GOLD2017の重症度A-D分類は予後予測能として不十分

 日本でも重症度分類を使うことが多くなりましたが、縦軸が非常に使いづらく、A vs C, B vs Dのはざまに落ち込む患者さんが結構います。

Anne Gedebjerg, et al.
Prediction of mortality in patients with chronic obstructive pulmonary disease with the new Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease 2017 classification: a cohort study
Lancet Respiratory Medicine、DOI: http://dx.doi.org/10.1016/S2213-2600(18)30002-X

概要:
 GOLD2017では、これまでのGOLD Stage1-4と重症度分類A-Dが別々に表記されるようになりました。重症度分類A-Dの方が治療内容や予後予測に関して実臨床とマッチしていると評価されていましたが、オランダの研究で後者が否定的となりました。トラディショナルなStage1-4の方が予後をよく予測できるようです。全体の死亡率は重症度B>Cという結果でしたが、心血管系疾患による死亡は両群同等でした(症状が強いので重症度Bは心血管系リスクが高いとされていた)。苦肉の策として、GOLD1-4に重症度A-Dを付け加えて1A-4Dの16分類にすると、どうにか層別化ができたと報告していますが、どう考えても16個に分類されたCOPDなど実臨床で有用であるはずもなく。
 重症度A-Dは治療内容とヒモ付けされているので、とりあえずは予後予測には懐疑的な流れになりそうです。

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# by otowelt | 2018-02-08 00:47 | 気管支喘息・COPD

閉塞性睡眠時無呼吸はAlzheimer病のトリガー?

e0156318_956305.jpg 知らない知見なので勉強になりました。

Claudio Liguori, et al.
Is It Time to Consider Obstructive Sleep Apnea Syndrome a Risk Factor for Alzheimer’s Disease?
AJRCCM Articles in Press. Published on 26-January-2018 as 10.1164/rccm.201710-2105ED


概要:
 閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)は、とくに肥満男性に多い疾患であり、AHI15以上の睡眠時呼吸障害は男性の半数にものぼるというデータがある。
 OSAは心血管系疾患、神経認知機能、代謝内分泌に影響を与えることがわかっているが、Alzheimer病の発症に寄与するのではないかという報告がある(Alzheimers Dement. 2017 Jul 21. pii: S1552-5260(17)32522-0. doi: 10.1016/j.jalz.2017.06.2269. [Epub ahead of print])。
 また別の報告によれば、OSAはAlzheimer病のバイオマーカー(アポリポプロテインE)を髄液中で変化させることが知られている(Neurobiol Aging. 2014; 35(6): 1318–1324.)。そして、髄液中のアミロイドβの減少とともに認知機能障害が進行することが示されており、OSAによってアミロイドβが脳に沈着している可能性もある。
 この仮説を支持するような研究結果が近年いくつも報告されており、AHIの上昇と髄液中アミロイドβの相関性が報告されている(J Alzheimers Dis. 2017;59(1):21-29.)。ただ、アポリポプロテインEの影響はそこまで大きくないかもしれない。
 ただの加齢によって起こる現象を見ているだけで、OSAが本当にリスク因子かどうかは異論もある。ただ、OSAに対するCPAP治療を受けている患者と受けていない患者では髄液中のバイオマーカーに明らかに差がある(Sleep.2017 May1;40(5).)。
 OSAがAlzheimer病のトリガーになっている可能性が高く、次のステップはCPAP治療がこの進行を食い止めることができるかどうか検証することである。



 

# by otowelt | 2018-02-07 00:50 | 呼吸器その他

胸腔処置時に音楽を聴くことで不安が減る

e0156318_161549.png そりゃ減るだろうと思いましたが、研究はされていなかったのですね。立案することが大事!

J Mackintosh, et al.
Music Reduces State Anxiety Scores in Patients Undergoing Pleural Procedures: A Randomized Controlled Trial
Intern Med J, DOI: 10.1111/imj.13738


背景:
 患者不安は、胸腔診断的・治療的処置の合併症として見過ごされがちである。音楽を聴くことは、患者不安を減らすことが内視鏡の研究で明らかになっているが、胸腔処置に関しては評価されていない。

方法:
 胸腔処置を受ける患者をランダムに音楽を聴く群と聴かない群に割り付けた。音楽を聴く群では、イヤホンを用いて自ら選択したものを聴いてもらった。不安はSTAIで評価した。生理学的パラメータも検査された。

結果:
 60人の患者が研究に登録された。音楽を聴く群では、STAIが処置後有意に減少した(34±11 vs. 48±13, p<0.001)が、音楽を聴かない場合では現象しなかった(40±11 vs. 42±11, p=0.51)。音楽を聴くと、心拍数が減少し(87±17 vs. 95±15, p=0.04)、収縮期血圧(121±13 vs. 130±16, p=0.02)、拡張期血圧(72±8 vs. 78±9, p=0.01)が処置後減少した。音楽を聴かない群では変化はみられなかった。疼痛スコアについては群間差はみられなかった(p=0.8)。また、もう一度処置を受けてもよいと思う頻度(p=0.27)、処置の全般的満足感(p=0.20)、処置に要した時間(p=0.68)にも群間差はなかった。

結論:
 胸腔処置を行う患者では、不安の軽減のために音楽を聴いてもらうことが有効である。


# by otowelt | 2018-02-06 00:49 | 呼吸器その他

吸入指導とフィードバックはやればやるほどよい

e0156318_1637713.jpg 日本の場合、やはりマンパワーの問題があります。

Sulaiman I, et al.
A randomised clinical trial of feedback on inhaler adherence and technique in patients with severe uncontrolled asthma.
Eur Respir J. 2018 Jan 4;51(1). pii: 1701126.


