虫垂炎・腸間膜リンパ節炎による20歳以前の虫垂切除は、潰瘍性大腸炎発症を減らす

e0156318_19553861.jpg小児期に虫垂近傍に炎症を起こしており、
かつ虫垂切除されていると
UC発症が減るという論文。
虫垂切除だけではどうやらダメらしい。

Appendicitis, mesenteric lymphadenitis, and subsequent risk of ulcerative colitis: cohort studies in Sweden and Denmark.
BMJ 2009;338:b716

目的:
 虫垂切除後、潰瘍性大腸炎のリスクが
 軽減することが知られているが、虫垂切除単独
 によるものか、虫垂炎・腸間膜リンパ節炎の
 発症そのものによるのかを調べた。

デザイン:
 スウェーデン・デンマークにおける709353人の患者データを使用。
 224483人の炎症性腸疾患の家族歴がある患者において
 虫垂切除のリスクを考察。

結果:
 虫垂切除された1192人の患者がUCを発症した。
 (10.8 per 100000人年)
 既存の炎症がなく虫垂切除された患者は、UCのリスクを減らさなかった。
 (standardised incidence ratio 1.04, 95%CI 0.95 to 1.15)
 20歳になる前に虫垂炎により虫垂切除された場合は、(0.45, 0.39 to 0.53)
 あるいは腸間膜リンパ節炎により20歳より前に虫垂炎を切除された場合は、
 (0.65,0.46 to 0.90) といった結果であり、明らかなリスク低下と考えられる。
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結論:
 炎症性腸疾患の家族歴があろうとなかろうと、
 20歳以前の虫垂炎あるいは腸間膜リンパ節炎によって虫垂切除された患者は
 成人になってからのUC発症率が減る。
 虫垂切除単独では、UC発症を減らさない。

# by otowelt | 2009-04-05 02:13 | 内科一般

敗血症における未分画ヘパリンは死亡率改善せず (HETRASE試験)


ICU患者にヘパリンを持続的に流すことで、
DVTの予防やら死亡率改善やら・・・・という議論をみたことがあるが
とりあえず、あまり意味はないぞというインパクトを与える論文ではある。
エンドポイントの設定が、DVT関連なら少し説得力があるのだが・・・。

Unfractioned heparin for treatment of sepsis: A randomized clinical trial (The HETRASE Study).
Critical Care Medicine:Volume 37(4)April 2009pp 1185-1196


目的:
 第一の目的は、多臓器不全スコアの改善にヘパリンに効果が
 あるかということを調べることである。第二の目的は、ヘパリンの効果が28日死亡率
 に影響を及ぼすかということを調べるためである。
 サブグループ解析として、感染部位、
 Acute Physiology and Chronic Health Evaluation II score
 MOD score、D-ダイマーで解析。

デザイン:
 単一施設無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験。
 低用量持続未分画ヘパリン(UFH)投与を敗血症治療に用いる。

セッティング
 550床 University Hospital and referral center in Medellín, Columbia.

患者:
 319人の患者で救急部より敗血症で入院になった患者

介入:
 プラセボあるいは未分画ヘパリン(500単位/時間を7日間)を用いた

結果:
 生存退院までの期間は、プラセボで平均12.5日、ヘパリン群で平均12日。
 (p = 0.976)
 MODスコアの改善は、両群とも1日あたり0.13~0.11の改善を認めた。
 (p = 0.240)
 28日死亡率は、プラセボ群で16%、ヘパリン群で14%(p = 0.652)。
 サブグループ解析でも未分画ヘパリンの28日死亡率の低下は認めなかった。
e0156318_16425428.jpg
 
結論:
 わたしたちの研究では、敗血症における未分画ヘパリンは実現可能かつ
 安全な介入と考えられる。しかしながら、この腱きゅでは
 この薬剤を用いることによる利益は証明できなかった。

# by otowelt | 2009-04-04 23:40

抗菌薬の適正使用は高額とならない

e0156318_20572270.jpg
コストを増大させることなく、感染症治療の知識によって
予後を改善できる可能性を示唆しているわけだが・・・・。
天邪鬼なとらえ方によっては、不適切な使用をしても
コスト一緒じゃん、という輩もいるかもしれない。



Antibiotic use: is appropriateness expensive?
Journal of Hospital Infection
Volume 71, Issue 2, February 2009, Pages 108-111


