さらば、難しいPubMedよ! その2

3.検索式を登録する
 前回の続きです。My NCBIに「検索式」を登録しなければ定期的スクリーニングの仕組みを構築できないのですが、そもそも「検索式」って何よってハナシです。たとえば、PubMedの検索欄に「COPD」と入力してください。おそらく8万件くらいの文献がヒットするはずです。これは、「COPD」というワードが、タイトルやアブストラクトなどに含まれている全文献をヒットさせているからです。では次に、「COPD asthma」と入力してみてください。グっとヒット件数が減ったはずです。これは、COPDとasthmaの両方の情報を含んでいる文献を検索しているからです。

 さて、PubMed検索結果の画面で右下のほうを見てください。なんかよくわからん英語がズラっと書かれているテーブルがありますね。この[ ]でくくられた部分がPubMedの「タグ」なのですが、こんなもん全部覚えなくてよい。

 ちなみにこの検索式は「("pulmonary disease, chronic obstructive"[MeSH Terms] OR ("pulmonary"[All Fields] AND "disease"[All Fields] AND "chronic"[All Fields] AND "obstructive"[All Fields]) OR "chronic obstructive pulmonary disease"[All Fields] OR "copd"[All Fields]) AND ("asthma"[MeSH Terms] OR "asthma"[All Fields])」です。なんのこっちゃ分かりませんよね。落語の『寿限無』みたいな。(笑)
 
 自分なりの検索式をイチから作るのが面倒ならば、少しパクればよいのです。病院でだれか必ず一人、こういうのをやっている人間がいますし、何ならこの記事からまずはパクればよい。というわけで、私の検索式の一部を紹介したいと思います。


■呼吸器全般
((Eur Respir J[jo]) OR (Chest[jo]) OR (Thorax[jo]) OR (Lancet Respir Med[jo]) OR (Am J Respir Crit Care Med[jo]) OR (Respirology[jo]) OR (Respiration[jo]) OR (“Respiratory Medicine”[jo])) AND hasabstract

■COPD
COPD AND ((Int J Chron Obstruct Pulmon Dis[jo]) OR (Eur Respir J[jo]) OR (Chest[jo]) OR (Respirology[jo]) OR (Respiration[jo]) OR ("Respiratory Medicine"[jo]) OR (Thorax[jo]) OR (Lancet Respir Med[jo]) OR (Int J Tuberc Lung Dis[jo]) OR (Am J Respir Crit Care Med[jo]) OR (N Engl J Med[jo]) OR ("Lancet"[jo]) OR (BMJ[jo]) OR (JAMA[jo]) OR (Ann Intern Med[jo]) OR (JAMA Intern Med[jo]) OR (CMAJ[jo])) AND hasabstract


 では、PubMedの検索欄のところに、上記「呼吸器全般」の検索式をコピーしてそのまま検索してみてください。私が呼吸器領域で普段から読んでいる論文が時系列で上から表示されます。この検索式はどういうことを書いてあるかというと、「ERJ、CHEST、Thorax、Lancet Respiratory Medicine、AJRCCM、Respirology、Respiration、Respiratory Medicineの医学雑誌に掲載された、アブストラクトがある論文すべて」という条件です。[jo]というのはジャーナルの名前という意味のタグです。雑誌名は、「(Lancet Respiratory Medicine[jo]) 」でも「(Lancet Respir Med[jo])」の短縮形でも検索できます。「AND hasabstract」というのは、アブストラクトが閲覧できる文献を必要条件に組み入れているのです。レターや症例報告のようにアブストラクトがない文献を、ハナっから除外したいからです。この検索式の欠点は、たとえばNew England Journal of Medicineに掲載された呼吸器系の原著論文がひっかからないことです。当然です。[jo]にその医学雑誌を組み入れていないのですから。

※最近CHEST誌は、症例報告にアブストラクトをつけてくるようになったので、厳密に原著論文だけを検索したいなら別の検索式を構築する必要があります。

 次にこのパクった検索式をそのままあなたのMy NCBIに登録してみましょう。「Create alert」をクリックしてください。

 「Name of saved search」を好きな名前(私は「呼吸器全般」)にして、リマインドメールを送ってもらうかどうか設定して登録します。

 こういう検索式をいくつも登録することで、My NCBIに自分だけの「検索式倉庫」が出来上がります。検索式をどのように工夫して登録するかはある程度慣れが必要ですが、まずはこういう仕組みがあることを知って、利用してみてください。

