高齢者CPRをしても生存率は上がらない

高齢者のCPRは生存率がなかなか上昇しない。
これはいくつものスタディから明らかである。

今回NEJMに疫学的研究が掲載されたが、
やたら黒人に不利な内容が強調されているのが気になる。。。。

Epidemiologic Study of In-Hospital Cardiopulmonary Resuscitation in the Elderly.
N Engl J Med 2009; 361 : 22-31


背景:
 院内心肺蘇生後の生存率は改善しているのか、あるいは
 患者および病院の特性によって患者の生存を予測するものがあるかどうか
 明らかにされていない.

方法:
 出来高払いメディケアの1992~2005年のデータを調査。
 アメリカの病院でCPRを受けた65歳以上のメディケア受給者を選定した。
 CPRの施行率とCPR後の生存率の動向、および患者レベル・病院レベルでの
 生存退院の予測因子を検討。

結果:
 院内CPR を受けた患者433985例を同定。18.3%(95%CI 18.2~18.5)が
 生存退院した。(結構多いですね)
 1992~2005年で生存率に大きな変化はみられなかった。
 CPRの全施行率は入院1000 件あたり2.73件。
 男性、高齢、多くの併存疾患、介護施設からの入院、で生存率は低下した。
 黒人患者の生存の補正オッズは、患者特性が同様の白人患者より23.6%低かった。
 (95% CI 21.2~25.9)
 黒人患者は CPR 後の生存率が低い病院でCPRを受ける傾向があった。
 
結論:
 1992~2005年において、院内CPR後の生存率に改善はみられなかった。
 CPR後院内で死亡する割合は増加、CPR 後生存して自宅へ退院する患者の割合は減少。
 黒人はCPR を受ける率が高いが、CPR 後の生存率は低かった。

# by otowelt | 2009-07-03 00:44 | 救急

タモキシフェン服用乳癌患者では無月経と内分泌学的閉経は一致しない(かも)


乳癌・肺癌のダブルキャンサーで
ノルバデックスを飲んでいる患者さんで閉経になった
患者さんがいるのだが、興味深い論文があった。
あまりIFが高くなさそうな論文だが・・・・

Effect of tamoxifen on the endometrium and the menstrual cycle of premenopausal breast cancer patients.
Int J Gynecol Cancer 2009 May; 19(4):677-81



背景:
 非ステロイド性の抗エストロゲン薬タモキシフェンは、
 閉経前ホルモン受容体陽性乳癌の治療に用いられている。
 閉経前乳癌患者においてタモキシフェンの月経周期、血清ホルモン値と
 それに伴う子宮内膜反応に及ぼす影響について検討。

方法:
 55歳以下のタモキシフェン服用中の乳癌患者を対象に最終月経期間を記録、
 血清ホルモン値および超音波による子宮内膜反応を6か月毎に測定。
 血清エストラジオール(E2)0.10nmol/L以上、FSH 30 IU/L以下の場合を
 閉経前状態と定義。12mmを超える子宮内膜反応がみられた閉経前患者には
 子宮鏡下に掻爬した。

結果:
 121人で計241回の測定をおこなった。うち47人の241回の測定のうち
 85回(35%)で無月経と閉経とは一致しなかった。
 内分泌学的に閉経前状態と考えられた47人中8人で超音波上12mm以上の
 子宮内膜反応がみられた。これら肥厚内膜は組織学的に非悪性であった。
 E2の値と子宮内膜厚との間には相関はなかった。

結論:
 タモキシフェンは55歳以下の乳癌患者における臨床的閉経と
 内分泌学的閉経との間の不一致をもたらした。

# by otowelt | 2009-07-02 10:39 | 肺癌・その他腫瘍

慢性好酸球性肺炎

4月からCEPの患者が続けて4例いたので、まとめてみた。


●慢性好酸球性肺炎の分類
 特発性好酸球性肺炎(IEP)は歴史的にはLöffler によりLöffler症候群と記載され、
 Croftonにより単純性好酸球性肺炎と遷延性好酸球性肺炎と、
 そしてReederとGoodrichによりPIE 症候群と称されてきた。
 1969 年にLiebow とCarrington は、好酸球性肺炎を肺への好酸球の浸潤
 であり、末梢血の好酸球増多を伴う場合も伴わない場合もあると定義した。
 近年IEP は慢性好酸球性肺炎(CEP)、急性好酸球性肺炎(AEP)、
 単純性好酸球性肺炎と分類されている。
Eosinophilic lung diseases. Am J Respr Crit Care Med 1994 ; 150 : 1423―1438.

