成人バンコマイシン治療ガイドライン


バンコマイシンはどの診療科でも用いる抗菌薬である。
呼吸器内科ではMRSA肺炎とMRSA敗血症に用いることが多い。
MRSA肺炎にはリネゾリドに軍配があがっている報告が多いが、
個人的にはバンコマイシンのほうが使いやすい。
肺への移行はバンコマイシンは血中濃度の50%を下回るが、
リネゾリドはそれよりもやや良いらしい。
それでもリネゾリドはコワイ・・・。
(精神科系薬剤を飲んでいる患者も少なくないので)

IDSAガイドラインをチラ見していたのだが、MICが4の
MRSAに対してバンコマイシンを用いるのはナンセンス。2でも結構厳しい。
AUC/MICが400を超えるのは、実は結構難しいのかなぁと思ってきた。

Therapeutic monitoring of vancomycin in adult patients: A consensus review of the American Society of Health-System Pharmacists, the Infectious Diseases Society of America, and the Society of Infectious Diseases Pharmacists
Am J Health-Syst Pharm. 2009; 66:82-98


以下まとめ。

・一番重要な指標は、fAUC/MIC (f:free Vancomycin:蛋白結合が50%あるため)
・バンコマイシンによる治療目標のAUC/MICは400である。
・MRSAのバンコマイシンに対するMICが<0.5mg/Lなら、バンコマイシン1g12時間ごと
 でもAUC/MICが400を超えると思われる。
・MICが1mg/Lを超えるMRSAは、バンコマイシンのトラフ値が15mg/Lを
 上回らなければ、AUC/MIC>400を超えられない。
・バンコマイシンに対するMIC>2 mg/Lだと、AUC/MIC>400になる
 可能性はない。その場合は異なる抗菌薬を使用すべきである。
・バンコマイシンにおけるloading Doseはエビデンス不明。
 もしするのであれば、25-30mg/kg (実際体重)で用いる。


日本にはアメリカのようにダプトマイシンがないので、
バンコマイシンのMICが2を超えるとき、どうするか。
悩ましい。

# by otowelt | 2009-08-02 21:33 | 感染症全般

クリプトコッカス中枢神経感染症に対するデキサメサゾンの使用


クリプトコッカスの症例をみた時、
髄膜炎を起こしていないかどうかに気を配る必要がある。
中枢神経感染を起こしていると判断された場合、
5-FCとアムホテリシンBで初期治療するわけだが、
ステロイドを使うことに関しては基本的に推奨はされていない。

CIDのbrief reportで、クリプトコッカス髄膜炎で
デキサメサゾンを使用して軽快した症例報告があった。

Clinical outcomes were reviewed for 4 patients with Cryptococcus gattii central nervous system infection who received dexamethasone for the treatment of persisting mental status abnormalities and focal lesions on brain scan despite culture‐negative cerebrospinal fluid and the management of intracranial pressure. Favorable clinical responses were observed in 3 patients. Although corticosteroids are not recommended for the treatment of cryptococcal meningitis, these observations suggest that dexamethasone should be further evaluated in this subset of patients.

Dexamethasone in Cryptococcus gattii Central Nervous System Infection
Clinical Infectious Diseases 2009;49:591–595


クリプトコッカスと普通に指す場合、Cryptococcus neoformansを指すが、
Cryptococcus neoformansは二種類ある。
1.Cryptococcus neoformans ; var. neoformans
2.Cryptococcus neoformans ; var. gattii である。
この症例報告されているgattiiは熱帯のユーカリ樹から分離される。

# by otowelt | 2009-07-29 12:04 | 感染症全般

TMM-M-IgGtiterとapolar‐GPLは肺MAC症診断に有用

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ガフキー陽性(今はもはやガフキーという
言葉は用いないが)ということで、
入院になる患者さんは、まずは
肺結核症として扱われる。
もちろん、非結核性抗酸菌症の可能性も
考えられるわけだが、PCRが出るのに
数日の時間がかかってしまう。

入院時に結核か非結核かわかるにこしたことはないのは確かである。

CIDより、TMM-M-IgG-titerとapolar‐glycopeptidolipidについての
論文が出ていた。

IgG抗体といえば、抗TBGL抗体が結核の世界では有名であり
当院でもしばしば測定することが多い。
TBGL (Tuberculous Glycolipid)に対するIgG抗体である。
(結核菌の特徴的な細胞表層成分コードファクター(TDM, trehalose dimycolate)
 を主成分にtrehalose 6-mycolate, 2,3-diacyltrehalose, phenolic glycolipid
 などの抗原を加えたもの)
TBGL抗体はあまり有用とは言えず、ツ反との相関関係はないとする報告も多い。

Serodiagnostic Contributions of Antibody Titers against Mycobacterial Lipid Antigens in Mycobacterium avium Complex Pulmonary Disease.
Clinical Infectious Diseases 2009;49:529–535


背景:
 肺結核の頻度は減少しているが、免疫正常のMycobacterium avium complex (MAC)
 患者は増えている。感染するものではないが、肺MAC症はできれば早急に
 診断をつけたいものである。
 私たちは、血清IgG抗体のタイターを用いて、MACの診断に用いることができるか
 どうかを検討した。

方法:
 65人の肺MAC症と思われる患者の血清検体を使用した。
 15人が肺MAC症であり、25人が肺結核、10人がM.kansasiiであった。
 さらに100人の健常人を比較対象に用いた。
 彼らのトレハロースモノマイコレート(trehalose monomycolate)に対する
 IgG抗体タイター (TMM‐M)およびapolar‐glycopeptidolipid (GPL)と
 脂質抗原を用いた。