抗菌薬は正しく使用されないことが多い。
本研究では、3病院の600件の抗菌薬処方のうち、37%が不必要と判定。
また、適応内とされた抗菌薬療法のうち、45%は不適切と判定。
多変量解析から、適応内の治療は適応外の治療よりも高額であることがわかった。
これは適応外の治療では経口薬が多いためと考えられた。
しかし、適応内の治療の中では、適切な治療と不適切な治療の費用に有意差はなかった。


・・・・・・・当院ではカルバペネムとクリンダマイシンを併用することが多い。
個人的には口出しできない立場であるため、口出ししていない。
カルバペネムがクリンダマイシンの嫌気性カバーよりも広いということが
認知されていないのか???

# by otowelt | 2009-04-01 20:50 | 感染症全般

HIV検査に同意書は必要か


結論は「同意は必要」だが、「同意書は必要ではない」

某メーリングリストで話題になっていたので、
個人的に忘れないようにするためにも、記載しておく。

●CDCの勧告(2006年9月22日版MMWR55(RR14);1-17)
***************************************************
・すべての医療機関において、13才から64才の全患者に対して
 HIVスクリーニング検査を実施する。
・事前に本人がHIV検査が実施されることを知り
 理解していなければならない。(緊急時を除く)
・「口頭または文書によって」本人が断らない限りHIV検査が
 実施されることを説明する。一般的な医療行為に関する説明と同意の範囲でOK。
・本人に対して質問の機会・検査辞退の機会を与える。
・検査の同意は「一般の診療行為に関する同意」に含めて取得し
 「独立したHIV検査同意書は使用しない」
・本人が辞退した旨を医療記録に記載する。
・医療機関におけるHIV検査には予防相談を含めるべきではない。
 (いわゆるカウンセリングは行わない)
***************************************************

# by otowelt | 2009-03-31 01:38 | 感染症全般

Mycobacterium xenopiの治療と予後について

e0156318_1314469.jpgMycobacterium xenopiは、1959年に南アフリカの
カエル(Xenopus laevis)から発見された。
この抗酸菌は、発育がおそいとされている。
Mycobacterium xenopiのアウトブレイクは
汚染水と関連しており、院内でも水回りが重要である。
Mycobacterium xenopiは、配水管設備で形成される
バイオフィルムと相互作用があり、
自由生活性Acanthamoeba属に寄生する。

Thoraxより、Mycobacterium xenopiについての論文。

Mycobacterium xenopi pulmonary infections: a multicentric retrospective study of 136 cases in north-east France.
Thorax 2009; 64: 291-296.


背景:
 低い頻度だが、Mycobacterium xenopiの肺感染症は起こりうる。
 レトロスペクティブにこれらの予後について考察した。
 
方法:
 M xenopi に感染(1997年ATS/IDSA criteriaに合致したもの)した患者を
 有する13病院を北フランスで検索。臨床的、画像的、細菌学的な予後について考察。

結果:
 136人の患者が登録。12人だけが合併症を持たない患者であった。
 3種類の疾患群にわけられる、すなわち
 (1)古典的な空洞を肺に有するもの(n = 39, 31%)
 (2)孤立陰影で免疫不全がないもの(n = 41, 33%)
 (3)急性の陰影で免疫不全を有するもの(n = 45, 36%)
 56人がいかなる治療も受けなかった。
 一方80人の患者が1st-lineでリファマイシン(87.5%)、エサンブトール(75%)、
 イソニアジド(66.2%)、クラリスロマイシン(30%)、フルオロキノロン(21%)を使用。
 36ヶ月フォローで、80人(69.1%)が死亡。median survivalは16ヶ月であった。
 独立予後因子として、急性浸潤影は予後不良(HR2.6, p = 0.001)であった。
 またリファマイシンを含むレジメンは防御に効果を発揮したと思われる。
 (HR 0.325, p = 0.006)
 クラリスロマイシンを含むレジメンは予後を改善しなかった。

結論:
 近年のガイドラインとは相反して、この研究によれば
 陰影のタイプによって予後が異なることがわかった。
 予後をよくするためには、Mycobacterium xenopi感染は
 リファマイシンを含むレジメンで治療されるべきであると考えられる。
 クラリスロマイシンについては再評価が必要である。

# by otowelt | 2009-03-30 06:13 | 抗酸菌感染症