●AEPとCEPの違い
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●CEPとは
 慢性好酸球性肺炎(CEP)は、1969年にCarringtonらが提唱した疾患概念。
 1952年にReederらの提唱したPIE症候群からわけて考えるようになった。
                    NEJM, 280: 787-798, 1969.

●CEPの疫学
 中年女性に多い傾向にあるが、報告例はさまざま。平均年齢は40~50代が多い。
 アレルギー疾患の既往を持っていることが多い。
 季節との関連性はないが、喘息合併の影響もあるためか4~5月に多い。

●CEPの症状
 咳嗽、発熱、喀痰、呼吸困難、喘鳴、胸痛、盗汗、体重減少などが出現する。
 Chronic eosinophilic pneumonia. A report of 19 cases and a review of the literature. Medicine 1988; 67:154.
 過去の喘息、引き続き喘息症状が出るなど、喘息と関連することが50%で認められる。
Idiopathic chronic eosinophilic pneumonia and asthma: how do they influence each other?  Eur Respir J 2003; 22:8.

●CEPの診断
1.外科的生検でCEPと診断
2.BALFあるいは末梢血好酸球が30%以上
3.a) TBLBで好酸球が多い
  b) BALF好酸球が10%以上
  c) 末梢血好酸球が6%以上
  a)、b)、c)のうち2つ以上を満たす

●CEPの検査所見
・血液検査
 末梢血好酸球増加、白血球増加、CRP上昇、IgE高値
 (5~10%に好酸球増加のないものもある)
 赤沈亢進、鉄欠乏性貧血、血小板増加
Diagnostic problems in chronic eosinophilic pneumonia. J Int Med Res 1997; 25:196.

・気管支鏡
 BALF中の好酸球増加は必要所見、40%以上になることが多い
Diagnostic problems in chronic eosinophilic pneumonia. J Int Med Res 1997; 25:196.
 BALF中の好酸球は平均58%
Idiopathic chronic eosinophilic pneumonia. A clinical and follow-up study of 62 cases. Medicine (Baltimore) 1998; 77:299.
 BALF中の好酸球は、過分葉していることが多い
 CD4/8比は2.5前後

・呼吸機能検査  閉塞性換気障害パターンが多い

・画像検査
 胸部レントゲン:photographic negative of pulmonary edema (50%以下)
Peripheral opacities in chronic eosinophilic pneumonia: the photographic negative of pulmonary edema. AJR Am J Roentgenol 1977; 128:1.
 CT:スリガラス影>浸潤影
   中間層気管支に直交する帯状影、curve-linear shadow(25%)
   air bronchogram (半数以上)、胸水貯留(20%)

 CEPのHRCTの特徴(『HRCT of the lung』より)
 1.浸潤影(consolidation)が肺末梢側に斑状にみられる。
 2.肺末梢側あるいは斑状のスリガラス影、時にcrazy paving
 3.線状陰影
 4.上葉優位にみられる陰影
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●CEPの病理
・典型的には好酸球とリンパ球の肺胞隔壁や間質への集簇で
 半数の例で間質の線維化を認めている。
Chronic eosinophilic pneumonia. A report of 19 cases and a review of the literature. Medicine 1988 ; 67 : 154―162.
Eosinophilic pneumonia. In : Hasleton PS, ed. Spencer’s pathology of the lung. 5th ed. New York : McGraw-Hill, 1996 ; 450―453.

