状に対して抗ウイルス薬はほとんど処方されていない。インフルエンザ様疾患の患者のプライマリケアに抗ウイルス治療を追加することで、全体および主たるサブグループの回復までの時間が短縮されるかどうかを判断した。

方法:
 われわれは、プライマリケアでインフルエンザ様疾患を呈する1歳以上の患者を対象に、オセルタミビルを通常ケアに追加する非盲検のランダム化比較試験を実施した。プライマリエンドポイントは、発熱、頭痛、筋肉痛が軽度か全くない状態で通常の活動ができるようになったものと定義した、回復までの時間とした。セカンダリエンドポイントとして、コスト対効果、入院、インフルエンザ様疾患に関する合併症、再受診、新規の増悪症状、重症症状の初回軽減までの時間、症状緩和のための追加処方、抗菌薬使用、家庭内感染、インフルエンザ様疾患の自己対処が含まれた。

結果:
 2016年1月15日から2018年4月12日までに、季節性インフルエンザシーズンに3266人の患者がヨーロッパ15か国から登録され、1629人が通常ケア+オセルタミビル、1637人が通常ケア群に割り付けられた。プライマリエンドポイントが確認できたのは、それぞれ1533人(94%)、1526人(93%)だった。3059人のうち1590人(52%)がPCRで確定したインフルエンザ感染症だった。回復までの時間は、オセルタミビル併用群のほうが有意に短かった(ハザード比1.29、95%ベイズ確信区間1.20-1.39)。全体としてのオセルタミビルの平均的な軽減効果は1.02日だった(95%ベイズ確信区間0.74-1.31)。65歳以上の高齢者、重症例、併存疾患がある場合ではこれが3.20日となった(95%ベイズ確信区間1.00-5.50)。
 オセルタミビル群で嘔吐や悪心が多くみられた。

結論:
 オセルタミビルで治療されたインフルエンザ様疾患のプライマリケア患者は、通常ケアだけで管理された患者よりも平均して1日早く回復した。また、併存疾患があり、症状の持続時間が長い高齢者は、2〜3日早く回復した。


by otowelt | 2019-12-31 00:33 | 感染症全般

妊娠喘息

妊娠喘息_e0156318_10572851.png※2019年12月30日改訂

・喘息は妊娠中に悪化しやすい?
喘息の既往歴の有無を問わず、妊婦さんの10人に1人くらいは妊娠喘息を発症すると言われています。これは一般人口と比較すると結構多い数字です1)

 1988年と少し古い報告ですが、妊娠によって喘息の35%が悪化し、28%が改善し、33%が不変であると言われています2)。もう少し新しい報告に目を向けると、2015年の報告では、妊娠喘息全体からみると、第1期よりも第2・3期あたりに悪化することが多いと言われています3)。504人の妊娠喘息患者さんを調べた観察研究によれば,発作が起こりやすいのは妊娠17~24週の時期とされています(図)4)
妊娠喘息_e0156318_9333773.png
図. 妊娠週数ごとの喘息増悪4)(文献より引用)

 妊娠によって子宮が大きくなり,これにより横隔膜が挙上し機能的残気量が減少します。血中プロゲステロン濃度が上昇することで,1回換気量が増えて呼吸性アルカローシス気味になり、妊娠中に呼吸困難を自覚しやすくなります。

 多くの妊婦は吸入ステロイド(ICS)の吸入を減らしてしまうため,それによって増悪しやすいのではないかという指摘があります。実際に,ICSを吸入している妊婦の4%のみが喘息増悪を起こしますが,吸入していない妊婦はその頻度が17%と約4倍になります4)。個人的には,ICSをやめずにしっかりコントロールできていれば,喘息増悪や胎児に対する悪影響はそれほどないと思っています。

 適切にコントロールされている喘息患者さんでは、おおむね同じ治療ステップのまま分娩まで到達できますが、4割くらいの患者さんがステップアップを余儀なくされるというイギリスの報告もあります(図)5)。出産直前期には喘息症状がちょっとはマシになるという意見もありますが、その真偽はまだよくわかっていません6),7)
妊娠喘息_e0156318_7425187.jpg

