MUC5B遺伝子プロモーター多型は関節リウマチ関連間質性肺疾患と関連

e0156318_1023364.jpg 強皮症なんかでは、ILD合併例でもこのMUC5Bの変異とは有意に関連していないと言われています(PLoS One 2013; 8(8): e70621.)。関節リウマチでは、MUC5B遺伝子という窓を通じてIPFとつながっている部分があるようです。

Juge PA, et al.
MUC5B Promoter Variant and Rheumatoid Arthritis with Interstitial Lung Disease.
N Engl J Med. 2018 Oct 20. doi: 10.1056/NEJMoa1801562.


背景:
 関節リウマチ関連間質性肺疾患(RA-ILD)と特発性肺線維症(IPF)の間には同様の遺伝子フェノタイプがみられ、われわれはIPFの発展の強力なリスク因子である、MUC5B遺伝子プロモーター多型であるrs35705950が、RA患者のILDリスクに寄与しているのではないかと仮説を立てた。

方法:
 discovery populationおよび複数のvalidation populationを用いて、われわれはMUC5B遺伝子プロモーター多型rs35705950をRA-ILD620人、RA-非ILD614人、影響のないコントロール者5448人で調べた。

結果:
 discovery populationの解析では、RA-ILD群とコントロール群を比較すると、MUC5B遺伝子プロモーター多型のマイナーアレルとRA-ILD群には関連がみられた(補正オッズ比3.8; 95%信頼区間2.8-5.2; P=9.7×10-17)。MUC5B遺伝子プロモーター多型はまた、コントロール群と比較するとRA-ILD群では過剰発現が、多民族ケースシリーズ(補正オッズ比5.5; 95%信頼区間4.2-7.3; P=4.7×10-35)、discovery populationと多民族ケースシリーズの統合(補正オッズ比4.7; 95%信頼区間3.9-5.8; P=1.3×10-49)で有意に観察された。加えて、MUC5B遺伝子プロモーター多型は、RA患者でILDのリスク上昇と関連していた(統合解析の補正オッズ比3.1; 95%信頼区間1.8-5.4; P=7.4×10-5)。とりわけ、胸部HRCTでUIPパターンがみられた患者では顕著だった(統合解析の補正オッズ比6.1; 95%信頼区間2.9-13.1; P=2.5×10-6)。しかしながら、MUC5B遺伝子プロモーター多型はRA単独診断とは関連性がみられなかった。
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(文献より引用)

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(文献より引用)

結論:
 MUC5B遺伝子プロモーター多型は、RA-ILDと関連していることがわかった。とくに、胸部画像でUIPパターンがみられた場合に顕著であった。



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# by otowelt | 2018-11-05 00:21 | びまん性肺疾患

本の紹介:肺癌薬物療法のエビデンスとコツ

 ここ数年、肺癌をはじめとした各種癌に対する治療の進歩は目覚ましい。ガイドラインも毎年改訂されるという事態で、私もちょっと驚いています。
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発売日:2018年10月19日
単行本 : 220ページ
価格 : 5,500円 (税別)
出版社 : 羊土社
監修: 加藤 晃史先生、池田 慧先生

e0156318_13141310.jpgAmazonから購入する

 この歴史的な“過渡期”にある現状、なかなか出版ができないのが肺癌の世界。出版したと思ったら、1年後には過去のレガシーになってしまうリスクがある。それでも、現状のエビデンスをしっかりまとめて出版したこの本は、あっぱれです。特に、「何かややこしくてついていけない」と思っている若手呼吸器内科医にはもってこいの一冊です。

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 内容は、おそらく専門家でも「なるほど」と思える細かい内容で、それでいて羊土社らしい読みやすいレイアウトにこだわった構成がありがたい。個人的には各キナーゼ阻害剤のところが面白かった。

 実症例をもとに、わかりやすく解説されている点が魅力的です。2018年末にもおそらく肺癌のガイドラインは改訂されるでしょうが、現状のエビデンスを今一度確認したい人にとっては、この本がよい参考書になるはずです。