・器質化肺炎像や好酸球性膿瘍をときに認め、少数例で非乾酪性肉芽腫を認める。

●CEPの治療
 10%は無治療でも軽快する
 再発が多い
Idiopathic chronic eosinophilic pneumonia. A clinical and follow-up study of 62 cases. Medicine (Baltimore) 1998; 77:299.
 ・ステロイド
  40~60mgのプレドニゾロンで2週間始める。
  その後、半分ずつ減量しさらに8週間続ける
 結局、初期治療は平均19か月続くという報告もある
  Chronic eosinophilic pneumonia. A report of 19 cases and a review of the literature. Medicine 1988; 67:154.
 ・吸入ステロイドが効果があるという報告もある

文責="倉原優"

# by otowelt | 2009-06-30 12:00 | レクチャー

C型肝炎感染患者は冠動脈疾患リスクが高い


HCV感染は、従来の冠動脈疾患リスクはむしろ少ない傾向にあるのだが、
冠動脈疾患のリスクそのものはやはり高い傾向にあるようだ。

Hepatitis C Virus Infection and the Risk of Coronary Disease
Clinical Infectious Diseases 2009;49:225–232


背景:
 C型肝炎ウイルス(HCV)感染と冠動脈疾患(CAD)の関係は諸説ある。
 本研究では、この関係を明らかにした。

方法:
 Veterans AffairsにおけるすべてのHCV患者における後ろ向き研究である。
 HCV感染と非感染群にわけてstudyを組んだ。

結果:
 82083人のHCV感染患者と89582人の非感染患者を登録。
 HCV感染患者は、高血圧罹患が少なく、高脂血症・糖尿病も少なかった。
 しかしながら、アルコール飲用と薬物乱用、腎不全、貧血などは非感染群に
 比べて多かった。HCV感染におけるコレステロール値は
 (175 ± 40.8 mg/dL vs. 198 ± 41.0 mg/dL)と有意に低く、また
  low‐density lipoprotein cholesterolも同様
 (102 ± 36.8 mg/dL vs. 119 ± 38.2 mg/dL)であった。
 TGは(144 ± 119 mg/dL vs. 179 ± 151 mg/dL)であった。
 HCV感染は冠動脈疾患と関連性があった(HR 1.25; 95%CI 1.20–1.30)。
 
結論:
 HCV感染患者は、脂質レベルが低く、高血圧罹患も少ない。
 望ましいリスクプロファイルではあるのだが、冠動脈疾患のリスクと
 相関がみられた。

# by otowelt | 2009-06-30 08:40 | 感染症全般

COPD合併肺癌患者に対する術前チオトロピウム投与は呼吸器症状、肺機能を有意に改善


肺癌とCOPDは喫煙という共通のリスクを持つ疾患である。
チオトロピウム(スピリーバ)の術前使用についての論文。

Preoperative use of inhaled tiotropium in lung cancer patients with untreated COPD.
Respirology 2009 May 19


背景:
 COPD合併肺癌患者は手術リスクが高い。長時間作用型気管支拡張薬
 チオトロピウムは、COPDの維持療法に用いられているが、
 周術期における効果については明らかにされていない。

方法:
 COPDを合併する原発性肺癌患者で手術を施行した102例のカルテで
 後方視的検討を行った。未治療の軽症~重症COPDをもち、
 術前にチオトロピウムを投与した肺癌患者は21例で、チオトロピウム開始2週前、
 2週後および手術施行3か月後にスパイロメトリーを実施した。

結果:
 術前2週間のチオトロピウム投与は、呼吸器症状および肺機能を有意に改善
 〔FVC:治療前中央値3.43L→治療後3.52L、FEV(1):2.06L→2.32L
 FEV(1)%:73.2%→81.0%;いずれもp<0.001〕。
 術後FEV(1)%は中央値56.0%(4分位範囲51.6-60.3)から
 63.4%(60.8-66.0)に有意に増加した(p<0.001)。FEV(1)の増加は
 COPDの重症度と負の相関を示した(r=-0.59、p<0.005)。
 
結論:
 COPDを合併する肺癌患者に対する術前チオトロピウム投与は、
 手術を行ないやすくし、肺治癒切除の必要なCOPD患者にとっても有利である。

# by otowelt | 2009-06-29 21:22 | 気管支喘息・COPD