図.妊娠による喘息治療ステップの変化5)(文献より引用)

 現時点で言えることは、妊娠と喘息は切っても切れない関係だということです。妊婦だから特段治療を強化しなければならないというワケではありませんが、産婦人科と併設されている病院では呼吸器科と併診できればよいと思います。産婦人科の主治医が喘息コントロールしている病院もあるでしょう。妊娠後期になると複数の診療科を受診できなくなりますから、妊娠初期の時点でアドヒアランスについて口を酸っぱくして患者さんに伝えておくことが重要だと思います。そのためには、「赤ちゃんに影響が出るとよくないからお薬やめます」という事態をなくさなければなりません。これが最も妊娠喘息を悪化させるリスク因子です。


・赤ちゃんに害のあるステロイドなんてイヤ!
 吸入ステロイド薬(ICS)。・・・・・・・ステロイドという名前を出した瞬間、ステロイド=よくない薬剤=胎児にはダメ、ゼッタイ!という、等式が頭に浮かぶためでしょう、患者さんの何人かは「薬はやめたいです」と言ってきます。しかし、断言できることがあります。喘息があるならICSは絶対に使用した方がよい。使用しない方が赤ちゃんに害が出ます8)。妊娠中の喘息存在は、胎児に低酸素血症をもたらし、流産や多発育不全のリスクを上昇させます9)。それがコントロール不良の喘息であれば、なおさらリスキーです10)。そして、ICSを定期的に吸入することで、喘息発作による救急受診を減らせることがわかっています。

 喘息の妊婦79人に対するアンケートでは,喘息が胎児に悪影響を与えることを理解していたのは62人(78.5%)と多かったものの,ICSが胎児に対してリスキーだと思っている人が31人(39.2%)もいたことが示されています11)

 胎児に危険の及ばない範囲で喘息をコントロールしてあげることが、元気な赤ちゃんを産むために必要不可欠です。それがICSであれ、その他の喘息治療薬であれ。ICS以外の薬剤に関してもまず間違いなく安全ですが、100%の安全を保障してくれるものではありません。それは妊娠中であればどの薬剤でも同じでしょう。

 繰り返しますが、喘息患者さんが妊娠したときに私が言う一言は「赤ちゃんのためにICSを使い続けてほしい」ということです。


・喘息治療薬の催奇形性について
 妊娠中に薬剤を使用すると催奇形性が高くなることはよく知られています。ご存知のとおり妊娠中の薬剤によってリスクの高低があります。まず、妊娠中に使用しても問題ない気管支喘息治療薬を以下に掲載します(表)。
妊娠喘息_e0156318_10121786.png

 最も使用頻度が高いICSは、ほぼ安全です12)。ただ、それでもパルミコートのエビデンスが豊富であることから13)、妊娠喘息の第一選択は世界的にパルミコートと決まっています。これは多くの呼吸器内科に有名な知見ですが、個人的にはさほどICS間で大差はないと思っています。どんぐりの背比べ。

 ICS/LABAについては口蓋裂などの催奇形リスクをやや上昇するという報告もあるため、特に妊娠初期にはICSのみでコントロールできるのであれば、無用なICS/LABAを処方しなくてもよいかもしれません14)ただし個人的にはほとんど問題ないと考えます。日本のガイドラインではICS/LABAが推奨されています。ICS/LABAをやめるほうが胎児にとってリスキーです。あくまで、医療従事者に向けたわずかなリスク上昇があるかどうかの話なのでご注意を)。

 LAMAについては妊婦に対する報告が多くありません。個人的にはステップ3以上であっても使用しません。とりわけLAMAにこだわる場面はなさそうです。

 クロモグリク酸(インタール®)は、使うタイミングや妊娠時に有効なのかどうかという大規模な検討はされておらず、積極的に用いることはありません。

 モノクローナル抗体は、どの製剤も基本的には安全と思われます。

 妊婦に対するアドレナリンについては、とくに重積発作のときに使用するべきかどうか迷います。アナフィラキシーショックに対して投与しなかったことで過去に訴訟に発展したケースもあり、それが頭をよぎる医師も少なくないでしょう。投与する=胎児に影響を与える、投与しない=母体が致命的になるという場合、母体優先で究明すべきと思います。アドレナリンの投与によって子宮血流が低下するとされていますが、明らかな有害事象はそれほど報告されていません。