 次回は、検索式についてもう少し詳しく書いてみましょう。ただ、あまりアドバンスな内容にすると逆に使いにくくなってしまいますから、若手医師がおさえておくべき基本だけをお伝えしたいと思います。









# by otowelt | 2019-02-10 00:49 | レクチャー

さらば、難しいPubMedよ! その1

・はじめに
 研修医や若手医師から、「PubMedの使い方が分からない」「どうやって英語論文を探せばよいのかわからない」と相談を受けることがあります。ここでは最大のシェアを誇るPubMedの簡単な使い方を紹介したいと思います。
 
 若手医師にとってPubMedが分かりにくいのは、指導医が難しいアドバンスな検索方法ばかり教えるからです。PubMedをそんな難しく考えないでください。テレビを見るときに、音質や画面の設定を細かく調整しますか?アンテナレベルがどのくらいあるか確認しますか?テレビが好きな人はそうすればよろしい。しかし、視聴さえできればよいと思っているなら、テレビの電源をオンするだけでよいのです。PubMedも同じなんです。電源のつけ方を知りたい人間に、テレビの仕組みを教えるのはナンセンスです。


1.PubMedを使う目的を明確にする
 私は毎日PubMedを見ます。この理由は、呼吸器内科領域のエビデンスを取りこぼしたくないからです。世界中の呼吸器内科医が知っているであろう第3相試験の概要を自分が知らない、ということに耐えられないのです。そのため、私は「ある程度の質が高い論文を定期的にスクリーニングする」という目的でPubMedを使っています。しかし、若手医師の中には「抄読会で発表するホットで面白い論文を調べる」という目的でPubMedを開く人もいるでしょう。

 実はこの2つ、まったくPubMedの使い方が異なるのです。どちらがカンタンかと問われれば、定期的スクリーニングです。そしてどちらが有益かと問われれば、やはり定期的スクリーニングなのです。

 抄読会で発表するネタを仕込むのは、月1回くらいの頻度でよいかもしれません。しかし、抄読会が終わればPubMedのことなんて忘れてしまう。さて、みなさんはそれでよいでしょうか?ゲリラ的に検索する技術だけ身につける意味なんてあるでしょうか?

※論文を書く際、身に付ける意味は大いにあります。それはまた別の話。

 あなたの医師人生において、興味ある分野の知見を継続的に積み上げていくには、定期的にスクリーニングする仕組みを構築するべきです。私が好きな言葉に「怠惰を求めて勤勉に行き着く」というものがあります。博奕打ちがイカサマを必死に練習している様子を見て、「楽して大金を稼ごうという人種なのに、やけに勤勉ね」と女性に呆れられるシーンで登場する言葉です。麻雀と医学を結びつけるのは不適切かもしれませんが、将来の仕事量の軽減に期待して先行投資するというのは私にとって優先度が高いことです。

 私は、慢性咳嗽の患者さんが来ても、いちいち問診項目を思い出したり調べたりすることはありません。電子カルテの自分のテンプレートに慢性咳嗽の問診票や鑑別すべき疾患を登録しているからです。同様に、いくつかの疾患の診断基準に関するスコアリングもテンンプテートとして登録しています。これは、患者さんが来院したとき、調べものや入力で時間を取られたくないからです。「事前に苦労を買って、将来の時間を買う」ということです。

 こういう行動を起こす条件は、現在苦労する時間よりも将来返ってくる時間リターンのほうが大きい場合です。前苦労の方が大きくて節約できる時間が少なければ、時間を先行投資する意味がありません。

 私がPubMedで定期的スクリーニングの仕組みを作る理由は、医師人生における論文検索の時間を節約するためです。海外のドクターの多くは、後述するMy NCBIを利用していますが、日本人のほとんどの医師はまだNCBIのアカウントを作っていないそうです(内部の人間に聞きました)。


2.My NCBIを使うだけでよい
 みなさんがPubMedを週1回・月1回でも定期的にチェックしたいと思うならば、「My NCBI」を愛用しましょう。メールアドレスとパスワードだけ登録すれば、何度もスクリーニングのために検索ボックスにワードを入力する作業から解放されます。