# by otowelt | 2018-11-03 00:36 | 肺癌・その他腫瘍

COPDに対する初期治療でICS/LABAを用いるべき条件

e0156318_1633480.jpg ACOの基準には当てはまらないけれど、喘息コンポーネントを持ったCOPD患者さんというのは存在するので、それほど目新しい知見ではないと思います。

Samy Suissa, et al.
Comparative effectiveness of LABA-ICS versus LAMA as initial treatment in COPD targeted by blood eosinophils: a population-based cohort study
Lancet Respiratory Medicine, DOI:https://doi.org/10.1016/S2213-2600(18)30368-0


背景:
 長時間作用性β2刺激薬(LABA)および長時間作用性抗コリン薬(LAMA)は、COPDの初期治療として推奨されており、ほぼすべてのLABAは吸入ステロイド(ICS)との固定併用製剤(LABA-ICS)が提供されている。われわれは、リアルワールドセッティングにおいて、潜在的なICSの有効性バイオマーカーである血中好酸球に応じたLABA-ICSの初期治療の有効性と安全性をLAMAと比較した。

方法:
 この集団ベースコホート研究において、われわれは2002年~2015年の間、イギリス臨床プラクティス研究データリンクから登録された55歳以上のCOPD患者で、LAMAあるいはLABA-ICSで治療を開始されたコホートを同定した。同じ日に両気管支拡張薬を開始された患者は除外された。すべての患者はコホート登録前に少なくとも1年の病歴があって、血中好酸球濃度を登録前に測定しており、気管支拡張薬を最初に処方された日をもって登録開始とした。LAMAを開始された患者は、LABA-ICSを開始された患者と高次元傾向スコアに基づいてマッチされた。患者は1年間追跡され、中等症あるいは重症COPD増悪および重症肺炎の発生が観察された。好酸球濃度を2レベル設定し感度解析をおこない、現在の喘息や過去のCOPD増悪既往によって層別化した。

結果:
 2002年1月1日から2015年12月31日までに、コホート内で53万9643人のLABAあるいはLAMAが処方され、そのうち18500人がLABA-ICS、13870人がLAMAされた。傾向スコア分析に12366人のLAMA群(主にチオトロピウム)と12366人のLABA-ICS群が組み入れられた。COPD増悪のハザード比はLAMA群と比較するとLABA-ICS群で0.95(95%信頼区間0.90-1.01)だった。好酸球比率が白血球の2%未満の患者ではハザード比は1.03(95%信頼区間0.93-1.13)、好酸球比率が2-4%の患者ではハザード比は1.00(95%信頼区間0.93-1.13)となった。好酸球比率が4%を超える患者では、ハザード比は0.79(95%信頼区間0.70-0.88)だった。肺炎の頻度はLABA-ICS開始で増加し(ハザード比1.37、95%信頼区間1.17-1.60)、これは好酸球濃度がどの場合であっても同等だった。感度解析でもこれらの知見と一致していた。

結論:
 リアルワールドにおける観察研究では、COPDの初期治療にLABA-ICS吸入を用いることは、LAMAと比較して好酸球比率が高い例(>4%)、好酸球数が高い例(>300/μL)、そしておそらく増悪の頻度が高い例においてより効果的に作用することが示された。ICS成分に関連した肺炎の増加のため、LAMAで開始することは血中好酸球比率が4%未満の患者に適用すべきと考えられる。


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# by otowelt | 2018-11-02 00:53 | 気管支喘息・COPD

DRI11772試験:IPFに対するSAR156597の有効性見い出せず

e0156318_10574046.jpg 期待されていた薬剤の1つでした。

Ganesh Raghu, et al.
SAR156597 in idiopathic pulmonary fibrosis: a phase 2, placebo-controlled study (DRI11772)
European Respiratory Journal 2018; DOI: 10.1183/13993003.01130-2018


背景:
 IPFに対して、プラセボと比較したSAR156597(インターロイキン4およびインターロイキン13に特異的なモノクローナル抗体)の有効性を評価した52週間の第2b相試験が実施された。