 アメリカFDAは、PLLR(Pregnancy and Lactation Labeling Final Rule)ステートメントにおいてこれまで使用していたカテゴリーA、B、C、D、Xの胎児危険度分類を2015年に廃止しました。現在は、オーストラリア医薬品評価委員会の分類基準が用いられています。GINAで安全とされているICS、β2刺激薬、テオフィリン、ロイコトリエン拮抗薬で、FDA旧カテゴリーBのものが妊娠喘息でよく使用されています。ヒトでの対照試験が実施されていないものは、FDA旧カテゴリーCになっています。オーストラリア医薬品評価委員会の分類基準もと表に併記しておきます。
妊娠喘息_e0156318_10171827.png

表. 妊婦に対する喘息治療薬の薬物別推奨(旧FDA基準、オーストラリア基準)


・妊娠喘息の増悪時は?
 妊娠喘息が救急搬送されてきました。さて、どうしましょう。ステロイドの点滴は憚られるし、とりあえずSABAのネブライザーで様子をみて・・・・・・。

 ちょっと待ってください。妊娠喘息が搬送されてきた場合には、通常の喘息増悪と同じ治療にあたってください。催奇形性が問題ではなく、母体の喘息によって胎児に有効な血流が送られないことの方が問題なのです。優先順位を間違えてはいけません。GINAのガイドラインでも増悪時には迷うことなく全身性ステロイドを用いるべきと記載しています15)。喘息増悪で救急を受診した妊婦さんも、最近はステロイドの点滴を受ける頻度が増えてきたそうです。これにより救急部の喘息ケアが改善したことが報告されています16)。ただし、ステロイドの点滴が必要でない軽症の増悪に対しては、本当に投与する必要があるのかどうか考えるべきです。全身性ステロイドのリスクはゼロというワケではないのですから。

 小ネタですが、増悪時に吸入マグネシウムが妊婦に安全と言われています。妊娠喘息増悪で救急外来に来た際にはマグネシウムを選択することが妥当かもしれないというコクランレビューがあります17)。ただ、日本では点滴治療が主流であり、マグネシウムをネブライザー吸入する手法は普及していません。


・授乳婦喘息の治療
 授乳婦の喘息治療については、通常の成人と同等にあつかってよいです。代謝された薬剤が母乳に漏出する可能性がありますが、その量は雀の涙ほどです。新生児・乳児に影響が出る可能性はまずないでしょう。唯一、テオフィリン徐放製剤については、大量に服用することで新生児・乳児に興奮、不眠、などの精神的症状をきたす可能性があります。

 国立成育医療研究センターの「妊娠と薬情報センター」が,「授乳中に安全に使用できると思われる薬」「授乳中の治療に適さないと判断される薬」をリスト化しているので,是非参考にして下さい。