背景:
 重症喘息において、コントロール不良は服薬アドヒアランスや吸入手技不良と関連しており、難治性にいたる可能性がある。この研究では、吸入手技に関するフィードバック介入により改善するかどうかをみた。

方法:
 重症コントロール不良喘息患者に対して、集中的教育群では繰り返して吸入薬のトレーニング・アドヒアランスや疾患マネジメンのレクチャーをおこなった。今回の介入群でも同様の介入をおこなったが、フィードバックガイド訓練を用いてさらに質を高めた。プライマリアウトカムは、吸入アドヒアランスとした。セカンダリアウトカムは、事前に規定された臨床アウトカムとした。データはITTおよびper-protocolで解析された。

biofeedback:INCAデバイスを用いてフィードバック。INCAは装着が大変ですが(ドライバーなどでこじあけないといけない)、吸入タイミングが記録されるため、アドヒアランス維持のために有効とされる電子デバイスです。
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(http://www.incadevice.com/#research)

結果:
 3ヶ月の平均アドヒアランス率は、フィードバックを加えた群で有意に高かった(ITT: n=107; 73% vs 63%; 95%信頼区間2.8%-17.6%; p=0.02)。試験終了までに、喘息は54人(38%)で臨床的に安定ないし改善がみられた。しかし、コントロール不良・アドヒアランス不良は52人(35%)、コントロール不良・アドヒアランス良好は40人(27%)いた。

結論:
 繰り返しフィードバックをおこなうことで吸入アドヒアランスは向上した。一連のプログラムにより、40人(27%)のみが難治性かつアドヒアランス良好の集団に入り、さらなる追加治療をおこなわれた。


# by otowelt | 2018-02-05 00:37 | 気管支喘息・COPD

アレルギー性気管支肺アスペルギルス症の急性期治療の比較:プレドニゾロン vs イトラコナゾール

e0156318_16301050.jpg ABPAの大家Agarwal教授の新しい論文です。ステロイド vs ステロイド+イトラコナゾールの比較にしなかった理由として、論文中に純粋にステロイドとイトラコナゾールのガチンコ比較をしたかったと書いておられます。

Agarwal R, et al.
A randomized trial of itraconazole versus prednisolone in acute-stage ABPA complicating asthma.
Chest. 2018 Jan 10. pii: S0012-3692(18)30077-1. doi: 10.1016/j.chest.2018.01.005. [Epub ahead of print]


背景および目的:
 急性期アレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)に対するイトラコナゾール単独療法の効果は不明である。本研究において、イトラコナゾール単独療法およびプレドニゾロン単独療法のの効果と安全性を調べた。

方法:
 喘息を合併したABPA患者(イトラコナゾール非投与例)に対して、経口イトラコナゾールあるいはプレドニゾロンを4ヶ月投与した(2012年1月~2013年12月)。なお、本研究は盲検化されなかった。プライマリアウトカムは、6週間後の複合アウトカム(咳嗽・呼吸困難の改善[75%超]、放射線学的所見の改善[50%超]、血清IgEの減少[25%超])6週間後と3ヶ月後の治療後IgE減少率(%)、3ヶ月後と6ヶ月後の完全寛解、1年後と2年後にABPA増悪を経験した患者数とした。セカンダリアウトカムには、初回の増悪までの期間、肺機能変化、治療関連有害事象が含まれた。

イトラコナゾールレジメン:
 200mg1日2回を4ヶ月内服。制酸剤併用は許可しなかった。

プレドニゾロンレジメン:
 0.5mg/kg/dayを4週間、0.25mg/kg/dayを4週間、0.125mg/kg/dayを4週間。その後2週ごとに5mgずつ減量し、中止。合計4ヶ月内服。


※両レジメンとも喘息コントロールのための吸入ステロイド薬、長時間作用性β2刺激薬、ロイコトリエン受容体拮抗薬の使用は許可された。

結果:
 131人(プレドニゾロン63人、イトラコナゾール68人)が研究に組み込まれた。複合アウトカム(咳嗽・呼吸困難の改善[75%超]、放射線学的所見の改善[50%超]、血清IgEの減少[25%超])を満たした患者数は、プレドニゾロン群の方がイトラコナゾール群よりも多かった(100% vs. 88%; p=0.007)。6週間後と3ヶ月後にIgEの減少がみられた頻度、1年後と2年後にABPA増悪を経験した患者数は両群同等だった。増悪までの期間、肺機能検査についても両群同等だった。副作用はステロイド群の方が多かった(多毛、Cushing様体型、体重増加など)。
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(文献より引用)

結論:
 急性期ABPAの治療においてプレドニゾロンはイトラコナゾールよりも反応が良好であった。しかしながら、イトラコナゾールも効果的であり、プレドニゾロンより副作用が少なかった。そのため、ABPAの初期治療の代替として魅力的である。


# by otowelt | 2018-02-02 00:08 | 感染症全般