重症患者への抗菌薬の相互作用

●抗MRSA薬とその他の薬の相互作用
●バンコマイシン
・チオペンタール
 同時に投与すると、紅斑、ヒスタミン様潮紅、アナフィラキシー反応等の
 副作用が発現することがある。
 全身麻酔の開始1時間前には本剤の点滴静注を終了する。
・アミノグリコシド系抗生物質(アルベカシン、トブラマイシン等)
・白金含有抗悪性腫瘍剤(シスプラチン、ネダプラチン等)
 腎障害、聴覚障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けること。
 やむを得ず併用する場合は、慎重に投与する。
・アムホテリシンB、シクロスポリン等
 腎障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けること。
 やむを得ず併用する場合は、慎重に投与する。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・アミノグリコシドやファンギゾン、アムビゾームとの併用時には、
 腎傷害や耳毒性を説明する。



●リネゾリド(ザイボックス)
・モノアミン酸化酵素(MAO)阻害剤、塩酸セレギリン
 両薬剤が相加的に作用し血圧上昇等があらわれるおそれがある。
 リネゾリドは非選択的、可逆的MAO阻害作用を有する。
・アドレナリン作動薬、ドパミン塩酸塩、アドレナリン、フェニルプロパノールアミン
 血圧上昇、動悸があらわれることがあるので、患者の状態を観察しながら
 これらの薬剤の初回量を減量するなど用量に注意。
・セロトニン作動薬
 セロトニン症候群の徴候及び症状があらわれるおそれがある。
・リファンピシン
 リファンピシンとの併用により本剤のCmax及びAUCがそれぞれ
 21%及び32%低下した。
・チラミンを多く含有する飲食物(チーズ、ビール、赤ワイン等)
 血圧上昇や動悸があらわれることがあるので、本剤投与中には
 チラミン含有量の高い飲食物の過量摂取(1食あたりチラミン100mg以上)
 を避けさせること。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・結核治療中のMRSA肺炎でRFPを使用している場合、
 リネゾリドの効果は減少するものと考える。
・リネゾリド使用中の昇圧剤使用に関しては、ナーバスになるべき。



●テイコプラニン(タゴシッド)
・ループ利尿剤、エタクリン酸フロセミド
 腎障害、聴覚障害を増強するおそれがあるので併用は避けることが望ましい。
 やむを得ず併用する場合は、慎重に投与すること。
 腎障害、聴覚毒性が増強される。
・アミノグリコシド系抗生物質(アルベカシン、トブラマイシン等)
・白金含有抗悪性腫瘍剤(シスプラチン、ネダプラチン等)
 腎障害、聴覚障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けること。
 やむを得ず併用する場合は、慎重に投与する。
・アムホテリシンB、シクロスポリン等
 腎障害が発現、悪化するおそれがあるので、併用は避けること。
 やむを得ず併用する場合は、慎重に投与する。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・ラシックスやアミノグリコシドやファンギゾン、アムビゾームとの併用時には、
 腎傷害や耳毒性を説明する。



●キヌプリスチン・ダルホプリスチン(シナシッド)
・ピモジド(オーラップ)、キニジン(硫酸キニジン)、シサプリド(国内承認整理済)
 これらの薬剤の血中濃度を上昇させ、QT延長、心室性不整脈、血液障害、
 痙攣等の副作用を起こすことがある。 本剤はこれらの薬剤の主たる代謝酵素
 (CYP3A4)を阻害する。
・スパルフロキサシン(スパラ)
 QT延長、心室性不整脈を起こすことがある。
 併用によりQT延長作用が相加的に増強する。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・不整脈を有する患者や不整脈薬を服用している場合のシナシッドの使用時には
 細心の注意を払うべき。



●広域抗菌薬とその他の薬の相互作用
●カルバペネム系
・バルプロ酸ナトリウム(デパケン)
 本剤との併用により,バルプロ酸の血中濃度が低下し
 てんかんの発作が再発することがある。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・基本的に痙攣とカルバペネム系抗菌薬は避けること。
・チエナムとガンシクロビルも痙攣リスクあるため、避けたい。


●リンコマイシンとその他の薬の相互作用
●クリンダマイシン
・エリスロマイシン(エリスロシン等)
 併用してもクリンダマイシンの効果があらわれないと考えられる。
 細菌のリボゾーム50Sサブユニットへの親和性が本剤より高いため。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・エリスロシン投与中にクリンダマイシンは無意味。