(参考文献)
1) Kelly W, et al. Asthma in pregnancy: Physiology, diagnosis, and management. Postgrad Med. 2015 May;127(4):349-58.
2) Schatz M, et al. The course of asthma during pregnancy, post partum, and with successive pregnancies: a prospective analysis. J Allergy Clin Immunol. 1988 Mar;81(3):509-17.
3) Kim S, et al. Effect of pregnancy in asthma on health care use and perinatal outcomes. J Allergy Clin Immunol. 2015 Nov;136(5):1215-23.e1-6.
4) Stenius-Aarniala BS, et al :Acute asthma during pregnancy. Thorax. 1996; 51(4) : 411-4.
5) Charlton RA, et al. Asthma management in pregnancy. PLoS One. 2013 Apr 4;8(4):e60247.
6) Gluck JC, et al. The effect of pregnancy on the course of asthma. Immunol Allergy Clin North Am. 2006 Feb;26(1):63-80.
7) Gluck JC. The change of asthma course during pregnancy. Clin Rev Allergy Immunol. 2004 Jun;26(3):171-80.
8) Smy L, et al. Is it safe to use inhaled corticosteroids in pregnancy? Can Fam Physician. 2014 Sep;60(9):809-12, e433-5.
9) Demissie K, et al. Infant and maternal outcomes in the pregnancies of asthmatic women. Am J Respir Crit Care Med. 1998 Oct;158(4):1091-5.
10) Wen SW, et al. Adverse outcomes in pregnancies of asthmatic women: results from a Canadian population. Ann Epidemiol. 2001 Jan;11(1):7-12.
11)Ibrahim WH, et al :Asthma knowledge, care, and outcome during pregnancy:
The QAKCOP study. Chron Respir Dis. 2019; 16: 1479972318767719.
12) Hodyl NA, et al. Fetal glucocorticoid-regulated pathways are not affected by inhaled corticosteroid use for asthma during pregnancy. Am J Respir Crit Care Med. 2011 Mar 15;183(6):716-22.
13) Norjavaara E, et al . Normal pregnancy outcomes in a population-based study including 2,968 pregnant women exposed to budesonide. J Allergy Clin Immunol. 2003 Apr;111(4):736-42.
14) Garne E, et al. Use of asthma medication during pregnancy and risk of specific congenital anomalies: A European case-malformed control study. J Allergy Clin Immunol. 2015 Dec;136(6):1496-1502.e7.
15) Global Strategy for Asthma Management and Prevention. available from: https ://ginasthma.org/wp-content/uploads/2019/06/GINA-2019-mainreport-
June-2019-wms.pdf
16) Hasegawa K, et al. Improved management of acute asthma among pregnant women presenting to the ED. Chest. 2015 Feb;147(2):406-14.
17) Bain E, et al. Interventions for managing asthma in pregnancy. Cochrane Database Syst Rev. 2014 Oct 21;10:CD010660.





by otowelt | 2019-12-30 00:40 | レクチャー

家庭内のMAC曝露源としてシャワーヘッドは盲点!?

家庭内のMAC曝露源としてシャワーヘッドは盲点!?_e0156318_1611888.png ワシントン大学からの報告です。
 この研究、MACと最終確認できなかった菌もカウントしているため、厳密に検出MACのみに限定するとすべて有意差がなくなっています(抗酸菌が陽性とは言えても、厳密に環境MACの陽性数が少なかったため)。要は「シャワーヘッドにNTMが存在すると、肺MAC症になりやすい」ということが示されたわけです。
 自宅内の水、特に風呂場に存在することが近年ピックアップされています。自宅の水回りにMACが存在することは知られており(J Water Health. 2008;6(2):209-13.)、日本では特に風呂がリスクではないかと考えられてきました。実際、日本ではMACは台所の水道水からは分離されず、浴室内から分離されやすく、これがPFGE法やRFLP法で患者の喀痰分離株と相同性があることも示されています(Clin Infect Dis. 2007; 45:347-351.)。
 気管支拡張症がある中高年は、土壌にも浴室にも注意するしかないのかもしれません。日本人は風呂が好きです。シャワーヘッドだけでなく、浴槽にもNTMが定着している可能性が高いでしょう。海外とは違い、入浴時間が長いため湯気への曝露が大きい。それが肺MAC症罹患のリスク因子になっているとするなら、シャワーヘッドや浴槽の掃除は定期的に行う必要があります。

Tzou CL, et al.
Association between Mycobacterium avium Complex Pulmonary Disease and Mycobacteria in Home Water and Soil: A Case-Control Study.
Ann Am Thorac Soc. 2020 Jan;17(1):57-62.