結果:
 肺MAC症の患者において、TMM‐M抗体価、apolar‐GPLは有意に
 コントロールより高かった。TMM-M抗体価カットオフ値0.27としたとき
 感度89.2%、特異度97.0%であった。
 apolar‐GPLにおいてはカットオフ値0.33としたとき
 感度89.2%、特異度94.0%であった。

結論:
 TMM‐Mに対するIgG抗体タイターおよびapolar‐GPLは
 肺MAC症の診断に有用である。

# by otowelt | 2009-07-29 11:51 | 抗酸菌感染症

アリムタメンテナンス


いま、肺癌ではアリムタが怒涛の快進撃を遂げている。
ASCO2009以前に予想されていたことではあるが…。

ファーストラインでのCDDP+MTAをウリにしたいところではあるが、
目下のところ、ファーストラインでそれらに入らなかった患者群の
セカンドラインを相手にMTA単剤もウリにしてもいいと思う。
半年や1年前にはアリムタが使えてなかったワケだから、
セカンドラインにエントリーする患者は増えてくるはず。
非扁平上皮癌であれば、DOC≧MTAなのだから…!

間違えないようにしたいのは、高齢者のDOC、VNB単剤が推奨されている中に
MTAはまだ入ってこないということ。
あくまでセカンドラインとしてのMTA推奨である。

今年のASCOではMTAのメンテナンスが脚光を浴びた。
そのため、欧米では早くもメンテナンスMTAが承認を受けている。
はたして、日本はいつになることか。


日経メディカルオンラインより

米Eli Lilly社は7月10日、局所進行性または転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)の維持療法として、ペメトレキセド(商品名:アリムタ)が欧州委員会から承認を受けたと発表した。この治療の対象となるのは、NSCLCの非扁平上皮癌で、白金系抗癌剤を含む化学療法の施行後早期に進行を認めない患者。今回の承認は、維持療法の設定で投与したペメトレキセドによりNSCLCで非扁平上皮癌患者の全生存期間が改善されたデータに基づく。

 葉酸代謝拮抗剤ペメトレキセドは、進行性のNSCLCの非扁平上皮癌に対するファーストライン治療として白金系抗癌剤との併用で承認されており、再発性のNSCLCの非扁平上皮癌に対してもセカンドライン治療として単剤で承認されている。

 これまで、ファーストライン治療で奏効した患者に対しては、再発するまで経過を観察し、再発後にセカンドライン治療を行っていた。今回の維持療法での承認によって、癌が進行するまで治療を休止するのではなく、ファーストライン治療で奏効した患者に対し、直ちに維持療法のレジメンで治療を行えるようになる。

 今回の承認につながった臨床試験の結果は、5月31日に米国臨床腫瘍学会(ASCO 2009)で発表された。白金系抗癌剤を含む導入化学療法を4サイクル施行した後、進行を認めないステージIIIBまたはIVのNSCLC患者663人を対象として、ペメトレキセド(500mg/m2を1サイクル21日の1日目に投与)の投与と対症療法を行った群と、プラセボの投与と対症療法を行った群で全生存期間を比較した結果、全生存期間は有意差をもってペメトレキセド投与群で上回った。

 今回の維持療法としてのペメトレキセドの承認は、欧州では4回目となる。5月29日に発表された欧州医薬品審査庁(EMEA)の下部組織である医薬品委員会(CHMP)による最初の肯定的な意見と、米食品医薬品局(FDA)による最近の承認に続くもの。

# by otowelt | 2009-07-28 19:09 | 肺癌・その他腫瘍

冠動脈ステントにパクリタキセル被覆バルーンも有効


パクリタキセルを塗布したステントはよく耳にするが、
バルーンというのは聞いたことがなかったので。
ステント再狭窄というのは循環器内科医にとってもやっかいな問題であり、
このバルーニングがエビデンスとして同等ならば、
ステント再挿入というストレスがなくなるということか???

Paclitaxel-Coated Balloon Catheter Versus Paclitaxel-Coated Stent for the Treatment of Coronary In-Stent Restenosis
Circulation. 2009;119:2986-2994.


背景:
 ステント再狭窄の治療にパクリタキセル被覆バルーンカテーテルを使用すると
 非被覆バルーンを用いた血管形成術に比べて6ヵ月後の内径損失が小さい。
 主要有害心疾患系イベントが2年後まで低頻度に抑制されることも知られている。
 パクリタキセル被覆バルーンの有効性および安全性を、標準療法である
 パクリタキセル溶出性ステントと比較。

方法・結果:
 冠動脈ステント再狭窄患者131例を、
 パクリタキセル被覆バルーン(3 μg/mm2)群または
 パクリタキセル溶出性ステント群に無作為に割り付け。
 inclusion criteriaは径狭窄率≧70%、病変長≦22mm、血管径2.5~3.5mm。
 プライマリエンドポイントは血管造影におけるセグメント内遠隔期内径損失。
 結果として、追跡6ヵ月後におけるセグメント内遠隔期内径損失は
 薬剤溶出ステント群で0.38±0.61mm、薬剤被覆バルーン群で0.17±0.42mm
 (P =0.03)であり、再狭窄率はそれぞれ59例中12例(20%)および
 57例中4例(7%;P =0.06)。
 12ヵ月後における心疾患系イベントの発現率はそれぞれ22%と9%(P =0.08)。
 この差は主として標的病変血行再建術を要するイベントの差。

結論:
 冠動脈ステント再狭窄の治療において、パクリタキセル被覆バルーン療法は
 パクリタキセル溶出ステントに比べて少なくとも同等に有効で忍容性良好。
 

# by otowelt | 2009-07-27 19:06 | 内科一般