 PubMedの右上に「Sign into NCBI」というボタンがあるのでクリックしてみましょう。まだNCBIアカウントを作成していないのなら、「Register for an NCBI account」というところからメールアドレス・パスワードを設定してアカウントを作ってください。

 アカウントを作成すると、ログインしているときにマイアカウントが右上に表示されるようになります。以後、PubMedを使うときは、「My NCBI」を使うよう心がけて下さい。
e0156318_2241569.png
 
 さて、私のMy NCBIを見てみましょう。基本的に常に最新の呼吸器系論文をテーマ別に検索できるようになっています。「COPD」「喘息」というタイトルは私がつけたものですが、これは一定の条件で保存したスクリーニング検索式に関して、論文の更新があったものを「What's new」に数字で表示してくれる仕組みです。この数字をクリックすると、更新があった論文だけをチェックすることができます。
e0156318_10181641.png

 たとえば、私が保存している「COPD」というのは、「COPDに関して信頼性が高い医学雑誌のうち、アブストラクト情報が掲載されているCOPDの文献」という条件です。COPDの新しい論文がChestやERJで掲載されれば、通知がくるようになっているのです。

 これってすごくラクじゃないですか?日々更新されていく膨大な文献の中からCOPDの論文を探さなくても、ちゃんとMy NCBIに通知が来るんですから。指定のメールアドレスに通知を送るよう設定しておけば、メールで「新しい論文があるよ!」と教えてくれます。

 事前に少し時間をかけて準備するだけで、少なくともあなたが医師を続けている間、ホットな情報が届くのです。これはかなり効率的な時間投資だと思うので、特に若手医師のみなさんは普段からMy NCBIを使うクセをつけてください。

 さて、次回は具体的にどういう「検索式」をMy NCBIに保存しているか紹介したいと思います。




[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

Dr.倉原の 呼吸にまつわる数字のはなし ナース・研修医のための
価格:2160円(税込、送料無料) (2019/1/10時点)



# by otowelt | 2019-02-09 00:47 | レクチャー

電子たばこのほうがニコチン置換療法より禁煙に有効

e0156318_1059273.png 「電子たばこなんてダメ!」と叫んでいた人たちは、どうするのでしょうね。意見をひっくり返すのか、そのままアンチ電子たばこの道を突き進むのか。ちなみに日本の加熱式たばことは別物なのでご留意を。タバコ葉が入っている加熱式たばこと液体ニコチンの電子たばこを比較してはダメです。

Hajek P, et al.
A Randomized Trial of E-Cigarettes versus Nicotine-Replacement Therapy.
N Engl J Med. 2019 Jan 30. doi: 10.1056/NEJMoa1808779.


背景:
 電子たばこは禁煙の試みとして一般的に用いられているが、禁煙治療として承認されているニコチン製品と比べると有効性に関するエビデンスは限られている。

方法:
 われわれはランダムにイギリス国民保健サービスの禁煙プログラムに参加している成人に対して、被験者の選択によるニコチン代替製品(パッチ、ガム、鼻スプレーなど)を最長3ヶ月提供、あるいはもう一方には、AspireのOne Kit電子たばこスターターパック(写真、第2世代詰め替え式電子タバコ、ニコチンリキッド1本あたり濃度18mg/mL)を提供し、好みのフレイバーと濃度のニコチンリキッドを自分で追加購入するよう許可した。
e0156318_1038879.png
(Aspire One Kit)

 禁煙治療には、いずれの群にも禁煙に対する行動支援を週1回、4週間以上にわたって介入した。プライマリアウトカムは、1年間の禁煙率(禁煙決断日から2週間で5本を超えないことが条件)で、1年後の最終診察時に生化学的検査で判定した(呼気中一酸化炭素濃度8ppm未満)。追跡不能例や生化学的検査ができなかった場合には、禁煙は達成されていないものと判定した。

結果:
 合計886人の参加者がランダム化された(439人が電子たばこ群、447人がニコチン置換療法群)。1年禁煙率は、電子たばこ群18.0%、ニコチン置換療法群9.9%だった(相対リスク1.83、95%信頼区間1.30-2.58、p<0.001)。これは禁煙に対するNNTが12であることを意味する(95%信頼区間8 -27)。いずれの禁煙治療も、通常の喫煙と比べると満足度が低かったが、電子たばこのほうが満足度は高く、「吸いたい」という動機は有意に低かった。
e0156318_10553086.png
(文献より引用:プライマリアウトカム)

e0156318_10511757.png
(文献より引用:喫煙衝動)