背景:
 Mycobacterium avium complex (MAC)を含む非結核性抗酸菌(NTM)は、感受性のあるヒトに肺疾患を起こす病原微生物である。家庭での潜在的な暴露源には、蛇口やシャワーヘッドなどの使用場所の水源、園芸土壌が含まれる。これらの家庭環境におけるNTMのヒト健康への影響は、よく理解されていない。

目的:
 この研究では、肺MAC症と家庭の水使用場所5ヶ所におけるNTM定着の関連性を調べた。

方法:
 肺MAC症と診断されたワシントン州およびオレゴン州の住民、および年齢・性別・居住地でマッチしたコントロール集団(ランダム・デジット・ダイヤリング[Random Digit Dialing]で登録)において実施された症例対照研究である。
 検体サンプルは、肺MAC症患者およびコントロール集団の浴室の蛇口、台所の蛇口、シャワーエアロゾル、屋内土壌、屋外土壌の5か所から採取された。シャワーを使わない場合、普段の入浴条件に近い状況を作り出してもらい、しかるべき場所から抗酸菌検体を採取した(検体採取のフェーズにかなり時間をかけた研究であるが詳しい手順は割愛させていただく)。環境抗酸菌は、PCRを併用した培養を用いて盲検的に調べられた。
 肺MAC症患者の自宅から得られたNTM(N=56)、コントロール集団の自宅から得られたNTM(N=51)について、潜在的な交絡変数で補正した条件付きロジスティック回帰モデルを使用して定量的に比較した。

結果:
 肺MAC症患者の自宅のシャワーエアロゾルからは、コントロール集団の自宅よりもNTMが分離されやすかった。補正条件付きロジスティック回帰分析によれば、シャワーエアロゾルから分離されたNTMは、患者の疾患と関連するオッズ比が高かった(オッズ比4.0、95%信頼区間1.2-13)。その他の自宅環境サンプル(水道水、土壌)ではこの関連性は明らかでなかった。
家庭内のMAC曝露源としてシャワーヘッドは盲点!?_e0156318_1529957.png

結論:
 この研究では、シャワーのエアロゾルが家庭でのNTM暴露の非常に重要な発生源であることを示している。


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by otowelt | 2019-12-29 00:09 | 抗酸菌感染症

BMIは免疫チェックポイント阻害剤の効果に影響を与える

BMIは免疫チェックポイント阻害剤の効果に影響を与える_e0156318_16432716.png これは初耳でした。ありがとうございます。

Ichihara E, et al.
The impact of body mass index on the efficacy of anti-PD-1/PD-L1 antibodies in patients with non-small cell lung cancer.
Lung Cancer. 2019 Nov 18;139:140-145.


目的:
 悪性黒色腫のような固形癌において、BMIは免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の効果と関連していることが報告されている。しかしながら、PD-1/PD-L1阻害剤で治療された非小細胞肺癌(NSCLC)にこの関連があるのかどうか不明である。この研究の目的は、進行NSCLC患者においてBMIとICI治療の効果に関連があるかどうか調べることである。

患者および方法:
 2015年12月から2018年5月までに9施設においてPD-1/PD-L1抗体単独療法を受けたNSCLC患者の診療録を後ろ向きにレビューした。BMIの影響を2つのコホートで検証した。コホート1には、1次治療としてペムブロリズマブ投与を受けたPD-L1発現50%以上のNSCLC患者が組み入れられた。コホート2には、2次治療以降にニボルマブ/ペムブロリズマブ/アテゾリズマブで治療されたNSCLC患者が組み入れられた。

結果:
 9施設から513人が登録され、解析対象となった(コホート1:84人、コホート2:429人)。BMIカットオフ値を、国内で理想BMIとされている22kg/m2に設定した場合、コホート1では無増悪生存期間、全生存期間には差はみられなかったが、コホート2において、生存期間は高BMI群のほうが低BMI群よりも延長した(無増悪生存期間:3.7 vs 2.8ヶ月、p=0.036、全生存期間:15.4 vs 13.5ヶ月、p=0.021)。

