活性化プロテインCは重症敗血症の死亡率を改善させない


Human recombinant activated protein C for severe sepsis.
Cochrane database sys rev 2008

は、sepsis survival campaign2008より以後に考察された
システマティックレビューである。

これは、活性化プロテインCの4つのランダム化試験のレビューであり、
活性化プロテインC VS プラセボの試験である。
28日後の死亡率をプライマリエンドポイントに設定したところ、
有意差はみられなかっただけでなく、逆に活性化プロテインCは
出血のリスクを高める可能性がある


sepsis survival campaign2008では、活性化プロテインCは
基本的に有用性を前面に押し出している。
これはPROWESS試験の結果によるものである。
Efficacy and safety of recombinant human activated protein C
for severe sepsis. N Engl J Med 2001; 344:699.


2008ガイドラインの内容は、
・重症患者(APACHEⅡ25 点以上、敗血症による多臓器不全、
 敗血症性ショック、敗血症によるARDS)で出血に関する
 絶対禁忌がない患者に対してrhAPC の投与が推奨される

というものである。

まだ決着はつかぬ、といったところでよいだろうか??

# by otowelt | 2009-03-01 23:18

ALI治療4日目の輸液量制限は院内死亡率を低下

今週のJ Intensive Care Med より。
intensivist創刊号でもARDSが特集されているように、
今ARDSが熱いらしい。
ARDSの輸液管理による、”死亡率低下”という転帰を報告した論文。
survivalに差が出たことが掲載のきっかけになったのだろう。

Review of A Large Clinical Series: Association of Cumulative Fluid Balance on Outcome in Acute Lung Injury: A Retrospective Review of the ARDSnet Tidal Volume Study Cohort
J Intensive Care Med 2009 24: 35-46


目的:
 輸液による体液バランスがALIの予後にどの程度寄与するか調べた。

デザイン:
 prospective cohort studyであり、1996~1999のデータを集積。
 10のクリニカルセンター(24病院、75ICU)で調べられた。
 902人の登録のうち、844人に輸液バランスについての記載があった。
 (他の人のカルテはどこにいったんだろう・・・法律上は問題なし?)
 
方法:
 特に介入したわけでもなく、コホート研究である。
 
結果:
 683人が初日に3.5L以上の輸液をされている(positive fluid balance)
 しかしながら、161人がnegative fluid balance (P<.001)であった。
 治療4日目のnegative fluid balanceは、院内死亡率低下と有意に相関。
 (OR, 0.50; 95% CI, 0.28-0.89; P < .001)
 
結果:
 ALI治療4日目のNegative cumulative fluid balanceは院内死亡率を低下させる。


今回の論文はアブストラクトだけしか読んでいないが、
この内容は以前から言われていること。
NEJMのFACTT試験が有名である。
NEJM 2006. Comparison of Two Fluid-Management Strategies in Acute Lung Injury. The National Heart, Lung, and Blood Institute ARDS Clinical Trials Network)
このFACTT試験では、
 positive balance:6992±502ml
 negative balance:-136±491ml であり、60日死亡率に差はなかったものの
negative群で28日間酸素化の改善、肺損傷改善がみられた。
negative balanceは、CVPが4cm水柱以下、PCWPが8cm水柱以下に保つよう
フロセミドを使用するという概要である。
FACTT試験の結果であと覚えておきたいのは、
肺動脈カテーテルの使用が中心静脈カテーテルの使用に比べて
不整脈などの合併症が2倍多かったこと
である。

今回の論文も示唆しているように、ALI治療開始してから
4日目には輸液量を下げていないと
院内死亡率が上昇する可能性があることになる??
臓器還流を考えた治療をせよ、ということを示唆しているわけだが。

surviving sepsis campaign2008では
ショック出現後6時間までは以下の通りにおこなう。
1.CVP8~12mmHg (人工呼吸器下では12-15mmHg)を目安に輸液
  ・具体的には:300~1000ml/30minで繰り返す
2.平均血圧≧65 mmHg,尿量≧0.5 mL/kg/hr,
  中心静脈酸素飽和度or混合静脈血酸素飽和度≧70%
  を満たすことを目標とする。

エビデンスレベル1Aの記述としては
「人工呼吸管理期間やICU入室期間を短縮する目的で、
臓器灌流低下のないALI患者で輸液を制限する戦略は推奨される。」
とある。


以上をふまえると、ARDS入院時には
敗血症が原因であればsurviving sepsis campaign2008の
early goal directed therapyにのっとった輸液をおこなう。
しかし、ARDSを併発している場合、FACTT試験にのっとって
初期輸液から、”しぼる輸液”へ漸減していく必要があると考えられる。

# by otowelt | 2009-03-01 09:38 | 集中治療

AMI後、クロピドグレルとPPI併用で再梗塞リスク上昇


急性心筋梗塞後にクロピドグレル(プラビックス)を内服している
高齢者では、PPIを併用すると再梗塞リスクが高くなるという論文。

2008年ACC/ACG/AHAガイドラインで、AMI後にアスピリンを
服用している患者の大部分にPPIの併用が推奨されているため、
この論文がセンセーショナルだということだ。

クロピドグレルは主に2C19によって代謝活性化されるが、
PPIにはこの2C19を競合的に阻害する薬剤がある。

方法:
 退院後90日以内にAMIで再入院した患者734例。
 コントロールはindex dateまで再入院しなかった患者2057例。
 66歳以上でAMIで入院し、退院後3日以内にクロピドグレルを
 開始した患者1万3636例の中からチョイス。
 