●ニューキノロンとその他の薬の相互作用
●シプロフロキサシン
・テオフィリン、アミノフィリン
 テオフィリンのCmaxが17%,AUCが22%それぞれ上昇したとの
 報告がある。テオフィリンの作用を増強させる可能性があるので
 併用する場合にはテオフィリンを減量するなど適切な処置を行う。
・フェニル酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤、ジクロフェナク,アンフェナク等
 プロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤(ただし,ケトプロフェンとは併用禁忌)
 ロキソプロフェン、プラノプロフェン、ザルトプロフェン等
 痙攣を起こすおそれがある。症状が認められた場合,両剤の投与を中止するなど
 適切な処置を行う。 併用により、ニューキノロン系抗菌剤のGABAA受容体への
 阻害作用が増強され、痙攣が誘発されると考えられている。
・シクロスポリン
 相互に副作用(腎障害等)が増強されるおそれがあるので,頻回に腎機能検査
 (クレアチニン,BUN等)を行うなど患者の状態を十分に観察する。
・ワルファリン
 ワルファリンの作用を増強し、出血、PT延長等があらわれることがある。
・グリベンクラミド(オイグルコン、ダオニール)
 グリベンクラミドの作用を増強し、低血糖があらわれることがある。
・メトトレキサート
 メトトレキサートの血中濃度が上昇し、作用が増強されるおそれがある。
 併用する場合には患者の状態を十分に観察する。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・閉塞性肺疾患でテオフィリン内服中で異型肺炎を疑ったとき、
 シプロが必要なら少しテオフィリンを減量したほうがいいかもしれない。
・ワーファリン内服中のシプロは、少し凝固系に注意を払う。
・リウマチと異型肺炎合併例でMTX投与中のときは、シプロ以外でせめたい。


●抗真菌薬とその他の薬の相互作用
●アムホテリシンB(ファンギゾン)/liposomalアムホテリシンB(アムビゾーム)
・副腎皮質ホルモン剤、ヒドロコルチゾン等
 ACTH 低カリウム血症を増悪させるおそれがあるので
 血清中の電解質及び心機能を観察すること。
・ジギトキシン、ジゴキシン等
 ジギタリスの毒性(不整脈等)を増強するおそれがあるので、
 血清電解質及び心機能を観察すること。
・頭部放射線療法
 併用により白質脳症があらわれるおそれがある。

・・・・・・・・・・・・・・・呼吸器内科医としての注意
・アムホテリシン製剤使用時には、ジギタリスとステロイドに注意。
・LCでガンマナイフあるいはWBRT中にはアムホテリシン製剤は使うべきではない。


●その他
●ベナンバックスとアミオダロン(注射剤)(アンカロン注)
 併用によりTdPリスクが増加する。
 併用によりQT延長作用が相加的に増強すると考えられる。

# by otowelt | 2009-12-15 15:50 | 集中治療

EULAR RA Recommendations 2009


”MTX肺”と呼ばれるものをたくさんみていると(実際MTXのせいかどうか
わからないが)、MTXがキライになる。
でも関節リウマチのキードラッグ……

基本的な勉強として、EULAR2009のコンセンサスを載せておく。

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・DMARDS
(1)MTX単剤は他のDMARDs単剤より有効(レフルノミドはMTXと同等)。
(2)DMARDs治療歴がない患者では、MTXと他のDMARDsの併用は、有効性の点でMTX単剤と有意差が認められない。したがって、有効性と有害性のバランスを考慮するとMTX単剤が好ましい。
(3)レフルノミド、スルファサラジン、注射金製剤はプラセボに比べて有効。
(4)アザチオプリン、シクロスポリンもプラセボに比して有効だが、忍容性に問題があるため注意が必要。

・ステロイド
(1)進行RA患者に対する低用量ステロイド投与は症状軽減に有効
(2)早期RA患者に対する低用量ステロイド投与は構造的損傷の進行を抑制する。
(3)早期RA患者と進行RA患者でステロイドの有効性が異なることを示すエビデンスは不十分。
(4)DMARDsとステロイドを併用すると症状軽減と構造的損傷の進行抑制がみられる。
(5)ステロイドの投与タイミングは重要とみられる。
(6)ステロイドの用量漸減についての研究は十分には行われていない。ただし、投与を完全に中止するのは、しばしば非常に困難だ。

# by otowelt | 2009-12-10 12:49 | レクチャー

ARDSにおけるリクルートメント手技は循環動態を変動させる

人工呼吸器でリクルートメント手技というテクニックがあり、
当院でも頻用している。

参照:ARDS/ALIにおけるリクルートメント手技

Journal of Intensive Care Medicine最新号で
リクルートメント手技と循環動態の関連について論文が出ていた。

Acute Hemodynamic Effects of Recruitment Maneuvers in Patients With Acute Respiratory Distress Syndrome
Journal of Intensive Care Medicine, Vol. 24, No. 6, 376-382 (2009)