結論:
 われわれのコホートでは、2次治療以降にPD-1/PD-L1阻害剤で治療されたNSCLC患者において、BMIとICIの効果に関連がみられた。





by otowelt | 2019-12-27 00:31 | 肺癌・その他腫瘍

全身性強皮症関連肺高血圧症は、若年層で生存期間が延長しつつある

全身性強皮症関連肺高血圧症は、若年層で生存期間が延長しつつある_e0156318_9102283.jpg 現在では初期併用治療(upfront combination therapy)が標準的になってきました。DLcoが低いSSc患者さんでは、いつもPAHの存在がないか疑っています。DLcoが60%未満では、肺動脈圧が経時的に上昇していきます(Eur Respir J. 2018 Apr 4;51(4). pii: 1701197.)。

・参考記事:DETECT研究:全身性強皮症における肺高血圧症の進展

Hachulla E, et al.
Survival improved in systemic sclerosis associated pulmonary arterial hypertension patients aged 70 years or less over the period 2006-2017 in France.
Chest. 2019 Nov 19. pii: S0012-3692(19)34216-3. doi: 10.1016/j.chest.2019.10.045.


背景:
 全身性強皮症に関連した肺動脈性肺高血圧症(SSc-PAH)について、過去10年間生存の改善に進歩があったかどうかわかっていない。

方法:
 臨床的に関連するベースラインの交絡因子に合わせて調整された多変量Cox回帰モデルを使用して、同じ期間(2006年~2011年 vs 2012年~2017年)の2つを比較して、死亡の発生とPAH診断日との関連を評価した。2診断期とベースラインの共変数の交互作用が検証された。

結果:
 合計306人の患者が登録され、167人(54.6%)が2006年~2011年に、139人(45.4%)が2012年~2017年にPAHと診断された。
 2006年~2011年と比較して2012年~2017年に診断されたPAHの生存期間に有意な差は観察されなかった(ハザード比0.76、95%信頼区間0.46-1.26、p=0.29)。
 PAH診断期と年齢のあいだに有意な交互作用がみられた(p=0.05)。年齢で層別化すると、70歳以下の患者では2006年~2011年から2012年~2017年までに生存期間が有意に延長していた(ハザード比0.40、95%信頼区間0.17-0.99、p=0.046)。しかし、高齢者では有意差はなかった(ハザード比1.29、95%信頼区間0.67-2.51、p=0.44)。
 エンドセリン受容体/ホシホジエステラーゼ5阻害剤による初期併用治療(初期4ヶ月以内)を受けた頻度は、2006年~2012年と比較して2012年~2017年では若年層で高かったが、高齢者層では有意ではなかった。
全身性強皮症関連肺高血圧症は、若年層で生存期間が延長しつつある_e0156318_14103525.png
(70歳以下の生存曲線:文献より引用)

結論:
 2006年~2017年のあいだに、SSc-PAHの生存期間は70歳以下では改善していたが、高齢者では不変だった。この関連性が初期併用治療による恩恵によるものか、あるいは一般診療の質が向上したことによるものか、さらなる研究によって調べる必要がある。


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by otowelt | 2019-12-26 00:19 | 膠原病

反復唾液嚥下テストはCOPD増悪予測に有用

反復唾液嚥下テストはCOPD増悪予測に有用_e0156318_11124345.png 飯塚病院の吉松由貴先生の論文です。テーマが素晴らしいだけでなく、実臨床的であり、かつ誰でも実施できるという点が秀逸です。
 RSSTの特性上、感度は高くなりませんが、特異度が96%と高いため、さっそく明日から使えそうです。
 とても感銘を受けたので、連載のMedical Tribuneで来月この論文について詳しく取り上げたいと思います。

Yoshimatsu Y, et al.
Repetitive Saliva Swallowing Test Predicts COPD Exacerbation.
Int J Chron Obstruct Pulmon Dis. 2019 Dec 4;14:2777-2785.