方法:
 DRI11772試験は、多施設共同二重盲検プラセボ対照第2b相試験である。40歳を超えるIPF患者がSAR156597 200mg週1回、SAR156597 200mg週2回、プラセボのいずれかに52週間割り付けられた。プライマリ効果エンドポイントは、52週時点でのベースラインからの努力性肺活量の絶対変化とした。

結果:
 327人がランダム化され、325人が治療を受けた。109人がプラセボ群、108人がSAR156597 200mg週2回群、108人がSAR156597 200mg週1回に割り付けられた。52週時点での努力性肺活量の平均変化は、それぞれ-5.8%、-5.2%、-6.3%だった(SAR156597 200mg週回2Q群とプラセボの比較:p=0.59; SAR156597 200mg週1回とプラセボの比較:p=0.63)。安全性プロファイルは3群同等であったが、SAR156597 200mg週1回で重篤な有害事象が多かった。

結論:
 DRI11772試験では、IPFに対するSAR156597の有効性を示せなかった。





# by otowelt | 2018-11-01 00:36 | びまん性肺疾患

TWICS試験:吸入ステロイドを使用しているCOPD患者に対する低用量テオフィリンはCOPD増悪を減らさない

e0156318_1633480.jpg 日本ではキサンチン誘導体はまだ「効果がある」という風潮ですが、海外では逆風です。

Devereux G, et al.
Effect of Theophylline as Adjunct to Inhaled Corticosteroids on Exacerbations in Patients With COPD. A Randomized Clinical Trial
JAMA. 2018;320(15):1548-1559.


背景:
 COPDは世界的に主要な健康問題であり、テオフィリンが広く用いられている。臨床前研究では、テオフィリンの血清濃度が低いこと(1-5mg/L)が、COPDにおけるステロイドの抗炎症作用を高めることが示されている。

目的:
 COPDにおける吸入ステロイドに低用量テオフィリンを加えることの効果を検証する。


デザイン、状況、被験者:
 このTWICS研究は、2014年2月6日から2016年8月31日までCOPD患者を登録した実践的二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験である。最終追跡は2017年8月31日である。被験者は、過去1年で少なくとも2回の増悪(抗菌薬、経口ステロイド、あるいはその両方)を経験し、吸入ステロイドを用いている、1秒率(1秒量/努力性肺活量)が0.7未満の患者である。この研究には、121のイギリスの一次・二次医療施設から1578人の被験者が登録された。
 
介入:
 被験者は、血清濃度が1-5mg/L(理想体重および喫煙ステータスで定義)になるよう低用量テオフィリン(200mg1日1回あるいは1日2回)を受ける群(791人)あるいはプラセボ群(787人)にランダムに割り付けられた。

主要アウトカム:
 1年の治療期間中、抗菌薬、経口ステロイド、あるいはその両方を要した、患者報告による中等症あるいは重症増悪の数。

結果:
 解析された1567人の被験者のうち、平均(標準偏差)年齢は68.4(8.4)歳で、54%(843人)が男性だった。プライマリアウトカムは1536人(98%)でデータ評価が有効だった(テオフィリン群772人、プラセボ群764人)。合計3430の増悪があった:テオフィリン群1727人(平均2.24[95%信頼区間2.10~2.38]増悪/年)、プラセボ群1703人(平均2.23[95%信頼区間2.09~2.37]増悪/年);非補正平均差0.01 (95%信頼区間−0.19~0.21)、補正罹患率比0.99 (95%信頼区間0.91~1.08)。テオフィリン群およびプラセボ群における重篤な有害事象イベントには、循環器系2.4% vs 3.4%、消化器系2.7% vs 1.3%、悪心(10.9% vs 7.9%)および頭痛(9.0% vs 7.9%)などの副反応が含まれた。

結論と関連性:
 増悪のリスクが高い吸入ステロイド治療を受けている成人COPD患者では、低用量テオフィリンを加えることは、プラセボと比較して1年間のCOPD増悪の数を減らさなかった。この知見は、COPD増悪を予防するために吸入ステロイドに低用量テオフィリンを補助的に用いることを支持しない。





# by otowelt | 2018-10-31 00:33 | 気管支喘息・COPD