背景:
 リクルートメント手技は、ARDSにおいて循環動態を変動させうる。
 私たちは、このリクルートメント手技の間の循環動態の変化を評価した。

方法:
 リクルートメント手技として、40cmH2O・30秒のsustained inflation
 を22人のARDS患者におこなった。血圧と心拍数は手技後30秒間の間
 10秒ごとに記録され、また左室径はMモードエコーで計測され、また
 ドプラ心エコーで機能評価した。

結果:
 平均の収縮期および拡張期血圧は20~30秒間減少した。(mean BP: 92 ± 12
 at baseline to 83 ± 18 mm Hg at the end of the RM, P < .05)
 その後、それぞれのパラメータは改善した。心拍数は手技中10~20秒間減少、
 その後改善傾向にあった。左室径は手技中明らかに減少した。
 left ventricular ejection fraction およびpeak velocityは大きな変化なかった。
 静肺コンプライアンスは、平均血圧変動が15%以上の患者の方が、15%未満の患者
 よりも低い傾向にあった(P < .05)。
 
結論:
 リクルートメント手技により平均血圧が減少するが、その程度は
 心機能が保たれていても前負荷の状態に相関する。

# by otowelt | 2009-12-08 22:53 | 集中治療

間質性肺炎急性増悪におけるPMX-DHP

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概要:
 特発性肺線維症(IPF)をはじめとする
 間質性肺炎は、慢性かつ進行性の経過
 をたどる。副腎皮質ステロイド薬の
 減量や外科手術などをきっかけにして
 急性増悪を起こすことが知られている。
 ポリミキシンB 固定化線維カラムを
 用いた直接血液灌流法(direct
 hemoperfusion using a polymyxin B immobilized fiber column;PMX-DHP)
 は血液中よりエンドトキシンを除去する治療法である。
 敗血症やARDSへの有効性が示されている。
J Clin Apher 2002 ; 17 : 97―102.
The EUPHAS randomized controlled trial. JAMA 2009 ; 301 : 2445―2452.


 間質性肺炎の急性増悪は、ARDSと同様DADを呈するだが
 PMX―DHPの有効性を示唆する報告がみられる。
Intern Med 2006 ; 45 :1033―1038.
Respirology 2008 ; 13 : 452―460.


PMX-DHPとは:
 ポリミキシンB 固定化線維カラムは、ポリミキシンBとエンドトキシンとの
 親和性を応用して、エンドトキシン吸着を目的に開発された。
 PMX-DHP はグラム陰性桿菌による敗血症に対して血圧上昇や酸素化能の改善
 などの効果が報告されている。また動物実験ではPMX-DHP による
 エンドトキシン吸着で生存率が有意に改善することも示されている。
 機序として、エンドトキシン吸着の結果炎症性サイトカインが減少し
 好中球の活性化が抑制され、酸素化能の改善につながったと考えられるが、
 まだまだ不明な点は多い。炎症性メディエーターや蛋白分解酵素の吸着により
 微小血管障害を抑制する可能性を示唆する報告もある。

効果:
 Seo らの報告では、PMX-DHP 施行後のどの時点での評価かは不明で
 あるが、30 日以上生存した全例でKL-6 の低下を認めている。
 また、急性増悪6 例にPMXDHPを施行し、4 例で30 日以上の生存が得られた
Intern Med 2006 ; 45 :1033―1038.

 ※KL-6 とSP-D とでは変動に時相のずれがあり、KL-6 が遅れて変動する。

文責"倉原優"

# by otowelt | 2009-12-08 18:24 | びまん性肺疾患

Propofol infusion syndrome:PRIS


プロポフォール注入症候群 Propofol infusion syndrome:PRIS

概要:
 集中治療分野における、長期間鎮静のためにプロポフォールが投与された患者
 に起こるまれな致死性合併症である。
 高用量プロポフォールの長期投与時に代謝性アシドーシス、脂質異常症、
 多臓器不全が進行し、徐脈性不整脈、心停止に至る。
 乳酸アシドーシスやBrugada型心電図変化は前駆症状と考えられ、
 認められたらただちにプロポフォール投与を中止する。
 原因としてミトコンドリアにおける脂質代謝障害や、遺伝子欠損症の関与が
 疑われている。
 プロポフォールを漫然と長期投与しないようにすることが肝要。

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# by otowelt | 2009-12-07 13:05 | レクチャー