背景:
 COPD増悪リスクのフェノタイプを予測することは、きわめて重要である。嚥下障害は、これらフェノタイプの1つとして認識されつつある。嚥下障害およびCOPD増悪リスクの便利なスクリーニング方法が望まれている。反復唾液嚥下テスト(RSST)は、嚥下障害をスクリーニングするもっとも侵襲度の低い方法である。われわれは、後ろ向き研究においてRSST結果とCOPD増悪の間に正の相関があることを報告した(Clin Respir J. 2019;13:321–327)。これに基づき、われわれはRSSTがCOPD増悪予測能にすぐれているかどうか前向き研究で調べ、COPDにおける適切なカットオフ値を同定した。

方法:
 Iizuka COPDコホートから、70人のCOPD患者が登録された(平均年齢72.8 ± 7.5歳)。喘息合併例は除外された。患者は以下の嚥下障害スクリーニングテストを受けた。The 10-item Eating Assessment Tool(EAT-10)、Fスケール問診票(Frequency Scale for the Symptoms of GERD[FSSG])、RSST、水嚥下テスト、簡易嚥下誘発テスト。1年後、COPD増悪があった群となかった群に分けて解析した。

結果:
 過去1年で、27人が1回以上のCOPD増悪を起こしていた。また、追跡期間中では、28人が1回以上のCOPD増悪を起こし(E群)、42人は起こさなかった(非E群)。過去の増悪歴とRSSTの結果(カットオフ値:2回,3回,4回,5回のいずれにおいても)以外に、両群に有意差はなかった。RSSTにおける嚥下回数は、E群は非E群と比べて有意に低下していた。カットオフ値は5回がもっとも良好であった(感度42.9%、特異度96.4%、AUC0.775)。初回の増悪までの期間は、RSSTが5回を超える患者で有意に長かった。E群と非E群を鑑別するのに、過去1年の増悪歴よりもRSSTのほうがより信頼性が高かった(ハザード比はそれぞれ13.78、2.70)。

結論:
 RSSTカットオフ値5回は、COPD増悪の強力な予測因子である。


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by otowelt | 2019-12-25 00:35 | 気管支喘息・COPD

ブデホル®の吸入デバイスの名称

ブデホル®の吸入デバイスの名称_e0156318_82080.png 日本ジェネリックからブデホル®が発売されています。在庫がまだ多くないのか、発注しても手に入りにくい状況のようです。
 さて、吸入デバイスの名前が「タービュヘイラー」でよいのか分からなかったので、学術部に問い合わせました。
 すると、以下の返事が返ってきました。



近畿中央呼吸器センター
倉原優 先生

平素より大変お世話になります。
弊社の製品名は「ブデホル吸入粉末剤30吸入「JG」」「ブデホル吸入粉末剤60吸入「JG」」
でございますので、デバイスに特別な製品名(商標)は付けておりません。



というわけで、吸入デバイス名はありません!





by otowelt | 2019-12-24 00:03 | 気管支喘息・COPD

IPF急性増悪に対する全身性ステロイドはアウトカムを改善しない

IPF急性増悪に対する全身性ステロイドはアウトカムを改善しない_e0156318_10574046.jpg なかなか衝撃的な報告です。

Farrand E, et al.
Corticosteroid use is not associated with improved outcomes in acute exacerbation of IPF.
Respirology. 2019 Dec 17. doi: 10.1111/resp.13753.


背景および目的:
 IPF急性増悪(AE-IPF)はIPFに関する全死亡の約半分に先行する予後不良イベントである。こうした臨床的意義があるにもかかわらず、治療決定に関するデータは限られている。全身性ステロイドは堅固なエビデンスがあるわけではなく、むしろ害悪をもたすかもしれないという疑念もあるが、治療の主体として用いられている。AE-IPF患者の院内死亡率に対する全身性ステロイド治療の影響を評価した。

方法:
 UCSF医療センターの2010年1月1日~2018年8月1日までの電子診療録からAE-IPF患者を後ろ向きに同定した。全身性ステロイド治療(メチルプレドニゾロンパルス療法500mg/日以上あるいは高用量プレドニゾロン0.5mg/kg以上を2日以上)と院内死亡の関連性を、Coxモデルと適応による交絡因子を補正した傾向スコアを用いて評価した。セカンダリアウトカムに、再入院率、全生存期間を設定した。