 1年後に禁煙ができていた参加者のうち、52週時点で当初割り付け群の電子たばこ、ニコチン代替製品を使い続けていたのはそれぞれ80%(79人中63人) 、9%(44人中4人)だった。総じて、咽頭あるいは口腔違和感は電子たばこ群により多くみられ(65.3% vs 51.2%)、悪心はニコチン置換療法に多かった(37.9% vs 31.3%)。電子たばこ群では、ベースラインから52週までの咳嗽と喀痰の頻度がニコチン置換療法よりも低かった(咳嗽:相対リスク0.8、95%信頼区間0.6-0.9、喀痰:相対リスク0.7、95%信頼区間0.6-0.9)。喘鳴や息切れの頻度は両群に差はなかった。

結論:
 行動支援が伴う場合、電子たばこはニコチン置換療法よりも禁煙効果が高い。



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

Dr.倉原の 呼吸にまつわる数字のはなし ナース・研修医のための
価格:2160円(税込、送料無料) (2019/1/10時点)



# by otowelt | 2019-02-08 00:22 | 呼吸器その他

呼吸器内科医として知っておきたい加熱式たばこラインナップ

e0156318_1329388.png 最近急激に加熱式たばこの製品ラインナップが変化しました。ある程度情報を知っておく必要があると思ったので、表にまとめてみました。スマホのごとく、新製品が出ると型落ちして過去のものになっていく感じですね。
 なお、呼吸器専門医はいかなる理由があっても喫煙してはいけませんのでご注意を。

e0156318_1324581.png
表:iQOS(アイコス)

e0156318_13243095.png
表:Ploom(プルーム)

e0156318_13252023.png
表:glo(グロー)





# by otowelt | 2019-02-07 00:22 | 呼吸器その他

COPDにおける6分間歩行数と6分間歩行距離の差

e0156318_1633480.jpg 歩数に着目するとは、なかなか斬新ですね。

Zeng GS, et al.
The relationship between steps of 6MWT and COPD severity: a cross-sectional study
IJCOPD, Volume 2019:14 Pages 141—148


背景:
 6分間歩行距離(D6MWT)は、COPD患者の機能的ステータスのアセスメントに広く用いられている。一方で、6分間歩行数(S6MWT)の役割にはほとんど注目されていない。この研究の目的は、COPDにおけるS6MWTとその他の生理学的パラメータの間の関連性を調べることである。

患者および方法:
 安定期COPD患者70人がこの横断研究に連続して登録された。スパイロメトリーやインパルス・オシロメトリー(IOS)、DLCOを含む肺機能検査が安静時に行われた。QOLは、修正MRC息切れスケール、St. George's respiratory questionnaire(SGRQ)、COPDアセスメントテスト(CAT)、臨床COPD質問票を含む健康関連QOL(HRQoL)質問票によって評価された。歩数と距離の両方がその後の6分間歩行検査(6MWT)によって測定された。

結果:
 S6MWTとD6MWTの両方ともがスパイロメトリー、IOS、DLCOパラメータ、HRQoLと相関していた。6MWTの前後いずれにおいても吸気量はS6MWTと有意な相関がみられ(それぞれρ=0.338, P=0.004; ρ=0.359, P=0.002)、D6MWTとは相関がみられなかった(それぞれρ=0.145, P=0.230; ρ=0.160, P=0.189)。ステップワイズ重回帰分析では、最終的なモデルにおいてmMRCグレード、年齢、CATスコアはD6MWTの有意な予測因子だった(補正R2=0.445, P<0.01)。DLCOとCATスコアは、最終的なモデルにおいて、S6MWTの有意な予測因子だった(補正R2=0.417, P<0.01)。
e0156318_16223771.png
(文献より引用)

結論:
 S6MWTは、COPDにおける機能的ステータスとQOLの評価に効果的である。また疾患重症度に関連するさまざまなパラメータと有意な相関がみられた。さらに、S6MWTはD6MWTと比較してCOPDの過膨張をより予測しやすいかもしれない。



[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

Dr.倉原の 呼吸にまつわる数字のはなし ナース・研修医のための
価格:2160円(税込、送料無料) (2019/1/10時点)



# by otowelt | 2019-02-06 00:01 | 気管支喘息・COPD