 PPI併用の時期を近い順に、
 ・現在使用中   (再入院日~30日前)
 ・最近使用     (31~90日前)
 ・かなり前に使用 (91~180日前)   と定義。

結果:
 PPIを現在使用中の患者群で、PPIの使用と再梗塞の間に
 有意な相関がみられた。オッズ比は1.27(95%CI:1.03-1.57)。

 2C19を阻害しないパントプラゾールを
 それ以外のPPI(オメプラゾール+ランソプラゾール+ラベプラゾール)と
 分けて解析してみると、パントプラゾールの使用は再梗塞と相関しなかった。
 それ以外のPPIの使用は再梗塞リスクを40%増大。
 (オッズ比1.40、95%CI:1.10-1.77)。
e0156318_11432643.jpg

~以下は日経メディカルオンラインより参照~
 クロピドグレルは世界第2位の売上げがある薬剤であり、
 「この薬物相互作用にさらされている患者数を考えると、本研究は
 公衆衛生学的に大きな意味を持つ」と著者は指摘する。

 著者らは、クロピドグレルに2C19を阻害するPPIを併用することは
 できる限り避けるべきであり、代替薬としてパントプラゾールまたは
 H2ブロッカーが適切ではないかと述べている。なお本研究の問題点
 として、OTC薬の使用状況や、喫煙、血圧、コレステロールなどの
 冠危険因子のデータがないことが挙げられるが、著者らは
 「これらによって本研究の主要な結論が脅かされるものではない」としている。

# by otowelt | 2009-02-28 11:44 | 内科一般

末梢静脈カニューレ挿入時に冷却スプレーをかけると疼痛が軽減する


液化石油ガス冷却スプレーを、局所麻酔代わりに用いることが
妥当かどうかという論文。
ペンレスを頭に思い描くわけだが、、臨床現場で効いたと思ったことはない。

Effect of topical alkane vapocoolant spray on pain with intravenous cannulation in patients in emergency departments: randomised double blind placebo controlled trial. BMJ 2009;338:b215

背景:
 末梢静脈カニューレ挿入時に、多くの患者が中等度以上の痛みを感じる。
 リドカインの皮内注射の有効性は確認されているが、それ自体が痛みがある。
 これまで、静脈カニューレ挿入時の冷却スプレーの効果における研究は
 いくつか行われたが、これといった結果は出ていない。

方法:
 末梢静脈カニューレ挿入時の疼痛軽減にLPG使用の冷却スプレーを
 用いた場合の、無作為化二重盲検試験。
 18歳以上の患者201人(平均年齢58.2歳)を登録、
 98人を対照群、103人を介入群にランダム化した。
 皮膚に、冷却スプレーまたは水のスプレーを、
 12cm離れたところから2秒間吹き付けた。
 スプレー噴霧から15秒以内のカニューレ挿入完了とした。
 痛みは100mm VAS(Visual analog scale)での評価とする。

 今回の研究では、挿入時の疼痛中央値は、対照群が36mm、
 スプレー群が12mmで有意差がみられた(p<0.001)。

e0156318_17571632.jpg

 

# by otowelt | 2009-02-27 17:57 | 内科一般

Wernicke脳症2


●ビタミンB1とは
 ビタミンB1は、米ぬかから抗神経炎症の結晶として、
 Funk、Edie、鈴木梅太郎(日本)により、分離された。
 ビタミンB1は、鈴木梅太郎によりオリザニンとも命名された。
 また、抗神経炎の意味でアノイリン(aneurin)とも呼ばれる。
 18日間投与されないと枯渇する。

●Wernicke脳症と訴訟問題
 東大医科学研究所附属病院で、ビタミンの
 入っていない点滴を受けたため、ウェルニッケ脳症を発症、
 歩行障害や記憶障害が残ったとして、横浜市の男性の遺族が
 国に損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は
 「医師には適切な量のビタミンB1を補給する注意義務を怠った
 過失がある」として、800万円の支払いを命じた。

●脚気
 ・脚気もビタミンB1不足で起こる。
 ・beriberiは「私は何もできない」という意味。
  医師が治療の方法が分からなかったから。
 ・知覚障害、運動障害、むくみ、心臓の障害を主な
  症状とする全身性の病気で、重くなると急性心不全
  を起こす危険性が増す。
 ・初期症状:脚の疲労感、下肢の知覚が鈍くなる、
  下腿のむくみ、などがみられる。さらに進行すると、
  湿性脚気と乾性脚気の2つの症状がみられる
 ・腱反射異常はアキレス腱反射が最初に現れる

Wet Beriberi
 下腿の前面や足背のむくみが次第に背部、上肢に広がる。
 むくみの増強に伴い心臓症状(動悸、心臓の拡大、頻脈など)
 があらわれる。悪化すれば急性心不全となる
Dry Beriberi
 神経と筋肉の障害(多発性神経炎)を主とする。知覚の障害が
 両側性に下腿から下腹部、上肢、躯幹、顔など全身に及ぶ。しかし、
 完全に知覚が消失することはない。運動障害は末梢神経障害と
 筋肉の変性のため。

# by otowelt | 2009-02-26 17:09 | レクチャー