結果:
 合計82人のAE-IPF患者が同定され(平均年齢66.8±10歳)、37人(45%)が全身性ステロイド治療を受けていた。AE-IPF患者のうち、特にICUレベルの治療と人工呼吸管理を受けた症例にステロイド治療が適用されやすかった。
 17人のAE-IPF患者が入院中に死亡し、14人(82%)がステロイド治療群、3人(18%)が非治療群だった。ステロイド治療を受けた症例と受けなかった症例では、院内死亡率に有意差はなかった(時間依存性共変量として人工呼吸器とICU入室で補正:補正ハザード比1.52、95%信頼区間0.37-6.18、p=56、傾向スコア:補正ハザード比1.31、95%信頼区間0.26-6.55, p=0.74)。全生存期間は、全身性ステロイド治療を受けたAE-IPF患者のほうが短かった(ハザード比6.17、95%信頼区間1.35-28.14, p=0.019)。

※初回入院場所、ベースラインの酸素使用、入院時DNRオーダー、BMI、抗菌薬治療で補正したモデル。

 再入院率にも統計学な有意差はなかった(補正ハザード比1.81;95%信頼区間0.46–7.17;P= 0.40)。

結論:
 我々の研究では、IPF患者が急性増悪を起こして入院した場合に全身性ステロイド治療を用いてもアウトカムは改善しないことが示された。むしろ、全身性ステロイド使用は、急性増悪後の全生存期間を短縮するかもしれない。大規模なリアルワールドコホートを用いた観察研究により、全身性ステロイド治療とAE-IPFの短期アウトカムの関連を示す必要があるだろう。




by otowelt | 2019-12-23 07:30 | びまん性肺疾患

クリスマスBMJ2019:BMJの論文は労働時間外に投稿されている?

クリスマスBMJ2019:BMJの論文は労働時間外に投稿されている?_e0156318_1016912.png ”働き方改革”において重要な論文ですね。

Adrian Barnett, et al.
Working 9 to 5, not the way to make an academic living: observational analysis of manuscript and peer review submissions over time
BMJ 2019; 367 doi: https://doi.org/10.1136/bmj.l6460


目的:
 研究者が、時間外にBMJジャーナルの論文原稿と査読を提出しているかどうか、およびこれが経時的に変化したかどうか判断すること。

デザイン:
 2012年から2019年までの地理的座標が同定できた研究者の論文原稿と査読における観察研究。

セッティング:
 大規模一般医療ジャーナル2誌におけるオンラインBMJ投稿システム。

アウトカム:
 週末・休日の1時間ごと(早朝と深夜を決定するため)の論文原稿と査読の提出。 ロジスティック回帰分析を使用して、週末または休日に論文原稿と査読が提出される確率を推定した。

結果:
 分析には49000を超える論文原稿と76000の査読が含まれた。週末または休日に論文原稿または査読の提出が行われる平均確率に、経時的な変化はほとんどみられなかった。勤務時間外におこなわれていることが多く、週末の平均確率は0.14~0.18、休日の平均確率は同じ週の別日と比較して0.08~0.13だった。国の間で明確で一貫した違いがあった。中国の研究者は、週末と深夜に最も頻繁に提出していたが、スカンジナビア諸国の研究者は平日と日中に提出する可能性が最も高かった。
クリスマスBMJ2019:BMJの論文は労働時間外に投稿されている?_e0156318_814592.png
(週末・休日の提出:文献より引用)

クリスマスBMJ2019:BMJの論文は労働時間外に投稿されている?_e0156318_8164261.png
(時間別の提出:文献より引用)

結論:
 長期間経過してもみられる国の間での違いは、「過労の文化」が単なる比喩ではなく、文字通りのものであることを示している。


by otowelt | 2019-12-20 08:09 | その他

健常者の23%に聴診異常

Medical Tribuneの「 ドクターズアイ 倉原優(呼吸器)」で、ラ音がどのくらいの頻度で聴取されるのかを一般集団で調査したノルウェーの研究を紹介しました。呼吸器内科医にとってはとても面白い論文なのでぜひご覧ください。

健常者の23%に聴診異常、ラ音をどう判断?






by otowelt | 2019-12-20 07:53 | 呼吸器その他